第一話 『最後のメンバー』
そこにあったのは巨大な円卓であった、黒曜石の輝きが美しい奇麗な円卓。
そこに配置されていたのは四十一人分の豪華な椅子が並べられていた。
しかし、そのほとんどが座るべき主がおらず伽藍と空いていた。
数年前には全て埋まっていた席に座られているのは今ではたった二つ。一方に座っているのはこのギルドのギルド長であるオーバーロードであるモモンガ、そしてもう一方にすわっているのが二年ぶりに姿を見せた古き漆黒の粘体のヘロヘロだった。
二人は懐かしそうに現実世界での愚痴を溢し合っていた。
そんな二人の邪魔をしない様に、部屋の角に革張りで装飾の乏しい椅子を持ち込んでちょこんと座って眺めているのは一人の少年であった。
緋色の和服に身を包んだ十歳前後の少年、頭の上には小さい角が日本ちょこんと生えており、そこから流れる長い黒髪を太い三つ編みで胸元まで垂らしている。その姿は顔の造形の美しさと幼さも相まってまるで少女のようであった。
そんな彼は置物のように動くことなく、二人を邪魔することなくぼんやりと二人のやりとりを眺めていた。
その視線は二人だけでなく、この場の全員が揃っている風景を思い浮かべながら空想に浸っていた。
そこに自分の姿があったならと願いながらも…。
しかしそんなことがもうないとはっきりと思い知っている彼は僅かに視線を下げた。
そんな彼に気づいたのはヘロヘロだった。
「えっと、モモンガさん、彼がその、えー」
「ええ、あのときの、彼、タイラー君です」
唐突に昔の自分の名を呼ばれた彼は視線を上げて二人に向き直る。
椅子からぴょんと飛び降りた少年は深々と礼をして挨拶する。
「紹介に預かった元タイラーです」
少年から聞こえたのは不釣り合いな青年の声だった、しかし。
「今はナイヴズ=村正といいます。鬼を中心にして進めた異形種やってます。お久しぶりですヘロヘロさん」
次に聞こえたのは、ナイヴズと名乗った少年相応の高い声だった。
ボイスチェンジャーを使用して合わせた独自の少女のような声だった。
そんな彼にヘロヘロはプルプルと体を動かし挨拶のリアクションを取る。
「こんばんはー、ナイヴズ君。何年ぶりかな?」
「ちょうど五年になります。あの約束の日以来会えてませんでしたから」
「そっかそんな時間経ってるんだ。……やばいなぁ。時間の感覚が変なんだよね」
「それかなりヤバいんじゃないですか?大丈夫ですか?」
「超ぼろぼろですよ…。ってまた愚痴になっちゃいますね…約束の日か…ナイヴズ君がここにいるってことは」
「はい、最終日ですが、あの時の約束をお願いしたく思います。半数の二十一人の了承を得られたらこのギルドに入れてくれるという約束を、
そしてヘロヘロさんが二十一人目です…」
「他の二十人はー?」
「……会うこともできませんでした」
ナイヴズの声に何を感じたのかヘロヘロは言葉に詰まった。
モモンガはそっと息をつく。その内面に浮かんだ感情を悟られない様に。
「そうですかー。そうですよね。正直私自身っもまだここが残っているなんて思ってもいませんでしたから」
「……へー、そうですか」
ナイヴズはコテンと顔を傾けるリアクションを取る。固くなった声がボイスチェンジャーで柔らかく変換されなければ自身の怒りの感情が悟られてしまったことだろう。
モモンガさんと…僅かとはいえ俺がどんな気持ちでここを維持したと思っているのか。
先輩でなければ怒鳴っていたであろうそれも次のヘロヘロさんの言葉ですっと収まった。
「モモンガさんが俺達がいつ戻ってきてもいいように維持していてくれたんですねー。感謝します」
「皆で作り上げましたから、維持管理していくのはギルド長の役割です。それに私だけじゃありません。ナイヴズ君と一緒にやったことです」
「そうですかー、ありがとう二人とも。そうですね、当然私は了承します。最終日になって申し訳ないですが、新たな四十二人目の誕生を祝福します」
その言葉を聞いた瞬間…ナイヴズは、その本体は涙が自然と流れ落ちていた
「ああ…やっとこの日を迎えることができました…ありがとうございます」
「遅くなってすみません。一緒に冒険出来たらよかったのですがー…」
「いいえ、いいえ、いいのです。本当にこの時を迎えられたことがなによりでしたから」
「おめでとうナイヴズ君」
ももんがも拍手のアクションをとる。
その声は祝福に満ち溢れていた。
だが、その喜ばしい時間もすぐに終わってしまう。
ナイヴズが感動に打ち震えている間に二人は別れの挨拶をおこなっていた。
「すいません…もう時間のようですねー、次にお会いするときはⅡとかだと良いですね」
「…噂も聞いたことはありませんが、……でもそうだと…良いですね」
「その時はぜひ!じゃ、そろそろ睡魔がやばいので……アウトします。最後に、モモンガさんがギルド長だからこのゲームをあれほど楽しめた
んだと思います。ありがとうございました。お会いできてうれしかったです。お疲れ様です」
「……っ!」
モモンガは一瞬だけ口ごもる。感動で震えていたナイヴズはヘロヘロに声をかけようと思ったが……やめてしまった。
社会人になってから仕事の辛さというのはいやでも浸みている。一分一秒が重要であることは痛いほどしっていたからだ。
だから、ヘロヘロの笑顔の感情アイコンが浮かんだ時、モモンガもナイヴズもふたりとも同じモーションを浮かべた。
「また…どこかでお会いしましょう」
ーーー会うことが出来たメンバーのうち最後の一人がいなくなった。
二入りになった室内、静けさが押し寄せる。
さっきまでの感動が掻き消えていくようにナイヴズの中が空っぽにになっていく。
「モモンガさん……」
「なにかな……」
「最後まで一緒にって…言えばよかったですかね……」
答えは無かった。
だかそれが答えの様だった。
ナイヴズと同じように答えは一緒だったのだろう。疲れ切った愚痴を溢した彼に、これ以上いてほしいとは言えなかった、だけど……。
「またどこかでお会いしましょう……か」
モモンガの言葉にナイヴズは答えなかった。
沈黙が続く、長い沈黙ののちーー
「ふざけるな!!」
怒号と共にモモンガの手がテーブルに叩きつけられた。
ビクリと体を震わせたナイヴズだったがその怒りはすぐに共感できるものだと感じた。
「皆で作り上げたナザリック地下大墳墓だろ!なんで皆そんなに簡単に捨てることが出来る!」
椅子から立ち上がりモモンガの傍によるナイブズ。
「モモンガさん…」
「ごめん、ナイヴズ君…驚かして」
「いいえ、気持ちはわかります。わかるつもりです」
「そっか、君も待っていてくれたんだよな……」
「はい」
手を取り合うことも共に怒りに顔を歪めることも出来ないが確かに二人は気持ちを共有していた。
「皆現実と空想を選択しただけです。裏切ってはいません。苦渋の決断だったんです」
「そうだよね…きっとそうだったんだ」
僅かな沈黙が流れる。
しばらくしてモモンガは小さく頷くと立ち上がりギルド武器を、僅かにためらったのに手に取った。
その躊躇いにいかほどの思いが込められているか、ナイヴズには分からないものであったが。
しかしかれはそれを取るとコンソールを操作しそれに相応しい装備を身に着けたそしてナイヴズに向き直ると彼を促した。
「ナイヴズ君来てくれるかな?」
「はい、どこまでもご一緒します」
ナイヴズもモモンガが何をやるか分かっていたためコンソールを操作し正装、現在最高の装備へと身を包む。
といってもナイヴズのレベルは三十一。セカンドキャラであるだけに金銭はかなり持ち合わせているが、装備自体の能力は大したことのないものであった。それでも今できる最高の、若干派手な緋色の着物に主兵装の薙刀をもってモモンガの後に続いた。
「行こうか、ギルドの証よ、そして、最後のメンバーよ、約束を果たそう」
「はい、ギルド長!」
タイラー=フジーサ
鷹の眼を持つ傭兵(自称)
亜人種 ♂
レベル種族値
エルフLV10ハイエルフLV10他 合計LV40
レベル職業値
アーチャーLV10ハンターLV10他 合計LV60
合計LV100
アライメント属性:善 カルマ値:75
外見
金髪イケメンなハイエルフ、外見年齢18歳程度。
古典的なシンプルかつ中二病な弓兵。
どのようなMMOゲームでも街中を見渡せば必ずみつかるような僕が考えたカッコイイ主人公であり結果、特徴が無くなった普通のPC。ギルド『合同会社ブラック傭兵派遣斡旋社』に所属、一期一会を楽しむ傭兵をやっていた。
最悪にして最凶のDQNギルド『アインズ・ウール・ゴウン』討伐戦に傭兵として参戦。
8階層に到達するもモモンガ達に撃退される。
必勝と思われた戦いで圧倒的な力をもって完膚なきまでにぶちのめされた結果『アインズ・ウール・ゴウン』に惚れ込みギルド入りを熱望するが、学生であることと、異形種でないことを理由に拒否されて以来、いずれ作る異形種セカンドキャラのための資金集めとして使用されていた。ナイヴズが作られてからは完全に消去された悲しい子