鉢植えに転生した女   作:療養中

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なぜ書いたかって聞かれたら、昨日から自炊始めたからと答える。




買われた鉢植え

 

 

 

死んだと思った。

夏のコミケで男津波に轢かれたからだ。

 

そして私はどうやら、鉢植えになってしまったらしい。

 

 

植物、なんだろうか?

全裸である。

目は見えないが全身がすぅすぅして落ち着かない。

かろうじて足首から下は何かに埋まっている。

これはおそらく土である。

となれば足というのは適切ではなく、正確に言うなら根であるわけだ。

自分で言うのもなんだが、なんともまぁ変なものに転生したもんだ。

普通こういうのは剣と魔法の世界でチートしながら萌えを堪能するものである。

しかし植物。

賢者モードどころか生殖どうしたらいいのかすら不明とは、無常なり。

 

 

観葉少女(プラントガール)、とかなんとか言って、店主は毎朝飽きもせずに私たちを入荷する。

そして店主は店に来た客にこう語る。

この種族は種の状態では売らず、花が咲いた状態を長く愛でるために改良された、マンドラゴラとドライアドの配合種族で、基本的に美しい少女の姿で咲いた物だけが店頭に並ぶ、売り物、なのだと。

 

おぉい、人権よ。

馬鹿に安っぽく消えちまったじゃないか。なんてこったい。

 

ナンバーワンにならなくていいオンリーワンな花たちは生産ロットの時点で既に選別を済ませた後なんですよ。

本当に綺麗でない花は畑に打ち捨てられて肥やしになるのみなんです。

 

そんな世知辛い話を、意識が覚醒してすぐに聞かせられた私。

ちょっと知らない間にそんな焼却処分との境目を抜けていたなんて、これパラレルワールドで死んだ私量産されてますねと頭の中真っ白になりかけたが、とりあえず今日もまだ生きていたりする。

っていうか何気にモンスターだったんだね、ファンタジーだね、まだ何もそれっぽいことしてないけどね。

 

まさに起き抜けの絶望からまた少し時間は経過し、私はふと目を覚ました。

いや、正しく言うなら、初めて私は目を開いた。

この種族眼球あったんだな、そこにまず驚いたわ。

 

見れば、棚に飾られた私が見る視界の大半をしめる緑の壁。

その壁の向こうから声がする。

早口な男のかすれた声と低く重い相槌を打つ男の声。

会話である。

一人はよく知る店主であるから、もう一人が客であろう。

 

なんとなく私も察していたが、こういう店に来るのはだいたいが男の人である。

男やもめが、女に縁無く無機物的な愛に走る。その行為はすごくわかる。

私もまぁ二次元愛してた口だからな。どんまい。

しかし私を対象にしてシコったら殺すつもりだ慈悲は無い。きめえんだよ三次元消えろ。

 

さて、そんなことを考えていたら店主が客を連れてきた。

たまぁに売れてく奴らがいるのは知っているんだけども、何せ私は目が開かなかった身。

誰がどう選ばれるのかの基準がわからん。

個人的には廃棄される前に買われたいような、汚されるくらいなら店を墓にするつもりと言い切れるような、そんな感じだ。

 

…ぶっちゃけ三次元きもくてイケメンでも受け入れれない前世だったからなぁ。

なんかこう、体温があるって時点で萎えるし、向こうがはぁはぁ言って体弄ろうとすると吐き気するんで、嫌だ。

男は、嫌だ。

女の子とかなら良かったのかもしれないが、あいにく前世でそんな百合体験は出来なかった。

 

そんなことを考えながら足音のする方を見ると、ずいぶん大きな影が私に掛かる。

唇の下から上へと伸びた牙?のある赤い髪の大男が、オリーブ色の目でまっすぐこっちを見てきた。

 

私と大男の目が合ったのを見て、後ろにいた細身の男が口を開いた。店主である。

 

「あー、すいませんお客さん。先ほど言った言葉を訂正させて下さい。

鉢植えが起こせたら売るとは言いましたが、こいつは売れないんです。

なんせ見ての通りで、すっかり丈が伸びちまって、売り物としての品質じゃあないんですよ。

それでも一応見本で置いてたんですが、こんなにデカいと邪魔で邪魔で、そろそろ廃棄するとこなんです」

 

おいまて店主、まじで?

 

慌てて辺りを見渡せば、私以外の鉢植えはみんな小さいお人形さんサイズである。

こんなダッチワイフ並みにでかい鉢植え、私しか居ない。

焦る私を見もせずに、店主は客に続ける。

 

「本当に、ミルクと砂糖以外与えてないはずなのに育つわ育つわ、でくの坊ですよ。

しかもこいつ、可愛くないでしょう?

雰囲気はジャパニーズっぽくて初めは良かったんですが、どうも動きが可憐でない。がさつだ。と受けが悪い。

おまけに客が来ると眉を寄せて苦悶の表情をするせいか買い手がつかなくて」

 

そこで客が口を開いた。

 

「ふむ、しかし、折角目を開けてくれた観葉少女(プラントガール)を手放してしまっては、次にまた目を開けてくれるものに出会えるかはわからないだろうと聞いている。苦情をつけたりはしないと誓うから、どうかこの観葉少女(プラントガール)を売ってはもらえないだろうか?」

 

「へ、へえ。そこまで言うなら構いませんが…本当に苦情は受け付けませんよ?」

 

「ああ」

 

魔王のような形相ではあるが、目の前で客が言った言葉に私は涙した。

おお神よ、あなたが神か、こんながさつな女を廃棄ロットから救い出して下さるとは、あなたは素晴らしいお方である。

もし私に口がきけたなら、万感の響きで持って彼を称え、その慈悲に感謝の言葉を尽くしたであろう。

が、口の無い私は手を組んで彼に祈りを捧げて涙するのみである。

ぽろぽろと頬を伝う涙はコロコロと転がり、足元で銀色の石となっていびつに固まる。

人並みに大きい私からでも見上げるようになる大男の彼に瞳を合わせれば、彼は興味深そうに私を見てあれやこれや店主に質問しはじめた。

 

店主は商売上手なのか、彼の言葉を巧みに返して物を買わせようとする。

あのミルクで無いといけない、この砂糖でないといけない、香り玉はよい香りを放たせる、合成肥料なんかもおすすめ、このサイズだから特注になるが服は作っておいたほうがよい。

それを聞くたび彼は、なるほど、と相槌を打った後に私を見た。

そのたびに店主は眉をひくつかせて、観葉少女(プラントガール)にそういう複雑な知性は求められませんが、とか言っている。

私の答えは全部いいえであるから、そう言うのかもしれない。

そんなお嬢様育ちした覚えもないし、せっかくの救い主にそんな金を掛けさせるのは気がめいる。

そこらの安い牛乳と安い砂糖で結構というやつだ。

まぁ、服はあったほうが良いと思ったのか、彼が独断で了承したので、そこは甘えさせて頂くわけだが。

 

ともかく、その日のうちに彼は私の鉢をそっと担いで車の後ろに私を座らせ、彼の家へと持ち帰ったのだ。

 

 

うん。ところで店を出た辺りから気になってたんですけど、この町って人間以外が随分多いのですね。

私もまぁ人外なんだしある程度はファンタジー許容範囲なんですけど、なにこれ?インスマス?

ちょっと私のSAN値が削れてる気がする。

 

そしてSAN値を犠牲に、察した。

 

あ、これはHLですねわかります、と。…どうしよう。




主人公HL入り。
某少女コミック設定をやや入れてますが、こちらは鉢つきです。異界です。
あと、しゃべれないと主人公は言ってますが、気のせいです。そのうち出来ます。
主人公のイメージは、身長約170cm、黒髪黒目、胸無し、尻あり、肌は白樺のように白く、そして体重約80kgです。ええ、セルロースですが何か?
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