埋まらない帳簿を開く   作:ほりごたつ

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来報の出会いの形

 少し痛む頭を振ると後頭部に何かが刺さり、ズキンと余計に痛みが増した。

 それでも気にせず、振り返りもせずに歩む。

 足に纏わり張り付く葉を払い、少しだけ背中側を気にして歩むと、私を指す視線も同じく動いて、日中に降った霧を吸って僅かに湿る落ち葉が僅かに音を立てた。

 

 今晩のような月が綺麗な夜は嫌いだ。

 万事を凍らせるように澄む月明かりは私の事も冷やしてしまうようで、そんな日は酷く痛むから私は月が嫌いだ。

 こういう日には足元を見ながら歩いて、聞き慣れた葉音で気を紛らわせて過ごすんだけど、今日は生憎の天気だったからその足音も殆ど鳴らなくて、気晴らしも出来なくて。

 本当に今日は厄日だと思えた、よく晴れた日だったらもっとマシだったのに。

 

 カサついて積み重なった竹の葉を踏むと少し沈んで割れて、微塵となって消えていく。

 そんな儚い雰囲気が好きで、私はよく歩いている。でも、今日はそれらは聞けなくて、だからこそついてないなって感じたんだけれど、それは今の気分がそうなだけ。

 

 今のような濡れ模様も別に、嫌いじゃない。

 近くにある何かにしがみつきたいと。

 触れたモノに手を伸ばし、私も一緒にいきたいと。

 足に張り付き絡みついてくる落ち葉達が私にそう言ってくれているような気がして。

 湿る葉も嫌いじゃない。

 

 

 この竹林に居着いて何年経ったかはもう覚えてない。

 一人で出歩いて、気が済んだ頃に立ち止まり、眠くなったら寝る生活ばかりを繰り返していて時の流れなど気にかけなくなっているし、気にする必要も私にはないから。

 でも、そんな日々ばかりが永く続いてたけれど、最近はそうも出来なくて眠れぬ夜は歩みながら夜明けを待つようにもなった。これは永らく変わらなかった生活に出来た少しの変化。

 

 何百年か前は猛る焔のような盛り上がりも多少はあったけど今ではそれもなくなってしまって、平坦な暮らしの中今でもしている事といえば随分前に手に入れた本を読んだりするくらい。

 手に入れた頃はそれなりの装丁だったんだけど、今は端切れが擦れてボロボロになってしまって。それでも読むのに問題はないから今でも時間があれば読み開いている。

 唯一読書だけが実家にいた頃から続く趣味。

 書を開き読み耽っていると他を気にしなくていいから。

 

 張りもなにもない生活をしてると自分でも思う。本当に何もしない日もあるくらいで、目的もなく生き続けるのに飽いてそのまま‥‥なんて日も、たまにはある。

 それでも、私から何かをしようとは思えなくて、無駄に生きる事をやめる事も出来なくて。

 只々日が昇ったのを竹葉の合間から見つめたり、暮れていく夕日の中立ち上る妖怪の山の煙を眺めたり、鬱々とした気分で書に耽ったりする日々。

 

 見慣れた竹と違ってしなりそうもない、ハリのない生活。

 何時からか灯せるようになった焔のように揺蕩って、燻り消えていくだけの普段通りの一日。

 今日も変わらない、変われない毎日が来ると少し前までは考えていた。

 目覚め、徘徊し始めて、今後ろからついきているのを見つけてしまうまでは。

 

「ゆっくり歩こうか?」

 

 歩みを遅めて、振り向きもせず話す。

 背中で聞いていた濡れ葉の音が少しだけ近づいた気がする。

 ちょっとだけ気になって、歩幅を狭め更に速度を落とす。

 すると、数歩後ろに聞こえていた小さな足音が話しかける前よりも近く、手を伸ばせば届いてしまいそうな位置に移動したのがわかった。小走りで追いかけてくるくらいなら『待って』とか『ゆっくりがいい』とか、そんな事を言ってくればそれに合わせて歩いてやるのに、話しかけても返事は返ってこない。

 

 横目に映る足元を見る。

 よくある着回しの着物、大人の着物を仕立て直した子供服が視界の端で裾を揺らしていた。仕立てや生地の様子からこの子は人間の里で暮らしているはずの子供だと思った。この地で人間の子供が生きられる場所なんてそこぐらいで、里に近寄らない私にもそれくらいはわかるけど、わかったところで特にどうしようとは思えずにいた、口では多少言ったけれどね。

 

 

 この子供を最初に見つけたのは昼餉を過ぎた頃。

 太陽が真上に登って真っ直ぐに伸びる竹の影が短くなる時間だったから、きっとお昼くらいだったはず。ぼんやり竹林を歩いていると太めの竹に背を預け(くわ)と掘り起こしたんだろう小さな筍を抱えて蹲っているのを見つけた、見つけてしまったんだ。

 

 放っておいても良かった、実際昼間は放っておいた。

 太い竹を背もたれにして座り込み、遠くを見つめて柔らかく笑っているだけの子供なんて少し不気味に思えてしまって、なんとなく関わるのはやめておこうと思えたからだ。

 それでも後々で気にしてしまった。

 こんな場所で、たった一人でいるのに笑っていたのは何故か、なんて気にしてしまった。だから日が落ちてからもう一度近くを通ってしまったんだ。

 

 近よらなければ良かったと、見なかった事にすれば良かったとも、今更だけど少し思う。

 世捨て人に近い私から見てもどこかおかしな子供。ソレくらいに反応がない子供。

 全くないってわけじゃないか、何か言えば私を見上げ顔を覗き込んでくるし、座っていた時と同じように笑いかけてくるのだから。それでも僅かな後悔が私の中で私を笑っている気がする、誰かと関わってもいい事なんてないと理解しているから、余計に嗤われていると感じてしまう。

 

 見なかった事にすれば、出来ていれば。

 今頃はあの兎詐欺にでも見つかって竹林から追い出されるか、もしくは他の妖怪、狼女か妖精にでも食われるか殺されるかして終わりだったはず。いくら子供だとしてもこの場所について知らないわけはないだろうし、こんな所に一人で踏み入ればそうなるとわかるはず、だからこそ放っておこうと……そう思ったんだけど。

 目が合って、微笑まれてしまって。

 そうなってしまったら何故か放りっぱなしではいられなかった。

 それから声を掛けて、無言のままで後をついてこられて。

 今では竹林の端に向かって先導して歩いている。

 

 人助けだとか、そんなつもりはない。

 助けてやってもそれは今日の今だけの事になってしまい、いつかは忘れさられたり、場合によっては裏切られる事になると私は知っていたから、経験しているから。

 誰かを助けてやろうなんて今の私は考えない、はず。

 今のコレは、そう、いつまでも近くにいられても困るから。

 目障りだから一人でも帰れるような場所までは連れて行ってやるかと思っただけ。

 そう、魔が差しただけ、それだけのはずだ。

 

 目に付く場所にいないでくれ。

 近くで楽しそうに、覚えのある顔で笑わないでくれ。

 そんな風に考えてはいないはず、きっと。

 

「少し休む?」 

 

 考えながら歩いていたら少し離れてしまったみたい。

 無言でついてくるだけの子供を待つついで、何か場を濁すつもりで言ったけどなんでだろう、気にかけるような言い草がもどかしい。気にしていないはずなのに、なんだろうな。

 よくわからない気持ちが我ながら阿呆らしくて耐えられず、軽く頭を掻いた。そんな姿を見てくる相手、私を見上げてついてくる子供の方は聞いているのかいないのか、わからないような笑顔で私と目を合わせるだけ。

 どうでもいいけどさすがに、やりづらいというかバツが悪い。

 

「ほら、鍬、よこして」

 

 空気に負けてついつい手を伸ばしてしまった。

 重さにふらつく子供から奪うように鍬を掴み、軽々肩に乗せて、また先を急ぐ。

 私は何をやっているんだろう、他者と関わりを持てない、持ちたくなくなったのに自分から手助けするなど。追加された後悔がまた私を笑っているような気がしたが、今回はどうにか自分を誤魔化した。

 

 相手が子供だから、大人とは違ってまだ素直なのが相手だから、話しかけて、要らぬおせっかいをしてるんだろう、出来るんだろう。そうやって己を納得させた。

 そうして手にした鍬を握り直し、担いでまた歩む。

 本当に、こうして誰かと歩くなんていつ以来なのか。

 そうだ、この竹林に居着く前、都で暮らしていた頃はこうしていたな。

 

 古い記憶、それは生まれた家での景色。

 宛がわれ着せられただけの、ミエの重たい着物を引きずって、私以外に誰もいない屋敷の中を歩いていた頃。極稀に様子を見に来て下さる父上の後を追いかけて、屋敷の廊下を走っていた頃はこうして後に着いていた気がする。

 思えばあの頃は何も考えてなかったな。

 父上がいらしてくれる事だけを考えて、会えたら笑って、話して、お帰りには縋り付いて。困る事だけをする、我ながら我が儘な娘だったように思える。

 そういえばあの時の父上はどんな顔で私を見ていたんだろう。

 今はもう思い出せない。

 

「ん、何? あぁ、大丈夫。ちょっと前から頭痛が酷くってさ、気になっただけだよ」

 

 考えながら歩く最中、軽く袖を引かれた。

 私の袖を摘む子供の顔は変わらぬ笑顔。けれど、どことなく陰りの伺える笑顔。こんな顔で見られるのは何故か、考える事もなく答えは出た。子供の視線が私の眉間にある、ズキンと痛む中身のせいで表面にまで皺が寄っていたようだ。

 取り敢えず大丈夫と濁して言い返す‥‥が、再度引かれる肘の辺り。

 

「私の事はいいから。慣れてるからさ」

 

 子供が持つには大振りな鍬をトントン、軽く上下。

 誤魔化すように肩を叩く、けれど顔はしかめっ面。そんな表情を取り払いたくて、首も小さく回してみたりしたけど子の顔は晴れない。それもそうか、さながら不調ですって顔にかいてあるんだ、子供だってそれくらい気がつくがはずだ。

 

 鍬を担ぐ右肘に小さな手を添えてまた見上げてくる。

 上目遣いで、私の右手に僅かな重さを増やして、笑い顔で。

 その笑みが何故か見覚えのある顔で、角度で。

 真っ直ぐに見られず、思わず目を逸らす。

 

「……もうすぐ出るよ、ここを出たら一人で帰るんだからね」

 

 袖にかかる重みを感じながら、再度鍬を担ぎ直して、それから鍬の柄を出口に向けた。

 でも、雑に示した出口は見ずに私の顔を伺ってくる。

 きっと心配してくれての様子見なんだろう、見上げてくる目にも優しさというか、よくわからないけど気を使ってくれている雰囲気は宿って見える。けれど、そんな気遣いを受け止めきれなくて、何故か居た堪れない自分がいて、突き放す様な事を言ってしまう。

 子供相手に手も引かず道案内だけをする私、偶々見つけて早くいなくなってくれとしか考えていないはずの私を気にしてくれるんだ、きっといい子だと思う、思える‥‥なのに歩み寄れない、歩み寄りたくない。

 

 この優しさがちょっとだけ怖いとすら思う。

 近寄って、優しさに触れられれば温かいと知っている。

 けれど、今の私にはこの子の手は温かすぎた。

 ここで馴れ合ってもまた置いて逝かれるんだ、一人残されるんだなと。

 そんな風に、火傷する自分の事しか考えられなくて‥‥小さく軽い手に触れられなかった。

 

 強かに腕を引く。

 右袖がやたら重い。

 やたら熱い気もする。

 だというのに暗く冷えていく気持ち。

 まるでこの竹林のように冥々とした気分。

 

 それを晴らすように顔を上げると、いいタイミングで出口の方に揺れる灯りを見つけられた。

 流れ方からこっちに向かって急いでいるような、そんな動きの橙色が少し先で揺れている。

 

「灯り‥‥? あ、誰かが探しに来たのか」

  

 これで楽になるはず。

 見えた灯りの誰かにこの子を預けて、今日のことなんて忘れてしまえばきっと楽になれるはず。

 そう願って、灯りに誘われるようにそちらへ向かうと、無事に誰かと出会う事が出来た。

 

「やっと見つけた!一人で出歩くなとあれほど言っただろう! 無事だったからいいようなものを!」

 

 いたのは一人。

 腰を曲げ肩を上下に揺らす、息遣いの荒い女。

 灯りに照らし出される顔つきには堅苦しそうな雰囲気が見え隠れするけど、それよりも気になるのは頭の上で傾く帽子と長くて綺麗な銀髪の乱れ具合かな。火に透かされる乱れ髪や輝く額からは必死な様子が強く出ていた。

 

 叱る女と目が合ったが私からは何も言わず。

 行灯の方へ子の背を押してやるだけ。

 ついでに荷物も返して、更に背を押してぶっきらぼうに追い立てる。

 すると、数回振り向きながら彼女の元へと駈け出していった。

 幼い背中が落とされた拳骨に少し縮むと、すぐに抱き抱えられ、大きく伸びた。

 

「こんな時間まで戻らないなんて! 本当に心配したんだからな!」

 

 息遣いに同じく語気まで荒い彼女だけれど、表情は柔らかな顔つきで心から安堵しているみたい、きっちり叱ったその後に子供が見せるような笑顔を浮かべた。

 心配する相手も心配される相手も似たような表情で思わず笑ってしまいそうだったけど、痛む頭が邪魔をして声は出なかった。

 そのお陰で私に気が付かれる事もないようで、それが今は都合良いように思えて。

 そのまま消え去るように静かに振り向いた‥‥つもりが呼び止められた。

 

「あの! ありがとうございました、貴女が保護してくれたんですね」

「礼はいいよ、別に。それより一人でこんなところに来させないで」

 

 近寄ると感じる何か。

 背に感じられるものから多分真っ当な人間じゃないってわかる。

 けれどそれでも人間を探しに来たやつだ、ただの子供が飛びついく相手。

 そしてその子を優しく抱きかかえる事が出来る女。

 人間と共にいられる女。

 私とは違う、人と共にいられる誰か。 

 

「本当に助かりました。少し目を離した隙に一人でいなくなってしまって。こんな時間まで戻らない事なんて普段はない子なんですが、今日は気が逸っていたようで」

 

 返事をしたら逃げるタイミングを失って、流れで聞いてもいない身の上話が始まってしまった。

 否応無しに黙って聞けば、近々この子に弟分か妹分が生まれるのだと。住まわせてくれている親族の中に身重がいるらしくて、元気な子を産んでもらいたいからってそいつの旦那と一緒に何か精の付く物を探しに出たのだと。その途中、男は射った朱鷺を追いかけて藪に入り、この子はそれを追いかけて別れ、迷子になっていたのだと。彼女が言うにはそういう流れがあってあそこに座り込む事になったんだそうな。

 お手間を取らせて申し訳ないと子供に代わり謝罪してくれる、のはいいんだけど‥‥

 

「あのさ、拘る事でもないんだけど、こういう時って本人から言わせるのが筋じゃないの? 今迄ずっと笑ってるだけだったんだけど」

「それが、この子は以前、妖怪に襲われて‥‥」

「……あぁ‥‥そういう」

「ちょっと、ショックが大きかったみたいで。それからは笑ったまま話す事もなくなってしまい‥‥」

 

 それきりで口を噤む女の顔は苦々しい。

 少し待ってもその先は話されなかったけど、読み切れたからそれ以上は聞かなかった。今もよくありそうな事で過去にもよくあった事。昔、妖怪退治にハマっていた頃はソレが常でこの子の様に残されてしまった者は程度の違いはあるけど皆こうなった、だからそれほど驚くような事でもなかった。

 納得顔で軽く頷く、すると続く女の語り。

 

「筆談は少し教えてあるのですが、どうにも会話は」

「その、なんとなくわかるから、もういいよ。すまない、悪い事言ったわ」

 

「いえ‥‥ともかく助かりました。そうだ、よかったらこのまま一緒に戻りませんか? 家族にも話さなければなりませんし」

「いや、そういうのは、遠慮しとくよ。偶々見かけただけだし、これといって何もしてないからさ」

 

 でも、と続く女の口調に被せてそれじゃあと言い切り、そのまま振り返りもせず歩き始める。

 

 これで漸く静かになった。

 いつもの私の暮らしが帰ってきた。

 そのはずなのになんでだろう、足取りが重い、というか頭が重い。後ろ髪が引かれる事なんてないはずなのに‥‥思わず立ち止まる。トン、と腰に何かが当たった。

 顔だけ返して見てみると私の髪を掴む小さな手。

 

「ちょっと‥‥」

 

 やめてと言い掛けて、言えなくなった。

 私を捕まえる子の顔が今までと違う顔に見えたから。

 何故帰るの?

 一緒に行かないの?

 明るさが灯る笑みにそう言われている気がしてしまって。

 その顔が父上を見ていた私に見えてしまって。

 振り払う事が出来なかった。

 

 目と目が合うと硬くなる握りこぶし。

 髪を引かれ少し痛くて顔を歪めると、髪から袖、袖から腕へ、そうして段々引かれていって。

 手を取られ、私の掌の中で子の指が踊る。

 

「うん、わかったから。いや、ちょっと待ってよ。私は帰るんだって」

 

『ありがとう』そう書かれた手の平に『一緒に帰ろ』も追加される。

 だけどその気はなくて、断ってもなんでとばかり返されて。

 困っていると子を抱く女がまた笑って、こっちも私の手を取ってきた。

 

「え、何?」

「この子もそう言ってますし、行きましょう」

「でも……」

「いいから、行きますよ」

 

 自然に、それでも強引に繋がれた手が引かれ、そのまま歩き出してしまって。

 それからは矢継ぎ早に話されながら、足早に里へと向かって進んでしまって。

 もてなされ感謝され、久し振りに暖かな団欒を感じてしまった。

 囲炉裏を囲んで食事や酒も振る舞われたその時に、いくらなんでも強引過ぎると文句を言ってみたら笑顔でこう返された。

 

『道案内してくれたはずなのに迷っているような顔をしていたから放っておけなかった』

 

 その日会っただけの他人に対してそれは失礼だ。

 更に文句を言ってもみたけど、職業柄仕方ないんだ申し訳ないと苦笑うだけの彼女。

 聞けば里で教鞭を執っているらしく、この子も親代わりの大人も皆教え子なのだと。

 昔から世話焼きで偶に度を越す事もあるなんて家主に言われ、それを聞いた私が久々に頬を緩めると彼女もまた笑った。

 

 穏やかな笑みを浮かべたまま、私のぎこちない笑顔が可笑しいと話し、それを聞いた皆も笑う。これも失礼だと思ったけれど彼女のその笑みがどこか幼くて朗らかで。教師が見せるような顔には見えなくて‥‥今日はもういいやと、私も笑い返した。

 

 にこやかな空気満ちる中、慣れなくなって久しい雰囲気に触れる中。

 頭痛が少しだけマシになったような、気にならなくなったような。

 そんな気がした。

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