城下町のダンデライオンー櫻田家の次男は変人?ー《凍結中》   作:ションタ

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それではどうぞ!


第七話

「疾風王アレクサンダーでダイレクトアタック!!」

 

「くっ……また君の勝ちか……」

 

「フハハハハハ!! 悔しいでしょうねェ。どうだ、俺のファンサービス!!」

 

 

今は昼休み。幸と大和は、机を並べて◯戯王デュエルモンスターズで勝負をしていた(賭事は無しで)。現在の戦績は、27対0で幸が圧勝している。

 

 

「もう一度だ! もう一度勝負だ櫻田

幸!」

 

「勅使河原君、そろそろ諦めなよ」

 

「そうだぞテッシー。大体お前はモンスターカードを入れ過ぎだ。マジックやトラップカードをもう少しデッキに増やせ」

 

「テッシーではない、勅使河原だ! 忠告はありがたいが、その呼び方はなんとか出来ないのか松平 小次郎」

 

「だって、テッシーはテッシーだろ?」

 

「テッシーではない、勅使河原だ!!」

 

 

あだ名で呼ぶ小次郎に反射的に返す大和。あの争奪戦から数日が経ったが、なんだかんだでクラスに馴染んでいる様だ。

そこへ––––––

 

 

「幸ちゃーん!!」

 

 

4人が遊◯王をしていると、茜が幸に声を掛けながら近づいてくる。

 

 

「んァ? どうした茜」

 

「えっとね––––––」

 

「茜さん! 今日もまた一段とお美しい!」

 

「……」

 

 

幸に何かを話そうとした茜。しかし、大和に邪魔をされて喋ることが出来なかった。茜は顔を引きつらせて大和に話し掛ける。

 

 

「てっ勅使河原君、今日でその台詞3回目なんだけど……」

 

「すいません。茜さんが美しくてつい言ってしまいました」

 

「ありがとう……。これから幸ちゃんとお話ししたいから邪魔しないでね?」

 

「はい! わかりました!」

 

「幸ちゃん、ここだとあれだから廊下に行くよ」

 

「お、おい! 引っ張んなよ!」

 

 

茜は幸の腕を引っ張り廊下に出る。

 

 

「で、茜。俺に何の用だ?」

 

「ちょっと気になる事があって……。幸ちゃんはさ、生徒会長がどんな人か知ってる?」

 

「生徒会長?」

 

「うん。毎回朝礼の時はカナちゃんが演説してるでしょ? だからどんな人なのかなぁって」

 

「そういや1回も見たことねーな、生徒会長。でもいきなりだな、なんかあったのか?」

 

 

突然こんな話しをし出した茜を疑問に思い聞いてみる。

 

 

「さっき福品君と一緒にノートを運んでた時にね、男子の先輩に会長って呼ばれてたの」

 

「福品が?」

 

「そう」

 

「……そんでお前は、福品が生徒会長じゃねーかと思ったのか?」

 

「そう!」

 

 

自身ありげに言う茜。幸は腕を組んで少し考える。考えがまとまると幸は茜に口を開く。

 

 

「さすがに会長って呼ばれたくれェで生徒会長とは陰らねェと思うぞ」

 

「え、そうかな? じゃあ、なんで福品君は会長って呼ばれてたの?」

 

「それはアレだ、なんかのクラブとかで呼ばれてんじゃねーの?」

 

「クラブ?」

 

「そうだ。どうせアイツのことだからイチゴ牛乳早飲みクラブの会長とかそういう落ちじゃねーの」

 

「その可能性は100%ないと思うよ!?」

 

 

幸の予想にツッコミを入れる茜。ツッコまれた幸は「そうか?」と呟くと、何かを思い出したらしく茜に問いかける。

 

 

「あっそういや茜、話し変わっけど来週末の町内清掃大丈夫なのか?」

 

 

幸が話しているのは、今日の朝礼で生徒会福会長(奏)が全校生徒で町内清掃活動を実施しようという企画のことだ。

すると茜はビクッと体を反応させる。

 

 

「お前人見知りだろ。全校生徒でやるから上級生と顔合わすし。学校の外に出るわけだから国民とも顔合わすしよォ。大丈夫なのかとおも………大丈夫じゃなさそうだな」

 

 

最後まで喋らずとも幸にはわかった。何故ならその話しをする度に、茜の顔がどんどん真っ青になっていったからだ。

 

 

「だだ大丈夫だよ! わ、私だって成長してるんだから!」

 

「いや、全然大丈夫そうには見えねーんだけど……」

 

「それに私も王様目指すって決めたんだから! 人見知りも治したいし!」

 

「あれ、お前国王になろうとしてんのか? あんなになりたくねェって言ってたのに?」

 

「い、色々あったの!!」

 

 

今度は顔を赤くする茜。顔色をコロコロ変える茜に、幸は「信号みてェだな」と思いながら見つめていた。

 

 

「そそそういえば、幸ちゃんも王様になるんだよね?」

 

「俺? 俺は国王なんかなんねーよ」

 

「えっ、なんで!? 昔はお父さんみたいな国王になりたいって言ってたじゃん!?」

 

 

予想だにしない発言に茜は驚愕する。そんな彼女に幸は溜め息をついて言う。

 

 

「それは昔の話だろ……。俺はとっくの昔から国王になる気なんて消え失せてんだよ……」

 

「んなことより今は福品だ。さっきアイツが二年棟に行くのを見たって奴がいるから、本人に直接確かめに行った方が早いだろ。行くぞ茜」

 

「あっ! 幸ちゃん待ってよ!!(幸ちゃんどうしたんだろう? ちょっと暗い顔してたし……)」

 

 

話しを誤魔化して二年棟へ向かう幸。茜は幸に疑問を持ちながら、急いで後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

––––––場所は変わって二年生の教室。

 

 

「なぁ小太郎、数学のノート見せてくれ。俺さっき寝ちまってさぁ」

 

「またか修……。お前これで何回目だ?」

 

「う〜ん…………3回目?」

 

「5回目だっ!! ちゃんと授業聞けよなお前……」

 

「そう言って毎回ノートを見せてくれる小太郎だった」

 

「……もう貸さないぞ」

 

「すいませんした!?」

 

 

修が話している彼––––––名前は松平 小太郎。小次郎の兄だ。しかも弟同様イケメン。

 

2人が仲良く?話していると––––––

 

 

「奏さーん! 一年生が呼んでるよー!」

 

「なになに告白?」

 

「からかわないでくださいっ」

 

 

女友達にからかわれながらも、奏は入り口付近で待機している一年生の所へ向かう。それを聞いていた1人の男子生徒が修に話し掛ける。

 

 

「おいおい、奏ちゃん告られるってよ?」

 

「ん?……」

「なにっ!?」

 

 

修と小太郎は奏の方に視線を向ける。

 

 

「会長……」

 

「へ?」

 

「いや、なんでもない。アレは大丈夫だ」

 

「なんだそれ」

 

「よかったぁ……」

 

 

男子生徒は訳が分からない顔を浮かべ、小太郎はホッと安心した顔をする。

 

 

(しかし、会長が奏と話すことといえば……やはり茜関連か?)

 

「つか、町内清掃とかダルいよなー。お前から奏ちゃん説得してくれよ」

 

「あー、はいはい……」

 

 

男子生徒へ適当に返し、修は2人の後を追う。

 

 

 

 

 

「なんでしょうか?」

 

「わかっているでしょう? 町内清掃の件についてです」

 

「粗方、校内清掃に切り替えて欲しいってところですか」

 

「……はい」

 

 

恐る恐る返事をする福品だったが––––––

 

 

「駄目です」

 

「なっ!」

 

 

笑顔でバッサリと断られてしまう。

 

 

「茜には4,000万の貸しがあるので」

 

「?」

 

「いえ、こちらの話です。それに茜の恥ずかしがる姿が見放題ですよ。本当はあなたも町内の方が嬉しいのではないですか?」

 

 

小悪魔じみた笑顔で話す奏。福品の反応はというと––––––

 

 

「……」

 

 

顔を赤くさせ自分の世界に入ってしまった。

 

 

(わかりやすいわね……)

 

 

福品の反応に、奏は呆れ果てた顔で思った。

 

 

 

 

 

 

3人が教室を出ていって少し経った頃。二年生の教室前では、幸と茜が教室を覗き込んでいた。

 

 

「どうだ? 福品の奴いたか?」

 

「ううん……いないよ」

 

 

首を横に振る茜。「おっかしいなァ」と呟き、幸も教室を覗き始める。他の場所へ行ったのかと、二人が頭を悩ませていると––––––

 

 

「おや、なんか可愛いのと厳ついのがいるぞ」

 

「っ!?」

 

(厳ついって俺のことだよな?)

 

 

女子生徒が言葉にあれよあれよと二年の生徒が次々に集まってくる。種に茜の方へ。

幸はこの状況に「どうしてこうなった……」と呆然としながらオロオロしている茜を眺めていた。

 

 

「ねぇ、あれ幸様じゃない?(ボソッ)」

 

「ホントだ! 幸様よ!(ボソッ)」

 

「私声掛けてみようかなぁ(ボソッ)」

 

「あぁ、あの人に罵られたい(ボソッ)」

 

(なんか俺のこと見ながらコソコソ話してる奴らがいるし……。もしかして俺、悪口言われてんのかッ!?)

 

 

ファンの女の子達がコソコソしてるのを幸は悪口だと勘違いし、ショックを受ける。彼自身、自分のファンクラブがあるとは知らないのだから仕方がないことだろう。

すると、そんな幸に1人の生徒が声を掛ける。

 

 

「やぁ幸君、どうしたの? 二年の教室なんかに来て」

 

「ん? 小太郎さん」

 

 

そう、声を掛けてきたのは小太郎だ。幸は小太郎だと気がつくと––––––

 

 

「いつも兄貴が世話になってるっす」

 

 

と、会釈する。

 

 

「いやいや、此方こそ小次郎がいつも世話になってるよ。それより修や奏さんに何か用があるのかな?」

 

「いえ、兄貴や姉貴に用じゃなくちょっと人探しを……。小太郎さん、ここに眼鏡掛けた一年来なかったっすか?」

 

「一年? それなら奏さんと一緒に何処かへ行ったけど……」

 

「そうっすか……(なら次は三年棟か?)」

 

 

眉を顰める幸。とりあえず彼は三年の教室へ向かうことにした。

 

 

「幸君?」

 

「いや、なんでもないっす。教えて頂いてあざした!」

 

 

そう言うと、幸は茜を生徒の群れから引っ張り出し二年の教室を後にする。

 

 

「何だったんだろう……?」

 

 

小太郎は教室を後にする幸を見つめながらそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

「おい、奏」

 

「何ですかお兄様♪」

 

 

福品と話し終えて教室へ戻ろうする奏。そこへ待ち伏せしていた修が呼び止める。

 

 

「……会長と何話してた」

 

「茜を嫁にくださいって––––––」

 

「冗談じゃない!! 俺は絶対に反対だぞ!! あいつのことは嫌いじゃないが、それとこれとは話しは別だッ!!」

 

「じょ、冗談ですぅ。今朝の朝礼の件で「そうか、ならいい」ってオイッ!」

 

 

修は茜に関わりがないと分かると、態度をすぐに変え教室へ戻って行ってしまう。

 

 

(はぁ……修ちゃんったら……。まぁ茜に関しては手遅れなんだけどね)

 

 

奏はそう思いながら、教室へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

その頃、福品はというと––––––

 

 

「正直茜様の恥ずかしがる御姿は見たいですよ、ええ! けどそんな私欲のために行動するなんて人として会長として良いのだろうかと……」

 

「えーっと……(……もしかして背中を押して欲しいのかな?)」

 

 

あの後、三年の教室へ向かい葵を呼び出し、茜の事について相談していた。

葵は最初は戸惑ったものの、福品の言葉に真面目に答える。

 

 

「……好きな人の色んな表情を見たいのは当然なんじゃない? それに茜自身は嫌だけど、頑張ろうとはしてるんだよね。折角本人がやる気を出してるなら、やらせてあげたいかな。町内の方が茜の為にもなるし」

 

「……そ、そうですか。……そうですね“彼女の為”になるならそれもいいか」

 

(欲望の方が大きいんだろうなぁ)

 

 

葵の言葉で決心がついた福品は、満足気に自分の教室へ戻って行く。

すると––––––

 

 

「葵ー! またお客さーん!」

 

 

友達の菜々緒に呼ばれ教室へ戻る。そこには、腕を組んで壁に寄りかかっている幸と、生徒達に絡まれて涙目になっている茜の姿があった。

 

 

「あれっ!? 2人とも珍しいね。どうしたの?」

 

「姉さんに聞きてーことがあってな」

 

「聞きたいこと?」

 

「あァ、姉さんって生徒会長とダチだったよな?」

 

「え、うん……。うちのクラスの子だよ」

 

「……三年生?」

 

「そうだよ」

 

(……んじゃ、福品の奴は結局なんだったんだァ?)

 

 

幸は謎が解けないまま葵にお礼を言い、絡まれている茜を助け出して三年生の教室を出て行くのだった。

 

 

 

 

 

 

「我々も町内清掃に賛同することになりました」

 

「会長ッ!? どういうおつもりですか!?」

 

「改めて考えてみたんです。我々が何のために在るのかを……。(彼女)の意思を尊重し(彼女)の為を思い行動すること!」

 

 

そして福品は大声で宣言する。

 

 

「それこそが茜ファンクラブの存在意義ッ!! そして“FC会長”としての僕の意義であるとォォッ!!」

 

 

そう、彼の裏の顔は茜ファンクラブの会長なのだ。

 

 

「ま、待ってください会長! 我らは櫻田 茜様(プリンセス)のおかれる特異な環境の中、少しでも平穏無事な生活を送れるよう––––––」

 

「ですから……それでは彼女の意思を無視することになるんですよっ! 彼女は自ら困難に立ち向かい、壁を乗り越えようとしている。そ……それに町内だったら彼女の恥じらう姿が一日中見放題なんだぞ……」

 

「貴様それが本音だなッ!!」

 

「う、うるさい!! これは彼女の為でもあるんだ!!」

 

 

––––––この後、会員内で揉めはしたが、自分たちも恥じらっている茜の姿を見たいという賛成意見が殺到し、この揉め事は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

生徒会長が葵の友達の卯月だとわかったが、結局福品が会長と呼ばれていた理由はわからなかった幸と茜。今は自分たちのクラスに戻っているところだ。

 

 

「茜、大丈夫か?」

 

「無謀だったよ……追跡は諦める……」

 

 

茜は何度も上級生に絡まれてグッタリしていた。

 

クラスの前に着くと幸が扉を開ける。

 

 

((あ、いた))

 

 

扉を開けると、教卓に福品の姿が目に入った。

 

 

「あ! 櫻田さん。さっきはノートありがとう」

 

「う、ううん、全然いいの!(会長さんはちゃんと別にいたし、結局なんだったのかなぁ……)」

 

(やっぱイチゴ牛乳早飲みクラブの会長じゃ……)

 

 

––––––この後、茜は福品のことが気になり、午後の授業は全く集中出来なかったそうだ。その間、幸は夢の中だったが。

 

因みに町内清掃当日は、福品がいつも以上にやる気に満ち溢れていたらしい。

 

 




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