城下町のダンデライオンー櫻田家の次男は変人?ー《凍結中》   作:ションタ

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それではどうぞ!


第十二話

『新人アイドルの桜庭 らいとでーす』

 

 

今テレビに映っているのは、生命操作(ゴッドハンド)で中学生の姿に変身した光だ。

––––––何故、彼女がアイドル活動をしているかというと、家族に内緒でアイドルのオーディションに応募したのが始まりだ。そしてなんやかんやあって見事アイドルになることが出来たのだ。

 

 

「遥、何時からこんなことしてたんだよ?」

 

「2、3ヶ月前にはもう特訓を始めてたね」

 

 

遥が答えると、幸は「はァ〜」と言いながら光を視線を向ける。

 

 

「ねぇねぇ幸ちゃん! 私のアイドル姿見てどう思う?」

 

「ん、普通に可愛いと思うぞ」

 

「えへへ♪」

 

 

幸の素直な感想に光は嬉しそうな顔をする。

その横では––––––

 

 

「私もアイドルになろうかなぁ……」

 

「あか姉、バカなこと言わないでよ……」

 

 

真剣に悩んでいる茜に岬が呆れ顔で返す。

 

映像が終わると、今度は櫻田ファミリーニュースに切り替わる。

 

 

『さぁ、今週の櫻田ファミリーニュースは幸様大手柄! 先日、人気アイドル米澤 紗千子を誘拐犯から助け出したそうです!』

 

(誘拐犯? ああ、アレのことか)

 

「こここ幸ちゃん大丈夫なの!? 怪我とかしてない!?」

 

「茜、少し落ち着けよ」

 

 

幸の事を心配してワタワタする茜。

 

 

「幸ちゃんさっちゃんに会ったの!」

 

 

今度は驚いた表情で光が聞いてくる。

 

 

「サッちゃん? ああ、歌のことか。あの歌って実は怖ェ歌なんだよなァ……」

 

「兄さん、光が言ってるのはアイドルの米澤 紗千子のことだと思うよ」

 

 

光の発言を遥が代弁して幸に伝える。

 

 

「米澤のことか?」

 

「うん!––––––って随分親しそう言うね?」

 

「ま、色々あったからな」

 

「へぇ〜。あ、そうだ! あたしその時の話し聞きたい!」

 

「んだよ突然……。別におもしれェ話じゃねーぞ?」

 

「それでも聞きたいの!」

 

 

光の言葉に他の三人も「うんうん」と縦に頷く。

 

 

「……わーったよ。話してやるからちゃんと最後まで聞けよ」

 

 

幸は面倒くさいと思いながら4人に話し始める。

 

––––––それは今から3、4日前のことだ。

 

 

 

 

 

 

「あ゛っち゛〜……」

 

 

幸は猛暑の中、大量の汗を流しながら漫画喫茶を目指して歩いていた。

 

 

(やっぱ家でゲームにすりゃよかった……)

 

 

幸は自分の立てた計画に苦虫を噛み潰したような顔をする。一度は家に引き返そうかと考えもしたが、母の五月から『外に出るんだったら買い物してきてよ』とお願いされてしまったので帰るに帰れないのだ。

 

 

「––––––ったく、母さんも面倒くせェこと押し付けやがって……」

 

 

幸は額の汗をぬぐって五月に対し文句を漏らす。まぁ家にいたとしても今週の買い物当番は彼なので、結局買い物に行かされるハメになっていただろう。

 

 

『離してください!』

 

「ん?」

 

 

ぐったりしながら歩いていると、幸の耳にそんな声が聞こえてくる。気になった幸は声のした方へ足を運ばせる。

 

 

「いいじゃないか。少しお茶しようよ」

 

「だから何度も言ってるじゃないですか! 私急いでるんです!」

 

「まぁまぁ、そんなこと言わずにさぁ」

 

 

そこにいたのは、見るからにチャラそうな男とベレー帽とメガネを身に付けた女の子だった。男は嫌そうにしている女の子の腕を掴み、しつこく話し掛けていた。

 

その光景を見た幸は、頭を抱えて大きく溜め息する。

 

 

「はァー……(今年に入って何回目だ、ナンパの現場に遭遇すんの。つーか、前々から思ってたがここの治安悪すぎじゃね? 警察仕事しろよ)」

 

 

と愚痴りつつも、見捨てる訳にはいかないと思い、幸は男に近づき肩をトントンと叩いて話し掛ける。

 

 

「おーいチャラ男君、彼女困ってるみてーだしその辺にしとけよ?」

 

「なんだお前! 俺の邪魔すんじゃねえ!」

 

(あっれー、おかしいなァ? 俺のこと知ってる奴だったら顔見ただけでトンズラすんだけどなァ)

 

 

いつもなら「げ!? 櫻田家の次男!?」「ぎやゃゃぁぁぁ!? すいませんでした!?」「早く逃げろ!! 悪魔に殺されちまうぞ!!」といった台詞を吐き捨てて幸から逃げるのだが、この男は逃げるどころか逆に怒鳴り散らしてきたのだ。

 

 

(あっ)

 

 

幸はあることに気がつく。

 

 

(そういや俺、変装してんだった……)

 

 

そう、幸は今自分の特徴的な悪い目つきと髪型をサングラスと帽子で隠し、周りにバレないように変装していた。それが裏目に出てしまい男は幸から逃げなかったようだ。

因みに彼が変装しているのは、漫画喫茶に行っていることが国民にバレたくないという単純な理由だ。

 

 

「何もねぇんだったらあっち行ってろ!」

 

 

再び女の子に絡もうとするナンパ男。

 

 

(ん〜、このままじゃやべーな。作戦変更!)

 

 

幸は地面に落ちていた手のひらに収まる程度の石ころを持ち、男にもう一度話し掛ける。

 

 

「まァまァ、そう言わねーでくれよ。ここで会ったのも何かの縁、俺のとっておきのマジック見せてやっからよォ」

 

「は?」

 

 

幸の発言に男は「?」する。女の子も同じ反応を見せる。

 

 

「この石ころを別のもんに変えっからちゃんと見てろよ」

 

 

幸は右手で思い切り石ころを握りしめる。

そして次の瞬間––––––

 

 

ゴリゴリゴリッ!!

 

 

彼の右手から石ころを握ったとは思えない音が響き渡る。一頻り握り終えると右手をパッと離して男に見せる。

 

 

「あ〜ら不思議ィ! 石ころが一瞬にして砂利に変わってしまいました〜!」

 

 

さっきまで存在していた石ころが砂利のように変わってしまったのだ。それを見た途端、男は顔を真っ青に変貌させ大量の汗をかく。幸はニヤリと笑いながら男に近づく。そして彼の耳元で囁く。

 

 

「今度またこんなことしてたら、お前の頭蓋骨もああなっちまうかもな〜」

 

「ひ、ひいぃぃぃ!?」

 

 

幸の発言に男は怯え、その場から一目散に逃げて行く。

 

 

「ふゥ、上手くいったな! おい大丈夫か? 怪我とかしてねーか?」

 

「は、はい! 大丈夫です」

 

「ん、そうか。ここら辺はああいうのが偶にいっから、今後通る時は気をつけろよ」

 

「はい! あ、ありがとうございました!」

 

「おう」

 

 

女の子がお礼を言うと、幸は歩き出そうとする––––––

 

 

「あれ?」

 

 

が、まだ終わってないようだ。

 

 

「どうした?」

 

「えっと…どこかにお財布を落としてしまったようで……」

 

「ふむ、財布か」

 

「どうしよう……」

 

 

幸は親指と人指し指で顎を挟んで少し考えると––––––

 

 

「んじゃ、俺も探すの手伝ってやるよ」

 

「え、でも助けてもらった上にお財布まで探してもらうのは––––––」

 

「1人で探すよりも2人で探した方が早く見つかるじゃねーか。それに財布がねーと色々困んだろ?」

 

「そ、それはそうですが……」

 

「んじゃ、決まりだな!」

 

 

女の子は幸の強引さに何も言い返すことが出来なかった。

 

 

「まずは近くの交番に届けられてねーか確かめに行くぞ」

 

「そ、そうですね。えーっと……」

 

「ん? ああ! まだ自己紹介してなかったな、俺は––––––」

 

 

ここで彼の脳裏にあることが浮かび上がる。

 

 

(このまま本名名乗ったら色々メンドイだなぁ……。ん〜………ま、名字隠せば大丈夫か)

 

「あのー」

 

「ああ、すまんすまん。俺の名前は幸だ。間違っても◯J KOOとか呼ぶなよ」

 

「最初から呼ぶ気は無いので安心してください。ちゃんと名前で呼びますし」

 

 

呆れ顔で返す女の子に、幸は「にしし!」と笑いだす。幸はそのまま話しを続ける。

 

 

「とりあえずお前も名前教えてくれ。呼び方に困るからよ」

 

「わ、私ですか?」

 

「お前以外に誰がいんだよ……」

 

「……」

 

「んァ? どうした?」

 

「いえ、なにも。私は米澤と言います」

 

「わかった、米澤だな。少しの間だがよろしく頼むな」

 

「はい」

 

 

幸と女の子もとい米澤は、交番に財布が届けられていないか行ってみることにした。

 

 

 

 

 

 

––––––結局交番には米澤の財布は届けられていなかった。

 

 

「……」

 

「そう落ち込むなって。とりあえず、米澤が今日通った所を探してみようぜ」

 

「はい……」

 

 

米澤は覇気がなく幸に返事をして歩き出す。

幸も後ろからついて行き、米澤に話し掛ける。

 

 

「そういや、米澤って俺とどっかで会ったことねーか?」

 

「……急に何ですか」

 

「いやな、お前の顔どっかで見たような気がすんだよなァ」

 

 

米澤は突然体をビクッと反応させる。

 

 

「んァ? どした?」

 

「いえ、なんでもないです。気のせいじゃないですか? 私は今日初めて貴方と会いましたし」

 

 

米澤の言葉に幸は眉間に皺を寄せて「おかしいなぁ……」と腕を組む。

 

 

「それよりも、どうしてあの時私を助けたんですか? 無視することも出来たじゃないですか」

 

 

何故他人である自分を助けたのか、米澤は幸に質問する。

 

 

「別に理由はねーよ。米澤が困ってそうにしてたから声掛けただけだ」

 

「……本当にそれだけですか? 見返り目的とかではなく?」

 

「んな訳ねーだろ。お前ひでェこと言うなァ……」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「冗談だ冗談。ちょっとからかってみただけだ」

 

 

笑みを浮かべて米澤に返す幸。

 

 

(変な人だなぁ……)

 

 

米澤は幸を見て心の中で呟く。そう思うのも無理はないだろう。確かに幸のように自分から積極的に人助けをする人種は少ないはず。ましてや、あの現場に自分から突っ込んでいくのは勇気がいることだ。

 

 

「そんなにジロジロ見てどうした? 俺の顔に何かついてんのか?」

 

 

米澤がジッと見ていたせいか、幸は自分の顔を触りながら聞いてくる。彼女は顔を逸らして「なんでもないです」と答える。そんな彼女の行動に幸は「なんなんだよ……」と首を傾げて心中思った。

 

 

 

 

 

 

「おーい米澤、見つかったかー?」

 

「いいえ、まだ見つかりません」

 

 

空は端から端まで赤く染まり、財布を探し始めてから何時間も経過していた。

 

 

「うしっ、今度はこっちを探すか。米澤はあっちを「もういいです」は?」

 

「もういいって言ったんです、あとは私1人で探しますから。これ以上コウさんに迷惑かけたくありませんし……」

 

「……」

 

「ですからもう「嫌なこった」え?」

 

「俺は好きでお前の財布探してんだ。指図される覚えはねーよ」

 

「で、でも––––––」

 

「んじゃ、俺あっち見に行くわ」

 

「あっ」

 

 

幸はそそくさと違う場所へ移動する。

 

 

「また言い返せなかった……」

 

 

米澤は幸の後ろ姿を見て呟いた。

 

 

 

 

 

少し離れた場所で再び捜索を開始する幸。

目をキョロキョロと動かして地面を隈なく探し回る。

 

 

「ん〜、見つかんねーなァ……」

 

 

幸はサングラスを取って顔の汗を拭う。もう一度交番に行って確かめに行こうか考えた時––––––

 

 

「お! これじゃねーか! 米澤が言ってたもんと一致するし!」

 

 

米澤の財布を発見した。

 

 

「うしっ! 早速米澤に渡しに行くか!」

 

 

幸は急いで米澤の元へ向かう。

 

 

 

 

 

 

さっきの場所へ戻ってきた幸。

 

 

「あれ、いねーな?」

 

 

米澤の姿が見えない。別の場所で探しているのかと思っていると、一台の黒い車が幸の横を通り過ぎて行く。通り過ぎる瞬間、後部座席に口をガムテープで塞がれているのが見えた。

 

 

「……」

 

 

それを見た幸は口をあんぐりと開けたまま固まってしまう。

 

 

「っ!? 何やってんだよアイツはッ!」

 

 

意識が戻ると悪鬼羅刹(ジャガーノート)で翼を生やし、急いで黒い車を追う。

 

 

 

 

 

 

「上手くいきましたね! 兄貴!」

 

「おうよ!」

 

 

と、運転席とその後ろの席に座っているマスクをした男2人が嬉しそうに話す。

 

 

(はぁ……。今日は厄日だなぁ。男の人に絡まれるし、お財布は落とすし、極め付けに誘拐までされるなんて……)

 

 

そう、現在米澤は誘拐されているのだ。

ロープで手を結ばれ、口にはガムテープが貼られている。彼女は肩を落として大きさな溜め息をする。

 

 

「おい、その女と話しがしてえからガムテープ剥がせ」

 

「わかりました!」

 

 

運転席の男に従いガムテープを剥がす下っ端。米澤はガムテープを剥がされて「いたっ!」と反応し、二人を「キッ!!」と睨みつける。

 

 

「よぉ、お嬢さん気分はどうだい?」

 

「最悪です」

 

「だろうな。ま、悪いようにはしないから安心しとけ。お前の親から金を貰ったらちゃんと解放してやるからよ」

 

 

ニヤリと笑いながら言う男に米澤は下唇を噛みしめて更に睨みつける。

そこへ––––––

 

 

バンッ!!

 

 

車の屋根が凹み大きな音を立てる。

 

 

「なっなんだ今の!」

 

「や、屋根の上からです!」

 

 

マスク男二人が驚いていると––––––

 

 

ベリベリベリィッ!!!

 

 

車の屋根がお菓子のジッパー加工の様に綺麗に剥がれされていく。

 

 

「ぎやゃゃぁぁぁ!?」

 

「俺の車がああぁぁぁ!?」

 

 

突然のことに訳が分からず叫び声を上げる誘拐犯。

そうこうしていると––––––

 

 

「おーい米澤ー、大丈夫かー?」

 

 

剥がされた屋根からひょっこりと顔を出す少年––––––櫻田 幸の姿があった。

 

 

「コ、コウさん!? どうしてここに!?」

 

「どうしてって助けに来たに決まってんだろ。それにしてもお前どんだけ運悪いんだよ。疫病神でも取り付いてんじゃねーのか?」

 

「なななんなんだお前は!?」

 

「それはこっちの台詞だ。んだよその趣味の悪いマスク。ドン◯ホーテの宇宙人の被り物の方がまだマシだっつーの」

 

「うう、うるさい!! これ結構高いんだぞ!!」

 

 

ぷんぷん怒る誘拐犯を無視し、幸は悪鬼羅刹(ジャガーノート)を発動し、黒い剣を作り上げる。

 

 

「とりあえず、こいつは返してもらうからな」

 

「その力は王家次男の––––––ま、まさかお前!?」

 

「ご名答。櫻田家次男の櫻田幸だ、よ!!」

 

 

幸が剣を振ると車は縦に真っ二つになり、誘拐犯と米澤の2つに切り離される。

 

 

「またつまらぬものを切ってしまった。これ一度言ってみたかったんだよな!––––––っと、そんなことしてる場合じゃねぇ」

 

 

急いで翼を生やし米澤を抱えて(お姫様抱っこ)飛び立つ。

 

 

「ちょ、ちょっと///」

 

 

突然の事に、米澤は顔を赤くさせる。

 

 

チュドーーーン!!!

 

「「ぎややゃゃゃぁぁぁぁ!?」」

 

 

2つに分裂された車から爆発音と誘拐犯の二人の叫び声が響き渡る。幸はそれを聞いて「ま、アイツらこれから先登場しないモブだから大丈夫だろう」と思いながら地面に着地し、抱えていた米澤を下ろすと「ふぅ」と一息つく。

 

 

(まだドキドキしてる……///)

 

 

米澤はまだ顔を赤くして胸を押さえていた。

さっきのお姫様抱っこで心拍数が凄いことになっているようだ。

 

 

「米澤どうした? ま、まさかどっか怪我したんじゃ––––––」

 

「なななんでもありませんっ!!」

 

「そ、そうか。ならいいんだが……」

 

「……私も突然大きな声を出してすいません……」

 

 

米澤は深呼吸をして自分を落ち着かせる。そんな米澤に幸は「何してんだ、コイツ?」と思いながらも、彼女に何もないことがわかるとポケットからあるものを取り出す。

 

 

「あっ、私の財布」

 

「やっぱりか。今度は落とすんじゃねーぞ」

 

 

突き出された財布を米澤は両手で受け取る。

受け取ったのを確認すると––––––

 

 

「んじゃ、俺はアイツらを拘束して警察に連絡すっから、お前はここで大人しく待ってろよ」

 

「あっ! コウさん!」

 

 

幸は財布を渡すとすぐに行ってしまう。

米澤は幸が戻ってくるまでその場で待つことにした。

 

 

 

〜数分後〜

 

 

 

「よ、待たせたな」

 

「っ!?」

 

 

米澤は戻ってきた幸に気が付かず、体を「ビクッ!!」と反応させて一歩後ろに下がる。

 

 

「そこまで驚くことねーだろ……。結構傷ついたぞ……」

 

「す、すいません、考え事をしていたもので……。今日は、その、コウさんに––––––櫻田 幸さんに助けられてばかりでしたね……」

 

「……やっぱ分かっちまった……?」

 

「はい、分かってしまいました」

 

 

米澤の返しに幸は溜め息をついて帽子とサングラスを取る。

すると––––––

 

 

「ふふっ」

 

「あん? どうした、急に吹き出して?」

 

 

不思議がる幸に、米澤はバックから手鏡を取り出して幸に見せる。

 

 

「げっ!?」

 

 

そこには日焼けをしてサングラスの跡がくっきりとついている自分の顔があった。

 

 

「ふふふっ」

 

「……んなに笑わなくてもいいだろ」

 

「すみません、つい」

 

 

そう言うと、米澤は幸の方へまっすぐ向き直り頭を下げる。

 

 

「改めて今日は本当にありがとうございました」

 

「……前にも言ったが俺は当たり前のことをしただけだ。気にすんなよ」

 

「それでも私は言いたかったんです。必ずお礼はしますから」

 

「いらねーよ。見返り目的じゃねェっつっただろ」

 

「わかってますよ、幸さんがそういう人でないことは。とりあえず、連絡先を教えてください。時間が空き次第お礼をしますから」

 

「……随分俺を信用してくれてんだな。最初は疑ってたのによォ」

 

「私の為にあれだけしてくれたんです。信用しない方がおかしいですよ」

 

 

米澤は満面の笑みで答える。幸も最初はキョトンとしていたが、彼女につられて微笑を浮かべる。お互いに笑い合うと、2人は連絡先とアドレスを交換するのだった。

 

––––––その時、彼女が人気アイドルの米澤 紗千子だと知って幸は酷く驚いたらしい。

 

因みにこの後警察に解放されて家に帰った幸は、買い物を忘れて五月に怒られ、さらに日焼けの跡を皆に笑われたりと散々だったそうだ。

 

 

 

 

 

 

「––––––と、こんなとこか」

 

「へぇ〜、そんな事があったんだぁ」

 

「色々ツッコミ所があったけどね……」

 

「あはは……」

 

 

幸の話しに光が少し驚いた表情をする。

遥と岬はというと、幸の色々ぶっ飛んだ行動に苦笑いしている。

 

 

「そうやってまた女の子を落として……(ボソッ)」

 

「ん? どうした茜?」

 

「なんでもありません!!」

 

 

茜は幸に不機嫌顔で強めに返す。

 

 

(茜姉さんも大変そうだなぁ……)

 

(あか姉、頑張って……)

 

 

そんな茜を遥と岬は哀れんだ目で見つめていた。

 

––––––この後、機嫌が直らない茜に幸が「仕方ねーな。今度買い物に付き合ってやっから機嫌直せよ」と言ったらすぐに機嫌を直したらしい。

 

 




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