ガクガクと、僕の肩を揺らすのは誰だろう? ああ、秀吉か。今日も可愛いなぁ。
「秀吉……、モヒカンになった僕でも、好きでいてくれるかい……?」
「……どういう処理したら、瑞希の転校からこういう反応が得られるのかしら」
「ある意味、希有な才能かもしれんのう」
「明久、検討違いなこと言ってますよ。このままだと、姫路さんが転校しちゃうということです」
……はっ!? いけない、ちょっとトんでた!
「ちょっと待て! 鴉、どういうことだよっ!」
「言葉の通りですけど?」
「(そうだった……。鴉は天然だ!)」
僕はうっかり忘れていた。てか、美波が聞き逃せないこと言っていたような?
「美波! 姫路さんが転校って、どういうことさ!」
「どうもこうも、そのままの意味。このままだと、瑞希は転校しちゃうかもしれないの」
僕の予想は当たっていた。転校。そう、Fクラスの環境は、姫路さんのご両親には到底受け入れられない。周りは学力の低いバカ(一部を除く)と、老朽化した汚い教室。そりゃ、転校させられそうですよね。
「そういうことなら、なんとしても雄二を焚き付けてやるさ!」
「そうじゃな。ワシもクラスメートの転校と聞いては黙っておれん」
「それじゃ、まずは雄二に連絡を取らないとね」
明久はポケットから携帯を取り出し、雄二に連絡を取り始める。その間、僕はどこかに電話をする。
「あ、もしもし、鴉です。先生に伝言があるのですが……。はい、それではお伝えください。実はですね――」
僕が通院している病院に電話をする。清涼祭を楽しみたいから、期間中に行くはずの予定を変更してもらうように言う。
「――そういうことです。それでは、ご検討の方をお願いします」
電話を終えた頃には、明久たちも何かを考えていた。
「——相手の考えを読めるのは、なにも雄二だけじゃない」
「何か、考えがあるようじゃな」
「まぁね」
明久はニヤリと笑って、教室を出て行く。
悪い予感がして、僕は急いで職員室に向かう。明久たちに勝てるのは、西村先生しかいない!
「やぁ、雄二。奇遇だね」
「……どういう偶然があれば、女子更衣室で鉢合わせするのか教えてくれ」
ここは体育館にある女子更衣室。男子禁制の場所に、明久と雄二はいた。
「やだな。ただの偶然だよ」
「嘘つけ。こんな場所で偶然会うワケが」
ガチャッと、音を立てて開いたドアの向こうには、制服姿の女子が立っていた。
「えーっと……あれ? Fクラスの問題児コンビ? ここ、女子更衣室だよね?」
『西村先生! 明久が雄二に巻き込まれて体育館の女子更衣室にいます! ただちに、雄二を捕まえてください』
『また坂本だと!? また、明久を巻き込むとはっ!』
あの密告は、鴉だと!? まさか、俺の邪魔をするとは。だが、ここは逃げねぇと! 相手は鉄人。捕まったら最後、生きて帰ることはできないからな。
「見つけたぞ! 雄二、逃がすか!」
後方から野太い声が近付いてくる。くそっ! もう追いついてきたか!
「明久!」
隣を走る明久は俺の視線の先に気づく。前方の新校舎二階に開け放たれた窓に、この時だけは発揮する運動神経で入る。
俺は壁を蹴って跳んで、明久の制服を掴む。
「よいしょおっ!」
その瞬間、一本釣り。ビッと制服から嫌な音がしたが、俺は無事に校舎内に侵入できた。
『坂本! 明日は逃がさんぞ!』
流石に、鉄人も独力で二階には来られないみたい。だから、悔しそうな遠吠えが響いてきた。
とまあ、彼らのことはどこかに捨てておきましょう。