こういう言い方は好きじゃない、はっきり言ってひっじょぉーに遺憾だが、結論を先に言おう。
結局、俺にはあの後から今に至るまで、全くの、一欠片の選択肢も存在していなかった。
あ?簡潔過ぎるって?
じゃあもう少し詳しく述べるとだ。
俺は何者かの手で既に幕が上がった舞台の上に、しかも1人の演者として放り込まれた。
何者かというと、"国家"とかいう規模だってんだから、逆に納得だ。
だって、こんなの拉致監禁と変わらないからな。
で、俺にはどうやら特殊な能力?
連中の呼び方だと審神者だったか、何だかのチカラがあって、今現在、国ではそういった能力を持った人間を発掘して戦いに投入しているらしい。
「選択肢がないまま国の為に、国によって戦場へって・・・一世紀前の第三次世界大戦とどう違うんだ?」
軍国主義も顔負けだ。
まぁ、それでも拒否は出来ないそうなので、せめてもの反抗にこうやって日記めいたモノを書いて・・・。
「って、重い!俺に寄りかかるな暑苦しい!」
「え~、だぁってぇ~何書いてるか興味あるじゃなぁ~い?」
「言いたい事は解る。人様の日記をこっそり見ようとかってのよりはマシだと思う。で・も・な・!コレは心の平常を保つ為の一種の自己整理なの!邪魔スンナ!」
悪気はないのは知っている。
"現代社会"への純粋な興味なんだろう。
でも、注意をしないというのは別問題だ。
「けど
「何を言う。戦国時代にだって各大名が記させた合戦日記があるだろう。」
そう、意外だったのは、俺にはそこそこの歴史的・社会的知識があるという事だった。
ちなみに、それ以外の過去の記憶は曖昧だ。
未だに余り思い出せていない。
これもある意味で、こういう事に巻き込まれた弊害なのかも知れない。
「ま、アタシも変わってる自信あるから。」
「そもそも"刀剣"が二足歩行で擬人化して喋るだけでもおかしいだろ。」
俺の目の前にいる存在は、俺の審神者の力によって人の形代を得た"刀剣"だ。
強制的に発生させられた付喪神だと考えればいいと言われた。
「まぁ、刀剣が"オネェ言葉"で話すんだからなぁ。」
こんな超常的な力を使ってまで、何と、何故、戦うのか。
「え?そこォ?そうじゃなくてさァ、こんな"馬鹿デカい大太刀"を一発で引く主の引き運の話。」
戦う兵士のような存在としてのイメージなら、刀剣というのはこの上なく最上だろう。
器物故に"損害"もない。
「普通の審神者では最初に出でるのは打刀、或いは脇差が大半だな。」
「うるさい"ゴン"。人を変人みたいに。」
器物であればいいのなら、銃やミサイル等の近代兵器を使えばいいはずで、何故それをしないのか?と思うだろう。
しないのではなくて、"出来ない"からだ。
「ゴ・・・自分にはれっきとした名が・・・。」
「黙れ、オマエなんかゴンぎつねのゴンで十分だ。」
「自分は"管狐"だ!」
ぴしゃりと言い分を却下した相手は、例の黒狐だ。
言葉が通じると解ると、あとは首を絞められながら引きづられた恨みしかない。
「狐には変わりないだろ。あぁ、"白い方"はこんのすけだったっけ?なら、オマエは"黒ゴン"だな。」
「何故ゴンの方が残る!」
その法則だったら、くろのすけじゃないのか!と抗議の声も却下、と。
「んでも、変わってると思うんだけどナァ、十分。」
「アダ名づけは、俺の趣味だよ、"ジロたん"。」
ジロたんと呼ばれたのは俺の刀剣。
俺が引き抜いた刀剣だ。
審神者になる最初の試練ってヤツがアレだったらしい。
ちなみに名前は次郎太刀。
2m以上はある。
斬馬刀を除けば、恐らく最大級の大きさを誇る刀剣だろう。
細かい事をいうと、刀と太刀ってのはそもそも定義からして違う全くの別物らしい。
「まっ、アタシはその呼び名、刀剣ぽくなくって好きだヨ。何か違うモノになれた気がするし。」
「大体、変人と言えば歴史改竄者と、それに対処する為にこんな手段を選んだお偉いさんの方だ。」
俺達の戦う相手は、歴史を変えようと過去に遡って悪さをする時間犯罪者だ。
その相手として、敵がタイムスリップした過去の時代から存在する刀剣達を使って戦わせている。
人じゃないし、過去にも存在していて、壊れたとしても器物なので、痛くも痒くもない・・・。
「大体よ、ジロたん?この時点であの変人達には落ち度があるワケよ。」
ジロたんは俺との会話が何時も面白くて仕方がないという風に、必ずふんふんと、時には苦笑しながら聞いてくれる。
花魁?歌舞伎役者?の出で立ちの大太刀。
黒ゴンはあんぐりと口を開けたまま固まっている。
ありゃ、思考停止してるな。
「軍人ならいざ知らず、戦いで心を捨てて駒になれなんて馬鹿なんじゃねぇの?ジロたんにだって、こうやって考えて話せて、想いがあってさ、それは俺達と同じじゃん?それを唐突に能力があるから、さぁ戦え!とか狂ってるね、変態、ド変態。」
「んまァ、アタシは物だから、心とか想いが宿る先って何処なんだろくらいは思うよ?」
その答えが返ってくる時点で、俺のお偉方への信頼度はゼロだ。
目の前のジロたんだけが120%信じられる。
「そう考えてる時点でジロたんに"心"はあるよ。」
俺は開いていた日記帳もどきをパタリと閉じる。
「アタシも十分変わってる。変わってると思うけど、主も大概だねェ。似た者同士?ま、話の続きはまたア・ト・で・♪」
ジロたんは自らの手で自分自身、本当の次郎太刀を鞘から引き抜く。
そろそろ予定の戦の時間だ。
あちらこちらで鬨の声が上がっているのが聞こえる。
「次郎太刀!いざ参る!」
ぶぅんっと太刀が風を起こし、俺の傍らでもその声が上がった。
どうも、おカマちゃんとオネェを書くのに定評のある私ですw