城下町のダンデライオンー櫻田家の次男は変人?ー《凍結中》   作:ションタ

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それではどうぞ!


第八話

「葵姉様! 僕にも当番クジ引かせてください!」

 

「輝がもう少し大きくなってからね」

 

「くっ……」

 

 

輝は悔しそうな顔をしてクジを引いている5人から離れる。すると彼は何を思ったのか、いきなり自分の右腕をテレビの台に思い切り叩きつける。

 

 

「うぐぐっ……」

 

「お兄ちゃん、だいじょうぶ……?」

 

 

栞は心配そうに声を掛けるが––––––

 

 

「くっ……こんな時に……。今はしずまれ右腕(ジャッカル)……」

 

 

自分の右腕をもう片方の腕でで押さえつけ独り言を言う輝。そんな彼を栞は呆然と見守ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

「外出たくない……」←『買い物』

 

「お前もよく『買い物』引くよな。何か取り付いてんじゃねーの」←『休み』

 

「そういうお前も、毎回『休み』の札引くだろ」←『掃除』

 

「やっぱりアンタ、ズルしてるでしょっ!!」←『洗濯』

 

「してねェって!! 話の中で書かれてねェだけで、他んとこではちゃんとやってるっつーのッ!!」

 

「幸、その発言は色々とまずいから止めろ」

 

 

4人で当番について話しをしていると、輝が修に話し掛けてくる。

 

 

「修兄上! 僕にもお買い物をやらせてください!」

 

「さっきからどうした輝。理由を言ってみろ」

 

 

修は同じ目線になるよう、しゃがみ込んで輝に聞く。

 

 

「……僕は大切なものを守るために、もっともっと強くならなくちゃいけないんだ……。そのためには……試練が必要なんだ!!」

 

「気に入った!! いいだろう任せる!」

 

「修兄上!!」

 

(アホくせェ〜)

 

 

2人の会話に幸は頬杖を突いて呆れ顔をする。一方栞は、輝が1人で買い物に行くことに心配する。このまま兄を行かせていいのか?そう考えた栞は––––––

 

 

「わたしも行く」

 

 

自分も付いて行くことにした。

 

 

「……栞、これは試練なんだ。どんな危険が待ち受けているかわからないんだぞ……」

 

「…いく」

 

「栞……。栞は本当に甘えん坊だな……。わかった、絶対に僕から離れるんじゃないぞ!?」

 

 

輝の許しが出て一安心する栞。首を思い切り縦に振る栞。

 

––––––こうして2人の初めてのお使いが始まった。

 

 

 

 

 

 

––––––輝と栞が買い物に出かけてすぐのこと。

 

 

(2人で行かせちゃったけど、やっぱり心配……)

 

 

本来自分が行くはずだった為、妙な罪悪感を感じる茜。

 

 

(こっそり後をつけてみようかな……。でも変装しないとすぐ見つかりそうだし……)

 

「お、そのアイス美味そーだな。光、一口くれよ」

 

「えぇ……。幸ちゃんの一口大きいからなぁ……」

 

(そうだ!)

 

 

あることを思い付いた茜。急いで光に喋り掛ける。

 

 

「光! 変身よ!!」

 

「…………え?なに突然……ごっこ遊び?……」

 

「茜、さすがにそれはなァ……」

 

 

茜の変身発言にドン引きする幸と光。

 

 

「違うの!! 説明するから2人とも引かないでっ!!」

 

 

 

〜茜説明中〜

 

 

 

「なるほどな」

 

 

幸は親指と人指し指で顎を挟んで言う。

 

 

「でも、追っかけるなら最初から自分で行けばいいのに……」

 

「今更言ってもしょうがないでしょ! いいから早く!!」

 

 

怒鳴る茜、光は眠そうに欠伸をかいて続ける。

 

 

「ふわぁ〜……。それで、何歳くらいに変身したいのー?」

 

「えっ、そうね……25…いや、7くらいかなぁ?」

 

「おっけぇ〜」

 

 

気が抜けた声で光は生命操作(ゴッドハンド)を茜に使う。茜の体は見る見るうちに大人の女性の体型––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––––にはならず、小学校低学年くらいの女の子に変貌する。

 

 

「27って言ったじゃん!!」

 

「7歳って言ってました!!」

 

 

注文と違う年齢に変えられたことに、茜は怒鳴りながら文句を言うが光も言い返す。

 

 

「おい、早くしねェとアイツら見失うぞ」

 

 

言い争っている2人に幸は呆れ顔で言う。

 

 

「もう……じゃあ次は幸ちゃんだね」

 

「はァ? なんで俺まで––––––」

 

「そうだね! 面倒臭いから茜ちゃんと同じ歳ね!」

 

「ちょっ!?」

 

 

言い返すそうとした幸だが、それよりも早く光の生命操作(ゴッドハンド)で姿を変えられてしまう。幸の姿も茜と同じ小学校低学年くらいの男の子に変貌する。

 

 

「わぁー! 幸ちゃん可愛い!」

 

 

光は小さくなった幸をギュッと抱きしめる。

 

 

「おい光! 苦しいから離れろ!」

 

「いいじゃん、ちょっとくらい!」

 

 

そう言うと光は抱きしめる手を強める。抱きしめられている幸は、ダルそうに溜め息を一つ吐く。

 

 

「茜ちゃんも可愛いと思うよね!」

 

 

光は嬉しそうな表情で茜に聞く、が––––––

 

 

「……」

 

「茜ちゃん?」

 

 

茜は何も言い返さない。いつもの彼女だったら「何やってるの光!?」と怒鳴りながら光のことを引き離そうとする。だが今の茜はそれがない。それどころか彼女は、幸を見た途端悲しそうな表情を浮かべている。

 

 

(……なるほどな)

 

 

幸は今の自分の姿を見て何かを察する。

 

 

「光、ちょっと退いてくれ」

 

「え、うん……」

 

 

幸は光が自分の体から離れると、悲しそうな表情をしている茜の元へ近寄っていく。彼女の正面まで来ると、幸は茜の頭を優しく撫でながら話し掛ける。

 

 

「茜、“アレ”はお前のせいじゃねーんだから気にすんなよ」

 

「でも! “アレ”は私のせいで「茜ッ!!」!?」

 

 

大声で名前を呼ばれた茜は体をビクッとさせる。光も自分が呼ばれた訳ではないが、茜と同じような反応をする。

 

 

「俺が気にすんなっつってんだから気にすんな。わかったか?」

 

「……うん」

 

 

先程とは違い、幸は優しい声で茜に言う。茜も納得していなさそうだが、素直に返事をする。それを確認すると、幸は真剣な顔から何時ものヘラヘラした顔へ戻る。

 

 

「うしっ! この話は終わりな! それよりも輝と栞だ。光も早く変身しろ。本当にアイツら見失うからよォ」

 

「えっ、うっうん!(幸ちゃんのあんな顔、初めて見たかも……)」

 

 

そう思いながら返事をする光。長年の付き合いで幸の色んな表情を見てきたが、あの様な表情を浮かべた彼を見るのは初めてに近かった。光は2人に一体何があったのか疑問に感じたが、今は輝と栞を追うのが先。彼女はもう一度、幸の真剣な顔を思い浮かべながら変身するのだった。

 

 

 

 

 

 

––––––場所は変わって輝と栞。

 

家を出発してから数分後––––––

 

 

「あ!! 買い物バッグをわすれた!!」

 

 

早速問題に直面していた。

 

 

「出発早々問題が起こるなんて……。この試練、ひとすじなわでは行かないな……。栞、戻るよ!!」

 

 

そう言って家に引き返そうとする輝。しかし栞に裾を引っ張られ止められてしまう。「なんだ?」と思い彼女の方へ振り返ると、そこには取りに戻ろうとしていた買い物バッグ姿があった。

 

 

「なんと!!」

 

 

驚いた輝は思わず声を大にして言う。

 

 

「栞、落としたら大変だから僕がバッグ持つよ」

 

 

安心した輝は、栞から買い物バッグを受け取ろうとする。だが栞はそれこそ落としそうだと心配し、バッグを抱えながら「わたしが持つ」と言う。そんな彼女に、輝は少し驚くが––––––

 

 

「しょうがないなぁ。わかったよ、ちゃんと持ってるんだぞ?」

 

 

と、仕方がないといった感じで、栞に任せることにする。それに対し栞は、安心した表情で首を縦に振って返す。

 

 

 

 

 

 

「ワンワン!! ワンワン!!」

 

「ぼっ、ぼぼ僕をあまり怒らせない方がいいぞ……!」

 

 

スーパーへ向かう道を歩いている途中、2人は犬と遭遇する。輝は自分を盾にして栞を守りながら、吠える犬に果敢に立ち向かう。しかし、彼は犬に怯えている様で体をビクつかせている。このままでは拉致があかない。そう思った栞は物体会話(ソウルメイト)を使い犬に話し掛ける。

 

 

〈イヌさん、わたしたちは前を通りたいだけなの。わるものじゃないよ〉

 

〈ほう、そうか……それはすまなかった。我が領土への侵入者かと思ったものでな〉

 

 

どうやら誤解は解けたようだ。

 

 

〈いきなさい〉

 

〈ありがと––––––〉

 

「怖気づいたか! 今だ栞!!」

 

 

犬が吠えなくなったのは怖気づいたのだと思い、輝は栞を連れて一目散にその場から退散する。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……。王の気配がなければ危ないところだった……。ただの犬が悪魔改造されてるなんて……」

 

(あくま……?)

 

 

輝の言葉の意味がわからず首を傾げる栞。

 

 

「ホントはあんなやつ、僕の怪力超人(リミットオーバー)を使えばどうってことないんだよ」

 

 

––––––輝は能力を使うと大人以上の強い力を発揮することが出来るのだ。

 

 

「でも母上がむやみに使ったらダメだって……。これは母上との″けいやく″……。それだけ僕の能力はとても強力で危険なんだ……」

 

(お兄ちゃんが危なっかしいからだと思うの……)

 

 

右手の平にマジックで描かれた刻印を見つめ独り言を言う輝に、栞は心の中で呟く。

そんな2人に––––––

 

 

「ちょっと近すぎない?」

 

「何言ってるの。そのための変身でしょ?」

 

「それでも限度があんだろ……」

 

 

コソコソしている怪しい人影が三つ。それに気が付いた栞は、3人がある場所をジィーッと見つめ続ける。

 

 

「栞、どうした?」

 

 

輝は不思議に思い栞に声を掛ける。それに対し彼女は、無言で自分が見つめていた場所を指差す。輝はその方向へ目を向ける。

 

 

「むっ! そこのお前たち、コソコソとなにしてる!!」

 

「みつかった!」

 

「ほれ見ろ」

 

 

2人を覗いていた怪しい人影––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––––茜、光、幸の3人(変身後)は輝に呼ばれて素直に顔を出す。

 

 

「お前たちどこかで……」

 

「えっと……その……」

 

「は! ささささては指名手配犯か!?」

 

「ちち違うの! 怪しいものじゃないの!!」

 

 

輝と茜は両者ともに慌て出す。

 

 

「……」

 

「「……」」

 

 

一方、慌てている2人とは対象的に此方は静か。栞は黙って光と幸の2人を凝視し続けていた。

 

 

(これじゃあ、バレんのも時間の問題だな)

 

 

そう思った幸はある事を実行する。

 

 

「ああー!! アレはなんだー!!」

 

 

大袈裟な感じで大声を出し、輝としての後ろを指差す。

 

 

「なんだなんだ!?」

 

「?」

 

 

どうやら2人は引っかかってくれた様だ。

幸はその隙に––––––

 

 

「逃げるんだよォ!」

 

「へ?」

 

「ちょちょちょっと!」

 

 

茜と光の手を取り急いで二人から逃げ出す。

 

 

「あっ! お前たち待てー!!」

 

 

輝は声を上げて言うが、3人は既に遠くの方へまで逃げていた。

 

 

 

 

 

 

「険しい道のりだった……。でも栞、本番はここからだぞ!」

 

 

3人に逃げられた後、輝と栞は無事スーパーへ辿り着き、買い物を開始しようとする。しかし、ここである問題が起こる。

 

 

「……お兄ちゃん、お買い物メモがない……」

 

「なんだって!?……あ! もしやさっきの奴らが盗んだんじゃ!!」

 

 

メモがないことに慌て出す輝。栞は物体会話(ソウルメイト)を使い、急いでメモに話し掛ける。

 

 

〈メモさんどこ? いたらお返事してほしいの……〉

 

〈ここです!〉

 

 

栞はメモの声が聞こえる方へ目を向ける。そこには、輝の胸ポケットからはみ出しているメモの姿があった。

 

 

「やっぱり悪い奴らだったのか……。戻って捕まえないと…….!!」

 

「はぁ……」

 

 

未だに気づいていない輝に、栞は呆れた表情で溜め息を吐くことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

あの後、なんだかんだで買い物を終わらせた2人は、家へ帰ろうと足を運ばせていたのだが––––––

 

 

「グルルルル……」

 

「ひいい!? おお前、あっち行け!」

 

 

本日二度目、犬と遭遇していました。栞は先程の犬同様、物体会話(ソウルメイト)を使い犬に話し掛ける。

 

 

〈イヌさん、わたしたちはここを通りたいだけなの〉

 

〈おめぇ食いもん持ってんな。それよこせや〉

 

〈こ、これはダメなの……。あの、通して〈るせぇなあ……よこさねぇならおめぇごと食っちまうぞ!!〉

 

 

犬はそう言うと栞に襲い掛かろうとする。

だが––––––

 

 

ドゴォォォォン!!

 

 

輝が地面に思い切りヒビを入れ犬を黙らせる。

 

 

「おいお前、弱いものを攻撃するなんて卑怯なやつだな。生き物に向けて能力を使っちゃ駄目って言われた。悪が立ちはだかろうとも、正々堂々戦うって約束した」

 

「でもお前が栞を傷つけようとするなら、僕は契約をやぶるぞ」

 

 

最後にとびきりの威圧を込めて輝は言う。そんな輝に、犬は怯えながら一目散にその場所から逃げて行くのだった。

犬が何処かへ行くのを確認すると、輝は腰を抜かしている栞に手を差し出す。

 

 

「栞、だいじょうぶ?」

 

「うん」

 

「よし! 栞は強い子だな! さぁ、早くうちに帰るぞ!」

 

 

そう言うと輝は家を目指して歩き出そうとする。すると、裾を引っ張られ感覚が。

 

 

「ん? ホントに栞は甘えん坊だな!」

 

 

輝は笑顔を浮かべ、栞と並んで歩き出す。

 

––––––こうして輝と栞の初めてのお使いは無事終わりを遂げた。

 

 

 

 

 

 

「なんかあの2人見てると昔を思い出すなぁ……」

 

 

物陰から見ていた茜、光、幸。

茜は並んで歩く二人を見て、幸と初めてお使いに行ったことを思い出しながら呟く。

 

 

「幸ちゃんもそう思うよね」

 

 

幸に同意を求めようとする茜。

しかし、幸はそれどころではなかった。

 

 

「あの犬ぶっ殺すあの犬ぶっ殺すあの犬ぶっ殺すあの犬ぶっ殺すあの犬ぶっ殺すあの犬ぶっ殺すあの犬ぶっ殺すあの犬ぶっ殺すあの犬ぶっ殺すあの犬ぶっ殺すあの犬ぶっ殺すあの犬ぶっ殺す––––––」

 

 

彼は目を血走らせ、顔に血管を浮かべながら同じ言葉を何回も繰り返していた。よっぽどあの犬のことが許せないようだ。

 

 

「ぎやぁー!! 幸ちゃんが壊れたっ!!」

 

 

光は怯えて茜の後ろに隠れてしまう。

 

 

「はぁ……」

 

 

茜は色々と台無しにした幸に思わず溜め息を吐いてしまうのだった。

 

 




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