僕は保健室で、横になって眠ろうとしていた。まだ、包帯は取れずにいる。左目を覆う包帯は絶対に取ることはない。
「鴉君、病院には行っているのかしら?」
「………」
僕は目を横にそらす。だって、病院は苦手だもん。前にも、人を車いすに座らせようとしてきたもの。それも、怖い形相で追いかけ回されちゃ、恐怖が来るでしょうし。
「……はぁ。駄目よ? 行かないと、治らないんだから」
「……だって、先生が怖い形相で追いかけてくるんだもん。僕は、車いすに乗るほど重傷でもないのに」
「——それ、訴えてもいいのよ?」
結局、保健室に来た西村先生と、Fクラスに戻ることになった。
「鴉、お前は無茶するなよ」
「はい、西村先生。僕はFクラスの皆と楽しく、過ごせたらいいなと思います」
「そうか、なら思う存分楽しめ!」
「はい!」
色々と話して、Fクラスに着いた。西村先生がドアを開く。
「皆、清涼祭の出し物は決まったか?」
「今のところ、候補は黒板に書いてある三つです」
【候補① 写真館『秘密の覗き部屋』】
【候補② ウェンディンク喫茶『人生の墓場』】
【候補③ 中華喫茶『ヨーロピアン』】
「……補習の時間を倍にした方が良いかもしれんな」
「……すみません。僕もそうした方がいいと思います。Fクラスがバカの集まりだということが、もう否定すら出来ません」
駄目だ。もう、このFクラスは手遅れとしか言えない。どうして、そういう案ばかり出てくるんでしょうね。
『せ、先生! それは違うんです!』
『そうです! それは吉井が勝手に書いたんです!』
『僕らがバカなわけじゃないんです!』
補習の時間が増やされたくないからと、皆は必死になって抗弁する。明久をバカ扱いして、逃れようとしているしか思えない。他人に責任を押し付けるのは、さすがにダメですよ。
「馬鹿者! みっともない言い訳をするな!」
西村先生の一喝に、皆は思わず背筋を伸ばす。
さすが、教師です。クラスメイトを売って、その場を逃げようとする魂胆を見抜いていたんですね!
「先生は、バカな吉井を選んだこと自体が頭の悪い行動だと言っているんだ!」
「……それは、流石に僕も同意しますが明久は勉強嫌いなだけですよ。ちゃんと教えれば、理解してくれますし」
「ちょっと、鴉!? それはどういうことなんだよ!」
そういうことです。他に言うことはないので、諦めてください。
「まったくお前らは……。少しは真面目にやったらどうだ。稼ぎを出してクラスの設備を向上させようとか、そういった気持ちすらないのか?」
ええ、僕は最初から分かっていました。このような発想すら、Fクラスにはないんでしょう。
『そうか! その手があったか!』
『何も試召戦争だけが、設備向上のチャンスじゃないよな!』
『いい加減、この設備にも我慢の限界だ!』
一気に活気づき、出し物を考え始める彼らに、僕はちょっと目眩を覚える。
「西村先生、僕はつくづく思います」
「………」
「僕、Fクラスの皆(秀吉を除く)が頭のネジ一本抜けているんじゃないかと。どうして、こうまでバカなんでしょうか」
「鴉、それは思っていても心にしまっとけ。それから、諦めろ。Fクラスはバカの集まりだ」
西村先生、流石にそれは言い過ぎだと思うのですが……。僕はどう言えばいいんですか。
「Fクラスの出し物は、中華喫茶にします! 全員、協力するように!」
いつの間に、出し物が決まったみたい。僕はどうしようかな。
「鴉、ワシとやらんか?」
「で、でも……。僕は、包帯だらけだから醜いよ?」
「大丈夫じゃよ」
秀吉はそう言うけど、そういう需要ってあるのかな? 厨房の方がいいと思うんだけどなー。
明久は大丈夫だろう。だって、姫路さんたちがいるのだから。頑張ってね、応援はしないけどね。