そして、僕は保健室に向かった。中に入ると、ちょうど先生がいたので包帯を巻き直してもらう。
「ありがとうございます。さすがに、僕一人じゃ届かなかったので」
「いいの。あなたは生徒なんだから、先生に頼りなさいよ? 怪我も大分治りかけているから、あともう少しの辛抱だから」
「……はい。また、お願いします」
僕はそう言って、保健室を出た。そうして、教室に戻る時に、明久たちを見かける。
「島田さん!」
「よ、吉井!」
……何、この安っぽいドラマは。感動の再会とでもいうつもりなのか?
「そこで止まれ! それ以上近寄るなら、召喚獣に止めを刺して、この女を補習室送りにしてやるぞ!」
そうか、Fクラスの数少ない女子をただ戦死させるんじゃなく、人質にとって補習室送りをちらつかせ、士気を削ぐ作戦か。でも、それって、明久には意味ないと思うけど。
「総員突撃用意ぃーっ!」
「隊長、それでいいのか!?」
やっぱりね。僕的には、捕まる時点で死んだのと同じだと思う。敵の策略に引っ掛かって、人質にされているんだから。馬鹿だよね。
「ま、待て! 吉井!」
敵からコールがかかるとは。往生際が悪いね。
「コイツがどうして、俺たちに捕まったと思っている?」
「馬鹿だから」
「殺すわよ」
明久にまで、馬鹿だと思われているなぁ。まあ、本当のことだからいいんだけど。
「コイツ、お前が怪我したって偽情報を流したら、部隊を離れて一人で保健室に向かったんだよ」
ふーん。部隊を離れた時点で、死んだね。御愁傷様です、お馬鹿さん。
「島田さん…」
「な、なによ」
「怪我をした僕に止めを刺しに行くなんて、アンタは鬼か!」
「違うわよ!」
あ、明久の顔がえっ?と言っている。そりゃ、そうだろうね。
「島田さん。それ、本当?」
「そ。そうよ。悪い?」
はい、悪いです。偽情報に騙されていることが、悪いのですから。
「へっ。やっとわかったか。それじゃ、おとなしく——」
「総員突撃ぃーっ!」
「どうしてよっ!?」
「あの島田さんは偽物だっ! 変装している敵だぞ!」
明久の好感度が低いですね。暴力ばっかりしていますと、いざという時に信じてもらえませんよ? 島田さん。
「おい待てって! コイツ本当に本物の島田だって!」
「黙れ! 見破られた作戦に、いつまでも固執するなんて見苦しいぞ!」
「だから本当に——」
僕は窓の外にいた烏たちと、会話する。一見、烏がカーと鳴いて、僕が聞いているだけに見える。けれど、僕には烏たちの言葉が分かる。動物と会話出来る人がいるから、烏と会話できる人がいてもおかしくない。
「——そうなんだね。ありがとう、隣町の三丁目に餌があるから」
僕は烏たちの頭を撫でて、明久たちを見る。
「皆、気をつけろ! 変装を解いて襲い掛かってくるぞ!」
……明久、まだ疑っているんですか?島田さんが可哀想ですよ。
「よ、吉井、酷い……。ウチ、本当に心配したのに……」
「まだ白々しい演技を続けるか! 大根役者め!」
「……明久、そこの島田さんは本物ですよ。いくらなんでも、そこまで疑うのも酷いですよ」
「そ、そうよっ! 鴉の言ったとおり、ウチは本物なのっ!」
「取り囲むんだ。いくらBクラスでも、この人数なら勝てるから」
「本当に、『吉井が瑞希のパンツ見て、鼻血が止まらなくなった』って聞いて心配したんだから!」
「包囲中止! コレ本物の島田さんだ!」
明久の言葉を聞いて、島田さんは床に座り込んだ。