城下町のダンデライオンー櫻田家の次男は変人?ー《凍結中》 作:ションタ
夏の暑い日差しがガンガン降り注ぐ中、幸は珍しく、本当に珍しく当番クジで買い物を引き当ててしまい、買い物を済ませて帰宅している途中だ。幸だけでなく、茜、輝、栞の3人も一緒だ。
「なんで私まで……」
「いいじゃねーか。買い物の時はいつも付いて行ってやってんだから、文句言うんじゃねーよ」
「うぅ……」
幸に痛い所を突かれ、茜は唸ることしか出来なかった。
「幸兄上、僕が買い物袋を持ちましょうか?」
「いや、軽いから全然平気だ。気持ちだけ受け取っておくよ。サンキューな輝」
幸は輝の頭を軽く撫でる。
「えへへ」
撫でられた輝は嬉しそうな表情で笑う。
(こうやって並んで歩いてると、私たちって周りからどう見えてるんだろう? こっ子連れの夫婦に見えるのかな///)
輝と接している幸を見て、茜は頰を染めながら考える。まぁ実際に周りから見ればただの兄妹にしか見えないのだが……。
「?」
「ん、どうした栞?」
家とは違う方向をずっと見つめている栞を不思議に思い、幸は彼女に声を掛ける。
「お兄様、こっちから声がする」
「お、おい!」
栞は幸の手を掴むと声が聞こえる方へと歩き出す。茜と輝もなんだと思いながら2人の後を追う。少しすると栞が立ち止まる。
「あれ……」
と言って指を差す栞。3人は栞が指を差す方へ視線を向ける。
そこにいたのは––––––
「ぴいぃぃぃぃ〈ここはどこでござるかあぁぁ〉」
––––––イグアナだった。
(な、なんでこんなところにイグアナがー!?)
住宅街のド真ん中にイグアナがいることに茜は酷く動揺する。
「イグアナって結構デカイんだなァ……」
幸はというと、イグアナの存在に対してではなく、大きさに驚いていた。幸が呟くと、イグアナが4人の方へ振り返る。
「こっち見た!?」
茜は驚いて幸の後ろに隠れてしまう。
「栞、すまねェがお前の能力使ってコイツに話し掛けてくれねーか」
「はい」
栞は
「首輪も付いてっから誰かのペットだろうな」
「栞は
「ちょっとこわい……」
「……だよねー」
茜は栞の意見に賛同する。
そんな2人とは打って変わって、輝は「かっこいい!!」と目をキラキラ輝かせていた。
「幸兄上!! 茜姉上!! あれは恐竜の生き残りですか!?」
「いや、ちげーよ」
イグアナを指差し聞いてくる輝に一刀両断する幸。
(やっぱり男の子はああいうの好きなんだ)
幸の後ろでは茜がそんなことを思っていた。
そうこうしているとイグアナが栞に話し掛けてくる。
〈お嬢様、もしや拙者の声が聞こえるのでござるか?〉
〈う…うん。それが私の能力だから……〉
〈ふおおおおお!! 救いの女神キターーー〉
栞が答えるとイグアナは顔をブンブン振り回し、叫び始める。
「んだよコイツ、急に暴れだしたぞ」
「ひぃっ!?」
イグアナの行動に幸は顔を歪ませ、茜は怖がって幸の片腕にしがみつく。
幸は親指と人指し指で顎を挟んで少し考えた後、栞に喋り掛ける。
「栞、コイツにどこから来たのか聞いてくれねーか。分かるんだったら案内すっからよォ」
「そうですね幸兄上! このままでは
「もう名前つけてる……」
栞は幸に言われたことをそのままイグアナに伝える。
するとイグアナは––––––
〈たしかこの道をまっすぐ行ってそれから右に…………あれ左?〉
考えだしてしまうイグアナ。考えた結果、最終的に––––––
〈わからんでござる〉
とのことらしい。栞にそれを聞かされ、幸は呆れた表情でイグアナを見つめるのだった。
*
「で、なーんで家に連れてくるわけ」
「いろいろ探しまわったんだけどね、結局飼い主の家が見つからなくて……」
「ほっとくのもなんだし連れて帰ってきた。後悔も反省もしてねェ」
理由を話した2人に、奏は溜め息を吐く。
「まぁ飼い主が見つかるまでならいいだろ」
修はイグアナに餌をあげて言う。
「それで飼い主はどうやってみつけよっか?」
葵がリビングにいた全員に聞く。
「そんなの警察に任せちゃえばいいのよ。家に置いとくとボルシチ食べられちゃうわよ?」
奏はプルプルと震えているボルシチを抱えてソファに座る。奏の発言に輝が顔を赤くさせて怒り出す。
「奏姉上!!
「そこ?」
奏は怒るところが違うだろと思いながら輝に返す。
「わたし…お話しして聞いてみる」
栞は
〈あの…イグアナさんの飼い主さんってどんな人ですか?〉
〈ぬ? ご主人でござるか? んーご主人はよく拙者に「栞様かわいい」って語りかけてくるでござる〉
「ふーん」
「あれ? どんな会話してるの?」
会話の内容がわからない葵は栞に聞く。栞はイグアナが喋ったことを代弁して皆に伝える。
「なんほど、飼い主は栞派か……。つまり栞がイグアナのコスプレしてテレビで訴えれば飼い主が見つかるかも……」
「んだよそれ……」
「え、えと……あの…わたし……」
「栞も真に受けなくていいんだぞ」
修の発言を真に受けてしまう栞に、幸は優しく言う。
––––––その後、修の頭には大きなタンコブが出来ていたとか。
*
–––––数分後
栞はイグアナのコスプレでリビングに現れる。
「––––––って着てる!?」
栞のコスプレ姿に思わずツッコム茜。
「ど、どうしたのそれ?」
「奏お姉様につくってもらいました」
茜は目を細めて奏を凝視する。
「だ、だって栞が欲しいって言うから!! ほら…見てよあの満足そうな顔」
「あ、着たかったんだ……」
満足そうな表情の栞を見て茜は苦笑いする。
2人が話しているとリビングに幸がやってくる。
「––––––って栞、結局イグアナのコスプレしてんのかよ……」
幸は栞の格好を見て苦笑する。
「幸お兄様、この格好似合ってますか?」
「ん? ああ、栞にすげェ似合ってると思うぞ」
そう答えると、幸は栞の頭を優しく撫でる。
「♪〜」
栞は幸に撫でられて嬉しそうな顔をする。
それを見た茜は––––––
「カナちゃん!! 私にもあのコスプレ「作らないから」なんでよ!?」
「はぁ……。あんた、それ真面目に言ってるんだったら本当のバカよ……」
溜め息をして顔を歪ませながら奏は言う。
そうこうしていると、イグアナが栞のコスプレ姿を見て騒ぎ出す。
〈うおおおおおおししょおおおおお!!〉
〈師匠?〉
〈そのお姿はまさに過ぎ去りし日に見た師匠そのもの!!〉
その後、イグアナは語り始める。
彼の話しをまとめると、幼い頃にペットショップのケージの中で色々教えてくれたイグアナにそっくりらしい。
その話しを聞いた栞は––––––
「ししょーか……」
どうやら栞はその呼ばれ方が気に入ったらしい。
*
––––––イグアナが来て数日
〈まてーでごさる!〉
「ふふ…こっちこっち」
栞と輝、イグアナは追いかけっこをして遊んでいた。
「あいつら、いつの間にか仲良くなったな」
「ホントだね」
「ま、いいことじゃねーか」
修、茜、幸は2人とイグアナを眺めて言う。
「今だ
輝がそう言うと、イグアナは修と幸に向かって口をカバァと開ける。
「ぐおおおおお!!」
「やられたァ!!」
イグアナの動きに合わせて、修と幸は床にばたりと倒れ込む。
(修ちゃんと幸ちゃんもね)
2人の行動を見た茜は、苦笑い気味にそう思うのだった。
「栞ってばまたあの着ぐるみ着てる……」
「似合うんだからいいじゃないか」
栞の格好を見て岬が言うことに対し、遥は頬杖を付いてそう返す。
「それに––––––」
『さぁ今週の櫻田ファミリーニュースはなんとあの生き物と遭遇しました!!』
『イグアナに怯えて幸様にしがみつく茜様! かわいいですね〜』
「––––––これを見たら飼い主も気づくでしょ」
遥はテレビのニュースを見てそう答える。その横では恥ずかしそうに顔を赤らめ騒いでいる茜があった。
*
––––––そして次の週明け
「え? 飼い主から連絡があった!?」
「うん、明日引き取りに来るって」
「良かったー、あたし少し苦手だったんだよねー」
葵の言葉に光は安堵する。
しかし––––––
((明日でおわかれ……))
それを聞いた栞と輝はズーンと落ち込んでしまう。
「お前ら、そう落ち込むなって。飼い主に頼めば何時でも会えんだろ。俺も一緒にお願いしてやっから」
幸がそう言うと2人は少しだけ笑顔に戻るが、まだ顔が何処と無く暗い。「もし明日断られたら……」と心の中で不安に思っているようだ。
––––––次の日、飼い主の女性が迎えに来た時に、3人でお願いしたところOKを貰えたらしい。それを聞いた栞、輝、イグアナは嬉しそうにはしゃいでいたそうだ。
感想などがあったらよろしくお願いします。