テイルズ オブ フェータリアン ー希望を紡ぎ出すRPGー 作:逢月
「……また、か」
試練は免除する、とウンディーネは言っていたが、決して何もない訳ではなかった。水晶の階段を登れば、定期的に開けた場所に辿り着く。そういった場所には機械のような形状の魔物――というよりは、神殿の守護者的立ち位置の存在だろうか――が待ち受けていた。そして、それだけではない。
エリックが一歩前に踏み出すと、ガコンという音と共に水晶が横に移動していく。行き先は、壁に開いた空洞。内部は、ただただやけに広い部屋になっている。
またか、とは思うが焦ることはない。数回同じようなことがあったのだ。視界の片隅にライオネルとクリフォードが視線を交わす様子が映る。
「今までの奴と大差無い奴だな。ちょっと形はデカいが、問題ないだろう」
「了解しました。任せて下さい!」
水晶が止まるのを待たず、ライオネルが宙を駆けていく。その後をクリフォードが追った。彼らの視線の先にいるのは銀の光沢を放つ、数十メートルをゆうに越すような巨大な機械生物――時々通される部屋に必ず待ち受けている、他のものよりも巨大で強い番人。
幾千とも言える程のコードに繋がれた腕が、目の前に現れたライオネルに振り下ろされる。彼は手にした双剣をくるりと回し、にやりと笑みを浮かべた。
「よし、見えた」
機械生物の鋼の拳が地面を殴り付けるその直前に鈍い金属音が響く。振り下ろされた拳を剣で受け流したのだ。少なからず両腕に衝撃を受けるだろうに、彼がそうしたのには理由がある。ひとつは、彼が『物質透視』を得意とする
「こいつの弱点属性は『闇』。分かってると思うが、あまり突っ込み過ぎるなよ! 治癒術使えるのお前しかいねぇんだからな!」
「大丈夫、倒されはしませんよ」
受け流された腕の上に、トンと軽い音を鳴らしてクリフォードが降り立つ。頭部のレーツェルに触れ、彼はそのまま上へ上へと駆け出した。機械生物は反対の腕を伸ばし、巨大な手が彼の行先を阻む。しかしクリフォードはその指の合間に頭から飛び込み、機械生物の肩部分に両手を付いた。その勢いのまま、両肘を伸ばして大きく飛躍し、身体を捻る。狙うは、巨大な胴体の上に乗った小さなドーム状の頭部。
急降下する彼を今度こそ捕まえんと伸ばされた機械生物の指をトンファーで受け流し、槍の如き一蹴が鈍い音を響かせた。
「――
ドーム状の頭部は僅かに凹み、機械生物は大きくよろめいた。反動で宙に投げ出されたクリフォードは狙いを外して彷徨う機械生物の手のひらを強く蹴り、再び頭部へ突っ込んでいく!
「はあぁッ!
身体を捻り、回転させながら目にも留まらぬ速さで繰り出される複数回の足蹴。重力など感じさせないような身のこなしでクリフォードが宙を舞う中、漸くエリックとポプリが乗った水晶が動きを止めた。
「――冥闇、其は閃光をも打ち消す殲滅の調べ……」
水晶から数歩踏み出し、しっかりとした床の上でポプリが詠唱を開始する。複雑な魔法陣が部屋全体に広がっていく。エリックは弓を構え、紫色の光矢を機械生物の頭部へと放った。
「追尾せよ。 ――
放たれた矢に機械生物が怯んだ隙にクリフォードが地面に降りる。それを確認した後、エリックは弓を剣へ変えて駆け出した。その先にはライオネルの姿があった。
「お前らさっさと行き過ぎだろ……!」
「こいつデカいし、クリフの練習台に丁度良いんだよ。オレもお前とペア組むよりクリフとやる方が楽だしさぁ……てか、お前は飛べるんだからさっさと来れるだろ」
「ポプリ一人残していけるわけないだろ……!?」
この巨大機械生物とは水晶が横移動する度に戦ってきたのだが、その中で生物が物理攻撃のみだけではなく、部屋に到着する前に光線を放ってくることもあると気付いていた。そのため、水晶の動きが止まる前にかなり安定した飛行が可能なライオネルと驚異の跳躍力を持つクリフォードが特攻を仕掛ける戦法を取り始めたのだ――元々相性がかなり良い彼らの特攻が上手く行くのは良いのだが、それを行うタイミングが段々早くなってきているのが唯一の不安要素だ。特にクリフォードは混血種故に跳躍距離が足りずに落下すれば大惨事に成りうる。もう少し大人しくしていて欲しいのだが、どうやら彼らにその気はないらしい。
「紡ぐは慟哭の証明! ――アンチテーゼ・レイ!」
そうしている間にポプリの術が完成した。細い黒紫の光線が一斉に地面から突き出し、さらに雨の如く天からも降り注ぎ、機械生物を貫いていく。ひび割れた生物の身体からバリバリという耳障りな音が部屋に響いた。
しかし、まだ動きは止まらない。闇属性が弱点という話ではあったが、これだけで終わる程、この生物は弱くなさそうだ。
(最初のならこれ一発だったんだろうが、段々強くなってるしな……)
この巨大機械生物との戦いがいつまで続くのかは誰にも分からなかった。ライオネルとクリフォードの特攻が早くなっているのもこれが原因だろう。終わりの見えない状況は精神衛生上よろしくないものだ。
エリックがライオネルと話す姿を確認してからクリフォードは後ろに飛び、機械生物から距離を取る。ここまでの戦いで、肉弾戦ではあまり機械生物に大きなダメージを与えられないことは分かっていた。彼の連撃はあくまでも全員が到着するまでの間を確保するための行為であり、治癒術要員であることも加わってエリック、ライオネルの到着後は術での補佐が彼の役割となる。
そして地面に足が付くと共に、クリフォードは両手を前に突き出すような姿勢を取り、叫んだ。
「水の典礼を織り成せ! ――カタラクト!」
刹那、青く輝く円輪が機械生物の上空に浮かび上がり、弾けた。滝の如く、大量の水が降り注ぎ、衝撃で機械生物の動きが微かに鈍った。
「行くぞ、エリック!」
「ああ!」
不思議と、その水はエリック達を濡らしてはいない。床に出来た水溜まりを踏みつけ、飛沫を撒きながらライオネルは機械生物に飛びかかった!
「
身体を捻り、勢いに任せて数回転。飛び上がった状態のまま連続斬りを繰り出す。金属と金属がぶつかり、甲高い音と共に火花が散った。ズボンに水が染み込むのを感じながら、エリックはその場に片膝と剣の切っ先を付け、握り締めた剣に意識を集中させる。
「――
辺り一面に散った水が、エリックの声に応え、煌く。
水は意思を持つかのように浮かび上がり、無数の小さな刃となって機械生物を四方八方より貫いた。そして、水の刃と共に飛び出したエリックはそのまま剣を大きく薙いだ!
「――
放たれたのは、巨大な衝撃波。機械生物の身体の上にいたライオネルが飛び上がると同時に衝撃波は生物の胴体に直撃し、大きく後ろに押し飛ばす。
「ッ!」
その際に壊れたらしい機械生物の身体の破片が、エリックの右腕を深く斬り裂いた。だが、焦る必要はない。
「この真なる祈りに応え、訪れしは刹那の安寧。我が盟友の痛みを消しされ! ――ヒール!」
クリフォードが唱えたのはマルーシャも使用する治癒術『ヒール』。
彼の治癒術はマルーシャやディアナと比較すると詠唱時間がかかってしまう上にやや回復量が少ないのが難点だが、「必要な時に即座に詠唱を開始する」能力においては彼女らよりも明らかに秀でていた。こればかりは経験の差だろう。
「――常闇よりいでし者、其は覚めぬ悪夢への案内者。我阻みし愚者を魅了し、黄泉へと誘え」
ポプリの詠唱が始まった。聞いたことの無い詠唱だが、開始までに時間を取られていたことを考えれば間違いなく大技だ。これで決めようと考えているのだろう。
「精霊よ、彼の者に聡明たる闇の力を――メルジーネ・トイフェル!」
クリフォードが補助術を使用する。紫の光がポプリの周りに集い、彼女の中に吸収された。
「黒紫色の翼に惑い……堕ちよ」
ふっと、ポプリは笑みを浮かべる。右手を高く上げた彼女の周囲を漆黒の蝶が舞い始めた。桜色のリボンが、風も無いのに揺れた。
「――フラッターズ・ディム」
蝶は舞いながら、機械生物のドーム状の頭部の上へと集まり、“何か”を形成していく――そして蝶は禍々しさを放つ剣と化し、機械生物の巨大な身体を豪快に貫いた。
「……。綺麗なのか怖いのか分からない術だな」
ウンディーネの神殿に入ってから、何故かポプリが怒涛の勢いで強力な術を習得していく。アンチテーゼ・レイもフラッターズ・ディムも、ここに来てから取得した技だ。後者に関しては、恐らく“たった今”思いついて発動させたのだろう。
「あら? あたしの術にしては綺麗だと思うわ」
「確かに綺麗だったのですが、多分ポプリの表情と態度のせいで恐ろしい感じになったんでしょう……せっかく君に似合う雰囲気の術だったのに」
「あら? あたし、剣似合う?」
「そっちじゃないですかねー」
クリフォードは苦笑し、肩を竦めてみせる。ポプリはきょとんとした表情で首を傾げている――エリックとライオネルは、そんな二人を放置して歩き出す。ぴくりとも動かなくなった機械生物の背後で、壁と同化していた扉が開いたのだ。
「……。あえて初恋拗らせまくった兄貴の方を応援したくなるの、オレだけかな」
「ははは……分からなくはないな」
それにしても、ライオネルの適応力は素晴らしいものがあると思う……色々な意味で。
▼
扉を抜け、再び階段を上がっていく。もう随分時間が経ったような気がするが、ライオネルの調子が悪くなることは無かった。彼に対しては、精霊の加護が効いているのかもしれない。それでも油断はできないとエリック達は足を止めることなく進み続ける。
途中現れる魔物の弱点属性が闇である確率が高いことも幸いで、ポプリの大技が上手く決まれば、そこまで時間をかけずに魔物を退けることができた。
彼女単独であったならば早々に魔力切れを起こしたかもしれないが、ド派手な攻撃術ばかりを覚えていく彼女とは対照的に補助術を多く覚えていたクリフォードの補佐で心配はいらなかった。
これまでろくに戦闘に参加していなかった彼だが、エリック達の戦いを見ているうちに色々と取得していたらしい。そして彼ら二人だけでは厳しい前衛での戦いはエリックとライオネルが苦無く行うことができた。
アルディス、マルーシャ、ディアナの不在は心配要素でしかなかったのだが、上手くバランスの取れたメンバーで神殿攻略に挑むことができたのは不幸中の幸いだったと言えよう。
「おおー……多分最上階だな。本当、何でもありだなこの空間……」
漸く辿り着いた最上階は、室内だというのに草木が生い茂った場所だった。それだけではなく、一体どこから流れてきているのか小さな滝まである。その滝が生み出す泉の中心で待っていたウンディーネは、エリック達の姿を見てにこりと微笑んだ。
『ルネリアルとスウェーラルは、小さな泉がお気に入りだったそうよ……その泉の名前が“ク・ヴェゼーレ”っていうそうなの。現代語に訳せば“クリフォード”になるわね。あなたのお兄さんの名前を考えたら、間違いなくあなたのお名前はこの泉から来ているのでしょうね』
そう言って、ウンディーネはこちらに寄ってきた。彼女の動きに合わせ、クリフォードも前に歩み出る。自身の前で跪いた彼に、ウンディーネはゆっくりと手を伸ばす。
『クリフォードちゃん……いえ、クリフォード。お疲れ様でした』
「僕だけの力ではありませんよ……それでも僕を、あなたの契約者として、認めて頂けますか?」
『……勿論よ』
ウンディーネの細い指がクリフォードの右目の下を撫でる。間違いなくクリフォードを怯えさせる行為である筈だが、彼は特にそのような素振りを見せない。それは両者の間に信頼関係がある証だろう。ウンディーネが再び、優しげな笑みを浮かべる。
『――汝、我に何を望む?』
口調が変わったが、表情はそのままだ。
「……」
クリフォードは目を伏せ、ほんの刹那の間だけ思考を巡らせる。そして彼は、力強い金と銀の瞳をウンディーネへと戻し、彼女を見上げて口を開いた。
「我が名に恥じぬよう、彼らを――盟友達を、大切な者達を“清く導くための力”を。彼らが傷付き、汚されぬための……強き、癒しの力を!」
『……!』
クリフォードの言葉に、ウンディーネは青の両目を見開き、言葉を失う。だが、それは僅かな時間であった。彼女はおもむろにクリフォードの左手首に触れ、エリック達の方を見た。
『ありがとう』
その言葉の意味を問うよりも先に、彼女の姿は透けていく。代わりに残ったのは、クリフォードの左手で輝く深い紺碧色の宝石と銀の装飾の美しい、指輪と腕輪が繋がったような不思議な形状の装飾品だった。
「……バングルじゃ、ないんだな。ちょっと、手首がきつそうだ……」
これは仮契約ではなく、本契約だ。だから装飾品の形状が違うのだろう。それは良いのだが、銀装飾が彼の手首に残された痣をぴったりと覆うような形状であるがゆえに少し思うところがある。
立ち上がったクリフォードの左手首で輝く装飾品を見て、エリックはポツリと呟く。それを聞き、クリフォードは困ったように笑みを浮かべた。
「拘束具と違って軽いし、痛くはないよ。だから、大丈夫だ」
「! いや、その……」
「ですが、ちょっとした拘束具みたいなものですよ。契約者が馬鹿な行動を起こさないためのね」
左手首を覆う腕輪を右手でそっと撫で、クリフォードは軽く首を傾げてみせる。
「仮契約とは違って、本契約は精霊と頻繁に会話できなくなる代わりに彼らの意思が強く表に出てくるんだ。何故かと言うと、契約者は上位精霊と同化したような状態になるからな。ウンディーネが僕の身体を乗っ取ろうと思えばあっさり乗っ取れるんですよ?」
「え……そ、それ、大丈夫なのか?」
ちらりと、脳裏にマルーシャの姿が過ぎった。今のクリフォードは、シンシアとマルーシャと同じような関係になっているということなのだろう。どう考えても恐ろしい状況だというのに、彼は口元に手を当ててくすくすと笑ってみせる。
「むしろ、そうじゃないと精霊が危ないんだ。この状態で僕が死ねば、ウンディーネも共倒れする……本契約は契約者自身が精霊の神殿の代わりとなるようなものだから。万が一、上位精霊が悪意を持って契約者の身体を奪うようなことをすれば、マクスウェル様が干渉してくれる。だから、安心して良いぞ」
上位精霊は神殿を離れることができない。そのため仮契約の段階では精霊の力を借りる度に彼らを一時召喚する必要があった。だが、本契約の場合は常に精霊は契約者と共に在る。ゆえにその都度精霊を召喚する必要はなくなるが、精霊側には大きなリスクが伴う。だから、本来は『試練』が待ち受けているのだろう。次期ウンディーネのクリフォードであっても、神殿を突破するまで契約を保留にされたのはこれが理由に違いない。
「だから、マクスウェルはあたしかクリフだって言ってたの? 神殿代わりになるのって、そんな単純なことじゃないだろうし」
「いや、結論から言えば単純だ。年齢で選んでる」
「……え?」
「肉体が幼いと、上位精霊の意志関係なしに乗っ取りが発生する危険性があるんだ。少なくとも成長期は終わっていないと駄目だ……うーん、色んな事情を考慮してもエリックはセーフか? ディアナと、肉体年齢だけだと最年少のアルは論外だな。確実に乗っ取られる。あとマルーシャもまだ怖いな」
だから「ポプリが行けるなら自分で良いだろう」と彼は口にしたのだろう。肉体年齢はさておき、彼は自分達契約予定者の中では最年長だ。エリックの成長期は恐らく終わったが、妙な覚醒の仕方をしたことや体内精霊不在の件を考えれば最初の契約者に指名されなかったのも理解できる。
「え、じゃあ間違いなく無理な奴三人か? だったら鉱山行かねぇとな……まあ、先にポプリの契約だろうが」
「鉱山? スカーラ鉱山のこと? 何かあるの?」
「ああ。ほら、あの鉱山って――」
アルディス、マルーシャ、ディアナの三人が契約するまでに何年も掛かる、等ということは無かったらしい。しかし、それに対して何か反応することはできなかった。ライオネルの顔から、一気に血の気が引いたのだ。
「!? 時間切れか!?」
加護が切れ、調子を崩したのかとエリックは慌ててライオネルの肩を叩く。しかし、彼は首を横に振るい、困惑の色が滲んだ赤紫の瞳をエリックに向けた。
「……帰るぞ」
「え……?」
調子が悪いわけではないらしい。だが、相変わらず彼の顔色は悪い。一体どうしたのかと聞くよりも先に、ライオネルは泉の傍に浮かび上がった魔法陣へと走り出した。
「ライオネル!?」
「早く来い!!」
異常事態だということは分かった。そして恐らく、あの魔法陣は神殿の最下層へと繋がっているのだろうということも。けれども、理由は分からぬままだ。説明を求めたいが、叶いそうにない。困惑したままのエリックに、ライオネルは声を掛ける。
「エリック、落ち着いて聞けよ。時間が無いんだ」
名指しだった。一度黙り込み、そして、彼は再び口を開く。
「マクスウェル様からの伝達だ……ルネリアルに、武装した黒衣の龍が攻め込んだらしい」
「――ッ!?」
ルネリアルが、危ない――。
一体どういうことなのかと、何故そんなことが起こったのかと、ライオネルを問い詰めたい。しかし、そんなことをしている余裕など無いことは明らかだった。今は、余計なことを考えてはいけない!
「……」
「緊急事態だ。船に全員乗った時点で、マクスウェル様がオレ達をルネリアルの傍まで飛ばして下さるそうだ。レイバースに残っている奴らには、船に乗ってからお前の口で伝えてくれ……多分、取り乱すだろうから」
ポプリもクリフォードも、あまり良い顔はしていない。だが素直にライオネルに従い、魔法陣の上に駆け乗った。彼女らはそこまでルネリアルに思い入れが無いのだろうし、それ以前にこういった場では非常に賢い。取り乱し、立ち止まって騒ぎ出すようなことはなかった。
そもそも、そうなってしまう可能性が高い人物が、今この場にいなかったからこそライオネルは事情をすぐに話してくれたのだろう――少なくとも、マルーシャがこの場にいた場合、彼は何も言わずに魔法陣まで走ったに違いない。
魔法陣が輝く。気持ちが悪くなる程に、心臓がドクドクと鼓動を刻む。
胸元の布地を掴み、エリックは奥歯を噛み締めて何とか平常心を保とうと深呼吸した後、おもむろに口を開いた。
「分かった。任せてくれ」
ルネリアルは無事だろうか。
兄は――ゾディートは、一体何を考えているのか。
「……ッ」
取り乱すな、取り乱すなとエリックは震える右手に力を込める。何も言わず、優しく肩を叩いてくれる仲間達の存在が、ただただ、ありがたいと思えた。
―――― To be continued.