風邪でこうなったのか、喉を酷使して潰したか。
ふむ、なんとも不便なんだろうか。
2014 12.08 一部修正
『……賞品の……として隠し……』
『……こそ……勝手に……如月ハイランドに……』
『……ってくれた方が……にそれはまず……』
新校舎の一角にある学園長室の前に来ると、扉の向こうから誰かが言い争う声が聞こえてくる。それに、宥める声もする。
賞品? 如月ハイランド? それに、鴉の声もするよね。
「どうした、明久」
「いや、中で何か話をしているみたいなんだけど」
「そうか。つまり中には学園長がいるというわけか。無駄足にならなくて何よりだ。さっさと中に入るぞ」
取り込み中なのか、どうかは向こうが判断するってことか。ここまで来たんだ、用件だけでも伝えてみようか。
「失礼しまーす!」
学園長室の立派なドアをノックして、僕と雄二は中にずんずんと入っていく。
「本当に失礼なガキどもだねぇ。普通は返事を待つもんだよ」
中で出迎えていたのは、長い白髪が特徴の藤堂カヲル学園長。試験召喚システム開発の中心人物である。研究をしている人間だから、随分規格外なところが多い人だ。第一声でガキども、とか言ってるし。
「やれやれ。取り込み中だというのに、とんだ来客ですね。これでは話を続けることもできません。……まさか、貴女の差し金ですか?」
眼鏡を弄りながら、学園長を睨み付けたのは教頭の竹原先生だ。鋭い目つきとクールな態度で一部の女子には人気が高い。僕個人では嫌いだけど。
「……二人とも、礼儀を持ってほしいよ。返事されるまで、外で待つのが常識でしょう?だから、Fクラスの問題児コンビとバカにされるんだよ。……西村先生に目を付けられる時点で、否定出来ないのは事実だよね。明久は巻き込まれるけど、よくもまあ、雄二は卑劣な汚い作戦で勝とうとするよね」
僕たちに軽い説教をするのは、同族に好かれた鴉。てか今、雄二を普通に貶していない!? なんか、鴉の言葉に軽く泣ける気がしたよ……。
「馬鹿を言わないでおくれ。どうして、このアタシがそんなセコい手を使わなきゃいけないのさ。負い目があるというわけでもないのに」
「それはどうだか。学園長は隠し事がお得意のようですから」
僕らにはよく分からないやりとりが行われている。鴉は違うけど。学園長と教頭の話し合いということは、学園の運営についてだろうか。なら、出直した方がいいのかな?
「さっきから言っているように、隠し事なんて無いね。アンタの見当違いだよ」
「……そうですか。そこまで否定されるなら、この場はそういうことにしておきましょう」
そう告げると、竹原先生は部屋の隅に一瞬視線を送り――
「それでは、この場は失礼させて頂きます」
さっさと踵を返して、出て行った。さっき、何かを確認していたけど、なんだろう? この部屋に何かあるのかな?
「んで、ガキども。アンタらは何の用だい?」
竹原先生との会話を中断されても、気にせず、僕らに話を振る。
「今日は、学園長にお話があって来ました」
ゆ、雄二が敬語使ってるだと!? 知っていたの!?
「アタシは、今それどころじゃないんでね。学園の運営に冠することなら、教頭の竹原に言いな。それと、まずは名前を名乗るのが社会の礼儀ってモンだ。覚えておきな」