「さぁて、これからどうしよっかァ?」
努めて能天気に、いや本当に能天気だというのも否定しきれんが、ジロたんがこうやって俺に話かけてくるのは、これで何度目だろう?
「どうもこうも、主に付き従うしかないでしょう?」
冷静にかつ淡々と突っ込むのは、アニキこと太郎太刀だ。
「というか、ジロたんも"タロたん"も馬鹿みたいにデカいから、両脇に立たれると暑苦しい。」
「た、たろ?!」
元から細い目を見開いて絶句する太郎太刀改め、タロたん。
「ぷっ、た、タロたん・・・あの兄貴がタロた、たろっ・・・うぷぷっ。」
あ、ジロたんの腹筋が崩壊してら。
二人共ゆうに2m越えだからなぁ。
見上げる俺の首がもたん時がいつか来るやもしれん、もう二人共履物脱げよ、コンチクショウ。
「にしても、古今東西、だ。」
「何?一席やるの?」
違ぇ。
「落語じゃねぇよ。俺達の戦いなんだが、こういう時間と空間を飛び越える現象に関してはさ、タイムパラドックスをどう解釈するかによって話が変わってくるわけだ。」
未だに俺の記憶は戻っていない。
この知識を何処で手に入れたのかも覚えていない。
とても、とても、大事な事をのような気がするのに。
「た、タイ?何だって?」
「過去の事象に介入した際に、現在の、過去から見た未来の事象とに発生する矛盾の事ですね。」
意外や意外で、きょとんとする自由人のジロたんよりも、タロたんがスラスラと説明した事に驚いた。
「あぁ、成程ねぇ・・・全くわっかんなぁーいっ。」
じゃあ、何が成程なんだよ!
本当にフリーダムだな、ヲイ!
「三日月宗近の・・・。」
再びタロたんが口を開く。
いいぞ、タロたんその調子で解説頼む。
期待してるぞ!
「彼の審神者を過去に戻って救ったとする。」
「ふんふん、んで?」
「仮に成功したとして、彼女が討ち死にせずに生き残ったとしましょう。すると三日月宗近との出逢いも当然変化します。或いは出会わないのかも知れません。」
「・・・だから?」
ダメだコリャ。
俺のリアクションと同様に、タロたんの眉間に皺が寄る。
「ではどうやって彼の審神者が死んだという情報を持ち得るのでしょう?結果、彼女を救うという行動を我々は起こせなくなる。」
「ん?でも、彼女は生きてるんでしょー?だったら、そんな事する必要ないでしょうよ、って、あらァ?」
ようやく矛盾の意味に気づいたか・・・ 長かったよ、ここまでの道のりが。
「で、そこでどう解釈すればいいのか、だ。一番楽なのは、未来がその時点で彼女が生きている未来と、死んでいる未来とに分岐してそれぞれ存在し続ける。しかし、もう片方の事象は俺等側からは観測出来ない。」
これはあくまで矛盾する点のみをどうするかっていう乱暴な考えだ。
「他には?」
「逆に確定された事象として、審神者の死はどうやっても回避出来ない、例え回避出来たとしても別の要因が作用し、結果として死に至る。」
因果律の修正、或いは強制力ってヤツだな。
て、タロたんは何でこんなにSFに造詣が深いの?
実はその大太刀はラ〇トセイバーかなんだったりする?フ〇ース持ってる?
な、ワケはないのは俺も解ってるよ、うん、大丈夫、思ってみただけ。
「え?でも、それだとアタシ等が過去に行って戦う必要って・・・正確に観る事が出来ないなら、何が正しくて、何が間違ってるか解らないじゃないのさ。」
俺はその言葉を告げずにジロたんの言葉を手で制する。
「・・・全てが茶番に見えて参りますね。」
ジロたんの言いたい事と俺の考えに気づいたタロたんが、うっすらと笑みを浮かべる。
「となると、だ。怪しいのは黒ゴンだな。」
「はいぃ?」
「?」
「戦いでは、俺と敵とジロたん。そして、黒ゴンがいつも付き添っていた。」
「監視、ですか?」
「アイツがぁ?」
あんな抜作に間者が務まるのかと、ジロたんは半信半疑だ。
「アイツ、自分の事を管狐って言ってたよな?管狐は座敷童子と同じで、富をもたらす存在だ。」
この俺の知識が"どの時代の俺"のものかも定かではない。
もしかしたら、案外俺も"既に改変された"俺なのかも。
「だが、それは仮初。管狐のもたらす全ては、他から掠め取ったものでしかない。そして富が転がり込めば込む程、管狐は増え続ける。」
「そして、どっかーん♪」
よくある妖怪モノの関わると人生転落するっていうパターンだ。
「結局、何がなんなのよ?」
「まとめるとだ、俺達が自身の記憶も含め、信用出来るのは一緒に過ごした時間だけって事だ。」
俺は笑う。
三日月宗近に言った通り、良き未来を手に入れるには、
たとえ、俺達の行動、勝利と敗北、生と死。
その結果すらも、最初から"歴史の一部として組み込まれている"としても。