「本来なら設備を明け渡してもらい、お前らには素敵な卓袱台をプレゼントするところだが、特別に免除してやらんでもない」
雄二の言葉に、Fクラスの皆がざわざわと騒ぎだす。
「落ち着け、皆。前にも言ったが、俺達の目標はAクラスだ。ここがゴールじゃない」
「うむ。確かに」
「ここはあくまで通過点だ。だから、Bクラスが条件を呑めば解放してやろうかと思う」
あくまでも、Bクラスの設備を狙って戦争していたんじゃない。むしろ、Aクラス戦までのただの準備である。
「……条件はなんだ」
「条件? それはお前だよ。負け組代表さん」
「俺、だと?」
「ああ。お前にが散々好き勝手やってもらったし、正直去年から目障りだったんだよな。お前の指示で、教室を荒らしに来たBクラスたちに、鴉は貞操を奪われそうだった」
「なんだと? 俺の鴉が、そんな目に遭っていただと!?」
雄二の言葉に、竜樹は大声を出す。
「……竜樹」
「なんだい? マイハ……グハッ!」
「あはははは。ちょっと、廊下でお話してきますね」
僕は竜樹を引きずって、廊下に出ていく。
「……そこで、お前らBクラスに特別チャンスだ」
「「「「「(流した!?)」」」」」
全員が同じことを思ったのは、ここだけの話である。
「Aクラスに行って、試召戦争の準備ができていると宣言してこい。そうすれば今回は『死にさらせぇぇぇっ!!』……設備については許してやってもいい。ただし、宣戦布告はするな。すると、戦争は避けられないからな。あくまでも『変態野郎!』『もっと、罵ってくれぇぇぇっ!!』……戦争の意思と準備があるとだけ伝えるんだ」
雄二が言う度に、挟まるように鴉と竜樹の声が聞こえる。度々、何か恐ろしい音も聞こえてくる。一体、廊下で何が起こっているのだろうか。いや、知らなくてもいいことである。
「……それだけでいいのか?」
「ああ。Bクラス代表がコレを着て、言った通りに行動してくれたら見逃そう」
そう言って、雄二が取り出したのは、さっき秀吉が着ていた女子の制服だった。
「ば、馬鹿なこというな! この俺がそんなふざけたことを……!」
『Bクラス生徒全員で、必ず実行させよう!』
『任せて! 必ずやらせるから!』
『それだけで教室を守れるなら、やらない手はないな!』
Bクラスの仲間たちからの温かい声援。根本が、いかに嫌われているのか分かる。
「んじゃ、決定だな」
「くっ! よ、寄るな! 変態ぐふぅっ!」
「とりあえず黙らせました」
「お、おう。ありがとう」
代表を見限り、腹部に拳を叩き込んだBクラスの男子。その変わり身には、雄二も驚いていた。
「では、着付けに移るとするか。明久、任せたぞ」
「了解っ」
ぐったりとして動けないのをいいことに、明久は根本の制服を脱がしにかかる。
しかし、男の制服を脱がすなんて、この上ないほどに苦痛である。
「う、うぅ……」
「ていっ!」
「がふっ!」
起きそうな根本に腹部に、更なる追加攻撃を入れる。ようやく、制服を脱がし終わり、女子の制服を着せようとする。
「うーん……。これ、どうするんだろう?」
そう、男の制服と違って、女子の制服は着方が分からない。
「私がやってあげるよ」
「そう? 悪いね。それじゃ、折角だし可愛くしてあげて」
「それは無理。土台が腐っているから」
酷い言いようだと思う。
「じゃ、よろしく」
「……ただいま。ちょっと、私用で抜けていたよ」
そう言ったものの、体に付いた血はべっとりと、且つ滴らせている。
「か、鴉……」
「あ、ごめん。拭いていなかったね。今、拭いてくるから」
うっかり、僕は血を拭くのを忘れていた。これも全部、竜樹が悪い。
なんだかんだで、時間は進んでいく。そして、次の日にAクラス戦が待ち受けている。