「失礼しました。俺は二年F組代表の坂本雄二。それでこっちが――」
雄二が明久を指差して、
「――二年生を代表するバカです」
……否定出来ないところが、明久だと思う。学力は低いけど、誰にも優しく理不尽なことをされても自分のせいだと考えるお人好しな性格には好感が持てるかな。
「ほぅ……。そうかい。アンタたちがFクラスの坂本と吉井かい」
「ちょっと、待って学園長! 僕はまだ、名前を言っていませんよね!?」
ごめん。西村先生と高橋先生が、報告しに行くんだよ。それと、伝達事項も学園長が言うから。
「気が変わったよ。話を聞いてやろうじゃないか」
人を教育する態度じゃないと思うんですが。まあ、僕も人のことは言えないんですけどね。
「ありがとうございます」
「礼なんか言う暇があったら、さっさと話しな、ウスノロ」
「さっさと、用件を言ってよ。僕も、学園長に話があるんですから」
「分かりました」
こんなに学園長から罵倒されているのに、落ち着いていられるなんて。さすが、代表だなと思った。
「Fクラスの設備について、改善を要求しに来ました」
「そうかい。それは、暇そうで羨ましいことだね」
「今のFクラスの教室は、まるで学園長の脳みそのように穴だらけで、隙間風が吹き込んでくるような状態です」
違った。どんどん、言動が綻びてきているよ。やっぱり、バカだ。
「学園長のように、戦国時代から生きているような老いぼれならともかく、今の普通の高校生に、この状態は危険です。健康に害を及ぼす可能性が非常に高いと思われます」
丁寧な口調に、危険な言葉を混ぜている。そんなに、学園長の罵倒に耐えきれないんだね。僕は、別に何とも思わないけど、やっぱり雄二たちにはキツいのかぁ……。
「要するに、隙間風が吹き込むような教室のせいで、体調を崩す生徒が二人いるんだから、さっさと直せクソババァ、というワケです」
慇懃無礼な態度って、どこかイラってこない? 目上の人を軽々しく見ているのは、見下している態度だよね。雄二も何様なのかな? それ、お願いじゃないね。
「あ、すみません。電話みたいなので、ちょっと離れますね」
僕はそう言って、部屋の隅に移動する。
「……鴉です。あ、そうですね……明日でしたら、どうでしょうか?」
相手は、最近出来たばっかりの如月ハイランド。スポンサーとして、名乗りはしたけど何をしてくれるんだろう。
「……プレミアムチケットですか? すみません、そういう相手はいないので」
雄二たちの方は、話でも終わったのかな?学園長はいつも、口が悪いから態度が変わってもおかしくない。
よく、喧嘩していましたよね? 確か、前のところでボイコットされていたんでしたっけ? 僕は、気にしないから何もないけど。
電話を終えた僕は、元の場所にも戻る。
「教室の改修に関しては、別の知り合いの業者に頼めば、多少は抑えますよ」
「はん。そんで、どのくらいなのさ」
「そうですね……。交渉次第では――になるかと」
学園長に見えるように、電卓を傾ける。文字盤には、ゼロの桁が六個も出ている。
「……そうかい。それじゃ、進めておくれ」
「分かりました。では、そのように手配します」
僕はそう答えて、学園長室を出た。雄二が条件を出していると思う。多分、大会に向けて操作しているんじゃないかな。
さて、僕も準備しなくちゃ! ただ、包帯だらけの僕じゃ、何も需要がないんじゃないのかな。
「あそこで言った方がよかったのかな。僕なら、テーブルとかイスなら用意できたことを」
教室の改修は学園長に任せるとして、僕は出し物の準備でもしよう。