しかし、その脅しは些か卑怯だと思う。いくら、Aクラスでもそれをされてしまったら、勝てないだろう。戦略としてはいいけど、人としては最低だと思う。
「じゃが、それでも問題はあるじゃろう。体力としては辛いし面倒じゃが、Aクラスとしては一騎打ちよりも試召戦争の方が確実であるのは確かじゃからな。それに——」
「それに?」
「そもそも、一騎打ちで勝てるんですか?こちらには、姫路さんと僕がいるということは、既に知られてしまいました」
FクラスがDクラスに勝ったとなると、当然その勝ち方に注目が集まる。姫路さんと僕の存在はもはや周知の事実だろう。
「そのへんに関しては考えがある。心配するな」
自信満々な雄二。逆に明久は不安に満ちていた。まあ、それは仕方ないだろう。
「とにかくBクラスをやるぞ。細かいことは後に教えてやる」
「ふーん。ま、考えがあるならいいけど」
勝算がなければ、こんなことは言わないよね。
「で、明久」
「ん?」
「今日のテストが終わったら、Bクラスに行って宣戦布告して来い」
「断る。雄二が行けばいいじゃないか」
Cクラスの皆さんに、ボコボコにされたようですね。お疲れ様です。
「やれやれ。それなら、ジャンケンで決めないか」
「ジャンケン?」
どうせ、雄二に卑怯な手を使われて、負けるのがオチですよ。だって、さっきからあくどい顔していますし。
「OK。乗った」
「よし。負けた方が行く、でいいな?」
明久は雄二にうなずき返す。その間、僕は秀吉と話をしていた。
「……あれ、どう
「うむ、そうじゃ。しかし、鴉よ。Bクラスには、あまりいい印象がないように思えるんじゃが?」
「……そうなんだよ。前に、あそこの代表に脅されて、振り分け試験の答えを渡しちゃったんだ」
「どうして、答えを持っていたんじゃ?」
秀吉の質問に、言いにくそうに答える。というか、本当に言いにくい。
「……バイトで、振り分け試験の作成を手伝っていたんだよ。これでも、僕は店をやっているから、教材などの関係で全国のテストの出題パターンを知っているんだ」
「この話は、秘密にした方がいいんじゃろ?」
秀吉の優しさに、僕はうなずいた。出来れば、誰にも秘密でお願いします。
「分かったのじゃ。鴉が言いたくないなら、わしは言わない」
「……ありがとう」
そんな話をしていたら、明久たちは終わったみたい。
「絶対に嫌だ!」
「Dクラスの時みたいに殴られるのを心配しているのか?」
「それもある!」
「それなら、今度こそ大丈夫だ。保証する」
あれ? 確か、Bクラスは美少年好きが多かったような気がする。でも、噂で聞いたから本当かどうか分からないなぁ。
「そっか。それなら確かに大丈夫だねっ」
「でも、お前不細工だしな……」
溜め息混じりに雄二が呟く。それは、雄二も言えないと思うけど。
「失礼な! 365度どこからどう見ても美少年じゃないか!」
「5度多いぞ」
「実質5度じゃな」
「360度ですけど」
「三人なんて嫌いだっ」
多分、明久は365日と間違えていると思う。やっぱり、後で勉強を教えた方がいいのだろうか。でも、明久は勉強嫌いなんだよね・
「とにかく、頼んだぞ!」
明久がBクラスに向かったのを確認したら、皆で教室に戻る。再び、午後からテスト漬けが始まる。
*
「……言い訳を聞こうか」
午後のテストを終えて、放課後になった時。
明久はBクラスの暴行で千切れかけている袖を押さえ、雄二に詰め寄っていた。
「ふっ。予想通りだ」
「くきぃー!殺す!殺し切るーっ!」
「落ち着け」
「ぐふぁっ!」
雄二に鳩尾を殴られた明久は、床に倒れ伏す。
「先に帰ってるぞ。明日も午前中からテストなんだから、あんまり寝てるんじゃないぞ」
「うぅ……腹が」
その光景を見ていた僕は、秀吉と帰ることにした。残っていても、何もない。それに、明久の今後を考えて勉強を教えようか悩む。