久しぶりですね、ごめんなさい。
【第三問】 清涼祭アンケート
学園祭の出し物を決める為のアンケートにご協力ください。
『喫茶店を経営する場合、制服はどんなものがいいですか?』
姫路瑞希の答え
『家庭用のエプロン』
教師のコメント
いかにも学園祭らしいですね。コストも掛からないですし、良い考えです。
鴉の答え
『すみません。そのアンケートは、黙秘権を行使させていただきます』
教師のコメント
まだ、何が言われたんですか? いや、もしかして……。
土屋康太の答え
『スカートは膝下15センチ、胸元はエプロンドレスのような若干の強調をしながらも品を保つ。色は白を基調とした薄い青が望ましい。トレイは輝く銀で照り返しが得られるくらいのものを用意し、裏にはロゴを入れる。靴は5センチ程度のヒールを――』
教師のコメント
裏面にびっしりと書き込まなくても。
吉井明久の答え
『ブラジャー』
教師のコメント
ブレザーの間違いだと信じます。
僕は、教室に向かう。清涼祭前日まで、学園長から用事を言い渡され、遅くまで奔走していた。
「人使いが荒いなぁ……。僕は便利屋じゃないのに」
学園長の用事とは、召喚大会のステージを初日までに用意してほしいといったもの。どうして、一週間前に思い出したように言うんだよ。一ヶ月前なら分かるのに。しょうがないから、予算から設計、果ては工事まで進めてきた。業者の方たちには、本当に頭が上がらない思いをした。
教室のドアを開けて、中に入ると雄二が――三途の川で揉めていた。
「……また、やったんですね。早くしないと、マズいことになりますよ」
僕はそう言って、雄二の顔を引っ叩く。遅ければ、どうなっているか分からない。
「雄二、起きてください。船頭さんは、善悪が厳しいので、雄二だと高額なお金を取られますよ」
「鴉? どうして、そんなことを知っているの!?」
「……世の中には、知らない方がいいこともありますから」
それでも起きない雄二。このままじゃ、マズいことになりそう。
「そろそろ、喫茶店の準備していますね。それまでに、起こさないと遅れますよ?」
「あっ! 雄二、召喚大会が始まるよ!」
「明久。耳元で『また、姫路の団子を食べさせられたいの?』と囁いてみて」
「うん、分かった!」
教えた通りに実践する明久。すると、雄二はムクっと起き上がった。
「喫茶店の準備中だけど、そろそろ召喚大会の時間でしょう?」
「おう、そうだったな。サンキュー、鴉」
「いえいえ、ぜひとも勝ってもらないと、売り上げも上がりませんから」
僕はそう言って、トレーを持ち上げる。これに乗せて、お客の下へ運んでいくことになるから、重さを確認する。
うん、ちょっと重いかも。でも、まだ持てる重さだから良かった。よし、仕事を頑張るかな。
「あ、いらっしゃいませ! お一人様ですか? では、こちらのお席になります」
*
先生の言葉と共に始められるのは、校庭に作られた特設ステージで行われる召喚大会。ステージの一カ所には、烏書房協賛と書かれていた。
一回戦、僕たちの相手は二人の女子である。あれ? 前に、どこかで見たことがあるような……?
「では、召喚してください」
「「試験召喚っ!」」
喚び声をあげると、僕らにはお馴染みの魔方陣が足下に現れ、デフォルメされた試験召喚獣が喚びだされた。
『Bクラス 岩下律子 & Bクラス 菊入真由美
数学 179点 & 163点』
一般的な装備の召喚獣だ。西洋風の鎧と剣を持って、ここに現れた。
「さて、僕らも召喚しようか」
「そうだな」
「「試験召喚」」
現れる僕らの召喚獣。僕の召喚獣は相変わらずの改造制服と木刀を装備している。一方、神童とまで謳われた我らが代表の召喚獣は――
「……素手?」
何も持っていないように見える。目に見えない剣だとか?
「馬鹿が。よく見ろ」
雄二が召喚獣を動かし、拳を掲げてみせる。
「メリケンサックを装備しているだろ?」
「ざ、雑魚だ! 雑魚がいる!」
なんて弱そうな召喚獣なんだ。装備がメリケンサックなんて、他の召喚獣には一体もいなかったぞ。
「行くわよ、修学旅行のお土産コンビ」
「律子、違うよ。チンピラコンビだよ」
僕らの召喚獣は木刀&メリケンサックを手にした改造制服のコンビだ。もはや、何を言われても否定できない。
『Fクラス 坂本雄二 & Fクラス 吉井明久
数学 179点 & 63点』
僕らの点数が参考として表示される。
「!? ゆ、雄二!』
「なんだ」
「どうして、そんな点数になってるの!?」
179点なんて、Bクラス並の点数だ。バカのはずなのに! バカのはずなのに!
「前回の試召戦争以来、鴉に『代表なのに、そんな点数は恥ずかしいから、勉強してもらうよ』と言われたんだ!」
何故か、苦々しい表情で告げる雄二。
こんな短期間で、ここまで伸びるとは。さすが、神童と呼ばれただけのことはある。
「でも、それだけで?」
雄二は『勉強なんてできなくてもやっていける』ということを証明したくてAクラスに勝負を挑んだはずだけど。それを覆してでも負けられない理由があるのだろうか?
「鴉に言われたんだ」
「何を?」
「……『霧島さんと、どこで式を挙げたいですか?』と」
か、鴉……。さすがに、僕も怖くなるよ。
「俺は負けられない! 次で勝たないと、俺の人生は! 俺の人生は……!」
「雄二、落ち着いて! きっと幸せな家庭を築けるから!」
暴れそうな雄二を羽交い締めにする。
なるほど。道理で雄二が勉強するわけだ。
「そろそろ、開始してもらえますか?」
「あ、すみません。もう大丈夫ですから。ホラッ」
「婿入りは嫌だ……。霧島雄二なんて御免ほごぁっ! はっ!?」
とりあえず、殴って正気に戻す。壊れた雄二の修理法、その2だ。
「若干不安がありますが、とにかく始めてください」
そう告げて、木内先生は若干距離を取る。