城下町のダンデライオンー櫻田家の次男は変人?ー《凍結中》 作:ションタ
『視聴者の皆様、こんにちは。今週の櫻田ファミリーニュースは王家次男の櫻田 幸様、勅使河原財閥の
司会者の言葉に周りにいた野次馬が歓喜の声を上げ始める。
そんな中––––––
(……どうしてこうなったの……)
茜はそう思った。
座っている茜の前では、兄の櫻田 幸と銀髪の少年が睨み合っている。
––––––事の発端は今から3日前に遡る。
*
「へ? 転校生?」
「そうなの!」
いつものように幸と茜が登校すると、いつメン(小次郎、裕介、花蓮、美香子)の4人が集まり花蓮が2人に言う。
「だから俺の後ろに席があんのか……。でも、随分変な時期に転校して来るんだな」
「なんでも財閥の奴らしいぜ」
「僕らと一緒に入学するつもりだったらしいけど、家庭の事情でこんな時期になっちゃったみたいだよ。間島先生が言ってた」
「へェ〜」
幸は小次郎と裕介の返答に興味がなさそう言う。
「しかもイケメンよ!! イケメン!!」
「美香子落ち着いて……」
嬉しそうにする美香子。そんな美香子を落ち着かせようとする花蓮。
「金持ちでイケメンか……。漫画のキャラ見てェだな。んな奴が来たら俺のキャラがどんどん薄くなっちまうじゃねーか」
(((((いや、それはない)))))
幸の言葉に全員が心の奥底でツッコム。王族、悪い目つき、野菜人みたいな髪型。これだけでも十分彼も濃い人種に入るはずだ。
「それに男だろ? マジねーわ……」
「あっ! それ俺も思った! 転校生って言ったら女の子なのに、なんで男なんだよっ!!」
「だよな小次郎! 普通だったら可愛く賢い女の子が転校して来るよな!」
「あはは……」
「はぁ……」
転校生が男であることに、文句をつける幸と小次郎。そんな2人に対し裕介は苦笑。美香子は溜め息を漏らす。
「「……」」
茜と花蓮は、幸の女の子発言で少々不機嫌になってしまう。それに気が付いた幸は2人に声を掛ける。
「どうした2人とも? んな顔して?」
「「別に」」
「?」
幸の問いに冷たく返す2人。幸は首を傾げてしまう。
「お前ら席に着けー」
幸が「?」を浮かべていると、教師間島が教室へ入ってくる。4人は間島が入ってくると自分の席へ戻って行く。他の生徒も4人と同じように自分の席へ戻る。全員が座ったことを確認すると、間島はダルそうに話し始める。
「早速だが転校生を紹介する。入っていいぞー」
「はい」
間島に呼ばれると返事をして教室に入ってくる銀髪の少年。黒板の前まで来ると少年は自己紹介を始める。
「初めまして、
勅使河原 大和の自己紹介に教室全体に歓声が湧き上がる(女子限定)。
「勅使河原は財閥の坊っちゃんだ。変な真似しても俺は知らねえからな。勅使河原、お前の席はあの生意気そうな赤髪の後ろだ」
「はい」
「生意気ってなんすか先生……」
「言葉のまんまだ」
間島に言われると彼は一番後ろにある席へと向かう––––––のではなく、幸の前に行く。幸は疑問に思い大和に話し掛ける。
「んァ? なんかようか? えーと……」
「勅使河原 大和だ。君は櫻田 幸だね」
「おッ! 俺のこと知ってんのか!」
「当然じゃないか。王家の一族である君を知らないはずがないだろ」
「あァそうか。ま、これからよろしく頼むな!」
幸は大和に手を差し出す、が––––––
パァンッ!!
差し出した手を彼が思いっきり払う。
「……どういうことだ、勅使河原?」
「勘違いしないでくれ。私は君と仲良くする気はさらさらない」
「……じゃあ、どうして声なんか掛けに来たんだよ?」
「宣戦布告だ」
「宣戦布告?」
幸は意味がわからず大和に聞き返す。
「そうだ! 私は君に一対一の勝負を申し込む!」
「はァ?」
幸は大和の発言に呆気に取られる。教室は大和の勝負宣言にざわめき出してしまう。
「随分急な話しだなァ……。なに? 俺がお前になんかしたか?」
「私は君が気に食わない! 目立つのは私一人で十分だ!」
「……何言ってんだお前? 意味わかんねーぞ」
「もし君が私に勝ったらなんでも言う事を聞こう」
「ん? 今なんでもするって「そして私が勝ったら––––––」
そう言いかけると大和は茜の方へ体を向ける。そして、片膝を地面につけ茜の両手を自分の両手で包み込む。
「へ?」
「––––––君の妹、櫻田 茜さんを貰う」
大和の発言に教室は更にざわめき出す。女子はキャーキャーと騒ぎ、男子(茜FC会員)は怒りのオーラを出す。
「え!? あ?! えっ!?!」
茜は突然の事に混乱してしまう。無理もない。いきなり自分を貰うといわれれば誰だってこうなるだろう。
「ちょっとアンタ!! そんな事が通る訳ないでしょ!!」
「そ、そうだよ!! 幸も勅使河原君に何か言ってよ!!」
大和の発言に美香子は怒りながら文句を言う。花蓮もそれに便乗し幸にも意見を求める。
「……おい、勅使河原」
「なんだい?」
ドスの効いた声で幸は大和に声を掛ける。教室の空気が一気に凍りつく。そんな中、幸は口を開く。
「……なんでもってゲームや漫画でもいいのか?」
彼の言葉に教室にいた全員が新喜劇の如く盛大にコケる。
「ああ、なんでもの約束だからな」
「うし! その勝負のった!」
「幸ちゃん!!」
「幸!!」
「アンタ本気なの!!」
「売られた喧嘩は買うってな。勝てばいーんだよ勝てば。それで勅使河原、勝負は何時やるんだ?」
「日曜日の12時、学校で行う。ま、精々足掻くことだな櫻田 幸。 はーはっはっはー!!」
大和は高笑いをしながら教室の外へ出て行ってしまう。
「おい! 勅使河原! お前どこへ……あぁ、行っちまった……。福品」
「はい?」
「お前授業始まる前にあいつを連れ戻してこい」
「ぼ、僕がですか?」
「当たり前だろ。お前はクラス委員なんだからよぉ。俺はこれから漫画––––––じゃない、仕事があるからな」
(((((今漫画って言ったよこの人……)))))
間島の発言にクラス全員が心の底で思った。
––––––斯して、2人の火花が切って落とされたのだった。
*
––––––そして冒頭に戻る。
––––––観客席
「あか姉も大変ですね」
「そうね。まぁ茜らしいっちゃらしいけどね」
岬と美香子は茜を哀れみの眼差しを送る。
「幸兄さんも茜姉さんも、昔から厄介事に巻き込まれやすい体質だから」
「まぁ遥の言うことも一理あるわね」
遥の意見に奏が同意する。
「修ちゃん、そろそろ機嫌直しなよー」
「でもな「修ちゃん?」な、なんでもない……」
光に言い返そうとした修。だが葵の威圧に押し黙ってしまう。
「どうして修さん機嫌が悪かったんですか?」
裕介が疑問に思い葵に聞いてみる。
「あの二人が勝手に茜を賭けの道具にしたからだと思うよ」
「修さんらしいですね。気持ちはわかりますけど」
葵の答えに納得する裕介。
「そういえば小次郎、小太郎はどうした? さっきから見当たらないんだが?」
修は周りを見渡し小次郎に問う。
「兄貴ですか? 兄貴なら今日はバイトですよ。勝負が見れなくて残念がってました」
「ん、そうか」
小次郎が答えると修は軽く返してステージの方へ顔を戻す。
「茜お姉様……」
「大丈夫、幸がなんとかするよ!」
「そうだぞ栞! 幸兄上を信じろ!」
心配する栞に花蓮と輝が言う。
「うん……」
栞は2人に返事をするものの、顔が晴れることはなかった。
*
––––––ステージ
「なァ勅使河原、やり合う前に一ついいか?」
「なんだ?」
「なんでテレビまで来てんだよ?」
「君の負ける姿を全世界に流すためさ。因みにこれは櫻田ファミリーニュースで生放送されているぞ」
「はァ……。そーですかい」
溜め息を吐きながら幸は大和に返す。
「幸ちゃん!」
「ん? どうした茜?」
幸は茜に呼ばれ、彼女な方へ顔を向ける。
「絶対勝ってよ! 負けたら承知しないんだからね!」
「安心しろ。絶対勝ってやっからよ」
不安そうな茜に幸は軽く返す。
『さぁ、一回戦の勝負のお題は『知能』!』
『ルールは簡単。出題された問題に早押しで答えて頂き、先に10問答えた方が一回戦の勝者となります』
櫻田家の兄弟姉妹、小次郎たちは思った。一回戦は幸の負けだと。
––––––何故なら幸は勉強が苦手。専門的なこと(ゲームやスポーツなど)でない限り彼には答えられない。大和の学力はわからないが、幸よりは頭が良いと見ていいだろう。
結果幸に勝ち目はないと判断した兄弟姉妹、小次郎たち。
2人は校庭にセットされた解答者テーブルに腰を掛ける。
『両者席に着かれたようなので、問題を読み上げたいと思います』
男性司会者の言葉に2人は身構える。
『第1問、豊臣秀吉が作った城の名前は何か?』
「よし! これなら幸に答えられる!」
問題の内容を聞いて裕介が言う。
しかし––––––
「いや、無理だな」
「いや、無理ね」
「え?」
修と奏が口を揃えて裕介に反論する。
ピンポーン!
『先にボタンを押したのは幸様だ!』
『幸様、お答えを』
「えーと、名古屋城!」
ブブー!!
『残念!違います!』
ピンポーン!
『はい、大和様』
「大阪城」
ピンポンピンポン!!
『正解です!答えは大阪城でした!』
『因みに名古屋城は徳川家康が作りました。大和様に1ポイント入ります!』
1ー0
自信を持って答えた幸。正解じゃないことに「おっかしいなぁ……」と呟く。
『次の問題です。第2問、世界中で最も高い山、エベレストの標高は何m?』
「これならアイツにも答えられるわね」
問題を聞いて美香子が言うが––––––
「いや、無理だな」
「いや、無理ね」
「へ?」
先程と同様、修と奏が反論する。
ピンポーン!
『さぁ、またも先にボタンを押したのは幸様だ!』
『幸様、お答えを』
「えーと……3,776m!」
ブブー!!
『残念!違います!』
ピンポーン!
『はい、大和様』
「8,848m」
ピンポンピンポン!!
『正解です!エベレストの標高は8,848mです!』
『因みに3,776mは富士山の標高です。大和様に1ポイント入ります!』
2ー0
「「ど、どうして……」」
裕介と美香子は幸に驚愕する。
「あいつがバカだから」
「まぁあの子らしいわね」
「エベレストの標高なんてあたしでもわかるよ……」
驚愕する2人に修、奏、光は呆れた表情で喋る。
「幸ちゃん……」
そんな幸に対し茜は涙目混じりに呟く。
*
あれから大和の正解が続き、現在の結果は––––––
7ー0
「これは諦めるしかないね」
「幸お兄様……」
遥は諦めムードに入り、栞は悲しいそうに幸の名前を呟く。
『第8問、ソーセージを酢漬けにするチェコの料理の名前は?』
ピンポーン!
「さぁ、ボタンを押したのは未だ正解のない幸様」
「答えをどうぞ!」
「水死体!」
会場にいた全員が幸の負けだと思っていた。
しかし––––––
ピンポンピンポン!!
『正解です!答えは水死体でした!』
「おーし!」
幸はガッツポーズをして喜ぶ。
「「「「「えぇぇぇーっ!!」」」」」
会場にいた全員が、幸の正解に対し驚きの声を上げる。
「幸様に1ポイント入ります!」
7ー1
『第9問、星は英語でスターと言いますがロシア語ではなんと言う?』
ピンポーン!
『はい、幸様!』
「ズヴィズダー!」
ピンポンピンポン!!
『正解です!』
「おーし!」
『幸様にもう1ポイント入ります!』
「どういうことですか?」
花蓮は修と奏の2人に聞く。
「まぁ簡単に言うと、あいつの知識は興味があるかないかなんだ」
「興味?」
「そうよ。さっきの問題もあの子が興味本意で調べた結果答えられたものなのよ」
「……そういえば幸って昔から変なことばっかり知ってたわね……」
奏の説明で納得する花蓮。その話しに対して小次郎が––––––
「じゃあ逆を返せば、答えられない問題は……」
「興味が無いってことなのよ」
「ですよねー……」
「もう! 幸は真面目に勉強すれば学年1位にもなれるのに!」
「お姉ちゃん、それは言い過ぎだと思うよ……」
葵の言葉に岬が苦笑いを浮かべて不定する。
「幸ちゃーん!! 頑張れー!!」
さっきの泣きそうな顔はどこえやら。茜は大声で幸を応援する。
*
この後、幸が次々と問題に答えていくが大和も負けじと問題に答える。そして現在の結果は––––––
9ー9
『最初は大和様が優位に立っていましたが、幸様も粘り強さを発揮し現在は両者ともにリーチです』
「まさか君がここまでやるとは……」
「ギリギリだったけどな。ま、泣いても笑っても次で最後だ!」
『それでは最終問題に入ります。最終問題、『東方神起』←このグループの読み方は?」
ピンポーン!
『さぁ、先に押したのは幸様だ!』
「勅使河原、一回戦は俺が貰ったぜ!」
「くっ……」
勝利を確信した幸に大和は悔しそうな表情をする。
『それでは、答えをどうぞ!』
「答えは––––––」
「––––––
*
『一回戦の勝者は、勅使河原 大和様だァ!!』
「クソォ! なんでや! 陣◯言うてたやん!!」
幸は思わず関西弁で喋ってしまう。
「『クソォ』はこっちの台詞だバカ!!」
「幸!! お前なぁ!!」
「アンタ、勝てる勝負捨ててどうすんの!!」
「幸ちゃん、さすがにあれはないよ……」
「あはは……」
「幸ちゃん、何やってんの……」
上から修、小次郎、美香子、岬、裕介、光が言う。
「幸ちゃん……」
茜なんて今にも泣きそうな顔をしている。
「うっせェ!! 二回戦で挽回すりゃいいんだよっ!!」
そんな7人に幸は怒鳴りながら言い返す。
*
––––––テニスコート
『二回戦のお題は『体力』です』
『これからお2人にはテニスをしてもらい、先に1セットを先取した方が勝者となります』
現在幸は体操着、大和はテニスウェアに着替えテニスコートにいる。観客もテニスコートの周りに集まっている。
「んだよその格好。お前テニスしたことあんのか?」
「そうだが、君は見るからになさそうだね。これは二回戦も私の勝ちで決定した様なものだな」
自信ありげに喋る大和。2人が話していると、観客席から修が大和に声を掛ける。
「おーい! 勅使河原?だっけ?」
「はいっ!! 勅使河原 大和と申します! ! お兄さん!!」
「お兄さん言うなっ!!……悪いこと言わないから二回戦は棄権した方がいいぞ」
修の忠告に兄弟姉妹・小次郎たちは全員首を縦に振る。
「お兄さん、弟さんが心配だからといって、そういう事を言うのは駄目だと思いますよ?」
「いや、心配してるのは幸じゃなくておま––––––」
「さぁ、櫻田 幸!! ゲームを始めよう!!」
「……」
修の忠告を無視して配置に着く大和。幸も彼同様自分の配置に着く。
「1セットマッチ勅使河原!サービスプレイ!!」
「……はぁ!!」
審判の掛け声でサーブを打つ大和。
「おらッ!!」
大和の強烈なサーブを幸は打ち返す、が––––––
「遅い!!」
大和は幸の打ち返した球を更に打ち返しす。
「15ー0!」
先にポイントを取ったのは大和。この後も大和の攻撃が続き防戦一方の幸。
その結果––––––
「ゲーム1ー0! 勅使河原!」
早くも1ゲームを先取される。
「こんなものか? 櫻田 幸」
「……まだ始まったばっかだろ」
大和の挑発に幸は軽く返し、自分の配置に戻る。
「チッ、あいつ……」
「どうしたの? 松平君?」
幸を睨みながら舌打ちする小次郎に花蓮が聞く。
「気づいたか小次郎」
「どういうことですか修さん?」
「幸の顔見てみろ」
花蓮は修に言われ幸の顔を見る。
「あっ!少しですが笑ってますね。……もしかして……」
「……あいつ、遊んでんだよ」
「やっぱり……」
小次郎の返しに花蓮は呆れ顔になる。
*
「ゲーム5ー0! 勅使河原!」
「どうやらあと1ゲームで私の勝ちみたいだな! そして茜さんは私のものに……」
追い込まれてしまった幸。あと1ゲームで大和の勝利になる、が––––––
「おーし。遊びはこれくらいでいいか」
「……遊びだと?」
幸は首をポキポキ鳴らして言う。
大和はというと、幸の台詞に眉を顰めて聞き返す。
「そっ、俺が最初から本気出すと番組的に面白くねェしな」
そう言うと、幸は微笑を浮かべ人差し指をピンと立てる。
「1球」
「は?」
「だから、次は1球で決めるっつってんだよ」
「……ふっ! 面白い。やれるものならやってみろ!」
「櫻田! サービスプレイ!!」
「……はァ!!」
幸は審判の掛け声を聞きサーブを打つ。大和はそのボールを捉えて打ち返そうとする。
(ふ、これなら打ちかえせ––––––っ!?)
打ち返そうとした大和だったが、ボールがガットをすり抜けて返すことが出来なかった。
「0ー15!」
(な、なんだ今のは……。ボールがすり抜けた……?)
驚いている大和に、今度は指を3本立てる幸。
「次は3球な。……おらッ!!」
宣言するとボールを上げてサーブする。
「はっ!」
大和はサーブを返すが––––––
「おらよっ!」
先回りしていた幸に打ち返され、続けてポイントを取られる。
「0ー30!」
「な、何故だ……」
またも的中させた幸に大和は驚きの声を漏らす。
その後も––––––
「破滅への
「燕返し!!」
「動くこと雷鳴の如し!!」
さっきの立場が入れ替わり、幸は大和を圧倒する。
そして––––––
「0ー40!」
あと1ポイント取れば幸の勝ちまで近づいた。
「おらっ!」
「はっ!」
「せいっ!」
「やぁ!」
2人のラリーが続く。
「そろそろ諦めろ、よっ!」
「誰が諦める、かっ!」
「お前の負けは決まりだ、ろっ!」
「まだ私は負けてはいな、いっ!」
「チッ、なら止め!!」
そう言うと、幸は自分の体を勢いよく回転させる。彼の回転は勢いを増し、大きな風の渦を生み出す。
「ヤバイ!? 皆こっから離れろ!! 勅使河原もだっ!!」
修がテニスコートにいる観客に大声で知らせる。野次馬も「これはヤバイ!?」と思い全員コートから慌てて逃げ出す。
「勅使河原!! お前も逃げるぞ!!」
「嫌だっ!! 私は逃げないぞ!!」
「お前ホントに死ぬぞ!!」
修は
幸はそのままの勢いでテニスボールをコートに叩きつける。
「
幸の独特なフォームから繰り出されたボールは、テニスコートに大きな穴を開けた。
※これは一応テニスです。
*
『にっ二回戦の勝者は、櫻田 幸様だァ!』
「よっしゃー!! どんなもんだァ!!」
ガッツポーズで喜ぶ幸。
だが––––––
「幸!! 何してるの!!」
「コートを壊すなんてどうかしてますよ!!」
「兄さん、あれはちょっと……」
「さすがにあれは……」
「幸お兄様……」
「さすが幸兄上です!!」
上から葵、奏、遥、花蓮、栞、輝が言う。
「うっせェ!! 勝ったんだからいいだろ!!」
「ですがアレはやり過ぎです!!」
「だけど「幸?」な、なんでもないっす……」
奏に反論しようとした幸。しかし、葵の威圧に引き下がってしまう。
『現在の結果は両者1勝1敗。次の勝負でラストとなります』
『最後のお題は––––––』
周りに緊張が走る。最後のお題は一体何かと。そしてそのお題は––––––
『––––––『運』です!』
「は?」
「ん?」
最後のお題を聞いた2人は、思わず間抜けな声を出してしまう。周りの観客もお題を聞いて困惑している。
『ルールは簡単。箱の中に入っている2本の棒の内、当たりを引いた方の勝ちです』
「ちょっと待った」
『はい? なんでしょうか?』
「最後の勝負、前の2つと比べてなんかショボくねーか?」
「私もそう思うのだが……」
『正直生放送なのでもう尺がそんなにないんですよ』
「なんじゃそりゃ……」
幸は司会者の発言に力無くツッコム。大和も同じ気持ちの様だ。
「私の価値って……」
司会者の言葉に茜はズーンと落ち込んでしまう。
『それでは時間もありませんので、さっさと引いて下さい』
「俺たちの扱いが雑になったような……。ま、いいか。勅使河原、お前はどっちにすんだ?」
「そうだな……私は右にしよう」
「じゃあ、俺は左だな!」
2人は自分の選んだ棒を掴む。
『それではお2人とも、同時に棒を引いて下さい』
2人は同時に棒を引き上げる。果たして勝者はどちらになるのか。
「「……は?」」
棒を引いた2人は声を合わせ訳が分からない顔を浮かべる。
何故なら––––––
––––––2人が引いた棒には、両方とも当たりの文字が書いてなかったからだ。
この結果に周りの野次馬もざわめき出す。幸と大和はモニターの司会者に怒鳴り始める。
「おいッ!!! どういうことだ司会者ァ!!!」
「説明しろッ!!!」
『えーと……。確認したところ、スタッフのミスで当たりを書き忘れたとのことでして……』
『尺もありませんし、今回は引き分けと言うことで……ダメですか?』
「駄目に決まってんだろッ!!!」
「駄目に決まっているだろッ!!!」
『『それでは皆さん、また来週!』』
「「勝手に終わらすなァァァァァ!!!!」」
––––––こうして、茜争奪3本勝負は残念な感じで幕を閉じたのであった。
––––––勝負終了後、幸はテニスコートに開けた大きな穴を埋めることになった。その後家に帰ると、玄関の上がり框に黒いオーラを纏った茜が立っていたとか。
*
––––––後日
「櫻田 幸!! 勝負だ!!」
「またお前か、しつけェぞ!! あの後茜にこっ酷く叱られたからやんねェって何度も言ってんだろうがッ!!」
「そんなこと私には関係のない事だ! さぁ勝負だっ!!」
「だからやんねェっつーの!!」
大和はこの間の勝負に納得がいかず、こうして幸に毎日勝負を挑んでいるらしい。この2人のやり取りはクラスでは日常茶飯事になったらしい。
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