「いらっしゃいませ! 何名様でしょうか? ……三名様ですね? こちらの席にお座りください」
そう言って、僕は笑って案内する。若干、このドレスは恥ずかしい。なんて、僕だけメイドなの!? それも、フリフリのレースがたくさんあしらわれたメイド服。喫茶店の趣旨に反しているよ!
はっ! お客さんの気配だ。出迎えなくちゃっ!
「……いらっしゃいませ! 二名様ですね、こちらのお席になります」
「お! かわいいメイドじゃん」
「うはっ! 下とか、どうしてるんだろな」
「いかがわしい服だな! 脱がしてしまえ!」
「や、止めてくださいっ! めくらないでく、くれませんか……!」
「鴉、待つのじゃ。今、明久と雄二を呼んでくるぞ!」
*
秀吉はそう言って、教室を出ていく。行き先は、校庭の特設ステージ。今の時間だと、もう終わっている頃だろう。
「明久に雄二。殴り合いなぞしておらんで、急いで教室に来てくれんかの?」
特設ステージでは、明久と雄二が殴り合っていた。何故、殴り合いをしているかは分からない。
「あれ? 喫茶店で何かあったの?」
「うむ。少々、面倒な客がおっての。すまぬが、話は歩きながらで頼む」
「あ、うん。了解」
秀吉は先を急ぐように、走っていく。
「……セクハラか?」
歩いている雄二の目は細くなる。きっと、何か予感を感じていたのだろう。
「あはは、まさか。学園祭の出店程度でセクハラなんてないじゃんか。そんなことして、何のメリットがあるのさ」
「いや、雄二の言ったとおりなんじゃ」
秀吉は顔を歪めて、苦々しく言う。
「そうか。相手はどこのどいつだ」
「うちの学校の三年じゃな」
「ま、そういうトラブルなら雄二にお任せだね。チンピラにはチンピラを充てるのが一番だよ」
「それが人にものを頼む態度か? ……まぁいい。喫茶店がうまくいかなければ、明久の大好きな姫路が転校してしまうからな。協力してやろう」
「べっ! 別にそんなことは一言も……!」
「あー、わかったわかった」
「その態度は全然わかってない!」
再三からかってくる雄二に、明久は文句を言いながら歩く。すると、教室の近くの廊下にまで響く大声が聞こえる。
「む。あの連中じゃな」
「じゃ、ちょっくら始末してやるか」
首をコキコキと鳴らして、雄二は教室の扉に手をかける。
「うはっ! 白い肌だぜ、マジでかわいいじゃんか」
「や、止めて……。誰か、助けて……っ!」
扉を開けるなり、耳に聞こえる悲鳴。どうやら、鴉は必死に抵抗しているが、まだ治りきっていない体では、負けてしまうようだ。
『うわ……、最低だ』
『ここで脱がそうとするなんて、こいつら変態だ』
『あの子、嫌がっているのに無理矢理セクハラするなんて! 同じ女として、腹が立つわ!』
その様子を見ていたお客さんは口々に言う。マズい。鴉の貞操が、あんなクズ共に奪われる。それに、女に間違えられているし。
「秀吉、ちょっと来てくれ」
「? なんじゃ?」
「至急、鉄人を呼んできてほしい」
「わかったのじゃ」
そう言って、秀吉は呼びに向かう。
「明久。お前は小悪党どもの特徴を覚えておけ」
「? よくわからないけど、了解」
鴉をセクハラしているのは三人。いずれも、男だ。一人は中肉中背の一般的な体型と、小さなモヒカンという非一般的な髪型をしている。もう一方も175センチくらいの普通の体格で、こちらは丸坊主だ。最後に、金髪に赤のメッシュを入れている普通の体格の不良。
なんとも、覚えやすい髪型でしょう。
「ぐへへ……」
「私は代表の坂本雄二です。何か、当店のウェイトレスが粗相でもしたのでしょうか?」
ホテルのウェイターのように、恭しく頭を下げる雄二。話しかける前に相手を殴り飛ばしていなければ、模範的な責任者のようだ。
「今、連れが殴り飛ばされたんだが……」
殴られていないソフトモヒカンの男は驚いている。その間に、雄二の指示で鴉に制服を掛けて隠してから、廊下に出た。
その後、雄二の制裁が始まったらしい。というのも、さっきから二人の悲鳴が聞こえてくる。
「お、覚えてろよっ!」
捨てセリフを吐いて、倒れた相棒を抱えて走り去っていくモヒカン先輩。
『あの子、大丈夫だったかしら……』
『怪我している子に、無理矢理セクハラとか許せないっ!』
『抵抗出来ない子を、辱めるなんて愚劣な行為を……!』
――と、お客の同情を集めた。
「おい、どうした!」
「あ、鉄人。鴉が、さっき逃げた先輩たちに服を脱がされそうになったみたいです」
「そうか、それと吉井。また、鉄人と呼ぶな」
そう言って、鉄人は鴉を抱えて、どこかに連れて行く。
こうしている場合じゃなかった!? 特設ステージに行かなくちゃっ! 次の対戦相手は誰だろう?
雄二と一緒に、校庭にある特設ステージに向かう。