城下町のダンデライオンー櫻田家の次男は変人?ー《凍結中》 作:ションタ
いつもより早く寝た幸だったが––––––
「んァ?」
目が覚めると、そこはベッドの上ではなく辺り一面真っ白な世界だった。何処も彼処も白、白、白。真っ白だった。
「……」
幸は上半身だけを起こしキョロキョロと何かを探すように周りを見渡す。
するとそこへ––––––
「お! やっと起きたか!」
この世界には似合わない黒––––––まるで◯LEACHの天鎖斬月の具象化姿の様な男が幸に話し掛けてきた。
「……」
「ん? どうした幸?」
何も返さない幸を不思議に思い聞いてくる男。そんな彼を幸は鋭い眼光で睨みつける。
「な、なんだよ……」
睨みつけられた男は一歩後ろへ下がる。ヒビっている彼に、幸は長い溜め息を吐いて口を開く。
「……なァ、こっち連れて来る時は前置きしとけって言ったよなァ?」
「そっそんなこと言ってたか……?」
「何度も言ってるんだが……。つーか、連れて来られる度に『俺死んじまったのか!』って、思っちまうんだぞ? 神様転生されんのかと思っちまうんだぞ?」
「……何言ってんのか分かんねえんだけど?」
「要するにいきなり連れてくんなっつーことだ! チッ、なんで夏休み初日にお前の顔なんか見ねェといけねーんだよ」
「……もしかしてオレ罵倒されてんの?」
「んな事はどうでもいいんだよ。今度からはいきなり連れてくんじゃねーぞ。分かったか?」
「腑に落ちないが分かった」
微妙な顔で応答する男。
「––––––ったく……。で、何の用だ”
幸は謎の男もとい、具現化した自分の能力
「まぁまぁ、そう焦んなって! 今お茶と煎餅出してやるからちょっと待ってろ!」
そう言うと
「ほれ、お前の座布団だ。この上に座れ」
「……」
「ほいお茶だ。いつもは安いお茶だが今日は奮発して高めのやつを買ってみた。大事に飲めよ」
「……」
「えーと煎餅は…………あ!あったあった! これも高い煎餅だから大事に食えよ」
「……」
「ん、どうした幸? そんなキョトーンとして?」
さっきから一言も発しない幸を疑問に思ったのか、
「…………おい、
幸はちゃぶ台に置かれたお茶を見つめたまま、
「え、お茶と煎餅だろ?」
「ちげーよ馬鹿!! そういんじゃなくこの家具一式のことだッ!! テメェ人の体で何やってんだゴラァ!!!」
「おっ落ち着けよ幸」
「落ち着いてられっかァ!!! 人の体でこんなことされたら誰だってこうなるわァ!!」
幸は更に怒鳴り散らす。
「確かにココはお前の体の中、オレはココに住み着いてる。何も話さないでこんなことしてたのは謝るよ……」
「でもな、オレだってこんな一面真っ白な世界に1人でずっといんのは暇で暇で仕方ねえんだ。こんくらいのことは多めに見てくれよ」
「ぐっ……」
思わず声を漏らしてしまう幸。もし自分も同じ立場なら、きっと同じ行動を取ってしまうだろうと考える。
「まァお前の気持ちも分からんでもねーな……。今回は多めに見てやんよ」
「さすが幸! そう言ってくれると思ってたぜ!」
幸に家具の持ち込みを認められ、
「––––––ってか、この家具一式何処で手に入れたんだよ?」
「それは禁則事項だ」
「ああ、そうかい……」
幸は
「お、このお茶高いだけあってホントにうめェな。コレ何処で手に入れたんだ?」
「禁則事項だ」
「チッ、やっぱ言わねーか」
「お前の考えなんておひたしだ。バリッバリッ」
「お見通しな! ほうれん草のおひたしみてーに言うな! あとベタなボケすんじゃねーよ!!」
幸はツッコムともう一度お茶に口を付ける。
「ちょっとテレビつけていいか?」
「別にいいけど、何見んだよ?」
「この間録った◯んま御殿でも見ようと思ってな」
「…………お前って俺が思ってるよりもエンジョイしてんのな………」
自分が想像していた事と違い、色々と自由にしている
「あ、そういや、俺が眠ってる時に大抵お前来るけどよォ、お前っていつ眠ってんだよ?」
「禁則事項だ」
「……あのさァ、お前さっきから何なの? 俺が聞く度に禁則事項って答えやがって。お前は朝◯奈みくるなのか? 止めとけ、お前がやっても気持ち悪ィだけだぞ。バリッバリッ」
そう言って煎餅を頬張る幸。
「おい
「……」
「おーい、聞いてんのか?」
「……」
「おいッ!!」
「うおっ!?」
テレビに集中していたせいか、
「なんだよ幸、大きな声出して」
「やっぱ聞いてなかったのかよ! そろそろ本題に入れっつってんだよ!!」
「えぇ……。コレ見てからじゃダメか?」
「それ録ったやつだろ。後で見りゃいいじゃねーか」
「でも今消したら切り悪いし……」
「はァ……わーったよォ……。それ見終わるまで待ってやるよ……」
「さすが幸だぜ!」
*
「いやー、面白かった!」
「ん、そうだな。お前もこういうのよく見んだな」
さ◯ま御殿を見て満足する
「ココ暇だから色んな番組見てるぞ」
「へェ〜…………。––––って、そうじゃなくて本題だ本題!! テレビ終わったんだからそろそろ話せよ!!」
思い出した幸は
しかし––––––
「まぁまぁまぁまぁ、そう急かすなって。よいしょっと」
「今度はなんなんだよ……」
「一緒にゲームやろうぜ!」
「……話しは?」
「そんなのあとあと!」
「で、ソフトはなんだ?」
「コレだ!」
「スパデラか、久しぶりだなァ。格闘王でもすんのか?」
「いや、まだ途中までしかやってねえから手伝ってくれ」
「手伝う程のソフトじゃねェと思うが……。ま、とりあえずやってみっか」
「おう!」
2人はソフトをセットするとゲームをスタートさせる。
*
––––––6時間後
「やっとエンディングだな……」
「長かったぁ……」
「つーかお前、操作下手過ぎじゃねーか?」
「し、仕方ねえだろ! こういうのは余りやんねえんだから!」
本来なら早めに終わらせる事が出来たのだが、
「
「えーと……朝の7時半だ」
「早めに寝たっつーのに、これじゃいつもと変わんねェじゃねーか……」
「まぁまぁ、いいじゃねえのそれくらい」
「……今日のお前『まぁまぁ』言い過ぎじゃね? すげーイラつくんだけど」
「自分でも思った」
幸は首を振ってボキボキと鳴らす。その横では
「そろそろ帰るか。
「それはいいんだが、元に戻す前にオレの話しを聞いてけ」
「あァ、そういやそれで呼ばれてたんだっけな。すっかり忘れてたわ。––––––っで、話しってなんだよ?」
幸は
「お前、もうすぐ16になるだろ?」
「そうだけど………それがどうした?」
「……もしかして忘れた?」
「は? 何が?」
幸の発言に
「はぁ……。お前と『契約』した時に言っただろ。お前が16になったら“アレ”が始まるって」
「あぁ、“アレ”のことか……」
幸は今の説明でわかったようだ。そんな幸に
「お前はさぁ、俺と契約して後悔してねえか……?」
「は? んだよ急に?」
「いいから答えろ!」
「はァ……。昔と変わんねーよ。後悔なんて少しもしてねェ。あれは俺の意思で決めたことだからな」
「逆にお前には感謝してるくらいだ。“あの時”お前が来なかったら……」
そこまで言うと幸は口を止める。
「…………」
「もういいだろ。そろそろ俺を戻してくれ」
「わかった。いきなり変なことを聞いてすまなかったな」
幸がいなくなったことを確認すると
「……知ってたよ、お前ならそう答えるって。その上で聞くなんて、オレはすげえ卑怯者だな……」
悲しそうな表情で1人呟くのだった。
*
チュンチュン チュンチュン
外から小鳥のさえずりが聞こえ、幸は目が覚める。幸は上半身だけを起こし、
(“アレ”が始まるまで、あと8ヶ月もねーのか………はァ……)
そう思いながら部屋を出てリビングへと向かう。その途中、幸は茜と鉢合わせる。
「よ、茜。はよーす」
「あ! 幸ちゃんおはよう!…………………………えっ!? 幸ちゃん!?!」
「あん?」
元気よく挨拶を返した茜。しかし、数秒すると彼女は驚きの声を出す。
彼女が驚くのも無理はない。朝の8時前、しかも休日に幸が自力で起きることなんて全くと言っていい程ないことなのだ。
そんなことを知る由も無い幸は、訳がわからない顔をする。
「み、皆大変だよ!? 幸ちゃんが、幸ちゃんがぁ!?」
「お、おい!」
茜はそう言うとリビングの方へ走って行ってしまう。幸は茜を呼び止めようとするが、それも失敗に終わる。
––––––この後、幸が家族全員から心配されたのは言うまでも無い。
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