バカと鴉と召喚獣   作:蒼書生

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続けた。


問40

『お、お姉ちゃん……』

 

『アンタたち! いい加減、葉月を放しなさいよ!』

 

 

 島田の怒鳴り声が聞こえる。葉月ちゃんが捕まったのか、抵抗出来ずに連れ去られたようだ。

 

 

『お姉ちゃん、だってさ! かっわいぃー!』

 

『ぎゃはははは!』

 

『おい! このミニスカメイドにご奉仕してもらおーぜ!』

 

『や、止めてっ! 来ないでっ! 助けて、竜樹!』

 

 

 その瞬間、その場は凍り付いた。その後、遅れて、島田の悲鳴も聞こえる。

 

 

「おい、明久!」

 

 

 しかし、明久が止まる様子はない。雄二は竜樹の方を見る。

 

 

「い、いない…だと…!?」

 

 そう、横にいたはずの人が姿を消していたのだから。

 

 仕方ないのか、遅れて雄二も中に入る。

 

 

 

 中はカオスだった。

 

 

 

 その一言に尽きる。そして、カラオケ店の一室は、阿鼻叫喚の地獄絵図にある。

 

 

「おじゃましまーす!」

 

 

 そう言って、ドアを開けて中へ入っていく明久。すると、鴉の近くにいた男が竜樹にフルボッコにされていた。

 

 明久も入り口付近に座っていた男の手首を掴んで、思いっきり股間を強く蹴り上げる。足に嫌な感触が伝わるが、気にしない。

 

 

「お前か。鴉を誘拐して、その挙げ句に汚い目でみやがって! 鴉は誰にも渡さないからな!」

 

「えっ……」

 

 

   *

 

 

 清涼祭初日が終わり、Fクラスに僕はいた。明久と雄二が、誰かを待っているらしいから、僕も待ってみることにした。

 

 

「明久、鴉。そろそろ来る時間だぞ」

 

「? 来るって、誰が?」

 

「もしかして、学園長ですか?」

 

「そうだ。鴉が言ったように、ババァだ」

 

 

 雄二の言葉に、僕は内心焦る。マズい! 今の僕は……ミニスカメイド服を着たままだった!!

 

 僕は急いで、教室の隅で早着替えを実行する。学生服に着替え終えたら、また席に座る。

 

 

「……やれやれ。わざわざ来てやったのに、随分とご挨拶だねぇ、ガキどもが。鴉もすまなかったねぇ」

 

「来たかババァ」

 

「出たな諸悪の根源め!」

 

「いえいえ、いいですよ。……どうせ、人間離れした幼馴染みが来ますから」

 

 

 僕はもう、竜樹について考えるのも放棄した。どうして、こんな風になってしまったんだろう……。

 

 

「そうかい、後で学園長室に来な。さて、アタシが黒幕扱いされてないかい?」

 

「黒幕ではないだろうが、俺たちに話すべきことを話していないのは充分な裏切りだと思うがな」

 

「ふむ……。やれやれ。賢しいヤツだとは思っていたけど、まさかアタシの考えに気がつくとは思わなかったよ」

 

 

 その言葉を聞いて、僕は少し考えることにした。……あ、そうか。そういえば、召喚大会の景品はアレ(・・)だったね。さては、また調整に失敗したか。

 

 

「……欠陥があったからさ」

 

 

 あ、そこまで話が進んでいましたか。

 

 学園長、苦々しい顔ですね。まあ、技術屋としては、新技術の欠陥は耐え難い恥ですもの。僕もデバックをしていました。どんどん、仕事の幅が広がっている気がするんだけどなー。

 

 

 

 

 

「その欠陥は俺たちであれば、問題ないのか?」

 

「そうさ。アンタたちが使うなら暴走が起こらずに済む。不具合は入出力が一定水準を超えた時だけだからね。だから他の生徒には頼めなかったのさ」

 

「なるほどな。得点の高い優勝候補は使えないわけだ」

 

「えーっと、つまり……?」

 

「アンタらみたいな『優勝の可能性を持つ低得点者』ってのが一番都合が良かったってわけさ」

 

「よく分からないけど、とりあえず褒められているってことでいいのかな?」

 

「……明久、それはバカだと言われているんですよ」

 

「なんだとババァ!」

 

「説明されないと分からない時点で、否定が出来ないと思うんだが……」

 

 

 はぁ……。遠回しに言っても、意味が通じないとは思わなかった。この先、どう生活していくんだろう。

 

 

「二つある腕輪のうち、片方の召喚フィールド制作用はある程度まで耐えられるんだけどねぇ……。もう片方の同時召喚用は、現状のままだと平均点程度で暴走する可能性がある。だから、そっちは吉井専用にと」

 

「ええと、これは褒められていると取っていいんだよね?」

 

「それ、本気で言っているの!? 凄い勢いでバカにされているだけだよ!?」

 

「なんだとババァ!」

 

「いい加減自分で気づけ!」

 

 

 僕は、明久の未来に呆れた。やっぱり、率直に言った方が身のためなのかと思う。

 

 教頭の竹原先生が、手引きしているとは知っていた。けれど、確信が出来るまで烏たちに調べてもらうかな。

 

 色々と考えているうちに、雄二の顔が悪どくなっていた。

 

 

「学園長、質問です」

 

「なんだい?」

 

「腕輪の暴走って、総合科目で平均点にいかなければ起こらないんですか?」

 

「そうさ。一つや二つの科目が高得点でも、その程度なら暴走は起きないよ」

 

「そうですか。それは良かった」

 

 

 雄二はいい作戦が浮かんだのか、明久を連れて教室を出て行く。

 

 

「それじゃ、アンタも学園長室に来な」

 

「……また、何かするんですか?」

 

「ふん、またデバックでもしてもらうさ」

 

 

 そう言って、学園長は教室を出て行く。その後を、僕もついていく。

 

 こうして、学園祭初日は幕を閉じた。

 

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