竜人がいるのは間違っているだろうか?   作:Celtmyth

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ならず者の街『リヴィア』

「フゥ……、ハッ!!」

『ガァッ!?』

 

 ヒルグムの一刀がゴライアスの腕を始めて斬り落とす。この刀身、そして巨殺属性(ナーゲルリング)があれば両断は可能だった。今の今までしなかったのは私がこの得物をまだ手足のように使いこなせてないからだ。もっとも、振り回すだけでも使える人は限られてしまうのだけれども。

 振り下ろしたヒルグムの重量を上手く流しバランスを保つ。ただそれでも剣先は床を走り、削る。それでも勢いが衰えないのはこの武器の重さを表していた。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 腕を斬り落とされたゴライアスの咆哮が響く。しかし威嚇ではなく怒りの声だ。倒され、しかし復活するとは言え剣で腕を斬り落とされるなんて今までにないでしょう。

 そしてゴライアスはまだ残る片腕が迫る。向かってくる巨拳に対しヒルグムを盾にする。大剣が巨拳を、受け止める。

 

「ぐぅっ!」

 

 さすがに巨人の拳は重く、床の上の足が沈む。ただし、それでも体は悲鳴をあげる程でもない。確かに重いけど、この体が耐えられない程ではなかった。

 

「……ホント、変わったんだなぁ」

 

 竜人(ドラゴニュート)の凄まじさを直に感じさせた。その実感を抱いたまま、圧してくる巨拳を振り払う。

 

『オオッ!?』

 

 ゴライアスの拳を振り払う。それは払えた技術はもちろん、それを可能とする怪力があってだと向こうも気付いていた。

 

「悪いけど、トドメと行きましょうか」

 

 すぐに前を駆け、翼を広げて飛ぶ。ゴライアスの懐へ入り込み、顔の前で止まる。そして、

 

「首、頂戴する」

 

 躊躇う事もなく、その首を両断した。

 

 

 

 

 

「カッ、カカカカ、カレンッ!?」

「そんなに驚かないでもらえるかしらボールス」

 

 ゴライアスを討伐し、その先にあるのは安全階層(セーフティーポイント)の18階層。水晶と自然が満ちる『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』。ここには冒険者たちが独自に作り上げた闇市『リヴィア』があり、そしてそれを実質でトップにいるのが目の前にいるボールスなんだけど……。

 

「いやだってオメェ、15年間も音沙汰がなかったんだぜ。そんな奴が目の前に現れて、お久しぶりー、なんて挨拶かまされたらビックリするだろうが」

「それだけ? やましい事はない?」

「……ちょっとお前の借りを返さなくていいかなって思ってた」

「覚えているならまだいいわよ」

 

 15年前まで色々と手を貸して上げたからね。鍛冶師を目指していた時しかり、このリヴィアしかりね。

 

「で、なんの用なんだ?」

「帰ってきたのはいいんだけど地上にいると懐かしい再会と一緒に面倒事がよく寄って来るのよ。それを避けて潜ってきたの」

「そうかい。じゃあついでに色々と物資を分けてくれねぇか? 持ってる分でいいから」

「いいわよ。大体冒険者50人分が遠征するくらいはあるわよ」

「十分すぎるぜぇ……」

「それじゃあ交渉と行きましょうか。どうせこっちで売る時はぼったくり価格なんだからある程度は色をつけなさいよ」

「わかってるよ。ならこっちでやろうぜ」

「ええ」

 

 まぁ、ホントは80人分ほどあるんだけど。

 リヴィアの街中、ボールスの後ろに続いて進んでいく。前と町並みは変わってる、のは当たり前か。334代目になるそうだし。途中、ガラの悪い冒険者に絡まれたりしたけどボールスがシメてたから問題はなかったけど。でも絡みに来た全員が全員、ボールスに耳打ちされた直後顔を青くして逃げるように去っていったのは腑に落ちない。

 そんな中で私はふと街の外に大きなカーゴがある事を見つけた。描かれてるエンブレムは【ガネーシャ・ファミリア】の象のマーク。

 

「ねぇボールス、もしかして怪物祭(モンスターフィリア)の季節なの?」

「ああ。もうあと3日ってところだ。リヴィアの連中もその為に地上に行く予定だ」

「貴方も行くつもり?」

「行きてぇのは山々なんだがここを空けるとモンスター共に荒らされちまうからな。俺は留守番だ」

「賭けに負けたの? それとも借金?」

「賭けだよ賭け。つーかなんで真っ先にそれなんだよ?」

「ならず者の街のトップがそうなるなんて、それぐらいでしょ」

「るせぇ」

 

 あらあら、これは大負けしたみたいね。

 それにしても怪物祭(モンスターフィリア)か。行ってみようかしらね。

 

 

 

 

=======

 Hφαιστοs(ヘイファイトス)

=======

 

 

「ヘスティア、一ついいかしら?」

「なんだい? あっ、今更やらないはなしだぞ!」

「そんな事は言わないわよ。聞きたいのはカレンの事よ」

 

 ヘスティアの頼み事、彼女の眷属(こども)の為に武器を作る事を受けた以上は鍛冶師(スミス)として今更やめるなんて事はしないわよ。でもだからこそ彼女の事が気になるの。

 と、思って聞いてみたけどそう深く付き合ってる訳じゃないみたいね。ただ眷属の子が顔見知りだったから自然とヘスティアとも知り合ったってことか。

 

「ところで貴方の事だから彼女の二つ名は知らないでしょう?」

「二つ名? つまり彼女はLv.2以上の冒険者って事かい」

「そう。今の二つ名は【財宝竜(ファヴニル)】、その前は【助演者(パーティースタッフ)】だったの。前の二つ名は他の眷属(こども)たちを戦闘から生活面までサポートまで支えていた事で付いたのよ」

「それって、冒険者とサポーターを兼任したって事かい?」

「正解、と言いたいけど彼女はサポーターを兼任した訳じゃないの」

「はへ?」

 

 なんともトボけた顔ね。いつものことか。

 

「ヘスティア。このファミリアに所属する鍛冶師(スミス)たちがどういった存在かは知ってるわね?」

「もちろんだよ。鍛冶師と発展アビリティ『鍛冶』を獲得した上級鍛冶師(ハイ・スミス)たちが所属するファミリアだよ」

「そう。そして『鍛冶』を取得した上級鍛冶師(ハイ・スミス)は武器・防具に属性を付与する事が可能。でも同時にそこまで(・・・・)と言う事よ」

「えっ?」

 

 まぁよく知らないならこの反応は当たり前か。でも彼女の凄さを知ったなら納得するでしょう。

 

「彼女はレア中のレア、『製作』の発展アビリティを唯一獲得した子なの」

「『製作』? 何かを作り上げるアビリティかい?」

「その通りだけどその通りでもない。『製作』は製作なの」

「いやだから何かを作るアビリティだろ?」

なんでも(・・・・)作るのよ。『鍛冶』の武具、『調合』の薬剤、『神秘』の魔道具(マジックアイテム)。作ろうと思えばどんなものでもね」

「ええっ!? それってありえなくないか!?」

「それが出来ちゃうのよ。その力があったからこそ彼女は仲間たちのサポート、武具の整備や即席の薬剤の調合で支えていたのよ」

 

 ただ私もかつてはヘスティアが今声に出したようにありえないと思っていた。でも彼女の作り上げた剣を見た時、『鍛冶』だけじゃありえないとひと目でわかった。あの時の剣はまさにあらゆる分野をまとめ上げた総合作品。武器としては私には及ばなかったけど私にも作れないでしょう。

 

「ヘファイトス、もしかして自分のファミリアに入って欲しいと思ってる?」

「え、なんで?」

「なんだかそんな顔をしていたよ」

 

 あらやだ。そんな顔をしてたかしら? でも。

 

「確かに欲しいと聞かれれば欲しいと答えるわ。恐らくだけど彼女は私やここにいる鍛冶師(スミス)には見えていない物が見えてるかもしれない。そんな彼女と話ができれば更なる高みに登れるでしょう」

「勧誘するのかい?」

「難しいでしょうね。彼女、ロキやフレイヤにも目を付けられてるから」

「うわっ、あの2柱にかい……」

「でもだからって彼女たちも強引には引き込めないの。なにせ15年前、カレン1人に自分たちのファミリアを襲撃されて一時期2大ファミリアとしての立場が危ぶまれたこともあったからね」

「ええっ!?」

 

 あっ、そう言えばヘスティアこの事は知らなかったわね。なんかブツブツ呟き始めたけど彼女がどんな子なのか知って混乱してるってところかしら。ん、『ベル君がいるからちょっとは……』って聞こえたけど、なんのこと?

 っと、ちょっと話込んだわね。

 

「ヘスティア、この話はここまでにして武器を作るわよ」

「おおっ、そうだったね。ボクもしっかり手伝うからよろしく頼むよ」

「はいはい」

 

 さて、始めましょうか。

 

 

 

 

 

======

 リヴィア

======

 

 

 

「はい。これで取引は成立」

「クソッタレ!」

 

 私とボールスの名前が書かれた証文を挟んでお互いに真逆の声をあげた。

 

「なによ、ちゃんとした交渉の結果よ。ちゃんと言ったとおり色をつけて貰ったけど」

「その色がもう七色ぐらいじゃねぇか! お前の事だからどうせその物資もお手製なんだろ!! もっと安くていいだろうが」

 

 確かに、全部私のお手製よ。その点じゃ価格も安上がりなのは正しい。でもね。

 

「品質は地上の一級品と遜色なし」

「うっ」

「しかも未使用で新品同様」

「ぐっ」

「しかもセットにして価格は地上より割引」

「ぐぅぅ……」

「そこに色を付けたわけだけど、その分は貴方に貸した金額に小鳥の餌代程度のはずだけど?」

「……すみません。俺のワガママでした。この温情に感謝します」

「うん、それでいいわよ」

 

 頭を垂れるボールスに笑顔で応える私。まぁ要するに、「これであんたの借金をチャラにして上げるんのよ? しないなら、わかるわよね?」と言ったわけである。

 

「それじゃ物資は倉庫に置いていくわね」

「ああ。ただ門番がいるから俺も行く」

「そう、それならよろしく」

「ところでこの後はどうするんだ? 地上に戻るのか?」

「この先の『大樹の迷宮』の19階層から24階層を回るつもりよ。物資がなくなったからその穴を埋める素材を集めようと思うの。でも怪物祭(モンスターフィリア)には行こうと思ってるからそれまでには切り上げるつもりよ」

「即座に補給たぁ、そこは相変わらずだな」

「まぁ癖ね。昔は、1つないだけで命を落とすような状況もあったからね」

 

 でもそうならないように私は頑張って動いていた。その甲斐あってダンジョンに潜った仲間たちが命を落としたことなんてなかった。でも、やっぱりあの時はいくらあっても足りないと何度も思った。何度も後悔し、長く泣いて――。

 

「おい」

「えっ」

「何ボーッとしてんだ」

「あっ、ああゴメン」

 

 いけないいけない。またやっちゃった。

 

「それじゃあ行きましょう」

「そうしてくれ。――あとな」

「ん、なに?」

「俺はあんたが生きてくれた事、これでも嬉しかったんだぜ。それだけは知ってくれ」

 

 ……あら、気を使ってくれたのかしら。そうよね。私は生きてる。そして生きてやることがまだあるんだから悲しんでるわけにはいかないわよね。

 

「ありがと」

「るせぇ、さっさと行くぞ」

「はいはい」

 

 再会するのもいいものね。

 

 

 




15年前のカレン・デュラス、その評価。

 15年前の彼女のレベルは『3』。戦闘面では劣りバックアップで支えていた冒険者にしては破格のレベルだった。それだけの偉業を成した訳だがやっていた事がやっていた事だけに冒険者としての評価はあまりいいものではなかった。しかし彼女が悪く言われる事は少ない方だった。
 色々と世話をしてくれる。いざとなったらフォローをしてくれる。苦汁を舐められても甘い蜜を啜らせてくれる事が多い。実は容姿も、美しいと言うには少々垢抜けてなかったが十二分に整っていたことから恋愛感情を抱く男は多く、そして媚びず怒らず親身に離してくれるから女性の評価も戦った。
 まぁ要は、冒険者としてはそれなりだったが人となりはすごく高かったのであった。


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