掠れ声で、時々喉に違和感があるんだよね。
「……雄二。今どこ」
プツンと切れて、通話は終わる。しかし、いつもながらに、秀吉の声真似は上手すぎる。どうして、こんなに本人と錯覚してしまうほどに、似ているのだろうか。
しかも、電話越しに聞いていたけど、雄二の「人違いです」は、よくもまあ凄い判断力で切り返すよね。普通は、そんな切り返しは咄嗟にはできない。
時間が過ぎて、明久と雄二も戻ってきて、ここまでのことを話す。
「そうなると、喫茶店の成功だけでは不十分だな」
老朽化した教室を見渡して、雄二はそう言い放つ。
「不十分? どうして?」
「姫路の父親が転校を勧めた要因はおそらく三つ」
そう言って、指を三本立てて見せた。
「まず一つ目。ござとみかん箱という貧相な設備。快適な学習環境ではない、という面だな。これは喫茶店が成功したら、利益でなんとかできるだろう」
言いながら、指を一本引っ込める。
「二つ目、老朽化した教室。これは、健康に害のある学習環境という面だ」
「一つ目は道具で、二つ目は教室自体ってこと?」
「そうだ。これに関しては、喫茶店の利益程度じゃ改善は難しい。教室自体の改修となると、学校側の協力が不可欠だ」
「その二つは、鴉ならできるんじゃないの?」
「それは無理だ」
明久の疑問は、即座に雄二によって否定された。
「明久、ごめんね。道具はどうにかなるけど、教室となると学園長に聞かなくちゃ無理だし、改修費用が――」
そう言って、僕は明久の耳元で囁く。ゼロの桁をボソボソと言い続ける。
「それは無理だよ。僕らじゃ、手が届かないに決まっているよ!」
「そう、分かった? 僕だから安く済ませることはできるけど、世間一般ではその位の費用が当たり前なの」
「そして最後の三つ目。レベルの低いクラスメート。つまり、姫路の成長を促すことができるのが、鴉を除いて誰もいない学習環境という面だ」
雄二がそう言った途端に、携帯が震える。僕は廊下に出て、通話ボタンを押す。
「はい、鴉です」
『ふん、遅いね。それでアンタ、今すぐ学園長室に来てくれないかい』
「分かりました。それでは、すぐに伺わせていただきます」
通話を終えると、すぐに急いで学園長室に向かう。ノックして、入ると教頭先生もいた。
「Fクラスの鴉です。それで、僕に何か用事でもあるのでしょうか?」
「三人で話したいことがあるのさ。だから、アンタも意見をくれないかい?」
だと思っていました。教頭先生と学園長と、三人で話し合うと言ったら……学校の運営ですよね。よくある、生徒に学校に対する意見を求めるといった奴ですよね?
結局、学校の悪い点を言い続けた僕は悪くないと思う。途中、教頭先生が涙目だったのも僕は悪くない! それから、愚痴を吐き出したのも悪くないはず!