ISに乗れる男の発見の数ヶ月、アメリカにて2人の兄弟が発見される。
弟のローリー・ベケットと兄のヤンシー・ベケットの2人は微弱ながらIS適性を持っていた。
そこでアメリカ政府は開発したばかりの新OS、『ドリフト』による2人で一つのISを操作する方式を編み出し、それにより、2人はISを手に入れる事となった。

ISにパシフィックリムのドリフトを載せたらどうなるか、と思い書いた短編です。

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インフィニット・ストラトス E

「俺達がISパイロットに? 」

 

まさかこんな事になるとは思ってなかった。

 

ニホンで男のISパイロットが見つかった、と言うことで兄貴と試しに適性検査を受けたらこの有様だ。

 

「そうだ。君たち、ベケット兄弟にはIS適性が確認された。現在ランクは計測中だがね」

 

目の前のソファーに座るスタッカー・ペントコストと名乗った男は、コーヒーを飲みながらゆっくり口を開いた。

 

「じゃあ質問いいか? ISは女しか乗れないんじゃないのか? 」

 

兄貴のヤンシーが尤もな質問をぶつけるが

 

「さぁな、ISがそもそも発展途上の物だ。 何が起きてもおかしくない」

 

こんな素っ気ない返答が帰ってくるばかりだ。

 

兄貴が肩を竦める。 まぁ分かっていたことだ。

 

「司令……ちょっと」

 

応接室の扉が開き、技術者らしき男が顔を出す。

 

「ん……ちょっと失礼」

 

スタッカーが席を立ち、扉の向こうに消える

 

「まさか、俺たちがなるとはな」

 

コーヒーの入ったカップを口に運び、傷だらけの手を見る

 

昔から、売られた喧嘩は買い、どんな時でも2人で立ち向かってきた。 その傷がこれに集約されている。

 

「でも、これからどうなるんだろうな……」

 

不安そうな顔で兄貴が呟いた瞬間、扉が開きスタッカーが仏頂面で目頭を揉みつつ戻ってきた。

 

「はぁ……君たち、よく聞いてくれ。君たちの適性はかなり低い。端的に言うと独りで動かす事すら出来ないかもしれん」

 

「……そんなの、無いのとほぼ変わりないじゃないか」

 

「ここからが本題だ。だが、君たちにはもう一つ、違う適性が見つかった。 ドリフト適性だ」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

この日、アメリカ政府がかなり重要なIS絡みのデモンストレーションをすると発表があり、アメリカで最も大きいIS研究所に我々、少々立場が低くなったジャーナリストは集められた

 

「一体何なんだ? まさか、男のパイロットでも見つかったか? 」

 

「その線が一番高いな。 少し前から話題になっていたし、多分このデモンストレーションはパイロットとその機体のお披露目だろう」

 

周りが騒ぐ中、このデモンストレーションの主催のスタッカー司令が現れ、客席は水を打ったように静まり返る

 

『忙しい中、集まってくれて感謝する、諸君。 さて、本日、アメリカ政府が発表するのは、諸君がお察しの通り男性のISパイロットの発見についてだ。 そして彼等のISの、また革新的なISのOSについてのお披露目だ。 来てくれたまえ、ベケット兄弟』

 

機体格納庫の扉が静かに開き、中から青を主体としたヒーローのようなカラーリングで、従来のISより二周り以上大型の、全身装甲(フルスキン)の機体が白日のもとに晒され、客席はどよめいた。

 

なにせ、ISというものはシールドエネルギーという未知のエネルギーにて機体表面を覆っているために、装甲の必要性は必然的に低くなりがちなのだ。

 

「なんだありゃあ……」

 

『さて、この機体の性能について解説させてもらおう。 機体名、ジプシー・デンジャー。 この機体には革新的OS「ドリフト」が搭載されている。 それは彼等の最低値をマークしたIS適性を最低でもB、最高でA+まで引き上げるシステムだ』

 

とんでもない爆弾発言に更に客席はどよめき、そして周りの記者は手元のメモ帳へとペンを走らせる。

 

司令が今言ったのは要約してしまえば、今まで馬鹿にされてきた、ただの男ですらISを操れる、という事だ。

 

『ただし、このシステムは脳神経に関わる物だ。 それなりにリスクもあると思って頂いて結構。 』

 

それでも昨日までの世界を変えるには充分な物たり得るのだ。

 

『それでは機体の解説に移ろう。 動力源はシールドエネルギーと、胸の核融合リアクターのハイブリッド。 リアクターの制御にPICと拡張領域を割かれているので自由に飛ぶ、と言うことや、拡張領域に装備を追加するということは出来ないが機体各部のブースターが跳ぶ事を手伝ってくれるだろう。 また装備されている武器は外付けや内部に格納されている』

 

『さて、それで話を聞くよりはまず模擬戦をやってもらおう。 目標はイギリスの第三世代機を模したドローンだ──』

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

生まれて此の方、俺達は成績は高くなかったし、スポーツも上手くなかった。

 

「やれやれ、やっとか。 」

 

だけど、喧嘩だけは誰にも負けた事は無かった

 

「ま、気楽に行こうぜ、ご老体。 」

 

「ハッ、ほざいてろ若造。」

 

『ドリフトを開始します。 5…4…3…2…1…同調成功』

 

脳裏に、兄貴の記憶が雪崩込む。 兄貴でさえも覚えていないような塊がぶち込まれる。

 

それでも、軽口を叩きあいながらジプシーが動き出す。

 

まるで自分の、いや俺達の身体の様に

 

『ジプシーデンジャー起動します。 警告、敵ISからロックされています。 回避! 回避! 』

 

「さぁ、行こうぜ。 」

 

 

ジプシーの両目に、光が灯った。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

ジプシーがゆらり、と動き出す

 

身体を機械と鉄で包まれた巨人が土を踏み、ゆっくりと歩き、走り出す

 

「敵さんは空だ! まずは叩き落とすぞ! 」

 

走り、助走を付け最も近いビットに向けブースターを併用し跳躍する。

 

「もちろんだ!やっちまおう!(Let's go for it!)

 

ビットは勿論逃げようとするが、 ジプシーという鉄の塊に踏まれ、 爆発を起こし、 それを再びジャンプに利用される。

 

本体は接近を防ごうとし、持ったエネルギーライフルをゆらと動かし放つ、が発射した後にはもうそこには俺達はいない。

 

「やぁ、貴婦人。 お機嫌いかがか? 」

 

空をくるりと曲芸のように舞い、目標と同高度まで達し

 

空に悠々と翔んでいる貴婦人(ブルーティアーズ)へ指を組み、ダブルスレッジハンマーを叩き込む。

 

砕けたパーツが空中に散らばり、その中をPICの制御を失った貴婦人が地面に向け吹き飛んでいく

 

「プラズマキャニスター展開! 」

 

掌が展開し、青い光と稲妻が走りエネルギーが充填される。

 

「潰れろ!! 」

 

減速せず、地面にめり込んだ奴に向け鉄の塊といえるジプシーが墜ちていく。

 

『地上まで10m、ショックに備えて下さい』

 

「たっぷり味わえよ。 アフターヌーンティーだ。 」

 

猛烈な土埃が巻き上がり姿が消え、土煙の中から青の閃光が2、3回走り静かになる。

 

その土煙を纏いながら出てきたのは、ジプシーだった

 

その手には、ホログラムが消えたドローンのちぎれた頭部が掴まれていた

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

『アメリカ政府の虎の子発表! 』

 

『全ての男のスーパースター! ベケット兄弟! 』

 

「おい、見ろよ! 俺達がこんな有名な新聞の1面飾るなんてな! 」

 

例の模擬戦から二日経った。 反響は上々、新生スーパーマンとも言われているらしい。

 

なにより

 

『我らがアメリカの集大成! ジプシーデンジャー! 』

 

その見出しとともに、武骨な愛機が腕組みをしている写真がデカデカと載せられている。

 

「ま、それでも……なんだったか、女性の会とかなんとか言う所は、神聖なISを穢したと騒いでるらしいがな。 」

 

下らない事でギャーギャー騒げる奴らを思い、口角を上げてしまう。

 

「あー……とりあえず一時期凄かったもんなぁ、男狩り。 」

 

自分の通っていたハイスクールでも1週間に数回のペースで現場を目撃していた。 もちろん助けたが、最早女には嫌悪しか沸かない。 が、勿論俺はゲイじゃない。 女が好きだ。 性格がまともなら、な。

 

「そそ、とりあえずは司令に命令で言われたし、日本に行かないとな。 」

 

IS操縦者として、正式に認められた俺達はペントコスト率いる環太平洋方面軍に登録された。

 

そこでの初日に司令から受けた初の命令が、『IS学園に行き、そこで各国の新型ISや新兵器を調べ、それを報告せよ。 』との命令だった。

 

命令だとなればどうしようもないので、静かに引き下がるが実際自分達は大学生であり、ハイスクールで習う範囲は理解し終わっている。

 

司令曰く

 

『多少は異国の地に行くのも面白いぞ。 とりあえず頑張りたまえ。 』

 

髭面ではっはっはと笑う顔を思い出す、途端に怒りが湧いてくる。

 

「巫山戯てるな、やっぱ。 」

 

どっちにしろ仕方ないので、準備を早々に終え、家を出る。

 

「じゃあな。 3年後に。 」

 

キャリーケースを引き、先に行っている兄貴の元へと走った。

 

 

 

 

 



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