「はい、皆様……長らくお待たせしました! これより、試験召喚システムによる召喚大会の決勝戦を開始致します!」
世間の注目を集めるためにも、僕はこの司会をやり遂げてみせる! ……学園長が毎日のように言うんだもん。学園の評価が悪すぎると。
「出場選手の入場になります!」
僕はそう言うと、ステージの端に寄っていく。司会者は、目立ってはいけない。あくまで、この試験召喚大会は生徒による戦いなのだ。僕は先生に頼まれて、司会をしているだけなんだ!
「二年Fクラス所属・坂本雄二君と、同じくFクラス所属。吉井明久君です! 皆様、拍手でお迎えください!」
盛大な拍手が雨のように降り注ぐ。決勝戦とはいえ、多くのお客さんが入っているようだ。
「なんと、最高成績のAクラスを抑えて決勝戦に挑んだのは、二年生の最下級であるFクラスのコンビです! これはFクラスが最下級だという認識を改める機会かもしれません!」
少しでもFクラスは成績のいい人や、召喚獣の技術が上手い人がいると思わせることができるかもしれない。それなら、僕は頑張って宣伝しちゃおう。
「そして対する選手は、三年Aクラス所属・夏川俊平君と、同じくAクラス所属・常村勇作君です! 皆様、こちらも拍手でお迎えください」
危ないところだった。あの時のトラウマが蘇って、危うく声を揺らしそうになった。やっぱり、恐怖心には勝てなかったみたい。
「出場選手が少ない三年生ですが、それでもきっちりと決勝戦に食い込んできました。さあ、最年長の意地を見せることができるのでしょうか!」
こうして、お互いの対戦相手がステージに上がる。
「それでは、試験召喚システムを簡単に説明しましょう。試験召喚獣とは、テストの点数に比例した自分自身の分身と言えます。それぞれの科目で対決をして、相手の点数を0まで減らしたら終了になります。この大会では関係ありませんが、普段では0点になった時点で補修室に運ばれ、補修をしなくてはいけません。テストの問題は多く、点数の上限はありません。如何に、多くの問題を解いて点数を得るか。なお、点数に比例するように召喚獣の攻撃力も強くなります。詳しい内容は、お手元のパンフレットに記載されていますので、目を通されてはどうでしょうか?」
とりあえず、簡単にルールを説明してパンフレットに誘導しておいた。後で、行く出し物の確認ができるように。
「それでは、試合に移らせていただきます。選手の皆さん、お願いします!」
すぐに、僕は審判役の先生に託して、その場を離れ、観客席で心を落ち着けようとする。
「鴉、大丈夫か」
「……うん、まだ怖いかな。接触恐怖症まではいかないけど、人に触れられると体がすくんでしまうよ」
「そうか」
僕の隣に座る竜樹。今度ばかりは、幼馴染が側にいてくれて頼もしいと思う。そのまま寄りかかって、竜樹の体温を感じる。人が側にいてくれるというのは、こんな感じなのかな。人の温もりって、とても暖かいんだね。
「……ちょっとだけ、このままでもいいかな」
「……ああ、いいぜ」
「ふふ、ありがとう」
僕は明久たちの試合を見る。雄二の謀略と明久の操作技術あれば試合も有利に進めることができる。だけど、あの二人に協調性というものが欠けている。協力すれば、勝てるとは思う。ただ、あの二人じゃありえないと思う自分もいたりする。
「竜樹、ありがとう。それじゃ、僕は行くね」
「あ、ああ」
僕は竜樹の胸ポケットに紙を入れて、そのままステージへと歩いて行く。
「これは鴉のメアド、だと……! ついに照れたか!」
その後、ずっと竜樹のテンションが高かったのは、神のみぞ知るである。