これは鉄底海峡で起こった。私と比叡の物語である。

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艦隊決戦!鉄底海峡 【完】

あれは、私が中佐になって間もない頃だった。艦隊の全体の練度も上がり、SN作戦を実行するため、私は躍起になって、海峡の攻略を進めていた。

また、秘書艦の叢雲が改二になったことで、有頂天になっていたのだ。

第1、第2、第3と攻略し、ついに第4海峡に差し掛かった頃、それは起きた。北上改二の大破である。それはあっという間のできごとだった。駆逐棲艦の一撃により、彼女の装甲はいともたやすく破壊された。この時の私は冷静に決断し、これ以上の進軍は不可能として、撤退した。だが、嫌な予感を拭いきれなかった。

二度目、三度目の進軍では、深海飛行場基地にて飛行場姫と一戦交えた。これを何度か繰り返し、飛行場姫の体力を削っていった。

 

そんな飛行場姫との最終決戦の夜。私は寝付けないでいた。いつもなら秘書艦の叢雲に相談するはずだった。だが、今回は決戦支援艦隊の指揮をしているため、彼女は側にいなかった。いつも私に噛み付く叢雲も改二になったことで、丸くなりツンツンするだけではなく、その中には確かに優しさがあった。前の叢雲も好きだが、今の叢雲も好きなのだ。だから、今この場に叢雲がいない事実に言い知れぬ怖さを感じた。

月明かりを背に、私は海の方へと歩いていった。船着場に着くと、そこには来客が1人立っている。いつもは金剛と一緒にいるのだが、今日は1人みたいだった。私は比叡に声をかけた。

「ヒェーー、なんだ提督か。もうーびっくりさせないでよ」

私の声に驚いたのか。比叡は目を丸くする。

「提督も眠れないの?実は私もなんだよね。じゃあ、ちょっとだけお話ししない」

比叡の提案に私は頷く。

「提督、ずいぶん遠いところまで来たよね。初めて提督にあったのが、つい最近のように感じるよ」

比叡はいつもとは違く、ずいぶん大人しい。明日の決戦に緊張しているのだろう。

「提督は、私と初めて会った時のこと覚えている?」

もちろん覚えているさ。比叡は、こんな感じで自己紹介をしたのだ。

『金剛お姉さまの妹分、比叡です。 経験を積んで、姉さまに少しでも近づきたいです』

「確かに金剛お姉さまに近づきたい一心で頑張ってきました。そして、今では改二になり。金剛お姉さまにも負けない力をつけました。提督、私は強くなったのでしょうか」

比叡の言葉に私は答えた。最初に私の元に配属された戦艦。そして、これからも私の艦隊を支えてくれる戦艦。比叡は立派な戦艦であることを。

その言葉を聞いて比叡は満面な笑みをこぼした。

「提督のその言葉嬉しいな。もし、私が昔の霧島のよう轟沈しても。絶対迎えに来てくれる?」

比叡のその言葉に私は困惑した。

私は過去に比叡の妹分である霧島を轟沈させてしまった経緯がある。その時の比叡はとても辛そうだった。そのあと、金剛が配属されて、榛名も加わり戦艦部隊も強化された。だが、霧島だけは、その艦隊にいなかった。そのことを比叡は口にしなかったが、ずいぶん気にしていた。その1年後、深海棲艦の戦艦ル級と戦闘した際に、霧島を回収することに成功した。その時の比叡は、金剛が部隊に配属された時以上に喜んでいた。離れ離れになった妹と再会できたのだから。

だが、本来一度轟沈したら再び会うことはない。霧島を回収できたのが奇跡なのだ。その言葉を飲み込み私はいった。

『比叡、どこに居ようと絶対に迎えにいくよ』

その言葉に比叡は顔を赤らめる。

「提督、なんだか。その言葉、プロポーズみたいですよ。あー、秘書艦の叢雲に言いつけちゃうよ」

比叡は悪戯顏で私を茶化す。だから、私はこう返した。

いや、叢雲にはもうプロポーズしてるから。ケッコンカッコカリはまだだけど、決戦支援艦隊を率いる際に、伝えてあると比叡に言った。

「あーあー、なんだ。提督も隅に置けないな。でも、改二になった叢雲。すごく綺麗になったものね。納得だわー」

比叡は少し寂しそうに笑う。

「叢雲に負けるなら仕方ないか。提督、絶対に叢雲を悲しませちゃダメめだからね」

ああ、比叡に言われるまでもない。叢雲にもしものことがあったら私は発狂する。

「そっか。じゃあ、叢雲には内緒だよ(Chu」

比叡は私の頬に柔らかい口づけをする。

「提督、明日の出撃頑張ろうね」

比叡は微笑むと、早足で校舎の方へと駆けて行った。

私はそれを惚けて見ているだけだった。これは、叢雲には報告できないな。絶対、酸素魚雷を打ち込まれる気がする。

 

飛行場基地への最終決戦は、順調に進んでいた。しかし、それは突然起こった。飛行場姫との戦闘の前に、比叡が大破してしまったのだ。敵の飛行場姫はもう目の前にいる。私は英断を求められた。幸い大破したのは比叡のみ他のものはほぼ無傷。このまま行けば、飛行場姫を倒すことができる。私は進軍を指示した。だが、それが間違いだったのだ。いくら戦艦の厚い装甲でも、大破した比叡を進軍させるべきではなかったのだ。相手は単なる深海棲艦ではない。飛行場姫なのだ。それを見誤った私は中佐失格だ。

 

昼戦、飛行場姫の飛行戦闘機が比叡を直撃、あっという間に比叡は轟沈し、その身体を海に沈めたと言う。比叡の最後を見届けた古鷹は提督にこう話した。

「比叡お姉さまは最後に言ってました。『提督もみんなも…無事か…な・・・だったら…いい…かな…』と。最後まで提督と私たちの無事を案じておりました」

私は古鷹を下がらせる。そして、入れ違えに叢雲が入ってきた。支援艦隊も戻ってきたのだ。叢雲はいつものツンツンした態度ではなく、そっと私の頭に手を回した。私は叢雲の胸で泣いた。私の指示で1人の艦娘が轟沈した。そして、彼女はいなくなった。私は自分の指示が怖い。この先、叢雲まで失ってしまうのではないかと。

その言葉を聞いた叢雲は、改二になる前の叢雲みたいに私に喝をいれる。

「あんたは何言ってるのよ。そんななよなよした人には酸素魚雷を食らわすわよ。比叡はなんで轟沈したの。それはあなたのせい。比叡が最後にあなたと約束したこと。それを思い出しなさい!」

比叡が最後に私と約束したこと。

『比叡、どこに居ようと絶対に迎えにいくよ』

そう、比叡はどこかで私を待っている。そうだ、絶対に迎えに行くのだ。

私の顔を見て、叢雲も真剣な顔になる。さあ、比叡を探す作戦を実行しよう。みんなにも作戦を説明する。叢雲、みんなを呼んできてくれ。

「ふん、やっとあんたらしくなってきたじゃない。さすが私が見込んだ提督よ」

私の比叡を探す作戦が始まった。

 

1年後、モーレカイ海域。

静かに海上に横たわる艦娘が1人。

提督は、彼女を抱きしめていった。

「・・・おかえり、比叡」

 

〜完〜




本日、アイアンボトムサウンドにて轟沈した。月夜野提督の比叡改二に捧げる。

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