バカと鴉と召喚獣   作:蒼書生

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問31

「それでは、試験召喚大会二回戦を始めてください」

 

 

 今回の立会人は、多少のことには目を瞑ってくれる英語担当の遠藤先生だ。

 

 

「「「「試獣召喚!」」」」」

 

『Bクラス  根本恭二  &  Cクラス  小山友香

  英語W  199点  &  165点』

 流石は、BクラスとCクラスの代表コンビ。点数も立派なもんだ。

 

『Fクラス  坂本雄二  &  Fクラス吉井明久

  英語W  73点   &  59点』

 

 

 対する僕と雄二の点数が表示される。

 

 僕にとって得意科目ってわけでもないし、雄二は英語にはあまり手をつけていないから、数学に比べて点数が見劣りする。

 

 それでも一回戦じゃなくて二回戦にこの科目を持ってきた。その理由が今になって分かる。それは、一回戦の相手は小細工が出来ず、二回戦の相手に小細工が利くからだ。

 

 

「じゃあ、雄二。例のモノを」

 

 

 対戦相手が、あの根本君ときたら、この男が持ってきてないわけがない。

 

 

「おう。これのことだろう?」

 

 

 そう言って、雄二が取り出したのは、門外不出の根本恭二個人写真集『生まれ変わったワタシを見て!』だ。ムッツリーニが写真を撮って、鴉が印刷及び製本した本。正直、見てと言われてもみたくないけど……。

 

 

「そ、それは……!」

 

 

 根本君の表情が凍る。

 

 

「さて、根本君。この写真集がバラ撒かれたくなかったら……」

 

 

 と、言いかけたところを肩を叩かれる。

 

 

「おいおい、明久。交渉の相手を違うぞ?」

 

「えっ? そうなの?」

 

 

 雄二が肩を叩いてきたみたいだけど、根本君以外に誰と交渉を……?

 

 

「おい、根本の彼女だかCクラス代表だが知らんが、そこの女」

 

 

 雄二が声をかけたのは、根本君の隣の小山さん。

 

 

「なにかしら?」

 

 

 小山さんは、雄二の持つ写真集を訝しげに見ていた。どうやら、中身を知らないらしい。

 

 

「これを見てみろ」

 

 

 そう言って、1ページ目を捲る雄二。そこには恥ずかしげにポーズを取っているスカート姿の根本君が、遠目のアングルで写っていた。てか、鴉はよく頑張ったと思う。一体、どんな気持ちで作ったんだろう。

 

 

「さ、坂本! わかった! 降参する! だからその写真だけは……!」

 

 

 あ、いつの間にか僕らの勝ちだ。なんだか、あっけないなぁ。

 

 

「明久、根本を押さえろ」

 

「ん、了解」

 

 

 雄二の指示で、僕は根本君を羽交い締めにする。

 

 

「よしよし。さて、Cクラス代表。この写真集が見たかったら、俺たちに負けるんだ」

 

「さ、坂本っ! お前は鬼か!?」

 

 

 根本君は泣きそうな声を出す。

 

 この交渉だと、根本君は問答無用で負けてしまう上に写真集を彼女(?)に見られてしまう、彼にとっては最悪の上塗りだ。

 

 

「……いいわ、私たちの負けよ」

 

「交渉成立、だな」

 

 

 悪役の笑みを浮かべる雄二、

 

 

 かくして、写真集は小山さんの手に渡ることになった。

 

 

「ゆ、友香!? 頼む! 見ないでくれ!」

 

 

 根本君の懇願も虚しく、小山さんは写真集を開いてマジマジと観ている。

 

 

「明久。勝負はついた。喫茶店が気になるし、戻るぞ」

 

「そうだね。それじゃ遠藤先生。僕たちの勝ちということで」

 

 

 小山さんの脇で写真集を覗き込んでいる遠藤先生に声をかけておく。

 

 

「あ、はい! 坂本君と吉井君の勝利です!」

 

 

 これで、三回戦進出が決定した。良かった。

 

 

『……別れましょう』

 

『ちょ、ちょっと待ってくれ! これには事情が……!』

 

 

 去り際に聞こえてきた会話は気にしないでおこう。人の気持ちを踏みにじると天罰が下るって、本当なんだなぁ……。

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