世界が君を砕いても・・・。   作:鵜飼 ひよこ。

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第1輪:其は一条の光明。

「要点のみを述べよう。選びたまえ。その暗黒に手を入れ、光明を掴むか否か。」

 

 あぁ、俺は死んだんだな。

そう思ったのが最後で最初の記憶。

それ以外に説明するものは何もない。

気づいたら右も左も解らない・・・多分、建物の中にいて、倒れた俺の首根っこを咥えてずるずると引きずる変な黒狐がいた。

その狐に引っ張られて窒息しそうになりながら連れて来られたのがこの場所で、今に至る。

 

「要点つっても、何の説明もなく死んだような気がする俺に選択肢も何もないだろう。寧ろ、取り乱したりしてない俺をまず褒めるべきなんじゃないかなぁ?」

 

 と、言ったところで声の主も見えず、あるのは俺の手が入るくらいの鳥居だけ。

あ、狐もいたな。

 

「ならばどうするのかを決められるであろう?」

 

 また声。

 

「確かに左右される要素がないつったらそうだけど、姿くらい見せるのが礼儀じゃないかな?」

 

 ここが地獄の一丁目で、鬼が出るというのでもそれは構わない。

天国へ行ける程の善行って世の中には、そう多くない気がするから。

 

「まぁ、答えはないか。で、狐ちゃんや、"アレ"の言っているのは、この鳥居に手を突っ込めって事でおk?」

 

 ちゃっかりと鳥居の前に座っているのは、変な模様の顔をした狐だけ。

言葉を喋るわけがない狐に喋りかける時点で自分がどうかしている気がするけれど、こうでもしないとイライラが爆発しそうだ。

幸い、これ以上イライラさせる原因の声は何も言ってこないみたいだし・・・。

 

「ではでは・・・手を突っ込む!」

 

 一息にそれを実行する。

実行するしか選択肢がないってんなら、やってみてから考えよう。

 

「うわっ?!なか、ぬめぬめ?ぶよぶよ?しかも生温っ!」

 

 水より弾力があって、寒天ゼリーよりは柔らかい感触で・・・何なんだ、このミニ鳥居・・・?!

 

「え?!ちょっ?!コレ!なんかが俺の手ぇ掴んでる!うへっ、あっ、ちょっ、どうしろと?!」

 

「そのまま掴んで抜け。」

 

「え?!」

 

 俺を迎えたあの声とは違う声。

なんだと?掴み返して引き抜けばいいのか?

 

 

 

 【元亀元年】

 

 

 

 よく解らない何かを掴んだ瞬間、そんな単語が脳裏に浮かんだ。

何だろう?年号?聞いた事ないな。

 

「ぬぉっ?!きゅ、急に重くなっただと?!ふざけんなよぉぉぉーッ!!」

 

「つべこべ言わずに引き抜け!」

 

 慌てふためく俺の視線がちょうど鳥居の横にいた狐と合う。

口が・・・動いてる?え゛?

 

「しゃべっ・・・てる・・・狐が喋ってるぅぅぅ!」

 

「そんな事はどうでもいい。さっさと"時代の波の中"から喚んでやれ。」

 

「いや、どうでもいいコトじゃないでしょ!」

 

 意識を失って目が覚めたら見知らぬ場所にいて、死亡フラグしか立たない選択肢を突きつけられたうえに、従ったら案の定大ピンチで、しかも狐に話かけられるというこの流れの、どこを取ってもどうでもいいコトなんかないだろう!

それに、俺、今、絶対間抜けなツラしてるに違いない。

 

『あ・・・るじ?』

 

 脳天に突き刺さるような悲愴な声。

 

「あ゛?狐、今また喋ったか?」

 

 俺の問いに無言で顔を左右に振る狐の図ってのもシュールだな。

 

『なは・・・・名を・・・。』

 

「名?俺の名前か?俺は、ナオ・・・蒼州(そうしゅう) (なお)だっ!」

 

 グンっと身体が浮いたような、負担が減った気がする。

勿論、そんなチャンスを逃す俺様ではない。

チャンスは生かしてこそ、チャンス!

一気に突っ込んでいる手を引き抜きにかかった。

ズルズルと鈍い音と感触がするような錯覚を感じながら、俺の手が鳥居から出てくる。

 

『名を呪として、主たらん。』

 

 手首までが現れた時にそんな声が聞こえて、更に手が軽くなった。

もうこれは一気に決めるしかないと思った俺は、背負投げでもするような勢いで身体を捻って反転させ、前へと進む。

背中で何かが抜け出ている音が聞こえていたけれど、無視ししてそのまま歩を進めて引いた。

 

「こ、これは・・・。」

 

「狐、もういいか?まだ引っ張るのか?」

 

 それが解らない事には止まる事も出来ないし、後ろを振り向く事も出来ない。

 

「む?あぁ、構わない。」

 

「・・・・・・な、なんじゃこりゃぁっ?!」

 

 俺の手に握られ、そこにあったのは・・・一振りの刀。

それが俺とアイツ等との、そして永遠に続くともいえる戦いとの出会いだった。

 

 

 

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