オーバーロード二次創作 久々ログインで異世界転移 作:結城マサヒト
ストック作ろうと思っていましたが、書き終わると投稿したくなる病に罹りました。
「……ッ……ヤスヒロ様!」
玉座の間を目指して走っていたが、どこからか声をかけられて慌てて止まる。
振り返って声の主を探してみるが、声のかかった方向には豊かな金髪が肩から流れ落ちている、顔立ちのはっきりとした美女。着ている服はメイド服で、豊かな双丘がメイド服の胸の部分を押し上げている。--レベル1で構成される41人のメイドNPCの一体、---少し考えて思い出した名前は、確かシクスス……いや、この少し大人びている感じはソレイユだったはず。
お淑やかそうな印象だが、現在の表情は驚愕で彩られている。
「えっと……もしかして誰か擬態か変身で真似ています?メイドNPCの格好のようですけど…もしかして、モモンガさん?」
「いえ!私がモモンガ様などと、そのような畏れ多い事はございません!」
「……?では、どなたですか?」
「……いきなり大声でお声をかけるという不作法、申し訳ありませんでした!私はメイドのソレイユと申します!」
見た目は完全にメイドNPCの内の一体だが、ヤスヒロのプレイヤーネームを含めて声をかけてきた事で、プレイヤーだと判断して声をかける。しかし、返ってきた言葉は否定。ならば誰かログイン情報を見逃していたか……?そう判断して再び問いかけるも、返って来た言葉はNPCであるメイドだという。
「……ソレイユ?確かにその姿はメイドNPCのようですが……ッ……!?」
ソレイユという名前と姿には覚えがある。ヤスヒロは3年前の時点で存在したナザリック地下大墳墓に作成された固有NPCのほぼ全ての名前を覚えていたからだ。
元々記憶力は良い方で、新卒入社の際に営業に回された経験から、一度会っただけの人物の名前を覚え、再び会った際にスラスラと名前を呼ぶと受けが良い事を学んでいた。
その時の経験から固有名は覚える癖がついている。
もちろん癖というだけではなく作り込みが好きで、ナザリックに所属するNPC達が大好きだった。---海外に居る時に何度も夢に出たり、思い返したりするほど。
皆で議論し、莫大なアイテムと資金を投入して作り上げたナザリックを幾度も歩いて周り、NPCの設定を幾度も読み、そして恥ずかしながら、返事は無いとわかりつつNPC達に話しかけるという事もしていた。
だからこそ訝しげに思う。最後に見た際はこんな会話マクロが無かったはずだし、なにより会話が成立しているという事はNPCではあり得ない。……誰かの悪ふざけかな?そう思って看破の魔法を使用する為にコンソールを開こうとして、慌てる。
……コンソールが浮かび上がらないのだ。
「……どうなってる!?」
「---申し訳ありません!私が偽者であるという思いを抱かせてしまうような行動を取ったのでしょうか?でしたら、ご命令とあれば死して忠誠を証明いたしてみせます!どうかご下命を!」
「……!?いやいやいや、どういう事ですか。どうもステータス表示もコンソールも不具合が起きて表示されないみたいなんですよ!」
「……申し訳ございません。無知な私ではこんそーるなるものが何なのか存じ上げず、お答えする事が出来ません。どうぞ、如何様にも処罰してくださいませ。」
更に二度ほどコンソールを起動させようとするが、反応はない。
視界に視線を走らせると、普段は表示されているHPとMPの表示も消えている。
慌てていると、メイドNPC---ソレイユの姿をした人物が、まるで本当に命令したら自害してしまうのではないかという気迫で跪いてくる。
非常事態であり、不具合が発生している事を伝えるも、
跪きながらあげられた顔には、悔しさと申し訳なさが伺えており---
違和感に気付く。
……どういう事なんだ?
まず出会った時の状況からしておかしい。
そもそも何故、
ユグドラシルには、外装の表情は固定されて動かないことが基本。
なのに複雑に表情を変え、尚且つ会話の際に口が動いて言葉を発していた。
これはNPCでもあり得ないが、プレイヤーでもあり得ない事だ。
その事に気付いて驚愕するものの、意外とすぐに冷静になる。
まさか---夢を見ているのか?そう考えるもあまりに現実感がありすぎる。
もしくは、自分は正気で無くなったのだろうか?
思考を巡らす沈黙の間にもソレイユだという人物が不安を深めているような空気を察し、意を決して再び声をかける。
「……すみません、色々と混乱していました。どうぞ立って下さい。」
「そのような!メイドである私如きが至高の方々であるヤスヒロ様のお手をお借りするなど!」
「---気にする事はありません。それとも、私の手では不足ですか?」
「……そのような!過分すぎる程です…。……ありがとうございます!」
一先ず余り不安にさせても悪いなと考えて、手を差し出す。遠慮しているようだが、半ば強引に言い募るとおずおずと手を取って立ち上がる。
特に他意は無かったのだが、手に触れた際に感じた手の感触も、本当に現実のように感じる。
そしてその感触を得た際にふと、ある考えが思い浮かぶ。
---仮想現実が現実になったという可能性。
あり得ないと思いつつも、自分が正気だと仮定すると、他に思い浮かばない。
本来、電脳法によって味覚・嗅覚は完全に、触覚もある程度制限されているはずだが、触覚においてはそれが無い。だとしたらこれは仮想現実ではなく、現実ではないのか?
そもそも自分が正気かどうかなど自ら証明出来るはずもない。
ならば今が現実。この世界を生きる事に何の問題があるのだろう---?
なにより、そうなればいいのにな。という想いを抱いた事が幾度もあったではないか。
冷静を保っている自分に、多少の疑問を抱きつつも、この世界が現実だと考えて行動しようと決める。
「……ソレイユ、困惑させて申し訳なかった。久々にナザリックに戻って来て戸惑っていたようだ。」
「そのような……もったいないお言葉。何より、戸惑われた原因は私にあるはずです。」
「いや、違うんだ。疑ってすまなかった。ソレイユ、君はかつて私がナザリックを離れる前の記憶のままであり、変わっていない。」
「……!……まさか、私のようなメイドの事を覚えていただいていたのですか……?」
「もちろん覚えている。君だってナザリック地下大墳墓の一員なのだから。」
「……もったいない…ありがとうございます…!」
現実だと仮定して行動すると、先程から迷惑をかけたソレイユに謝らなければと考えて話す。主人格として扱ってくれているようなので、言葉遣いも少し気をつけながら。
ソレイユに落ち度が無かったと説明しようとすると、覚えている事に対して驚いているようだったので、即答する。本心を語るに躊躇いなど無いのだから。
覚えている、一員だと言うと感極まったような表情を浮かべるソレイユに、嬉しくなる。
何年も訪れていなかった自分に、これほど好意を向けてくれているのだから。
「こちらこそありがとう。長い間ナザリックを離れていた私に、思う事もあるだろうに。」
「……そのようなことは!至らない事が多い私共を、見捨てずまた戻って来ていただいたのです!感謝意外に他意はございません!」
「……本当にありがとう、ソレイユ。---そうだ、私以外に今仲間達……ナザリックを創ったメンバーはどこに居るのかな?」
「---はい!先程モモンガ様が10階層の方向へ向かっていらっしゃったのをお見掛けいたしました!……他の至高の方々は、ヤスヒロ様を除いてお隠れになられたままだと思われます。」
「--そうか!なら名残惜しいけれど、一先ずモモンガさんに会って来なければ。ありがとう。」
「もったいなきお言葉!ありがとうございます。いってらっしゃいませ!」
本当に嬉しいことを言ってくれる。このまま話していたいという欲求を覚えつつも、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーがどこに居るのかを聞いてみる。するとログイン時にオンラインか確認したモモンガさんは居るようだ。お隠れというのはオフライン状態の事だろうか?と考えつつ、まずはモモンガさんに会いに行こう。そう考えてピシッと礼をとっているソレイユに背を向けて、10階層を目指す。やはりモモンガさんは玉座の間に向かったのだろう。
急いで玉座の間へと向かい、また幾つ目かの角を曲がったところに、10人以上が手を広げながら降りることも可能ぐらい巨大な階段へと出る。
そこに、丁度10階層から上って来た7人と出くわす。
先頭を歩くのはオーソドックスな執事服を着た老人で、髪と髭は完全に白く、すらりと伸びた姿勢は鋼でできた剣を髣髴とさせる。
ナザリックの
その執事の後ろに従う6人のメイド---と言っても先程会ったソレイユのようにただのメイドではなく、それぞれ銀や金、黒といった色の金属でできた手甲、足甲をはめ、動きやすそうな漫画のような鎧を身に着けている。それだけでは一見メイドには見えないだろうが、鎧が漠然とだが、メイド服をモチーフにしているんだろうなと気がつける作りになっている。そして頭にはホワイトブリム。加えて各員がそれぞれ違った種類の武器を所持している。
それぞれ
ユリ・アルファ
ルプスレギナ・ベータ
ナーベラル・ガンマ
シズ・デルタ
ソリュシャン・イプシロン
エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ
の6名だ。
皆、一様にこちらに気付いて驚いた顔をし、跪く。セバスとシズの二名は、表情の変化がわかりにくいが。
「これは---ヤスヒロ様。」
「ヤスヒロ様!(様っす!)(…様)(様ぁ!)」
「---久しぶり、セバス、ユリ、ルプスレギナ、ナーベラル、シズ、ソリュシャン、エントマ。長らくナザリックを留守にしてすまなかった。」
「そのような事はございませんヤスヒロ様、無事なご帰還をお祝い申し上げます」
「我々一同、ヤスヒロ様のご帰還がなによりの吉報でございます!」
「……ありがとう。再び皆に会えた事を、私も非常に嬉しく思う。して、何故君達が9階層に?」
「ハッ、私とソリュシャンがナザリック外へ。ユリ、ルプスレギナ、ナーベラル、シズ、エントマは9階層の守りに入れとのモモンガ様の命令により行動していた所でございます。」
「おお!ならばモモンガさんは玉座の間か?」
「左様でございます。モモンガ様は玉座の間におられます。」
懐かしさに目を細めつつ、忠誠と喜びを示してくれる執事とメイドについつい相好を崩してしまう。
そして先程のソレイユだけではなく、セバスと
この世界が現実になった仮説の信頼性を上げつつ、本来玉座の間前の広間の守りについている執事と戦闘メイドが、全員で9階層に上がってきた事に疑問を覚えて問いかける。
するとモモンガさんの命令を受けての行動だという。
確認してみると、やはりモモンガさんは玉座の間に居るらしい。
「そうか!ならば私も帰還を告げにモモンガさんの所に行くとしよう。引き止めてすまなかった、任務を続けてくれ。」
「ハッ、かしこまりました!それでは失礼致します。」
敬意を示してくれる執事とメイドを見送りつつ、嬉しさ9割、今の所上位者として扱ってくれているんだな。という確認という打算で残りの1割を占めた。
そんな自分に少し嫌悪感を抱きつつ、やけに冷静に行動できるなぁ、という疑問を感じる。もしかするとこの異形の体になっているせいで、精神になんらかの影響を受けているのかもしれない。
それでも悪い事ではないだろう、と考えて思考を切り替え、玉座の間へと再び進む。
10階層に降りてしばらく進むと、やがて半球状の大きなドーム型の大広間に到着した。
天井には4色のクリスタルが白色光を放ち、悪魔をかたどった彫像が67体置かれている。
勝手知ったるこの部屋--
「……モモンガさん、帰ってきましたよ。」
この扉の先は玉座の間であり、かつての仲間、ギルド長のモモンガが居るはず。
こみ上げてくる懐かしさ、嬉しさから呟き、扉に触れるように手をかざすとゆっくりと扉が開く。
「---モモンガさん!お久しぶりです!」
扉が完全に開くまで待ちきれず、逸るように声をあげる。
少し前まで見えなかったはずの玉座までの遠い距離も、まるで視覚が強化されているかのようにはっきりと捉える事が出来た。
そしてその視線の先には---守護者統括であるアルベド
その奥には見覚えのある骸骨の姿。モモンガの姿を捉える。
「ぁ…っ…ふわぁ……!……モモンガ様……ッ……」
「……え?………ヤスヒロさん?」
---そして、その2名は恋人の如き距離で密着し、まるで情事を行っている所であった。