バカと鴉と召喚獣   作:蒼書生

18 / 50
ご都合主義ですみません


2014 12.08 一部修正


問16

「そこの女顔に、Bクラスの佐川裕樹が、数学で勝負します!」

 

 

 ぶちっ!

 

 僕の何かが切れた。アイツ、禁句を言ったよね?よし、ならば一方的な戦争をしようではないか。覚悟しておけ、この馬鹿が。

 

 

「はい、承認します」

 

 

 木内先生の承認が降りて、僕は召喚獣を呼び出す。

 

 

『Bクラス  佐川裕樹  VS  鴉  Fクラス

 

   数学  142点  VS  640点  数学』

 

 

 

「なっ!? アイツ、Fクラスじゃないのか!?」

 

「よくも、女顔って言ってくれたよね? 今から行われるのは、一方的な戦争ですよ」

 

 

 僕は腕輪の力を使う。腕輪の効果である【召喚】で、呼び出されたのは大きな軍艦。

 

 

「20点を消費して、弾を連射します。あ、そうそう。気を付けてくださいね? この弾は召喚者に当たると、補習室行きにしますから。二度もおいしい効果ですよね」

 

 

 そう言って、上げていた手を振り下ろす。その瞬間、軍艦から弾が連射され、相手の召喚獣諸共爆破する。

 

 

「ばーいばい。禁句を言うから、こうなるんですよ。ふふふ」

 

 

 僕は手を振って、相手を笑う。

 

 

「雄二っ!」

 

「うん? どうした明久。脱走か? チョキでシバくぞ」

 

「話があるんだ」

 

「……とりあえず、聞こうか」

 

 

 明久の真剣な顔に、雄二も真面目な顔になる。

 

 

「根本君の着ている制服が欲しいんだ」

 

「……お前に何があったんだ?」

 

「ああ、いや、その。えーっと……」

 

 

 明久はどもりだす。どう言おうか、悩んでいるんだろう。

 

 

「まぁいいだろう。勝利の暁には、それくらいなんとかしてやろう」

 

 

 悔しい表情をした明久は、頭を掻きむしる。

 

 

「で、それだけか?」

 

「それと、姫路さんと鴉を今回の戦闘から外してほしい」

 

「理由は?」

 

「理由は言えない」

 

 

 そう、さっきのことを見ていれば、明久は分かってしまった。

 

 

「鴉は分かるが、姫路は外さないとダメなのか?」

 

「うん。そうなんだ」

 

 

 鴉はBクラスに少し、恐怖を感じてしまっている。そう、襲われそうになったのだ。だから、恐怖を少し抱いている。

 

 

「頼む、雄二!」

 

「……条件がある」

 

「条件?」

 

「鴉と姫路の二人で担う予定だった役割を、お前がやるんだ。どうやってもいい。必ず、成功させろ」

 

「もちろんやってみせる! 絶対に成功させるさ!』

 

「良い返事だ」

 

 

 

 

 

 

 雄二たちが話していたことを、僕と姫路さんは知らなかった。

 

 僕は出来そうにない姫路さんを守るために、側にいた。

 

 

「姫路さん、聞いてくれるかな?」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「実はね、僕はBクラスが怖いんだ。皆がいない時に、Bクラスの数名が来たんだよ。それで、言えないことをされそうになったんだ。だから、あまり戦闘が出来そうにないよ」

 

「えっ……。鴉君、それは言えないんですか?」

 

「うん。これはね、女子たちには言えないの。あえて言うなら、そういう目で見られてしまった」

 

 

 曖昧にぼかしたことが、姫路さんには分かったようだ。でも、秘密にしてくれるようで、僕は嬉しかった。

 

 

「鴉君は、辛くないんですか?」

 

「うーん、そうだね。辛いよ、今でも。だけど、恥じることはないよ? 褒めてくれる人がいるから、頑張ってこれた。姫路さんも、いつか王子様が来てくれるといいね」

 

「は、はい! ……鴉君は、強いですね。私が盗られた物を知っていて、こうして守ってくれるんですから」

 

「そうだね、姫路さんが盗られた物は知っている。だって、あれは姫路さんが頑張って心を込めて書いた、だった一つの大切な心だから」

 

 

 僕はそう言って、便せんセットを渡す。

 

 

「いつでも僕に言ってください。僕は、恋する人の味方ですから」

 

 

 ふと、昔のことを思い出す。同じことを言ったのにも関わらず、独断で行動して誤爆した人を。結局、嫌われてしまったらしく、傷心して、どこかに消えていった。彼女は、今はどうしているのだろうか。

 

 そんなことを思っていたら、壁の壊れる音がした。見ると、明久が壁を壊している。ねえ、その壁は誰が直すと思っているんでしょうか? そんなことしているから、西村先生に目を付けられるんですよ。

 

 

 そういえば、教科の特性について、説明していなかったね。

 

 各教科には、それぞれ担当する教師がいる。その先生によって、テストの結果に特徴が現れる。

 

 例えば、数学の木内先生は採点が早い。かといえば、世界史の田中先生は採点が甘い。けれど、英語の遠藤先生は、多少のことには寛容で見逃してくれることがある。

 

 ならば、保険体育は?

 

 保険体育の先生は、採点が早いわけでも、甘いわけでも、戦闘範囲が広いわけでも、騙しやすいわけでもない。

 

 ただ、保険体育という教科の特徴。それは、教科担当が体育教師という——

 

 涼しさを求めるために、開け放たれた窓から、入ってきたのは体育教師と土屋。そして、根本の前に立つ。

 

 どうやら、屋上からロープで降りて、ここまで来たらしい。

 

 ——そう、体育教師だからこその、並外れた行動力である。

 

 

「……Fクラス、土屋康太」

 

「き、キサマ……!」

 

「……Bクラス根本恭二に保健体育勝負を申し込む」

 

「ムッツリーニィーーッ!」

 

 

 根本、無様な姿を晒してくれてありがとう。そもそも、存在自体否定したかったからね。

 

 

「——試獣召喚」

 

『Fクラス  土屋康太  VS  Bクラス  根本恭二

 

 保険体育  441点  VS  203点  保険体育』

 

 

 土屋の召喚獣は、手にした小太刀を一閃し、一撃で的を切り捨てた。

 

 今ここに、Bクラス戦は終結した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。