僕はBクラスに向かう。右手にスタンガン、左手にカメラを持って、竜樹に会いに行く。今の時間なら、休憩に入っているはず。しかし、どうしてこれを持っていないと、来ちゃ駄目なんだろう?
「あ、Bクラスだ。竜樹ぃー!」
僕はドアを開けて、竜樹を呼ぶ。すると、いきなりBクラスの男子たちに襲われた。
「また、このパターンなの!? 来ないでっ!」
僕は持っていたスタンガン(改造品)の電源を入れて、前に押し付けた。
「「「「「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっー!!」」」」」
「鴉っ! 大丈夫か!」
竜樹の方を向くと、バケツを持っていた。そして、床を見ると濡れている。どうやら、水をかけて電気の伝導をよくしたようだ。
「だ、大丈夫だよ……うぅ」
僕は竜樹に飛びついて、恐怖を震える。昔から、よくそういう目に遭っていた。その度に、竜樹はよく助けてくれた。時には立ち向かって、時には警察を呼んで、時には犯罪まがいなことしたりと。
「……やっぱり、怖いよぉ……ぐすっ」
「あわわ……! な、泣くんじゃねぇよ」
「でも、さっきみたいに……」
「――俺がお前を守ってやる」
「……!」
竜樹の言葉に、思わずキュンとしてしまった。まさか、異性に言われたい言葉ランキング一位が、ここで出てくるとは思わなかった。
「駄目だよ、その言葉は恋人が出来た時に言ってあげて。……あ、ありがとう」
でも、言われ慣れていない言葉に少しときめいてしまう。虚勢を張っていても、いつしかは疲れてしまう時もある。
「「「「「(な、なんなのよ!? あんなに可愛いとは思わなかったわ! この際だから、二人をくっつけましょう!!)」」」」」
この時、Bクラスでは親衛隊と同時に見守り隊が発足された。主な内容は、鴉の身に危険が及ぶ時、一時的な盾として守り、竜樹が駆けつけるまでの時間稼ぎをすること。そして、空気を呼んで二人だけの空間を作り出すこと。
「た、竜樹ぃ……」
さて、ここで言っておこう。鴉と竜樹は結構な身長差がある。だから言ってしまえば、鴉は竜樹を見上げるしかないのだ。つまり、必然的に上目遣いになる。オプションは、涙と弱々しい震えた声。そして、抱きついた状態で名前を呼ぶこと。
「(ブッシャァァァッ!!)」
「た、竜樹っ! どうしたの、いきなり鼻血を出して!?」
急いで、ポケットからティッシュを出して、竜樹の鼻を押さえようとする。しかし、ここで身長差という壁がそびえ立つ。背伸びしても届かない。近くにあったイスに乗って、竜樹の鼻を押さえる。
ちなみに、Bクラスの女子は全員が萌えにより、ダウン寸前である。たまたま入っていたお客も、皆が萌えにより動きを止めた。
「か、鴉。ありがとな」
「う、うん! 竜樹が助けてくれたんだもん! 僕、大丈夫だよ」
後日、Bクラスの売り上げが上昇したらしい。
*
僕は秀吉と一緒にステージの一角にいる。しかも、僕だけ檻に入れられた。
「秀吉!? 鴉!?」
「バ、バカな!」
「……雄二の考えることくらい、私にはお見通し」
雄二たちから作戦を伝えられた。僕が出来ることは秀吉のサポートである。だから、役目を全う出来なかったのが悔しい。
「く……すまぬ、雄二。ドジを踏んだ……」
「……すみません。完全に見破られたようです」
秀吉はチャイナドレスのまま縛られ、僕は何故かウェイディングドレスを着させられた。うう、男なのにこんな服を着させられるとは……。恥ずかしい。
「…………!!(パシャパシャパシャパシャ!)」
「ムッツリーニ! いつの間に!?」
カメラを構えたムッツリーニが、僕たちを撮影し始める。
「その写真、後で売って欲しい(撮影なんかしてないで、早く秀吉たちを助けてよ!)」
「明久。本音が混ざっているぞ」
明久の正直な欲望が、垣間見えた。
「…………了解」
小さく頷いたムッツリーニは、素早く駆けつけて、秀吉の縄を解く。その数秒後に、檻の横から、声が聞こえる。
「鴉、助けに来たぞ」
「えっ、竜樹!? どうやって来たの!?」
そう、僕は竜樹に校庭に行くことを言っていない。それも、竜樹を保健室に連れていった時から。
「保健室から瞬間移動したぞ」
「ますます、人間離れしていくね……」
もう無理。どんどん、竜樹は人間離れしていく。佐古財閥の御曹司が日に日に、無駄にスペックを進化させていくのを見てきてしまった。
「――さて、おとなしくギブアップしてくれると嬉しいな。弱いものいじめは好きじゃないし」
「ぐうっ……」
木下さんの降伏勧告に雄二は顔を歪めていく。このままじゃ、正面から戦うしかない。
ここから、明久の出番が来た。
「翔子、俺の話を聞いてくれ」
明久の言葉を繰り返す雄二。
「お前の気持ちは嬉しいが、俺のは俺の考えがあるんだ」
「……雄二の考え?」
「俺は自分の力でペアチケットを手に入れたい。そして、胸を張ってお前と幸せになりたい――って、ちょっと待て!」
雄二は慌てて、明久の方を向こうとする。が、明久が雄二の頭を強引に押さえつける。
「……雄二」
うっとりした表情の霧島さん。雄二をずっと見つめている。
「だっ、誰がそんなことを言うかボケェッ!」
「(鴉、なんとかして!)」
「(……分かった。それじゃ、雄二のうなじを向けて)」
「(分かった! お願い!)」
僕は明久のアイコンタクトを受け取って、雄二のうなじに針を打ち込む。すると、徐々に雄二の目が虚ろになり、最後にはただステージに立つだけの操り人形と化していた。
「(秀吉。よろしく)」
「(うむ。了解じゃ)」
僕は秀吉を見る。すると。秀吉が頷く。さて、これから一興をお見せいたしましょう。
「だからここで譲ってくれ、そして、優勝したら結婚しよう。愛している、翔子」
秀吉の物真似に合わせて、僕は雄二の動きを操る。
「……雄二。私も愛してる……」
「……」
まだ、針を抜いていないから雄二は何も言わないし、動くこともしない。
「ふはははは! これで最強の敵は封じ込めた! 残るはキミだけだ。木下優子さん!」
「ひ、卑怯な……!」
そして、僕は結果を見ずに、その場を後にした。正直、あまり卑怯な手段はしたくない。けれど、学園長の依頼だから手を貸すしかない。