0:00:00……1.2.3.
「…ん?どういうことだ?」
モモンガは目を開けると自分の部屋ではなく、玉座の間であることに気が付いた。
時間は正確に刻まれている。
モモンガは何か異常はないかと辺りを見回した瞬間。
隣に立っていたはずのナイヴズが崩れ落ちるように倒れた。
「な!」
「ナイヴズ様!」
眼の前を白い人影が一目散に横切る。
それは右側に立っていたはずのアルベドだった。
「ど、どういう事だ」
モモンガの困惑を他所に、アルベドはすぐさま小さなナイヴズを抱き上げると必死に揺すり始めた。
「ナイヴズ様!ナイヴズ様!!」
その様子に戸惑いながらもモモンガは状況を整理しようと必死だった。
「まて、アルベド、それほど揺すっては逆にまずい」
「は、はいモモンガ様、ですが…」
そのアルベドの顔には涙が浮かんでいた。美しい女性の涙にかなり戸惑ったモモンガだったが瞬間、理解して唖然とした。
NPCであるはずのアルベドが表情を浮かべ、会話していることに。
「どう、どうなっている?」
「ナイブズ様は意識がございません。身体的に異常はみあたらないのですが…」
この状況に対する問であったがアルベドはナイヴズの事を問われたかと勘違いしたのかそのように答えてきた。
さらに言葉を発したのは、セバスだった
「とにかく一度ベッドで様子をみるべきかと存じますが?」
「そうね、すぐにプレアデスはベッドの用意を、私が面倒を見ます!モモンガ様そのよう動きますがいかがでしょうか?」
問われたモモンガはそのまま頷きそうになったが、かつての仲間の言葉を思い出した瞬間冷静さを取り戻した。
「まて、……各種システムが作動しない…GNコールも利かない…情報が必要だ、しかしナイヴズ君の事もある…」
「お許しください…どのシステムが稼働していないのでしょうか?防衛関係は普段通り作動しておりますが、GNコールに関しては無知であります」
「それについては…今はいい、しかし、緊急事態だ!」
「はい、如何いたしましょう?」
モモンガは会話していることに驚きながらも自身が最上位者であると意識しながら冷静に命令を下し始めた。
「情報が必要だ…セバス、プレアデス!周辺地理を確認せよ!次に…残りの各員は九階層に上がり上からの侵入者に備えよ。ただちに行動開始!」
「承知いたしました、我らが主よ!」
各員に情報収集と警備を命じると声が響き、セバスとメイド達は跪拝すると、一斉に行動を開始した。
残ったのはモモンガとアルベド、そして意識のないナイヴズだけとなった。
「アルベドはそこにいろ、まずは私がナイヴズ君を調べる」
「はい、モモンガ様、どうかよろしくお願いいたします」
心配そうなアルベドを横目にモモンガは床に寝かせたナイヴズを調べ始めた。
ーーーーー
モモンガがナイヴズを調べる過程で分かったことが幾つもある。
その中には法律に引っかかることをやってみたが一切GMからの警告が来なかったのだ。
その情報を総合すると、仮想現実が現実になったという可能性。それしか考えられなかった。
ありえない、そんな無茶苦茶なこと、理不尽なことなぞある訳がないと思いたかった。
しかしその可能性が高いと思わずにはいられなかった。
自身の五感も、ゲーム上あり得ない五感すら感じられている。
「現実にでもならない限り、データ上あり得ない…」
頭では否定したい気持ちがある、しかし、感情がそれを否定していく。心が理解していくのだ。
モモンガは調べつくしたナイヴズを床に横たえると力尽きたかのように玉座に腰かけた。
「も、モモンガ様、この、裸の…ナイヴズ様を食べ…いえ、まさか二人はそういうかんけ、じゃなくて、大丈夫だったのですか?」
手で顔を覆いながらも目の部分だけばっちりと開け、ナイヴズを凝視しているアルベドを見て我に返った。
調べるという名目の元、あんなところまでばっちり観察してしまったことに今更気が付いたのだった。
「こ、これは、ゴホン、アルベド、今は緊急事態だったのだ、特に体に異常は見られない、すぐに服を着せ、第九階層のベッドに寝かしてきなさい」
「は、はい!申し訳ありませんすぐに、そういたします」
「まて、追加命令だ、彼をメイドに預けたのち各階層の守護者に連絡をとれ六階層まで来るように伝えよ、時間は一時間後だ。アウラとマーレには私から伝えるので必要は無い」
「畏まりました」
アルベドはどうやって脱がせたかモモンガ自身分からない着物を丁寧に着付けるとことさら大切そうにナイヴズを抱き上げると速足で玉座の間を後にした。
その姿が見えなくなった瞬間力が抜けるように玉座に体を預けた。
「…なんてこった…ああ、クソ!」
モモンガはアルベドがあれほどナイヴズに執着する理由に心当たりがあった、そう、答えは一つしかなかったから。
悪乗りが過ぎた、最後だったからと…。
しかし、ひとまず問題を後回しにして玉座から何とか立ち上がった。
今はやらなくてはならないことを順次かたずけなければいけないから。