ホント、オラリオは出会いの街ね。私の場合は再会の街が濃厚かしら? 【
「でも……」
彼が私に近づこうともしても私はその距離を取る。私の中じゃ彼が最も遠ざけたい存在だ。【
「こういうのを、女心は複雑と言うのかしら?」
自分にそんな繊細な物があったのね。でもオラリオにいる以上、この問題もついて回るから覚悟はしておいた方がいい。背負うもの、また増えちゃったわね。
そんな気持ちだったせいか、私はダンジョンに足を踏み入れていた。
「【グニタヘイズより贈り物を】」
取り出したのは一本の剣。蛇腹剣〈ガリア〉。かつてゼウス神が『漢が夢見るロマン武器じゃあ!』と、【ゼウス・ファミリア】の男どもにせがまれて製作しちゃった剣だ。分離する刀身を細くも頑丈な鎖で繋ぎ、柄に巻き取りのギミックを付ける事で近・中距離に対応する武器。剣に戻す機能と頑丈さが難しかったけどこうして形になっている。そして。
「ほいっ」
『グギャ!?』
ダンジョンの影にいたコボルトを一閃。ガリアはその形状たる特性を存分に振て斬り裂く。そしてガリアを引っ張り剣の形に戻った直後、コボルトの魔石が飛んでくる。
「よっと」
それをキャッチしすぐさま【ミュニアストレジャー】に仕舞い込む。とりあえずこうした方が回収が楽だから便利よね。最も、私のように器用のアビリティが高いか熟練の腕がないと使えないけどね。
「ほいほいっと」
『ギャッ!』
『ギャグ!?』
うーん。少し流れ作業だけどこうした方が気分も変わるでしょう。それにダンジョンの空気を思い出すのにはいい機会だし、ちょっとした小遣い稼ぎにもなる。ついでに1日中は身を隠して落ち着きたい。
「久しぶりのダンジョン探検、スタートー」
テンション上がらないわね。
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アイアム・ガネーシャ
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『おい、あれってロリ神か?』
『いや、あのロリ巨乳はヘスティアだろ』
『でもロリ巨乳って貧乏ファミリアだったろ。ジャガ丸くんの屋台でマスコットやってるくらいの』
『ならあの格好の理由、わかるなら言ってみろよ』
『いや、理由って言ってもな……』
『ホントに、なんでドレスを着てるんだ?』
うん、ボクだってそれはよくわからないんだけど。でも今はそれよりも目の前の料理だ! ここで食べとかないと次なんて遠い日になる!
「何やってるのよあんた……」
「むぐっ」
この声は……。
「ヘファイトス!」
「元気そうで何より……なんだけど聞いていいかしら?」
「わかってるよ。この格好の事だろう?」
「またどこからか借りたの?」
「違う! そんなことに使うなら自前で何とかするさ! このドレスは押し付けられたんだよ」
ボクが神の宴へ行くことを彼女、
と、目の前にいるヘファイストスに教えた。
「彼女、本当に帰ってきていたのね」
「あれ、へファイトスはあの子と知り合いかい?」
「知り合いでもあるけど彼女はかなりの有名人よ。本人から聞いてないの?」
「聞いてないよ。何かあるのかい?」
「あるにはあるけど……今はやめておくわ。話すなら後でしてあげる」
「そうかい。それは後で聞きたいけど、実は――」
「そろそろ私のことに気づいて欲しんだけどね」
「えっ? あっ、フレイヤ」
へファイトスの影から彼女が姿を現した。途端、周りの男神たちがざわつき始める。
相変わらずだなぁ……。
「すぐそこで会ってね、一緒に回ってたのよ」
「そうかい。でもボク、君のことは苦手なんだよね」
「私はあなたのそう言うところは好きよ。ところでさっき興味深い話をしてたみたいだけど」
「
「ファイたーんっ! フレイヤー! んでドチビーッ!!」
フレイヤよりも大っ嫌いな
「なんでドレスなんぞ着て来てんのやっ! せっかくそんなもん買えんようなドチビを笑いに来たっつーのに!」
ウゼェえっ!! ろくな理由じゃねぇ!!
「フンッ、それは残念だったね!! まぁ不本意だけど最初はロキが予想した通りだったさ!! でもお節介な子がいたおかげでこの通りだよ!」
「マジかいっ! いったどこの子やねん! お前みたいな貧乏な神にそんな気前のいい事する子は!?」
「カレン・デュラスだそうよロキ」
「なんやてっ!? つーことはこれってカレンちゃんの力作!?」
「ああ、そう言えば練習用に作っていたそうだよ。まぁボクに合わせて手直ししてくれたけどね」
「畜生っ! 羨ましすぎやでドチビ!!」
ウゼェ!! ホントにウゼェ!!
結局、へファイトスに頼み事を伝えられたのはしばらくロキとの口論をした後だった。
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ダンジョン内
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「くちゅっ」
くしゃみ? そこまで寒い場所じゃないはずなんだけど。噂されてるのかしら?
『ギャウッ!』
『ブギャッ!』
その間にもガリアでモンスターを倒していく。大きな巨体のミノタウロスだと一撃じゃ切り伏せられなかったけど切り刻んで刺したり魔石を抜き取ったりしたから問題なかった。ただアルミラージを殺すのはちょっと躊躇った。だってベルみたいだもん。そんな事があったけどしっかり魔石とドロップアイテムを回収する。普通に歩いていきながらも前に足を出し、奥へ奥へ、下へ下へ進んでいく。
そうして進んで既に16階層、つまり中層まで潜っていた。今更だけどこの姿になってから中層まで、と言うよりダンジョンに入ったのは初めてだった。外でも戦う事はあったけどモンスターは繁殖で弱体化してるし、そう争いごとと呼べるものは少なかった。もっとも、その『少なかった』は私の存在を知る出会いでもあったけど。
と、そうこうしている内に17階層まで降りて来ていた。
「『嘆きの大壁』のある階層ね」
懐かしい思い出が蘇る。初めての
「いや、懐かしんでもしょうがないわね」
かつてはソロで通ろうとは思わなかった階層。そもそも中層すらソロで通ろうとは15年前の私は思わなかった。私のスタイルもあったしね。
でも、今はこの階層を進む。次の階層を目指して進む。これは挑戦ですらないでしょうね。自分の力を過小評価しているわけじゃないしね。モンスターがでなくなった大通路を進んでいく。ソロだと広すぎる静かな空間に足音だけを響かせて。
そして大通路の出口に広い空間が見えてきた。そこへ一歩を踏み出せばその広大さと長大さを目の当たりにする。この大きさはある一匹の
なら客人として礼儀は示さないと。
手に握ったガリアを【ミュニアストレジャー】にしまい、次の武器を取り出す。
刀身4
……バキリ。
「……来たか」
音が聞こえたのは『嘆きの大壁』からだ。そこにはさっきまでなかった亀裂が大きく生まれていた。そしてそこからバキッ、バキッと同じ音を繰り返し鳴らしながら広がる。
『―――――ォ』
その亀裂から声が聞こえた。そして壁の一部が剥がれ落ち、その中から巨大な眼球がギョロリと動く。それは真っ直ぐに私の事を見ていた。
『―――――ォオ』
壁の向こう側のソレはその巨体を引き摺り出し、この大広間の床に降り立つ。着地する時の衝撃が思ったより小さいものだったようで舞い上がる土煙は少ない。だからその巨体は隠される事なく晒されていた。
灰褐色の肌を持つ7
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』
けたたましい咆哮が産声の代わりだった。絶対的な存在である主張を持って周囲に畏怖を与える。お前たちとは違うと、本能に恐怖を与える声。
その声に私は。
「……特に怖くないわね」
どうやら
巨躯を持つモンスターの攻撃に耐える、硬い体を両断するに特化した属性。しかし特定のモンスターにしか使う機会がない
(※元ネタ:ゲルマン民話の一つ『ディートリヒ伝承』に登場する名剣。巨人の首を一振りで切ったりその体を真っ二つにしたり、敵の振るった剣を逆に砕いたりしたという)