バカと鴉と召喚獣   作:蒼書生

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2014 12.08 一部修正


問20

「では、両名共準備はいいですか?」

 

 

 数日の戦争で、何度もお世話になったらしいAクラス担当かつ学年主任の高橋先生が、立会人をしてくれる。

 

 

「ああ」

 

 

「……問題ない」

 

 

 一騎討ちの会場は、Aクラスで行われる。Fクラスでは、畳が腐っている上に不衛生極まりない。

 

 

「それでは一人目の方、どうぞ」

 

 

「アタシから行くよっ」

 

 

 向こうからは、木下優子がやってくる。対するこちらは——

 

 

「ワシがやろう」

 

 

 秀吉である。そういえば、Cクラスでの件について、何もしていませんでしたね。

 

 

「ところでさ、秀吉」

 

 

「なんじゃ? 姉上」

 

 

「Cクラスの小山さんって知っている?」

 

 

「はて、誰じゃ?」

 

 

 忘れているんですか。それじゃ、なんとも言えませんね。

 

 

「じゃーいいや。その代わり、ちょっとこっちに来てくれる?」

 

 

「うん? ワシを廊下に連れ出して、どうするんじゃ姉上?」

 

 

 しばらくして、二人の会話が聞こえてきた。それも、結構大きい声で。

 

 

『姉上、勝負——どうしてワシの腕を掴む?』

 

 

『アンタ、Cクラスで何をしてくれたのかしら? どうして、アタシがCクラスの人たちを豚呼ばわりしていることになっているのかなぁ?』

 

 

『はっはっは。それはじゃな、姉上の本性をワシなりに推測して——……あ、姉上っ! ちがっ……! その関節はそっちには曲がらなっ……』

 

 

 ガラガラガラと、ドアを開けて入ってきた木下優子。その顔や手には血がべっとりと付いていた。

 

 

「秀吉は急用ができたから帰るってさっ。代わりの人を出してくれる?」

 

 

「じゃ、はい。僕が秀吉の代わりに出ますよ。雄二は何も言う権利はありませんから、ね?」

 

 

「あ、ああ……」

 

 

 僕は、秀吉の代わりに、木下優子を徹底的に懲らしめることにする。

 

 

「では、科目を選んでください」

 

 

「んー、じゃあね。……現国をお願いしようかな」

 

 

「承認します。では、始めてください」

 

 

 高橋先生の言葉に、僕は召喚獣を出す。

 

 

「し、召喚っ!」

 

 

 遅れて、木下優子も召喚する。

 

 

「ねえ、秀吉に何をしたのかなぁ? さすがに、学校で折檻するのは止めてほしいかな。仮にもAクラスの優等生が、自分の弟を折檻するなんて文月学園の評判を下げることに繋がるんだよ? それに、ただでさえ文月学園は周りから批判されているんです。些細なことで、スポンサーが離れるような原因を作らないでください」

 

 

 いつも日常生活を手助けしてくれる秀吉が、姉の折檻に苦しめられているのならば、僕はどんな手段も厭わない。

 

 

「腕輪の力を使うよ。【召喚】」

 

 

 教科ごとに召喚されるモノが変わっていくので、何が出てくるのか、僕でさえ知らない。

 

 

『いきなり、腕輪を使うのかよっ!』

 

 

『しかも、アイツの腕輪は召喚されるモノが、教科ごとに変わるんだろ!?』

 

 

 教科は現国。召喚されたのは、現存する全ての武器だった。それに、どうやら現国は武器を召喚することで、100点も消費していたようだ。

 

 

 さて、僕の召喚獣は、自分で判断して動いてくれる。学園長がいつも実験データを求めていたので、僕が提案して被験体になった。その提案とは、人間の思考パターンやら考え、そして知能などをトレース化してデータに変え、召喚獣に用いること。これは、実験段階なのでいつ失敗してもおかしくない。

 

 今のところ、何の変化もなく安定しているのは、所々改良したモノであるから。

 

 

「さて、僕の召喚獣。思う存分、やってあげなよ」

 

 

 僕の召喚獣は頷いて、近くにあった武器を掴み、相手に攻撃する。

 

 

 間一髪、避けられたがすぐに行動に移し、近くにある武器にコロコロと変えながら、点数をギリギリまで削り、絶妙な手加減で倒さずにいる。

 

 

「さて、どうしますか?」

 

 

「……降参するわ」

 

 

「そうですか、それではFクラスが一勝、と」

 

 

『Aクラス 木下優子  VS 鴉   Fクラス

 

 現国   368点 VS 603点 現国』

 

 

   *

 

 

「おおーーっ!」

 

 

「鴉を怒らせると怖いんだね……」

 

 

「よし、鴉のおかげでFクラスが一勝を取れたか」

 

 

「いえいえ、ちょっと怒りに任せて殺っちゃいました」

 

 

 僕は廊下で倒れているだろう、秀吉の下へ向かう。というか、有り得ない方向に曲がっていると思う関節を治しに行く。

 

 

「秀吉! 今、関節を治すから我慢してね」

 

 

「うぅ……。鴉よ、姉上はどうなったんじゃ?」

 

 

「……ああ、あの人ね。降参するまで、一方的な攻撃をしたよ? 全く懲りないよね。去年も難癖付けて、僕に勝負してきたけど、かなりの差を付けたから」

 

 

「姉上、去年も挑んでおったのか……」

 

 

「さて、関節も治ったから教室に戻ろうか」

 

 

「うむ、そうじゃ」

 

 

 僕は秀吉を起こして、Aクラスの教室に戻った。

 

 ドアを開けると、ちょうど姫路さんが勝ったところだった。

 

 

「最後の一人、どうぞ」

 

 

「……はい」

 

 

 霧島さんはAクラスの中では、最強の敵だろうね。Fクラスにとっては。

 

 

「俺の出番だな」

 

 

「教科はどうしますか?」

 

 

 最後まで、高橋先生は冷静だよね。眼鏡美人っていうのは、高橋先生を指すのかな?

 

 

「教科は日本史。内容は小学生レベルで方式は百点満点の上限ありだ!」

 

 

 うわ……。このフラグ、多分来ると思うよ。巻き込まれると思うと、胃が痛くなりそう。

 

 

 雄二の宣言に、Aクラスの皆はざわめく。雄二が強気でいるのだから、何かしらの可能性があると分かったのだろう。

 

 

「分かりました。そうなると問題を用意しなくてはいけませんね。鴉君も一緒に来てください」

 

 

「……はい」

 

 

   *

 

 

 正直、職員室には行きたくない。だって、船越先生がいるんだもん。単位を盾に、交際を迫るから恐怖が離れてくれない。

 

 

「さて、鴉君。大丈夫ですよ、船越先生は他のクラスの授業があるので、職員室にはいませんから」

 

 

「……はい。去年のアレを思い出してしまうので、どうしても数学が怖いです」

 

 

「……去年の数学は、悲惨でしたね。まさか、成績優秀の優等生が、数学を落とすとは」

 

 

「船越先生が悪いんじゃないです。ただ、その……いい男に巡り会えていないだけなんですから。ただ、生徒に迫るまでに至るとは……」

 

 

「まあ、暗い話はここまでにしましょう。今は、日本史のテストを用意することです」

 

 

「はい。微力ながらに協力させていただきます」

 

 

 僕は高橋先生と一緒に、小学生レベルの日本史を作っていた。

 

 

「高橋先生、こちらの問題はどうでしょうか? こちらなら、小学校で習う基礎程度ですので」

 

 

「それを採用します。鴉君、この問題はどうでしょうか」

 

 

「そうですね、二人なら解けて当たり前の問題ですね」

 

 

「分かりました。それでは、この問題も入れておきましょう」

 

 

 などと、テスト問題の内容を作っていく。最後は印刷して、完成となる。

 

 

「それでは、教室に戻りましょうか」

 

 

「はい」

 

 

「では、最後の勝負、日本史を行います。参加者の霧島さんと坂本君は視聴覚室に向かってください。なお、今回のテストは鴉君と私で内容を選ばせていただきました」

 

 

「……はい」

 

 

「じゃ、行ってくるか」

 

 

「はい。行ってらっしゃい。坂本君」

 

 

「ああ」

 

 

 姫路さんに送り出され、雄二は向かっていく。さて、決着となりますが泣いても笑っても、試召戦争は終わりです。

 

 

「皆さんはここでモニターを見ていてください」

 

 

『では、問題を配ります。制限時間は五十分、満点は100点です』

 

 

 向こうでは、日本史担当の飯田先生がいた。そして、二人の机に裏返しのまま置かれる。

 

 

『不正行為等は即失格になります。いいですね?』

 

 

『……はい』

 

 

『わかっているさ』

 

 

『では、始めてください』

 

 

 ようやく、テストは開始した。さて、どう転がるかは二人次第である。

 

 

「吉井君、いよいよですね……!」

 

 

「そうだね。いよいよだね」

 

 

「これで。あの問題がなかったら坂本君は……」

 

 

「集中力や注意力に劣る以上、延長戦で負けるだろうね。でも」

 

 

「はい。もし出ていたら」

 

 

「うん」

 

 

 皆が固唾を飲むなか、僕は後ろの方で電卓と数十枚もの書類を交互に見ながら、呟く。

 

 

「はぁ……。これでAクラスに負けることが確定しましたか」

 

 

「うぬ? 鴉は知っておったのか?」

 

 

「一応、テストは小学生レベルなので、ヘマさえしなければ、解けるんです」

 

 

「それのどこで、分かるんじゃ?」

 

 

「実は、昨日に霧島さんから『……勉強を教えてほしい』と言われたので、微力ながらお手伝いしたんですよ」

 

 

「……それはマズいのぅ」

 

 

 だから、雄二の作戦は昨日の時点で終わっていました。だって、昔教えたとこを当てにしているなんて、馬鹿の極みだよ。

 

 

「おやおや、Fクラスの卓袱台は、みかん箱になりましたか」

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