城下町のダンデライオンー櫻田家の次男は変人?ー《凍結中》   作:ションタ

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それではどうぞ!


第十話

いつもより早く寝た幸だったが––––––

 

「んァ?」

 

 

目が覚めると、そこはベッドの上ではなく辺り一面真っ白な世界だった。何処も彼処も白、白、白。真っ白だった。

 

 

「……」

 

 

幸は上半身だけを起こしキョロキョロと何かを探すように周りを見渡す。

するとそこへ––––––

 

 

「お! やっと起きたか!」

 

 

この世界には似合わない黒––––––まるで◯LEACHの天鎖斬月の具象化姿の様な男が幸に話し掛けてきた。

 

 

「……」

 

「ん? どうした幸?」

 

 

何も返さない幸を不思議に思い聞いてくる男。そんな彼を幸は鋭い眼光で睨みつける。

 

 

「な、なんだよ……」

 

 

睨みつけられた男は一歩後ろへ下がる。ヒビっている彼に、幸は長い溜め息を吐いて口を開く。

 

 

「……なァ、こっち連れて来る時は前置きしとけって言ったよなァ?」

 

「そっそんなこと言ってたか……?」

 

「何度も言ってるんだが……。つーか、連れて来られる度に『俺死んじまったのか!』って、思っちまうんだぞ? 神様転生されんのかと思っちまうんだぞ?」

 

「……何言ってんのか分かんねえんだけど?」

 

「要するにいきなり連れてくんなっつーことだ! チッ、なんで夏休み初日にお前の顔なんか見ねェといけねーんだよ」

 

「……もしかしてオレ罵倒されてんの?」

 

「んな事はどうでもいいんだよ。今度からはいきなり連れてくんじゃねーぞ。分かったか?」

 

「腑に落ちないが分かった」

 

 

微妙な顔で応答する男。

 

 

「––––––ったく……。で、何の用だ”悪鬼羅刹(ジャガーノート)”」

 

 

幸は謎の男もとい、具現化した自分の能力悪鬼羅刹(ジャガーノート)に、早く話せと急かすように言う。

 

 

「まぁまぁ、そう焦んなって! 今お茶と煎餅出してやるからちょっと待ってろ!」

 

 

そう言うと悪鬼羅刹(ジャガーノート)は指をパチンッと鳴らす。すると何も無いところからちゃぶ台、座布団、テレビなどが次々に出現する。

 

 

「ほれ、お前の座布団だ。この上に座れ」

 

「……」

 

「ほいお茶だ。いつもは安いお茶だが今日は奮発して高めのやつを買ってみた。大事に飲めよ」

 

「……」

 

「えーと煎餅は…………あ!あったあった! これも高い煎餅だから大事に食えよ」

 

「……」

 

「ん、どうした幸? そんなキョトーンとして?」

 

 

さっきから一言も発しない幸を疑問に思ったのか、悪鬼羅刹(ジャガーノート)は問いかける。

 

 

「…………おい、悪鬼羅刹(ジャガーノート)。コレはなんだ?」

 

 

幸はちゃぶ台に置かれたお茶を見つめたまま、悪鬼羅刹(ジャガーノート)の問いに問いで返す。

 

 

「え、お茶と煎餅だろ?」

 

「ちげーよ馬鹿!! そういんじゃなくこの家具一式のことだッ!! テメェ人の体で何やってんだゴラァ!!!」

 

 

悪鬼羅刹(ジャガーノート)の言葉に痺れを切らしたのか、幸は彼に向かって怒鳴り散らす。

 

 

「おっ落ち着けよ幸」

 

「落ち着いてられっかァ!!! 人の体でこんなことされたら誰だってこうなるわァ!!」

 

 

幸は更に怒鳴り散らす。悪鬼羅刹(ジャガーノート)は「まぁまぁまぁまぁ」と言いながら幸の肩をポンポンと叩いて落ち着かせながら喋り出す。

 

 

「確かにココはお前の体の中、オレはココに住み着いてる。何も話さないでこんなことしてたのは謝るよ……」

 

「でもな、オレだってこんな一面真っ白な世界に1人でずっといんのは暇で暇で仕方ねえんだ。こんくらいのことは多めに見てくれよ」

 

「ぐっ……」

 

 

思わず声を漏らしてしまう幸。もし自分も同じ立場なら、きっと同じ行動を取ってしまうだろうと考える。

 

 

「まァお前の気持ちも分からんでもねーな……。今回は多めに見てやんよ」

 

「さすが幸! そう言ってくれると思ってたぜ!」

 

 

幸に家具の持ち込みを認められ、悪鬼羅刹(ジャガーノート)は大喜びする。

 

 

「––––––ってか、この家具一式何処で手に入れたんだよ?」

 

「それは禁則事項だ」

 

「ああ、そうかい……」

 

 

幸は悪鬼羅刹(ジャガーノート)が入れてくれたお茶を一口飲む。

 

 

「お、このお茶高いだけあってホントにうめェな。コレ何処で手に入れたんだ?」

 

「禁則事項だ」

 

「チッ、やっぱ言わねーか」

 

「お前の考えなんておひたしだ。バリッバリッ」

 

「お見通しな! ほうれん草のおひたしみてーに言うな! あとベタなボケすんじゃねーよ!!」

 

 

幸はツッコムともう一度お茶に口を付ける。悪鬼羅刹(ジャガーノート)は煎餅をバリバリと音を響かせて食べている。

 

 

「ちょっとテレビつけていいか?」

 

「別にいいけど、何見んだよ?」

 

「この間録った◯んま御殿でも見ようと思ってな」

 

「…………お前って俺が思ってるよりもエンジョイしてんのな………」

 

 

自分が想像していた事と違い、色々と自由にしている悪鬼羅刹(ジャガーノート)に呆れた表情を浮かべる。

 

 

「あ、そういや、俺が眠ってる時に大抵お前来るけどよォ、お前っていつ眠ってんだよ?」

 

「禁則事項だ」

 

「……あのさァ、お前さっきから何なの? 俺が聞く度に禁則事項って答えやがって。お前は朝◯奈みくるなのか? 止めとけ、お前がやっても気持ち悪ィだけだぞ。バリッバリッ」

 

 

そう言って煎餅を頬張る幸。悪鬼羅刹(ジャガーノート)は幸の発言を無視して録画していたさ◯ま御殿を視聴していた。幸は煎餅一枚を食べ終えると悪鬼羅刹(ジャガーノート)に話し掛ける。

 

 

「おい悪鬼羅刹(ジャガーノート)、そろそろ本題に入ろうぜ」

 

「……」

 

「おーい、聞いてんのか?」

 

「……」

 

「おいッ!!」

 

「うおっ!?」

 

 

テレビに集中していたせいか、悪鬼羅刹(ジャガーノート)は幸の呼ぶ声にビックリする。

 

 

「なんだよ幸、大きな声出して」

 

「やっぱ聞いてなかったのかよ! そろそろ本題に入れっつってんだよ!!」

 

「えぇ……。コレ見てからじゃダメか?」

 

「それ録ったやつだろ。後で見りゃいいじゃねーか」

 

「でも今消したら切り悪いし……」

 

「はァ……わーったよォ……。それ見終わるまで待ってやるよ……」

 

「さすが幸だぜ!」

 

 

悪鬼羅刹(ジャガーノート)はそう言うと再びテレビに視線を向ける。幸もその間暇だったので、彼と一緒にさん◯御殿を視聴していた。

 

 

 

 

 

 

「いやー、面白かった!」

 

「ん、そうだな。お前もこういうのよく見んだな」

 

 

さ◯ま御殿を見て満足する悪鬼羅刹(ジャガーノート)に幸は聞く。

 

 

「ココ暇だから色んな番組見てるぞ」

 

「へェ〜…………。––––って、そうじゃなくて本題だ本題!! テレビ終わったんだからそろそろ話せよ!!」

 

 

思い出した幸は悪鬼羅刹(ジャガーノート)に言う。

しかし––––––

 

 

「まぁまぁまぁまぁ、そう急かすなって。よいしょっと」

 

 

悪鬼羅刹(ジャガーノート)は棚からスー◯ァミとゲームソフトを出し、テレビの前に行く。

 

 

「今度はなんなんだよ……」

 

「一緒にゲームやろうぜ!」

 

「……話しは?」

 

「そんなのあとあと!」

 

 

悪鬼羅刹(ジャガーノート)は準備を終えると、片方のコントローラーを幸に渡す。幸は最初溜め息するも、コントローラーを受け取るとゲーマー魂に火が付いたらしく、顔つきが変わる。

 

 

「で、ソフトはなんだ?」

 

「コレだ!」

 

 

悪鬼羅刹(ジャガーノート)は幸にソフトを見せる。そのソフトは、星の◯ービィスーパーデラックスだった。

 

 

「スパデラか、久しぶりだなァ。格闘王でもすんのか?」

 

「いや、まだ途中までしかやってねえから手伝ってくれ」

 

「手伝う程のソフトじゃねェと思うが……。ま、とりあえずやってみっか」

 

「おう!」

 

 

2人はソフトをセットするとゲームをスタートさせる。

 

 

 

 

 

 

––––––6時間後

 

 

「やっとエンディングだな……」

 

「長かったぁ……」

 

「つーかお前、操作下手過ぎじゃねーか?」

 

「し、仕方ねえだろ! こういうのは余りやんねえんだから!」

 

 

本来なら早めに終わらせる事が出来たのだが、悪鬼羅刹(ジャガーノート)が思った以上に操作が下手過ぎて倍近くの時間まで掛かってしまったのだ。

 

 

悪鬼羅刹(ジャガーノート)、今何時だ?」

 

「えーと……朝の7時半だ」

 

「早めに寝たっつーのに、これじゃいつもと変わんねェじゃねーか……」

 

「まぁまぁ、いいじゃねえのそれくらい」

 

「……今日のお前『まぁまぁ』言い過ぎじゃね? すげーイラつくんだけど」

 

「自分でも思った」

 

 

幸は首を振ってボキボキと鳴らす。その横では悪鬼羅刹(ジャガーノート)が「う〜ん」と声を漏らしながら体を上に伸ばしている。

 

 

「そろそろ帰るか。悪鬼羅刹(ジャガーノート)、俺を元に戻せ」

 

「それはいいんだが、元に戻す前にオレの話しを聞いてけ」

 

「あァ、そういやそれで呼ばれてたんだっけな。すっかり忘れてたわ。––––––っで、話しってなんだよ?」

 

 

幸は悪鬼羅刹(ジャガーノート)に問いかける。

 

 

「お前、もうすぐ16になるだろ?」

 

「そうだけど………それがどうした?」

 

「……もしかして忘れた?」

 

「は? 何が?」

 

 

幸の発言に悪鬼羅刹(ジャガーノート)は呆れた表情で溜め息する。

 

 

「はぁ……。お前と『契約』した時に言っただろ。お前が16になったら“アレ”が始まるって」

 

「あぁ、“アレ”のことか……」

 

 

幸は今の説明でわかったようだ。そんな幸に悪鬼羅刹(ジャガーノート)は聞く。さっきのおチャラけた感じではなく真剣な顔付きで。

 

 

「お前はさぁ、俺と契約して後悔してねえか……?」

 

「は? んだよ急に?」

 

「いいから答えろ!」

 

 

悪鬼羅刹(ジャガーノート)は少し怒鳴り気味に言う。幸はそれに溜め息混じりに答える。

 

 

「はァ……。昔と変わんねーよ。後悔なんて少しもしてねェ。あれは俺の意思で決めたことだからな」

 

「逆にお前には感謝してるくらいだ。“あの時”お前が来なかったら……」

 

 

そこまで言うと幸は口を止める。

 

 

「…………」

 

「もういいだろ。そろそろ俺を戻してくれ」

 

「わかった。いきなり変なことを聞いてすまなかったな」

 

 

悪鬼羅刹(ジャガーノート)がそう言うと幸の意識がそこで途切れる。

 

幸がいなくなったことを確認すると悪鬼羅刹(ジャガーノート)は––––––

 

 

「……知ってたよ、お前ならそう答えるって。その上で聞くなんて、オレはすげえ卑怯者だな……」

 

 

悲しそうな表情で1人呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

チュンチュン チュンチュン

 

 

外から小鳥のさえずりが聞こえ、幸は目が覚める。幸は上半身だけを起こし、悪鬼羅刹(ジャガーノート)に言われた事を思い出す。

 

 

(“アレ”が始まるまで、あと8ヶ月もねーのか………はァ……)

 

 

そう思いながら部屋を出てリビングへと向かう。その途中、幸は茜と鉢合わせる。

 

 

「よ、茜。はよーす」

 

「あ! 幸ちゃんおはよう!…………………………えっ!? 幸ちゃん!?!」

 

「あん?」

 

 

元気よく挨拶を返した茜。しかし、数秒すると彼女は驚きの声を出す。

彼女が驚くのも無理はない。朝の8時前、しかも休日に幸が自力で起きることなんて全くと言っていい程ないことなのだ。

そんなことを知る由も無い幸は、訳がわからない顔をする。

 

 

「み、皆大変だよ!? 幸ちゃんが、幸ちゃんがぁ!?」

 

「お、おい!」

 

 

茜はそう言うとリビングの方へ走って行ってしまう。幸は茜を呼び止めようとするが、それも失敗に終わる。

 

––––––この後、幸が家族全員から心配されたのは言うまでも無い。

 

 




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