短編とかチラシの裏   作:ハーミット紫

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川なんとかさんルートの続きに行き詰まったので書いた短編です。


眼鏡を掛けたらイケメンになるあれ

雪ノ下雪乃は激怒した。

とはいっても誰かに不満を告げに行くわけでも、当然友人を人質に身内の結婚式に駆けつける予定もない。

ただ、自分が知る1人の男子生徒の評価が好転したことに行き先のない怒りを覚えていた。

それでも発散させる先を見つけるとするのならば評価が好転した本人こと、比企谷八幡しかいないだろう。

事は一週間程前に遡る。

 

「すまんが、今日は早く帰っていいか」

 

「別に構わないわ。もう下校時刻も近いし、依頼も来ないでしょう」

 

いつも通りの放課後。不意に比企谷くんが口を開いた。

 

「珍しいねヒッキーに用事なんて」

 

「…目が悪くなってきてな。この間の休みに仕立ててもらったのが今日は受取日なんだ。

金は払って貰ってるし、取りに行くなら1人で十分だしな」

 

「へぇー、ヒッキー眼鏡するんだー。そうだ!受け取ったら眼鏡掛けた写メ送ってよ!」

 

「やだよ。だいたい俺のキャラじゃないだろう」

 

確かに彼の言うとおりだ。

そんなのは彼のイメージとはかけ離れた行動だ。

 

「そうね。自撮りする比企谷くんなんて想像しただけで気持ち悪いわ」

 

「はいはい、その通りですよ。まぁ、そんな訳で帰るぞ今日は」

 

「えー、ヒッキーの眼鏡掛けた姿見たかったのにな」

 

「由比ヶ浜さん、貴女は同じクラスなのだから嫌でも見れるでしょう?

部活が一緒な私も否が応でも見ることになるのだし…」

 

「俺は視力低下を補うことすら許されないのか…」

 

「あら、そんなことは言っていないわ。

その腐った目が眼鏡を掛けることで見た目が改善するかもしれないのだし、むしろ期待しているくらいよ」

 

「そんな漫画じゃあるまいし…眼鏡くらいでそこまで変わらんだろう」

 

「そうかなー?結構イメージ変わると思うけど」

 

そう言って由比ヶ浜さんは片目を閉じて比企谷くんに両手を伸ばし、指で四角を作ってそこを覗きこんでいる。

どうでもいいのだけれども由比ヶ浜さん。それは写生をする時なんかにするものよ。そこの男に向けても意味は無いと思うのだけれども…

 

「どうでもいいが…由比ヶ浜、それは絵を書く時にするやつだぞ」

 

「なっ!そ、そんなの知ってるし!単にイメージ膨らまそうとしただけだから!」

 

知らなかったのね由比ヶ浜さん…

 

「…そろそろ行くわ。閉店までには時間があるが家とは逆方向だ。なるべく早く済ませたい」

 

「そう、ではまた明日」

 

「バイバイー、また明日ね!」

 

このやり取りが一週間前の事になる。

それから比企谷くんは授業中や部活での読書中に眼鏡を掛けている。

正直に言うととても似合っている。彼の腐った目は眼鏡のおかげかなりを潜め、大変不本意ながら以前彼が自称したように整った顔を覗かせている。

比企谷くんが眼鏡を掛けて一週間。由比ヶ浜さんが言うにはクラス内でも一部の女子が格好いいと手放しに褒めているそうだ。

気に入らない。とても気に入らない。

たかだか外見が少し変わった程度で浮き足立つ周りに酷く腹が立つ。

そもそも私のほうが目をつけたのが早いのだ。今更、外野に彼が奪われるなんてあってはならない話だ。

そこまで考えて私、雪ノ下雪乃は比企谷八幡に対してらしくない独占欲を拗らせていることに気付いた。

そうか、私は彼の事が好きだったのだ。

少し思案してみる。どうすれば彼は私を愛してくれるだろうか?

それなり整った容姿をしている自身はあるけれども、如何せん好みが違うなんてこともありえる。

けれど嫌われていないとも思う。きっと嫌われていたのならば、こうして部活を長く共には出来ていないと思う。

これからも私が彼の傍に居られるのにはどうすればいいのか?

答えは既に出ていた。彼が言っていたのだから間違いない。

彼が成りたいものにならせて上げればいい。なんてことはない本当に簡単な話だ。

 

「比企谷くん、あなた専業主夫になりたいと言っていたけれども当てはあるのかしら?」

 

放課後。奉仕部の部室にて私は比企谷くんと2人きりになっていた。

好都合にも由比ヶ浜さんは用事のため部活を休んだ。

 

「…あ?いや、当てなんかあるわけないだろう。

大学で可愛いくて甲斐性のある人を探すに決まってるだろう」

 

「決まってはいないと思うのだけれども…

けど比企谷くん。可愛い子はいると思うわ。将来1人の男を食べさせるくらいの社会的地位と稼ぎを得る子もいるとは思うわ。

けど両方を満たす存在はなかなか見つからないんじゃないかしら?」

 

「それはそうかもしれんが…」

 

「…姉さんなら条件に当てはまるわね。あなたひょっとして姉さんが好きなの?」

 

誠に遺憾ながら事実だ。口惜しいがあの姉は彼の妻になる資格を将来的に確実に有するだろう。

 

「そんなわけないだろう。勘弁してくれ。

あの人と生活するなんて考えただけで疲れるぞ」

 

「そう…なら良かったわ」

 

万が一の可能性ではあったが懸念は払われた。

 

「なら比企谷くん。私はどうかしら?

あなたのこと貰ってもいいかしら?」

 

「は?」

 

「好きよ。愛しているわ。お願い私のものになってちょうだい?」

 

「…からかっているのか?冗談にしてもたちが悪いぞ雪ノ下」

 

比企谷くんの反応は想像していた通りのものだった。

そんな彼が堪らなく愛おしい。

 

「からかっていないわ。本気よ私。

けれどもあなたが言葉で幾ら言っても信じてくれないのは、なんとなく想像ができていたわ」

 

先程まで読書をしていた彼は眼鏡を掛けている。

これが無ければこの心を自覚出来ていなかったのだから感謝すべきなのかもしれない。

私はこちらを疑い深く見る比企谷くんの正面に周り、その頬に手を触れた。

彼は目を見開いて固まっている。なにをそんなに驚いているのだろう。

私はただ自分の気持ちに気付けて、それを告白しているだけだというのに。

 

「私じゃ不満かしら?

言ってはなんだけれども将来それなりに稼ぎをする自信があるわ。

あなたのためなら親にも姉にも頭を下げてでも必ずその立場になると約束するわ。

それなりに整った容姿をしている自覚はあるのだけれども好みではないかしら?由比ヶ浜さんくらい胸があったほうが好み?

今はそんなにないのだけれども姉さんがああなのだし期待出来ると思うわ。

このままでいいといってくれるのなら維持するように努力するし、なんでも言ってくれればいいわ。

発育不良は栄養不足、寝不足、発育するのは人によっては難しいけれども、成長を阻害するのなら万人に可能な簡単なことよ。

先だっては大学への進学について話し合う必要があるかしら?

私は貴方の希望の妻になれるように進路はこのまま変えないわ。

大学は別になってしまうわね。貴方は私立文系志望だもの。

貴方を思えば一時離れることも苦ではないわ。

ただ問題があるわね。4年も貴方を他の女の目に晒さなくてはいけないだなんて…

きっと誰かが目を付けてくるわ。人間20歳近くもなれば大なり小なり人を見る目が養われるものだし、そうなると貴方の魅力気付かない人間がいない筈がないもの。

そうだ。高校を卒業したら同棲しましょう。いずれ結婚するのだもの一緒に住むのが遅いか早いかの違いし、早いほうが良いに決まっているわ。

私も言い寄られたらそれを出しにして断れるし、貴方も煩わしい付き合いを避けれるわ。

もちろん男女が一緒に暮らすことがどういう事かはわかっているわ。もちろん望むがままにしてくれて構わないわ。

私も其れを望んでいるのだし遠慮することはないわ。ただし避妊はしなくて駄目ね…

最悪出来てしまった場合、…ごめんなさい貴方との子供が嫌という訳ではないの。本当よ嘘じゃないわ。

2人の人生設計に修正が必要になった場合という意味よ。私として早い時期の子供は望むべきものだもの。

ただ、貴方との夫婦生活にを第一に考えた場合はどうしても妥協しなくてはならないわ。ごめんなさい。

けれどどうしても貴方が子供が早くに欲しい場合は姉を頼りましょう。

あの人どうせいつまでも結婚しないもの。跡取りとして私達の子供を仕立てあげるチャンスを上げれば乗ってくるに違いないわ。

ところで貴方は子供は何人欲しいかしら?

私は一人でも構わないのだけれども、貴方は小町さんのことをあれだけ可愛がっているのだし、兄妹姉妹は必要って考えかしら?

それも素敵ね。きっと良い家庭環境が築けるわ」

 

「お、おう」

 

この時、理解が追いついていないのか呆けた顔で声を発した彼を私は生涯忘れない。

 

 

 

 

 




ヤンデレは大好きですが、いざ書くのに挑戦してみると難しさを痛感します。
読み返してみるとヤンデレになっているかどうかすらわからない。

以前から思い付いたのを書いては消し、書いては消しとしていたのですが将来もしかしたら何かの役に立つ可能性が微粒子レベルで存在するかもしれないのであまりに酷い出来上がり以外は残していこうと思い直しました。
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