オーバーロード二次創作 久々ログインで異世界転移 作:結城マサヒト
「戻れ、レメゲトンの悪魔たちよ。」
モモンガの言葉に従い、超稀少鉱石で作り出された67体のゴーレムたちは体躯の割には軽い足取りで、己の席へと戻り警戒姿勢を取る。
「……一先ず、身の安全は確保出来ましたね。」
「ええ、これでいざとなってもなんとかなるでしょう。”以後、私とヤスヒロさんの命令のみに従え”」
佩剣の柄から手を放しつつ、モモンガと自らの体を再度確認する。
「……魔法も使えたのもありがたいです。ステータスバーが無いので正確な確認は出来ていませんが、体感的にはMPの回復も出来ているようです。」
「ですね……後で攻撃魔法も確認しましょう。それが以前通りのダメージなら確実でしょう。」
モモンガとヤスヒロは自らに纏っているエフェクトを確認し、お互いに頷きあう。レメゲトンの起動に先立ち念の為防御魔法を発動しようと意識した所、どのようにすれば発動するか、魔法の効果、範囲、次の魔法の発動までどの程度時間がかかるかも、まるでド忘れしていた事を思い出すかのように理解出来たのだ。
そしてお互い防御魔法を複数発動、それほどの減少ではないがMPが減るという間隔を掴んだ。
ヤスヒロの使う---ある特殊な条件によって習得出来る魔法《コンティニアス・マジックヒール/継続的MP回復強化》により、2人のMPはほぼ回復している。ユグドラシルにおいて、MP回復ポーション等の便利なアイテムは存在しない為、MP譲渡や自然回復を除き、数少ないMP回復手段の一つである。
「しかしモモンガさん……フレンドリィファイアが解禁されているのは厄介ですね。これがなければ安心感も違うのですが。」
「……NPC達にも影響があると考えると、我々に従っているかは確認しなくてはいけませんね。」
「――皆で作り上げたNPCに期待……信じて、まずは目先の事を解決しましょう。」
特に確認しようとしたわけではなく偶然の産物なのだが、レメゲトンの起動確認の際に、味方以外に発動する妨害魔法である<
スキル等の範囲は意識すれば指定した対象を範囲外に出来たのだが、意図しない巻き込みが生じないように注意しなければならない事、ナザリック所属のNPCに対する不安感が若干上がってしまった事にため息をつく。
とはいえ他のNPCにも会ってみて、忠誠を誓ってくれていれば問題無いだろう。そう考えて他の確認作業を続ける。
「アイテムは……うお!っと、成功です。モモンガさん、アイテムボックスを開くことを思い浮かべながら手を動かしてみて下さい。」
「手が途中から消えてますけど……なるほど、こういう事ですか。」
所持アイテムを確認する為ユグドラシルと同じように中空に手を伸ばすと、空間に手が沈みこむように入り込み、窓のようなものが開く。そこにはいくつものアイテムが綺麗に並んでいた。手を動かし、アイテム画面ともいうべきものをスクロールさせると、巻物、短杖、武器、防具、装飾品、宝石、ポーション等、様々な種類かつ膨大な数が表示され、アイテムボックスに入っていたアイテムも維持出来ている事に安堵を浮かべる。
「……消費アイテムをもったいなくて使わない性格で良かったです。ヤスヒロさんはどうですか?」
「私は結構使う派でしたけど……戦闘スタイル的にアイテムは必須でしたので、消費アイテムほぼフルスタックです。補充をしてからログアウトをしていて助かりましたよ。……私室のアイテムチェストも維持出来ていたらもう少し増えますが、一先ずは所持分で十分ですね。」
ヤスヒロは、魔法剣士という構想で構成されたビルドをしている。ユグドラシルでは基本的に魔法剣士は中途半端になってしまい、弱いとされている。それを補うために大量の課金を行い、モモンガの全身
その構成から、消費アイテムは常に大量に保持しているようにしていたのだ。
「チェストが無事なら宝物殿にもあるはずですね……いざという時には取りに行きましょう。」
「ええ……そうですね。その時はお願いします、リーダー。では、そろそろ移動しなければならないでしょうが---」
「リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンですね。これも確認しておかないといけませんね……。」
モモンガ、ヤスヒロ共に自らの指を見つめる。正確にはモモンガは9、ヤスヒロは10個装備している一つ、ギルドエンブレムが刻印されている指輪を見つめる。
アインズ・ウール・ゴウンのメンバー全員が保有していたマジックアイテムであり、ナザリック地下大墳墓内の名前のついている部屋であれば、一部を除いて回数無制限に自在に転移できるというものである。
「先に私が転移して確認してきますね。リスク分散の為にはそれがベストでしょう。」
「いえ、それなら私が先に行きます。ヤスヒロさんはここで待っていて下さい。」
「いや……モモンガさんと違い、私は3年ぶりですからね。今まで会ったNPC達は覚えてくれていますが、覚えていないNPCが居る可能性を考えると、何かあった時の為に残るのはモモンガさんにして下さい。」
「……それなら、転移先でNPCと遭遇する事を考えたら一緒じゃないですか?それなら私が行きます。」
「いや私が」
「いやいや私の方が。」
「---ぷっ。」
「ぷっ……アハハハッ」
お互い譲りあっている事が可笑しくなり、笑いあう。
アインズ・ウール・ゴウン全盛期の時も、こんな会話をしていたなぁと思いながら。
「……なら、一緒に行きましょう。今までの確認も大丈夫でしたし、転移も従来通りの可能性が高いと思います。」
「……そうですね、では行きますか。」
少し笑った後に落ち着き、同時に転移を行う。
「「転移!アンフィテアトルム!」」
タイミングを合わせる為に転移を声に出して行い---瞬くように視界が黒く染まる。
そして---先程までの光景は一変し、周囲は薄暗い通路へと変貌していた。通路の先には巨大な格子戸が落ちており、隙間からは人工的な明かりが入り込んでいる。
「無事……のようですね、モモンガさん。」
「ええ、きちんと転移も発動していますね。」
転移の成功に安堵しつつ、2人は広く高い通路を巨大な格子戸に向かって今後の打ち合わせを軽く行いながら歩く。格子戸に近寄ると、青臭さと大地の匂い---深い森の匂いが鼻腔をくすぐる。
仮想現実では働かない嗅覚が働いている事に、モモンガと顔を見合わせる。
「……匂いますか?モモンガさん」
「ええ……ですが、肺も気道も無い体なのに、呼吸が出来るというのも変な感じがします。」
「ああ……そういえば。……わかりませんね。大体魔法のせいという事にしておきますか?」
「まあ害はないでしょうし……。そうしておきます。」
肉体のあるヤスヒロと違い、モモンガは骨の体をしている。それなのに何故匂いを感じるのかという疑問が湧き出る。
しかし考えてもわからない事なので、一旦考えることを放棄し、歩みを進める。
格子戸までやってくると、2人の接近に合わせ、自動ドアを思わせる完璧なタイミングで勢い良く上に持ち上がった。格子戸を潜り抜けた先には、
何層にもなる客席が中央の空間を取り囲む場所---
長径188メートル、短径156メートルの楕円形で、高さは48メートル。ローマ帝政期に作られたコロッセウムを基に造っている。
様々な箇所に<永続光>の魔法が掛かり、その白い光を周囲に放っている為、真昼の如く周囲が見渡せる。
この場所につけられた名前は
無数の客席には数多くのゴーレムが配置されており、多くの侵略者はここで最期を遂げた。
2人は闘技場の中央に歩を進めながら、自然と空を眺める。
そこには真っ黒な夜空が浮かんでいるが、周囲の光が無ければ無数の星空が見えた事だろう。
この場所はナザリックの第6階層。地中に存在する以上天空に浮かんでいるのは偽りの空だ。しかし、かなりのデータを割り振っており、作成したメンバーがこだわりを持って作成した為、時間の経過と共に変化するし日光と同じ働きを持つ太陽すら浮かぶ。
「……うわぁ、ここに来るのも3年ぶりだ。めちゃくちゃ懐かしいですよ。」
「私も……そこそこ来てませんでしたね。こうしてしっかり見直すと、やっぱりブルー・プラネットさんの作りこみはすごいです。」
「リアルの空ではこうはいきませんからね---」
「~~~~あ、あああああぁぁぁぁ!!!」
闘技場の中央まで歩いた所で景色を見渡し、モモンガと話をしていると、上の方から叫び声が聞こえる。
何事かと声がした方へと視線を向けると、闘技場6階にある貴賓席から跳躍する姿が目に入る。
6階から飛び降りた影は、空中で一回転すると翼でも生えているような軽やかさで大地に舞い降りる。足を軽く曲げるだけで衝撃を完全に受け殺したその影は、喜色を浮かべた表情で駆け出す。
飛び降りて来たのは10歳ほどの子供。太陽のような、という形容詞が相応しい笑顔をその顔に浮かべている。金の絹のような髪は肩口で切りそろえられており、森と海という左右違う瞳が、表情と相まって子犬のように煌いている。
耳は長く尖っており、薄黒い肌。森妖精の近親種、
大きな黄金色に輝いたネックレスや、魔法金属のプレートが付けられた手袋で身を包んでいる。
腰、右肩にそれぞれ鞭を束ね、背中には異様な装飾がつけられた弓を背負っていた。
「---アウラ。」
ヤスヒロは登場した闇妖精の子供の名前を呟く。
ナザリック地下大墳墓第6階層の守護者であり、幻獣や魔獣等を使役する魔獣使い兼
アウラは勢いよくヤスヒロとモモンガに近づいてくる。小さい体とは思えないスピードで、瞬時に距離が近づく。
アウラは足で急ブレーキ。
「---ヤスヒロ様、お帰りなさいませ!帰還をお喜び申し上げます!モモンガ様、ヤスヒロ様、あたしの守護階層あたしの守護階層までようこそ!」
ここに来るまでに出会ったNPCに比べると敬服というよりは親しみが強い挨拶だが、尻尾を振っているような映像が幻視出来るほど喜色を浮かべた顔を見ると、強い喜びが心に浮かぶ。
その甘美な感情はすぐに弱くなってしまったが、どうも精神的な動揺がこの体になってから抑えられている気がする。しかしその究明は一先ず置いておく。
「---ありがとう、アウラ。また会えて私も嬉しいよ。」
そう言いながらアウラの頭に思わず手を伸ばし、撫でる。
アウラは一瞬ビクッとしたが嫌がる素振りもなく、喜色を浮かべているので撫で続ける。絹糸のようなさらさらとした感触が心地よい。
このままずっと撫でていたいという気分になるが、隣からモモンガのゴホン、という声に呼び戻され、頭から手をどける。
「アウラの守護階層に少しばかり邪魔をさせてもらうぞ。」
「何を言うんですかー。モモンガ様とヤスヒロ様はナザリック地下大墳墓の主人、絶対の支配者ですよ?その御方々がどこかをお訪ねになって邪魔者扱いされるはずがないですよー」
「そういうものか?……ところでアウラはここにいたみたいだが……」
「マーレは今どこかに?」
モモンガとヤスヒロの言葉に、アウラがぐるっと振り返って飛び降りてきた貴賓席を睨み、大きな声をあげる。
「モモンガ様とヤスヒロ様が来てるんだよ!早く来なさいよ!失礼でしょ!」
その声につられて貴賓席へ視線を向けると、何かがぴょこぴょこ動いているのが確認できた。
「ああ……この感覚は気配だったのか。という事はあそこにマーレも居たんだね。」
「はい。そうです、ヤスヒロ様。あの子ったら弱虫なんだから……。とっとと飛び降りなさいよ!」
「む、無理だよぉ……お姉ちゃん……。」
アウラの声に、消え入るような声が返ってくる。貴賓席との距離を考えれば聞こえないはずだが、実のところはアウラが装備するネックレスの魔法的な働きによるものだ。
はぁ、とアウラはため息をつくと、頭を抱える。
「あ、あのモモンガ様、ヤスヒロ様。あの子はちょっと臆病なんです。わざとこのような失礼な態度をとっているわけじゃないんです。」
「ああ、わかっているさ。ねぇ、モモンガさん。」
「無論、了解しているともアウラ。私達はお前たちの忠義を疑った事など、一度も無い。」
マーレの設定から臆病というのはわかっているし、社会人たるもの本音と建前は重要である。つい先程、ここに来るまでに疑った罪悪感にチクチクと苛まれつつ、ヤスヒロとモモンガは大きく頷くと、安心させるように優しく答えを返した。
見るからにほっとした様子のアウラだったが、すぐさま貴賓席から階段へと向かっている人物へ怒りの表情を向けた。
「ナザリック絶対支配者であるお二人がいらっしゃっているのに、すぐに階層守護者が出迎えられないなんてどれだけ最低なのか、あんただって分かるでしょうが!もし怖くて降りられないなんて言うなら、勇気の代わりにあたしの蹴りを代用するからね!」
「う、うう……わ、分かったよぉ……え、えい!」
気合を入れたにしては抜けたような声と共に、ぴょこんと飛び降りる。
マーレは両足で着地すると、よろよろとよろめく。先程のアウラとは雲泥の差だが、それでも落下によるダメージは様子は無い。
それからテッテッテという擬音が似合いそうな速度で走ってくる。当然本気で走っているのだろうが、アウラと比べると襲い。同じことを思ったであろうアウラの眉間がピキピキと痙攣してマーレを急かす。
そんな表情豊かな二人の様子を見ながら、ヤスヒロとモモンガは目を細める。
「こんなに表情豊かなマーレとアウラを……茶釜さんにも見て貰いたいですね。」
「---ええ、これが茶釜さんの本当に望んだ、マーレとアウラなのでしょう。」
ぶくぶく茶釜。二人の闇妖精を設定したギルドメンバー。
彼女にもこの光景を見せたい。見せてやりたかった。
微妙に違うが、似たような考えを抱きながらマーレを待つ。
少しだけ到着を待って、現れたのはアウラとそっくりな子供。髪の色や長さ、瞳の色、顔の造形、双子以外の何物でもない。ただ、アウラを太陽と例えるならば、マーレは月の輝きだ。
オドオドとし、今にも怒られるのではないかと身構えて上目遣いをする子供。
青というよりは藍色の竜王鱗で出来た胴鎧、そして深い緑色をした、まるで森の葉のような短めのマントを羽織っている。
アウラと同じような白色が主な服装だが、やや短めのスカートに白色のストッキング、ネックレスはアウラのものに酷似した銀色のドングリ、絹のような光沢をもつ白い手袋をした手にねじれた黒い木の杖を握っている。
マーレ・ベロ・フィオーレ
アウラと同じくナザリック地下大墳墓第六階層のもう一人の守護者だ。
アウラとマーレが二人揃ってペコリと頭を下げた所で、声をかける。
「二人とも、元気そうでなによりだ。」
「長らく留守にして申し訳ない。そして久しぶり、アウラ、マーレ。」
「はい!元気ですよー。このごろ侵入者が居なくて暇でしたが、ヤスヒロ様が戻って来てくれて嬉しいです!」
「お、お帰りなさいませ、ヤスヒロ様……。ふ、再び姿を現して頂いて……嬉しいです。……し、侵入者は会いたくないけど……こ、こわいもの。」
ニコニコとしていたアウラの表情が、マーレの後半の言葉に合わせて無表情へと変化する。
「……はぁ。モモンガ様、ヤスヒロ様、ちょっと失礼します。」
「い、いたいよ。お、お姉ちゃん、痛いよぉ。」
モモンガとヤスヒロが軽く頷くと、マーレの耳を摘まんでアウラが少し離れる。そこで遠目でもアウラがマーレを叱責していることが分かる。
「……侵入者か。私もマーレと同じで会いたくはないですね……。」
「……プレイヤー超級が居なければいいのですが。もしくは他のプレイヤーが多ければ厄介ですね。我々は嫌われているギルドでしたから」
正確な能力の把握、敵対勢力の把握、ナザリックの掌握、せめてそれらが済んでからにして欲しいとモモンガとヤスヒロが話していると、気付けばマーレは正座させられながら、アウラに叱られている。
「……モモンガさん、なんだかあの二人を見ていると茶釜さんとペロロンチーノさんを思い出しますね。」
「マーレはペロロンチーノさんが作ったわけじゃないんですがね……茶釜さんには『姉には従うべし。』という思いがあったのかもしれません。---しかし、考えてみるとアウラもマーレも一度死んだはずですが、その事はどうなっているんでしょう?」
「……復活も有効。と考えたいですね、願望も含めて。しかし、確かめるのは---今は止めておきましょう。恐怖の記憶だという可能性を考えて、アフターフォローが出来る時に聞くべきでしょう。」
かつて1500人もの大群が攻めて来た際に、8階層まで侵入された。つまりアウラとマーレは死亡したのだが、そのときの記憶はどうなっているのだろう。死という概念は現在の二人にどのような意味合いを持つのか。確かめたい気持ちもあるが、無理に藪をつつく必要も無い。なにより恐怖の記憶だった場合、掘り返したくないという考えを抱きながら。
そんな事を考えている間も、アウラの説教は続いていた。
そろそろ止めるか---可愛い姉弟喧嘩のようなものだし、眺めていてもいいのだが---姉弟喧嘩にしては一方的になっているし、マーレも別にそれほどおかしな事は言っていない。
「あー……アウラ、それぐらいにしてあげてはどうかな?」
「ヤスヒロ様!で、ですがマーレも守護者として---」
「---問題ないよ、アウラ。アウラの気持ちは嬉しい。階層守護者としての地位にあるマーレが臆するような言葉を、私達の前で発するというのが不味いという気持ちも。しかし、マーレの性格も把握した上で、我々はマーレを守護者に据えているんだ。」
「ヤスヒロさんの言うとおりだ。それに私達はアウラもマーレもこのナザリック地下大墳墓に何者かが攻めてきたときには、勇気を持って、死を恐れずに戦ってくれると信じているとも。すべき時にすべき事をするのであれば、さほど叱る必要もなかろう。」
「……はい!もちろんです!ありがとうございます、モモンガ様!ヤスヒロ様!」
「あ、ありがとうございます。」
ヤスヒロとモモンガでアウラのお説教にストップをかける。一言では止まらないが、言い募ると深いお辞儀と礼と共に、キラキラとした目で見つめてくる。そんな尊敬の空気を変える為に、正座したままのマーレに近付いて手を貸して立ち上がらせる。
「ところでアウラ、マーレ。今日ここに来たのは訓練する為なのだ、この闘技場を貸して貰うぞ。」
「訓練?え?モモンガ様が!?」
モモンガがここに来た理由を
「そうだ、ヤスヒロさんもな。それと色々な実験を兼ねている。」
簡素な返事と共にモモンガがスタッフを地面に軽く叩きつけるのを見て、二人の表情に理解の表情が浮かぶ。
「あ、あ、あの、そ、それがあの最高位武器、モモンガ様しか触ることを許されないという伝説のアレですか?」
伝説のアレとはどんな風な意味なんだろう。モモンガとヤスヒロはそんな疑問を覚えるが、マーレの瞳の輝きを見れば、それが悪い意味ではないことは察知できる。
「その通りだとも。あれがアインズ・ウール・ゴウン全員で作り上げた最高位のギルド武器、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンだよ、マーレ。」
ヤスヒロの言葉にモモンガが自慢気にスタッフを掲げると、スタッフが周囲の光を反射して見事なまでに美しく輝く。ただ、問題は禍々しい黒の揺らめきも同時に放っているため、邪悪な雰囲気しか無いことだが。
「スタッフの七匹の蛇が咥える宝石はそれぞれが
スタッフについて語り始めたモモンガ、きらきらとした目でその話を食い入るように聞くアウラとマーレを見つめながら、微笑ましい気持ちを抱く。今までは何かを語ってもプログラミングした会話でない限り反応しなかったNPC達が、こうも表情豊かに話を聞いているのだから。
---しかし、かつてNPC達に話しかけていた内容は覚えているのだろうか?ふとそんな事を考える。変な事は言っていないはずだが---
「---特に凄いのは組み込まれた自動迎撃システ……ゴホン」
スタッフの解説を横目にそんな事を考えていると、上の空になっていた事に気付いたのか、モモンガさんがスタッフ解説を中断する。
「まぁなんだ、そんなわけだ。」
「す、スゴい……」
「スゴいです、モモンガ様!」
中断させてしまった事を目線で謝りつつ、思考を戻す。アウラとマーレのきらきらとした目を受け喜んでいそうな雰囲気を出しているので、あまり気にしていないようで安心する。
「そういうわけでここでスタッフの実験等、諸々を行いたい。色々と準備をして欲しいのだが?」
「はい!かしこまりました。すぐに準備をします。それで……あたしたちもそれを見てよろしいのですか?」
アウラの見てもいいのか?という問いにモモンガからヤスヒロへと視線が投げかけられる。スタッフの実験と称せるモモンガと違い、ヤスヒロは近接戦闘のテストも行うつもりだからだ。補助的なものは既に試してある魔法と違い、近接戦闘のテストは一切行っていない。ここで能力が低く、失望させては---そう考えるが、アウラとマーレの二人は専門的な近接戦闘職ではない。いざとなれば魔法のテストという事でフォローすれば良いか。そう考えてモモンガへと頷きを返す。
「構わないよ。ただ、モモンガさんのギルド武器のテストと違い、私はリハビリを兼ねて近接戦闘の訓練をするつもりだ。だから期待にはあまりそえないかもしれないけどね。」
やったーとぴょこぴょこ可愛らしく飛び跳ねるアウラ、しかし後半の言葉を飲み込んだのかピタリと止まり、疑問を投げかけてくる。
「リハビリ、ですか?しばらく戦われていなかったという事でしょうか?」
「いや……そうであるともそうでないとも言える。詳しくは皆が揃った時に話すよ。」
「えー……気になります。ん?皆が来たとき、ですか?」
「アウラ、全階層守護者をここに呼んでいる。あと1時間少々で集まるぞ。」
「え?な、なら歓迎の準備を---」
「いや、その必要はない。時間が来るまで実験に付き合ってくれれば良い。」
「そうですか?ん?全階層守護者?シャルティアもですか!?」
「--全階層守護者だ。」
ナザリックから離れていた時の事をどこまで話すか---。すこし考えて一旦先延ばしにする。近接戦闘能力が著しく低下していた場合、それを理由に誤魔化そうかと思いつつ。
モモンガが全階層守護者が来る事を告げると、しょんぼりとするアウラ。そういえば設定ではシャルティアとアウラは仲が良くないということになっていたなぁ、と考えつつ。
9/29 フレンドリィ・ファイアについて加筆。