城下町のダンデライオンー櫻田家の次男は変人?ー《凍結中》   作:ションタ

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それではどうぞ!


第九話

幸は今、間島に呼び出しをくらい職員室に来ていた。

 

 

「なんすか先生? 俺を呼び出して? あ、もしかしてデスビームとソーラービームの違いについて聞きたいんすか?」

 

「全然違う。今日の遅刻についてだ」

 

 

間島は無表情で真っ向から否定して言う。

 

 

「それは今朝説明したじゃねェっすか。チャラ〜イ男に絡まれてる女子を助けたって」

 

「……前々から思ってたけどお前はアレなのか? どっかの不幸少年なのか? 誰かを助けないと気が済まないのか? ツンツン頭なところも似てるし」

 

「俺は不幸でも無けりゃあ、能力を打ち消す右手も持ってないっすよ。それに俺の髪は天然もの、一緒にしねーでくだせェ」

 

 

幸は目を細めて間島に話す。

 

 

「すまんすまん。でも、理由はどうあれ罰は受けてもらうからな。櫻田兄、俺の仕事手伝え」

 

「えェ……」

 

「拒否権はないからな」

 

 

もの凄く嫌そうな顔をする幸に、間島は追い打ちを掛ける。

 

 

「はァ……。で、俺は何をすればいいんすか?」

 

 

幸は諦めたらしく、溜め息を吐いて間島に聞く。

 

 

「このプリントをホチキスで留めてくれ」

 

 

間島はプリントに指を差しながら幸にホチキスを手渡す。

 

 

「げッ!? こんなに……。なんのプリントっすかコレ?」

 

「一年全クラスの夏休みの宿題だ。適当にやるなよ。その間俺は休け––––っじゃなくて他の仕事してくるからよ」

 

「おい、今『休憩』って言い掛け––––––」

 

「じゃっ! 頑張れよ!」

 

 

幸が言い返す前に、間島は職員室から出て行ってしまう。

 

 

「チッ、逃げやがった。本当にアイツ教師なのかァ?」

 

 

仕方なく幸は間島に言われた通りに、ホチキスでプリントを留めていくのだった。

 

 

 

 

 

 

「チッ。あのクソ先公、こんな時間まで付き合わせやがって……」

 

 

現在18時過ぎ。周りは暗くなり始めており、幸は1人寂しく下校していた。

 

 

「あ゛あ゛〜あちィ〜……。去年よりも暑いんじゃねーのこれ……。温暖化はどうなってんだよ……」

 

 

額の汗を拭いながら暑さに愚痴をこぼす。

そんな幸の前にオアシスが現れる。

 

 

「おっ! 自販機発見!!」

 

 

そう、自販機だ。幸は早速ポケットから財布を取り出しすと自販機目掛けて真っ直ぐ進む。

 

 

「丁度いい、喉乾いてたしなんか飲むか。さて、どんな飲み物があ…る……」

 

 

自販機の前まで来ると、幸は思わず唖然としてしまう。

何故なら––––––

 

 

ピンクカレーコーラ

 

納豆ミルクティー

 

果汁100%梅ジュース

 

カルボナーラメロンソーダ

 

超激甘ドリアンコーヒー

 

野菜ジュースinチョコレート

 

お・み・ず

 

 

「………………」

 

 

並んでいたラインナップが酷かったからだ。

 

 

「は?」

 

 

少しすると唖然としていた幸が動き出す。

そして––––––

 

 

「ゲテモノばっかじゃねーかッ!?」

 

 

と、声を大にして思い切りツッコム。

 

 

(んだよこの自販機!? まともな品が何一つねェじゃねーか!! もう訳わかんねーよおいィィィ!!!)

 

 

頭を両手でワシワシさせながら、心の中で更にツッコム幸。ちょっとした混乱状態に陥っているようだ。

 

 

 

〜数秒後〜

 

 

 

「…………」

 

 

混乱していた幸は落ち着くと、急にピタリと止まってしまう。このまま買わずに帰るのかと思われたのだが––––––

 

 

(……だが…気になる……)

 

 

実際、このゲテモノジュースたちはどんな味がするんだろうか。幸は気になってしまう。

 

 

(このまま帰っちまったら気になって朝も起きれねェからなァ……。飲むか、飲まねーか……)

 

 

朝も起きれないのはいつものことだが……。腕を組んで真剣に考え始める幸。そして彼は考えに考えて考えた末––––––

 

 

「……買ってみっか」

 

 

買うことにした。あれだけツッコミを入れていた彼の何処へ行ったのやら……。

幸は買うと決めるや否や、財布から小銭を取り出し自販機の投入口に入れる。すると小銭を入れたことによりボタンが点灯する。

 

 

「ん〜……やっぱコレだな」

 

 

そう言うと幸はボタンを押す。ガタゴトと音を響かせながら飲み物が下に落ちる。幸が買ったのは名前の響きが気になった『お・み・ず』だ。幸は自販機から出てきた『お・み・ず』を取り出すと、早速蓋を開けてみる。

 

 

「……匂いは……普通だな」

 

 

鼻を蓋に近づかせて匂いを確かめる。

確認が済むと––––––

 

 

 

「150円も掛かったんだ。無駄になりませんようにっ!」

 

 

幸は祈りながら『お・み・ず』をゴクゴクゴクと3回喉に通す。果たして『お・み・ず』の味はどうなのか。幸は蓋から口を外して言う。

 

 

「……普通…だな」

 

 

どうやら『お・み・ず』の味は驚く程に普通。良くもなく悪くもなく普通の水の味だった。

 

 

「んだよ、ビビらせやがって」

 

 

普通の味だったことに幸はホッとする。

 

 

「ただの水だったじゃnオロロロロ––––––」

 

 

幸は言い欠けたところで盛大にリバースする。結局彼が飲んだのはただの水ではなかったようだ。

 

––––––この後、幸は猛烈な気持ち悪さに襲われ10分程その場から動けなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

幸は玄関の扉を開けて家の中へ入る。

 

 

「はぁ……。今日は色んな意味で疲れた〜……。風呂入ったらすぐ寝よ……」

 

 

幸はグッタリした表情のまま上がり框に座り込むと、右・左の順番で靴を脱ぎ始める。

そこへ––––––

 

 

「あっ! 幸ちゃんおかえり!」

 

 

声が聞こえ後ろを振り返ると、茜が階段から降りてくる。何故か納豆を混ぜながら。

 

 

「茜、何してんだ?」

 

「え?………納豆を混ぜてる?」

 

 

今自分がしていることを確かめつつ、疑問系で答える茜。

 

 

「……言い方が悪かった。なんで納豆混ぜてんだ?」

 

「これ? これはインタビューに来る真島さんのために用意してるの。あの人納豆好きだから」

 

「あぁ、真島(出来る方)か」

 

「……前から思ってたけど、その呼び方なんなの?」

 

「うちの学校にも間島(出来ない方)がいるだろ。紛らわしいからそう呼んでる」

 

 

そう言うと、幸は立ち上がりリビングへ足を進ませる。茜もその後ろから付いて来る。

 

リビングへ続く扉を開けると、末っ子の栞も茜と同じ様に納豆混ぜていた。

 

 

「栞も納豆混ぜてんのか……。てかスルーしたけど、お前インタビュー中に納豆食わすのか?」

 

「え、おかしいかな? さっき遥にも言われたんだけど」

 

「十分おかしいと思うが……」

 

 

顔をキョトンとさせ首を傾げる茜に、幸は呆れ顔で言う。

 

 

「幸お兄様? おかえりなさい」

 

 

2人で話していると、幸が帰ってきたことに気が付いた栞が声を掛けてくる。幸も栞の頭を優しく撫でながら答える。

 

 

「ただいま。茜の手伝いしてたのか? 栞は偉いなァ」

 

「♪〜」

 

 

栞は幸に撫でられ気持ち良さそうに目を細める。

 

 

「む〜」

 

 

その光景を見た茜は眉を顰めて口をへの字に曲げる。幸はそれに気付くと、溜め息を一つ吐き––––––

 

 

「そういや、さっきは言い忘れてたな。ただいま、茜」

 

 

と、空いている手で茜の頭を撫でる。

 

 

「♪〜」

 

 

茜も幸に撫でられて気持ち良さそうに目を細める。

 

 

「茜、インタビューはいつ来るんだ?」

 

「もうそろそろ来ると思うよ」

 

「ん、そうか。なら俺も着替えねェとな」

 

 

幸は2人の頭から手を離し、自室へ向かおうとする。その際、頭から手を離された2人は「あっ……」と声を漏らす。どうやらまだ撫でられ足りないようだ。しかし、そんな2人に気づく筈も無く、幸は自室へ行ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

「うしっ、こんなもんか」

 

 

私服に着替え終わった幸。本来ならば彼はジャージ姿なのだが、来客が来るということなので一応私服に着替えたのだ。

 

 

「とりあえず下に行くか」

 

 

幸はリビングへ行こうとする。

その時–––––

 

 

『反抗期きたぁぁぁ!!!』

 

「––––––っなんだ!?」

 

 

茜の叫び声に驚く幸。幸は急いで茜の声がした岬と遥の部屋へと向かう。

 

 

「どうした茜!」

 

 

部屋を覗き込むと、ズーンという擬音が聞こえそうな程暗い顔をしている茜。ベッドの上で不機嫌そうに寝転がっている岬。そしてその2人に対して溜め息を漏らしている遥と岬の感情分裂(オールフォーワン)で生み出された分身達がいた。

 

 

「……こりゃ一体どういう「お兄様ー!!」

 

 

幸が誰かしらに状況を聞こうとすると、岬の分身(色欲)のアスモが飛び付いてくる。

 

 

「またお前か……。急に飛び付くなって何度も言ってんだろ。あと苦しい」

 

「いいじゃないですか。私の体を堪能出来るんですから」

 

 

そう言うとアスモは抱きしめる力を更に強くする。

すると––––––

 

 

「ちょっと何してるの!?」

 

 

さっきまで落ち込んでいた茜が立ち直り、アスモを幸から引き離そうとする。

 

 

「少しくらい良いじゃないですかっ!!」

 

「良くないよっ!! 幸ちゃん困ってるでしょ!!」

 

「茜ちゃんはいつもお兄様を独占してズルいです!!」

 

「べ、別に独占なんかしてないし!! 変なこと言わないでよっ!!」

 

 

茜とアスモは幸の腕を片方ずつ持ち、言い争いながら引っ張り合う。

 

 

「いてててててっ!? お前らやめろ!! 体が裂ける!! 手ェ離せッ!!」

 

 

幸が叫ぶと言い争っていた2人は急いで腕を離す。その後、幸は2人にデコピンをかまして軽く説教をするのだった。

 

 

 

 

 

 

「––––––と、言うことなんだ」

 

「は〜、岬がねェ……」

 

 

幸は遥から話しを聞いて理解する。どうやら岬は分身とは違い平均的な自分を誰からも必要とされていないのでは、と思い込み卑屈になっているようだ。

因みに言い争っていた茜とアスモは下でインタビューを受けている。

 

 

「もういいんだ。『普通』の私が『特別』な人間に相談したって理解されるわけないよね」

 

 

岬はベッドに寝転がりながら言う。分身達は岬の台詞に「普通の人間が分裂とかするかよ」と心の底でツッコム。

 

そんな岬に、幸はベッドまで近づくと、彼女と同じ高さまでしゃがみ込んで喋り出す。

 

 

「なァ岬、確かにお前は俺を含めた家族や分身達(アイツら)と比べたら普通?に分類されるかもしんねェ。そうなんのも無理はねェと思う」

 

「……」

 

「でもよォ、だからなんだっつーんだ? 平均的って事は逆を返せば苦手なもんが無いってことだぜ。何やっても普通なんだからよォ。普通っていいじゃねーか。俺は逆にお前が羨ましくてしょうがねーよ」

 

「……」

 

「それによォ、岬が岬じゃくなったら俺は悲しいぞ。そんなになったら、俺わんわん泣いちまうかもな〜。だから、俺の為に岬は普通のままでいてくれねェか? 頼む!」

 

 

頭を下げてお願いする幸。

そんな幸に岬は––––––

 

 

「ぷふっ!」

 

 

と、吹き出してしまう。岬はベッドから起き上がり幸に話し掛ける。

 

 

「ふふっ、幸ちゃんいきなり変なこと言わないでよ」

 

「仕方ねーだろ。俺が思った全てのことを伝えたんだからよォ」

 

「でも色々と強引じゃなかった?」

 

「それは承知の上だ。な! この通りだ!」

 

 

そう言うと再び頭を下げる幸。

 

 

(ホント、幸ちゃんには敵わないなぁ……)

 

 

岬は頭を下げている幸を見て心の底で思う。

そして彼女が出した決断は––––––

 

 

「仕方ないな〜。幸ちゃんの為に私は普通でいてあげるよ。幸ちゃんの為にね!」

 

 

と、いつもの明るい表情でわざとらしく言う。そんな彼女を見て、遥と分身達はホッと一安心する。

 

 

「ありがとな、俺の我が儘聞いてくれて」

 

 

幸は微笑みながら岬の頭を撫でる。

 

 

「っ!?」

 

 

岬は最初頬を赤く染めて驚いくが、その表情はだんだん嬉しそうな表情へと変わっていく。

そこへ––––––

 

 

「岬ー! インタビューやっぱりあなたが答えてよ! この子エッチな解答ばっかりするんだよ!」

 

 

茜がアスモを抱えてやって来る。

 

 

「はぁ……。今行くから先に行ってて。ちょっと準備するから」

 

「ありがとう!!」

 

 

茜はアスモを下ろして先に行く。岬は分身達を元に戻すとリビングへ向かう。

その途中––––––

 

 

「幸ちゃん!」

 

「ん?」

 

 

岬は扉の前まで来ると幸を呼ぶ。幸も何かと思い岬に視線を向ける。

 

 

「えと……その……ありがとね」

 

 

そう言うと、恥ずかしそうにして急いで下へ降りて行ってしまう。

 

 

「素直じゃねーなァ」

 

 

そんな彼女に対し幸は微笑を浮かべる。

 

 

「兄さん、岬のこと励ましてくれてありがとう」

 

「あん? 別に対したことじゃねーだろ。それより、俺は下行くけどお前はどうすんだ?」

 

「僕は部屋にいるよ」

 

「ん、そうか。んじゃ行ってくるわ」

 

 

幸は部屋を出てインタビューをしているリビングへと向かうのだった。

 

因みに納豆は岬の分身(食欲)のブブによって食べ尽くされてしまったらしい。その事に幸は「ま、その方が良かったんじゃね」と心中で思うのだった。

 

 




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