世界が君を砕いても・・・。   作:鵜飼 ひよこ。

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第4輪:刀剣と審神者。(刀剣視点)

 出逢いたくはなかった。

出逢わなければ、斯様にも狂おしいと思う事なく今生を終えられたのに・・・。

 

「何やってんだよ!むねちー!」

 

 あぁ、こんな事になっても、やはり君"も"、俺に優しい。

優し過ぎる。

 

「主!逃げて!」

 

 そうだ、逃げなさい・・・遙か、運命(さだめ)よりも遠く。

 

「フザけんな!何処の世界に"仲間"を見捨てて逃げる大将がいる!」

 

 "俺に組み敷かれている"次郎太刀を見下ろしながら・・・俺は一体何をしようとしているのだろうか・・・。

 

「馬鹿だネェ。"直"、大丈夫だよ。例え此処でアタシが折れたとしても、時の流れでまた逢えるじゃないのサ。」

 

 俺達刀剣は、過去の。改変が起こされる各時代に存在する、し続ける。

いつでもそこに、そして永遠に。

 

「馬鹿はそっちだ!それは"違う次郎太刀"だ!俺の知っている、今この瞬間の"ジロたん"はオマエしかいないだろ!」

 

 何時、何処の時代から取り出したとしても、それは今の時より過去に遡った存在でしかない。

今この時まで作り上げてきた喜びも、苦しみも、ましてや育んだ縁すらない。

 

「・・・そ、その通りだ。」

 

「むねちー!急にジロたんを攻撃なんかしてきてどうしたんだよ!」

 

「・・・思って・・・しまったのだ。」

 

「何をだよ!」

 

 そうなってしまえば、それは加速的に膨らむ一方で・・・。

 

「"彼女"に逢いたいと・・・。」

 

 その言葉で彼の表情が変わる。

やはり気づいていたか・・・気づいていて、そこまで優しく出来るのか・・・。

 

「やっぱり・・・むねちーの審神者は・・・。」

 

 悟い子だ。

 

「討ち死にしたな・・・。」

 

 俺を残して・・・。

 

「見かけた事も話題にも出なかったから、変だとは思っていたけど・・・。」

 

「気づけば、もう手遅れだった・・・俺は"堕ちて"いた。」

 

 次郎太刀に向けた刃に力がこもる。

それを力尽くで受けて止めているのは、流石は大太刀だ。

 

「改変を修正せし者が、修正され確定した過去を変えたいと願ったら・・・・どうなるか・・・。」

 

 刃の色が変わってゆく。

俺が刃で、刃が俺で。

擬人化した躰と、本当の躯の境界が塗り潰されてゆく・・・彼女の想いも・・・。

人の形代でもなく、刀剣でもなく、審神者の祈りも届かない・・・ただの"異形異種"に成り下がる。

すなわち、それは・・・。

 

「そうか・・・そういう事なのか、これが答えなのかよ!!」

 

 あぁ、俺は・・・君を・・・どうしたいのだろうか・・・。

 

「ダメだよ、むねちー・・・それじゃ、ダメなんだ。」

 

 はらはらと身につけていた衣が剥がれ落ち、その下から鋼色がのぞく。

 

「過去は変えてはいけない。」

 

 青年、直が近くに落ちていた長い金属棒を拾う。

 

「なにゆえ・・・過去の修正も改変も、変化であろう!」

 

 心が、刀剣の本能といえばいいのだろうか、何かを斬らねばいられない。

衝動が身体を支配して、眼前の大太刀を叩き斬ろうした瞬間、直が俺に向かって棒を振り下ろす。

だが、そんな力では俺に抗えず、身体ごと刀の鞘で引き飛ばされてゆく。

 

「主!」

 

「だ、誰だっ・・・てさ・・・やり直したいって・・・過去はあるよ・・・。」

 

 解っている。

それでも彼は立ち上がる。

彼の"左腕"に掴まれてから。

 

「でも、過去ばかり変えようと皆がそれをしたら・・・誰も"現在(いま)"を歩けなくなる。」

 

 彼はまだ戦うつもりだ。

その証拠に手からは、未だ金属棒が握られたまま。

 

「誰もが都合のいい未来を手に入れ続けようとして、一生未来に辿り着けない。」

 

 真理だ。

だからこそ揺るがない。

揺るがないからこそ真理なのだ。

 

「だから、さ、そんな事を言うなよ・・・俺はオマエを倒したくないよ・・・オマエを生かそうとした審神者を"裏切れない"。」

 

 だから出逢いたくなかった。

 

「戻って来い!むねちー!」

 

 だからこそ、出逢えて良かった。

完全に堕ちる前に。

振り上げた刃と、直の叫びと、その手に"宿った者"の声が同時だった。

 

「・・・情けない。我等の内輪事でこんなにも主の心を煩わせるとは。」

 

 圧倒的な力で、刃を押しとどめられる。

 

「オマエは・・・。」

 

「アニキ・・・。」

 

「目覚め・・・た、か。」

 

 直の持っていた棒は、戦で折れた刀に違いなかったのだろう。

それを媒介に想いで喚び寄せられた。

 

「我等は全てを断つ存在。なれど我等を振るわずとも良い日々を作る為に主と共にあるのです。三日月宗近、それで天下五剣とは笑止千万。」

 

 あぁ、その通りであるな・・・。

 

「の、望んで得たモノだとでも?」

 

「言い残す言葉はそれで構わぬのですか?我が名は太郎太刀・・・いや、主、我等に名を。」

 

「名・・・?ジロたんとオマエの?でも・・・。」

 

 ここまで来ても、君は躊躇うのか・・・こんな俺でも・・・"仲間としての価値"があると?

ならば・・・。

 

「ふふふ・・・ははっ、あはははーッ!全テヲ、叩キ斬ル!」

 

 さぁ、審神者よ!歪んだ存在を正せ!

 

「主!今までの全てを失うつもりか!」

 

 そうだ、その瞳に宿る決意こそ、高貴な光。

それでいい。

それでいいのだ、心優しき"もう一人の主"、直よ。

 

「千代鶴國安!末之青江!」

 

 白銀に輝く二つの刃。

あぁ・・・これでやっと・・・俺のままで・・・彼女の元へ・・・逝け・・・る。

 

 

 




諸説あれど、こういう名称として、真剣必殺を表現してみた。
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