オーバーロード二次創作 久々ログインで異世界転移 作:結城マサヒト
初めはモモンガ視点です。
かつて上位ギルドの一角を占めていたアインズ・ウール・ゴウンのギルド長であるモモンガは、ユグドラシルの最終日を迎えていた。
過去の栄光と輝かしい時間の結晶が終わりを告げる---はずであった。
しかし、玉座の間にて最後の瞬間を迎えるも、サーバーダウンによる強制排出は起こらず苛立ちと戸惑いを感じていると、皆で作り上げたナザリック地下大墳墓のNPC達が意思を持って動き出したのだ。
本来おこなえないはずのNPCとの会話が可能、コマンドワード以外による命令に反応する事を確認。更には表情の変化も起こっている(ゲームのユグドラシルではプログラムで組み上げなければ表情の変化は無い)。
謎の事態に直面し、付き従えさせていた
仮想現実が現実になった可能性を感じつつ、現在会ったNPC達は忠誠を誓ってくれているようだが、忠誠が不変の物であるのか、未だ会っていないNPCの忠誠は向けられているのか、わからない事だらけだ。
---とにかく情報だ。
そう考え、この世界が現実かどうか確認する為に、モモンガ自身以外に唯一玉座の間に残ったアルベド---純白のドレスをまとった美しい女性であり、僅かに微笑を浮かべた顔は女神の如く、ドレスと正反対の艶やかな黒髪が腰の辺りまで届いている。
金色に輝く瞳、縦に割れた瞳孔、山羊を連想させる2本の角や黒く染まった天使の翼が腰から生えているが、絶世の美女という評価に陰りはない。---へと視線を向ける。
視線を向けるとアルベドは優しい笑みを浮かべ、モモンガに問いかけてくる。
「モモンガ様、私は如何いたしましょうか?」
「ああ、そうだな……私の元まで来い。」
心の奥底から嬉しげな声をあげ、アルベドがにじり寄り、まるで抱きつかんばかりの距離まで近付く。嬉しそうなアルベドの反応を見て、モモンガは激しい後悔に襲われる。
ユグドラシルのサービス終了時間直前、玉座の間に控えていたアルベドの設定を読み直し、設定魔かつギャップ萌えのギルドメンバー、タブラ・スマラグディナが「ちなみに、ビッチである。」という設定にしていた事を気付き、悩んだ末に「モモンガを愛している。」という設定に書き換えたのだ。
---このアルベドの反応は、そのせいだ---タブラさんの作った設定を歪めてしまったのか。そう後悔に襲われていたが、漂ってくるアルベドの香りで意識を引き戻される。
「……っ」
「ん?」
手を伸ばしてアルベドに触れると、痛みをこらえるような表情を浮かべるアルベド。
---気持ち悪がられているのか?と悲しい気持ちになったが、モモンガの持つ特殊能力の中に、触れた相手へ負のダメージを与えるスキルがあった事を思い出す。
---ユグドラシルというゲームでは、味方への
モモンガはそう判断し、アルベドに話しかける。
「すまないな、
「お気になさらずに、モモンガ様。この程度のダメージはダメージではありません。それにモモンガ様でしたらどのような痛みも……例え破瓜の痛みでも……きゃ!」
「……あ……うん……そうか……。だ、だが、すまなかったな。」
可愛らしい悲鳴と共に照れたように頬に手を当てるアルベドに対して、視線をおもいっきり逸らしつつ、モモンガが所持する様々な常時発動能力の制御について思案し---その切り方を唐突に悟る。
思わず今の自分が置かれている異常な状況に、モモンガは笑った。これだけの異常事態が続けば慣れるというものだ。
「触るぞ」
「あっ」
能力を解除してから手を伸ばし、アルベドの手を触る。美女の手に触れ男として生まれた感情をモモンガは追い払う。知りたかったのは手首の脈だ。
---脈と体温がある。
生物なら当たり前の事であり、モモンガは自らの手首を見返すが、それは肉も皮も無い真っ白な骨だ。血管が無いのだから、鼓動なんて感じない。モモンガの所持するクラスである
視線を再びアルベドへ戻すと、濡れた目をしており、頬は紅潮して体温が急上昇している。
「……なんだこれは。」
これはNPC、単なるデータではないのか?それが本当に生きているような---ユグドラシルというゲームが現実になったような---。
その考えがこびりついたように残る。ならば……最後の一手。これを確認すれば、すべての予感が確信に変わる。
いま自分が置かれた状況、現実と非現実の狭間から、その天秤がどちらかに傾く。
だから、これはしなくてはならないことだ。そう自分に言い聞かせる。
「アルベド……む、胸を触っても良いか?」
「え?」
アルベドが目をぱちくりさせつつ、空気が凍る。
モモンガも言ってから、悶絶したい気分に襲われていた。
仕方ないとはいえ、女性に向かって何を言っている。自分は最低だと叫びたい気分だった。
しかし仕方が無い。そう、これは必要な事だと自分に強く言い聞かせ、所持するスキルによる影響で精神の安定を高速で取り戻したモモンガは、上位者としての威厳を精一杯に込めて重ねて言う。
「構わにゃ……ないな?」
全然無理でした。
そんなモモンガのおどおどとした言葉に、アルベドは花が咲いたような輝きを持って、微笑みかける。
「もちろんです、モモンガ様。どうぞお好きにして下さい。」
アルベドが更に一歩踏み出し、吐息のかかる距離でぐっと胸を張る。豊かな双胸がモモンガの前に突き出された。
異様な緊張と同様の反面、頭の片隅では妙に冷静な自分が自らの姿を客観的に観察していた。
モモンガは自分が馬鹿のような気がしてたまらなかった。なぜこんな手段を思いつき、実行に移そうと考えたのか。
しかし、これがユグドラシルの世界ならば胸を触る行う行為は18禁に触れる行為であり、厳禁だ。ならば触れる事が出来る場合はこの世界が現実という可能性がぐっと高くなる。
そう自らを納得させ、目をキラキラとさせながら、さぁどうぞといわんばかりに胸を何度も突き出すアルベドへと意を決して手を伸ばす。
「---あっ……ッ」
……触れた。モモンガの骨の手には柔らかいものが形を変える感触が伝わる。
無意識に手はアルベドの胸を揉んだままで、思考を巡らせる。
---やはり現実。そう考えを巡らせていたため、玉座の間の扉が開く事を意識の外に置いてしまった。
「---モモンガさん!お久しぶりです!」
「ぁ…っ…ふわぁ……!……モモンガ様……ッ……」
アルベドの濡れた声とほぼ同時に、かつて何度も聞き、大切な友人の一人である声が聞こえた気がする。
「……え?………ヤスヒロさん?」
その声の主を極僅かな逡巡をもって思い出し、呆然と声を出す。
聞こえた声に向かって視線を巡らすと、そこには見覚えのある姿が目に入る。
「…………や、ヤスヒロさ---」
「……あ、お邪魔しました。どうぞごゆっくり。」
感動に震えながら声をかけようとすると、かつての友はゆっくりと閉まる扉へと消えていった。
「……は?」
「モモンガ様……ヤスヒロ様もああ言っておられる事ですし、どうぞお続きを。ああ……ここで私は初めてを迎えるのですね……!」
友の反応に呆然としていると、アルベドが紡いだ言葉が脳に染み込み、ようやく思考が戻る。
「よ、よせ!よすのだ、アルベド。」
「は? 畏まりました。」
「今はそのような……というか、そういうことをしている場合ではない!」
「も、申し訳ありません!至高の御方が戻られたという時に、己が欲望を優先させてしまい」
ぱっと飛びのき、ひれ伏すアルベドを視界に入れながら、モモンガは慌てて扉まで走る---
ヤスヒロが玉座の間を開いた瞬間目に入って来たのは、それぞれの階層に存在する階層守護者、及び階層の一部領域を守護する領域守護者、その各名を統率する守護者統括のアルベド。そしてアルベドに覆いかぶされるようにしているギルド長、モモンガであった。
「……あ、お邪魔しました。どうぞごゆっくり。」
「…………」
眼前で閉まった扉を見つめつつ、今の状況を再び思い返す。
「……ヤバイヤバイヤバイ、滅茶苦茶タイミング悪いんですけど…。」
「……でも、ペロロンチーノさんならともかく、モモンガさんがああいう事をしているというのは意外だ……。」
久々の再開が情事の目撃という状況に頭を痛めつつ、モモンガが同じ状況に巻き込まれていたとしたら、今の光景は意外であった。とりあえず少し時間を空けて来るかと踵を返そうとした所で、再び扉が開く。
「ヤスヒロさん!いらっしゃってたんですね!」
「……あー、モモンガさん、お久しぶりです。……あの、後でも大丈夫ですので。」
「ちょ……今のは違って……あー!違わないのか?いや、とにかく大丈夫ですから!」
「……そうですか?……本当にお久しぶりです、モモンガさん。」
「本当に……本当にお久しぶりです、ヤスヒロさん!」
勢い良く扉が開き、モモンガが姿を現す。
先程見てしまった光景と気まずさから少しギクシャクしてしまったが、無かった事にしたいのかなと判断し、ひとまずは意識からどける。
タイミングは悪かったが、この異常事態に一人ではなくモモンガもいるという事に安堵を覚えつつ、再開を喜ぶ。
「3年ぶりですからね……またお会いできて本当に良かったです。招待メールを拝見したのですが、ログインが遅くなって申し訳ありませんでした。」
「……もうそんなに経つんですね。来て頂いただけで十分ですよ!私も、どうやら入れ違いにここへ来てしまったようで申し訳ない。」
「……なんだか、久々にお会いしたのにお互い謝るというのも変な話ですね。」
「そうですね……せっかくの再開なんですから、ここではなく中に入りましょう。」
お互いに謝るという状況におかしくなり、少し笑いながらモモンガの招きで玉座の間へと入る。先程は意表をつかれた出来事によく見ていなかったが、そこには数百人が入ってもなお余るような広さであり、壁、天井に至るまで全て幻想的な細工が施されている。
左右の壁にはアインズ・ウール・ゴウンのメンバーを示す41枚の大きな旗が垂れ下がり、部屋の最奥には巨大な水晶を切り出されたような玉座、ギルドサインが示された真紅の巨大な布がかけられている。
「……本当に、変わっていない。そして、戻ってこれたんですね---。」
アインズに並び、王座へと向かいながら感嘆と懐かしさに言葉を漏らすヤスヒロを、モモンガは嬉しそうに横目で見る。
皆で作り上げたナザリック地下大墳墓、それが自分一人だけが輝いて見える過去の遺物などではない事を感じて。
「----お帰りなさいませ、ヤスヒロ様。ナザリック一同を代表し、ご帰還をお喜び申し上げます。」
「---ありがとう、アルベド。帰還が遅くなってすまなかった。あー……それと先程はタイミングも悪かった、すまない。顔を上げてくれ」
玉座の下へと進むと、玉座のすぐ脇で平伏しているアルベドから声がかかる。
玉座の間へ入ってすぐに視界に入っていたのだが、先程の気まずさからどう対応すれば良いか悩んでいたが、アルベドから声がかかったので意を決して言葉を返す。
ヤスヒロの声に従って上げたアルベドの顔は記憶にあるままの美しい姿をしているが、目を合わせず視線を伏せているのが少し怖い。いくら
「……いえ、至高の御方々が何かを行う際に、私共にご遠慮なさる事など一切ございません。」
アルベドは視線を上げ、自分とモモンガさんを見ながら微笑を向ける。完璧な美しい笑顔を見て、視線をすぐに上げなかったのは照れていたのかな?と判断する。
「……オホン!……アルベド、お前の忠義に感謝する。……早速だがお前に命令する事がある。」
「感謝などと……!至高の御方に忠義を尽くす事は当然の事です!何より私の愛しいお方からのご命、なんなりとお命じください!」
「……各階層の守護者に連絡を取れ、6階層のアンフィテアトルムまで来るように伝えよ。時間は今から1時間半後。それからアウラとマーレには我々から伝えるので必要は無い。」
「畏まりました、復唱いたします。6階層守護者を除き、各階層守護者に今より1時間半後に6階層のアンフィテアトルムまで来るように伝えます。」
「よし、行け。」
「はっ」
そんな事を考えていると、モモンガさんがアルベドに命令を下す。命令自体は何か考えがあるんだろうな、と思ったのだが、アルベドから放たれた「愛しいお方」という発言に、先程の情事を見ていても驚きは拭えない。
アルベドが退室した事を確認しつつ、モモンガへと声をかける。
「---色々と確認したい事がありますが、やはりNPCにはなんとなく口調を変えてしまいますね。……ところで、ビッチ設定のアルベドにあそこまで言わせるとは、この短時間に何があったんですか?モモンガさん。……もしかして、私の居ない間にタブラさんが設定を変えていたんですか?」
「………………」
聞くか聞かないでおくべきか少し悩みつつ、好奇心に勝てずアルベドについてモモンガに問いかける。するとモモンガは少しよろめいたように玉座へと手をかけ、うなだれる。
「……だ、大丈夫ですか。あの、聞いて不味かったならこの話は無かった事に---」
「……いえ……ヤスヒロさん、私は大変な事をしてしまいました……。」
投稿が遅くなりましてすみません。
最近仕事→寝る→仕事のサイクルになっており、遅くなってしまいました。
徐々に落ち着いてきていますので、また順次投稿をしていきたいと思います。