バカと鴉と召喚獣   作:蒼書生

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問34

「ウチは『ふわふわシフォンケーキ』て」

 

「あ、私もそれがいいです」

 

「葉月もー!」

 

 

 島田さんたちは、仲良くシフォンケーキを頼んでいた。

 

 

「うーん。じゃあ、僕は『生チョコシフォンケーキ』を。明久には、『白桃のタルト』で」

 

「じゃ、俺は『レアチーズケーキ』でも」

 

「鴉、いいの!?」

 

「んじゃ、俺は――」

 

「……ご注文を繰り返します」

 

 

 雄二の注文を遮るように、霧島さんは注文を繰り返す。

 

 

「……『ふわふわシフォンケーキ』を三つ、『生チョコシフォンケーキ』を一つ、『レアチーズケーキ』を一つ、『メイドとの婚姻届』が一つ。以上でよろしいですか?」

 

「全然、よろしくねぇぞっ!?」

 

 

 動揺したように叫び声を上げる雄二。霧島さんに翻弄される様子って、珍しいよね。

 

 

「……では、食器をご用意いたします」

 

 

 僕たちにはフォークを、雄二には実印と朱肉が用意された。

 

 あれ? よく手に入れられたね。実印とか、実際に家に行かないと貸してくれないかもしれないのに。朱肉と婚姻届は、僕が用意してみました。お幸せに。

 

 

「……では、メイドとの新婚生活を創造しながらお待ちください」

 

 

 そう言って、優雅にお辞儀をしてキッチンに向かって歩いていった。

 

 

「……明久。俺はどうしても召喚大会に優勝しないといけないんだ……!」

 

「あ、うん。それはもちろん僕もそうだけど」

 

 

 雄二の目から並々ならぬ決意が感じられる。やる気を出すのはいいけど、点数の方をどうにかしてほしい。

 

 

「ねえ、竜樹」

 

「ん? なんだ」

 

「どうして、そ、その……僕を好きになったの?」

 

「……」

 

「……いつ頃から、竜樹は変わってしまったんだろうね……」

 

 

 僕はしみじみした気持ちになる。もう、分からなくなってきたよ、竜樹。その恋は、世間には厳しいモノなんだ。よく考えて、答えを聞かせて?

 

 ふと、耳を澄ませて聞いてみると、ぞわっと体に悪寒が走る。この気配は……。

 

 

『おかえりなさいませ、ご主人様』

 

『おう、三人だ。中央付近の席は空いているか?』

 

 

 僕はガクガクと震える。さっきのことが、ずっと頭から離れてくれない。

 

 

「お、おい! 鴉、アイツらなんだな?」

 

「う、うん……。あ、あの……さ、三人だよ……」

 

 

 隣では、明久たちが言っている。

 

 

「あ、あの人達だよ。さっき大声で『中華喫茶で、態度の悪いウェイターがいる』って言ってたの」

 

「僕たちのクラスを妨害しているのは、あの常夏村コンビなんだね。どうする、雄二?」

 

「そうだな。――おーい、翔子ぉー!」

 

「……なに?」

 

 

 さっきまで、入り口に立っていた霧島さんが、いつの間にか雄二の隣にいた。驚くべきスピードだと言っておこう。

 

 

「あの連中がここに来たのは初めてか?」

 

「……さっき出て行って、また入ってきた。話の内容もさっきと変わらない。ずっと、同じようなことを言っている」

 

「そうか……よし。とりあえず、メイド服を貸してくれ」

 

 

 臆面もなく問題発言する雄二。この男、躊躇いや恥じらいというものがないのか。

 

 

「……分かった」

 

 

 迷いもなく、堂々とメイド服を脱ぎ始める霧島さん。

 

 

「き、霧島さん!? こんなところで、脱ぎ始めちゃダメですっ!」

 

「そうよ! ここはゲダモノが沢山いるのよ!?」

 

「わぁ〜。お姉さん、胸おっきいです〜」

 

 

 霧島さんを止めようと、姫路さんや島田さんが慌てる。

 

 

「……雄二が欲しいって言ったから」

 

 

 止められたのが不思議そうな霧島さん。雄二の頼みなら、迷いなく実行するみたいだ。

 

 

「お、俺はいつお前の着ているメイド服が欲しいと言った!? 予備のヤツがあれば、貸してくれって意味だ!」

 

 

「……ちっ。今、持ってくる」

 

 

 舌打ちして、霧島さんは去っていく。そんなに、悔しいんだ。あとで、雄二に催眠術でもかけてみようかな。

 

 僕は、チラっと中央の席を見た。うう……、さっきのがトラウマになっているのか、体の震えが治まらない。竜樹は心配そうに、僕の背中を擦ってくれた。あの人たちが怖い。

 

 

『あの店、汚かったな』

 

『あの中に可愛いウェイトレスがいたな。俺好みの子だったしな。一発ヤってみてぇー』

 

『二ーFには行くなって。ばい菌移されるぞ』

 

 

 なぜか、途中から竜樹が耳を押さえた。何か、聞かせたくないことでも言っていたのかな? あ、目も塞がれた。ということは、抱かれたのかな。耳と目が塞がっているから。

 

 

   *

 

 

 耳と目が自由になった時には、もう事は終わっていた。

 

 

「あれ? 何があったの?」

 

「……鴉は何も知らなくてもいい。そのままでいてくれ」

 

「うん?」

 

「俺たちも出るぞ」

 

「あ、そうだね。じゃ、次はどこに行こうか」

 

 

 そう言って、僕たちは会計に向かう。

 

 

「……お会計は、夏目漱石を一枚か、坂本雄二を一名のどちらかとなります」

 

「あ、それじゃ、坂本雄二でお願いします」

 

「……ありがとうございます」

 

 

 そのまま、僕たちはAクラスを出る。さてと、先生に頼まれた用事を果たすために行こうと。

 

 

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