提督最前線   作:首輪付きの提督

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6月6日:加筆と誤字修正
6月19日:加筆


第2話:篝火と鋼鉄の鎧

 ――パチパチと音を立てて篝火が燃える。

周囲に申し訳程度の明かりとそれでも確かな燃え上がる炎の熱を振り撒きながら。

 

 周りは夜の所以か薄暗く、光源はその篝火だけらしい。

ちょうどそのほの暗い感じと布団に身を委ねた時に似た温かさが程よく微睡(まどろ)みを提供してくれる。

 

 ふと、それらの中に紛れて殺気を孕んだ視線を感じ一気に覚醒する。

 

 

 「 ――っ!? 」

 

 

 ――右、左から背後。

横たわっていた身体の上半身だけを起こし、視線を走らせる。

傍らの光源にするには心もとない篝火の明かりを頼りに周囲を警戒する。

 

 

 「あぁ、起きたのか……いつまで経っても中々目を覚まさないものだから心配したぞ」

 

 

 暗闇の中から中音から少し高い程度の女性らしい声が響く ――凛としていながらもどこかに少女らしい柔らかな声に既視感を覚えるものの、今はその答えを出せそうにない。

頭の中をかき混ぜるように記憶を探りつつ、声の方向を注視し、その声の主を特定しようとして失敗する。

 どうやら声の主はそう遠くはないものの篝火の明かりを避けるように少し離れた場所で息を殺してじっとしている。

 だが、そうなると疑問が浮かび上がってくる。

 

 先ほど感じたあの殺気の主は? ――今はあの視線を感じない。

 ならば、声の主が? ――これも違う。声の主は定まらない視線を右へ左へと流しながらこちらを捉えようとしている。

 唯一の光源である篝火の傍にあるものを捉えることが出来ないとは可笑(おか)しな話だ。

 

 

 「 もしや、あなたは目が……? 」

 

 

 不意に口から出た言葉にややあってからはっとする。

視覚がないというのは他人がそうであるように、本人が最も苦にしていることだろう。

それが女性であるならば、警戒心もあって色々と不安にもなったりするだろう。

 

 

 「 ――申し訳ありません。愚直という字をそのまま人にしたような自分でありますから先ほどのは畜生の独り言だと思って聞き流してください」

 

 

 「気にするな。 もう……とっくに慣れた事だからな」

 

 

 貴方が心配することではないとでも言うように、クククと喉を鳴らすように低く笑う暗闇の声。

 

 

 「……ですが、ここは危険です。 自分がそちらへ行きますから居場所を知らせて下さると大変助かるのですが……」

 

 

 今は感じられなくなった殺気を警戒するように身を屈めながら暗闇に足を踏み出そうとした所で暗闇から制止の声が上がる。

 

 

 「私の心配はしなくていい。 それと、あまり近寄らないでくれ……。 」

 

 

 見られるのはあまり好きじゃないと言った後、慌てて付け足すように気分を害したなら謝罪すると補足した。

暗闇の中からもその申し訳なさそうな空気が漂うのを感じる。

 

 

 「いえ、女性に見ず知らずの男が近づくというのも返って無礼な話でした。考えが至らず――」

 

 

 「あぁ! やめてくれ……あなたにそんなに謝れると――! 」

 

 

 謝罪を遮るように声をあげた彼女だが、失言してしまったとばかりに言葉尻を濁す。

 

 

 「もし――つかぬことを伺いますが、自分と貴女は――」

 

 

 あまりに自分と彼女の雰囲気が今日知り合ったものではないと、そして自分のことを前から知っているみたいに話す彼女の言葉に思わず口を開く。

 

 

 「あ、いや! そのだなっ、あー、あーぁ……兎も角、そろそろ目を覚ます頃だろう。あなたにはあなたのすべきことがあるはずだ」

 

 

 話はそれからだ、また会おう。

そう言って彼女の存在が薄くなる ――同時に重たくなる瞼。

目を覚ます頃とは言っていたが、まさか再び微睡みに堕ちようとは思ってもいなかった。

 

 

 「最後に! 貴女の名前は ――?」

 

 

 果たして、絞るように出した声は彼女に届いただろうか。

 

 

 「 ――― ―――――。」

 

 

 それが投げかけた言葉への答えなのか、確かめる術もこの瞼と精神を支える気力も残ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『|応急修理要員≪ダメコン≫? そんなモンより主砲を乗せろよ』

 

 いつもの語尾を付け忘れているのを気にも止めず、ただ、ひたすら戦場と敵を求める悲痛な姿。

 だが、同時にその男勝りな口調にやっぱり木曽の姉なんだなと理解する一方で、球磨をこんな風に変えてしまったのは自分だとも理解した。

 

 『演習なんて繰り上げて、午後の出撃を今すぐに! 』

 

 出撃はおろか、演習すら面倒くさいと多摩と部屋から出なかった彼女は、変わってしまった。

 

 『憎い』

 

 出撃先では一隻たりとも逃さないとばかりに無茶な攻撃と追撃に随伴艦は鬼気迫るものを感じ恐怖した。

 

 『一番近くに居たはずなのに――守れなかった』

 

 |妹≪きそ≫を殺した|深海棲艦≪てき≫が憎い。

 愛する妹を守れなかった自分が憎い。

 憎い――殺せ。

 殺せ――殺せばいい。

 

 妹はなんで死んだ? ――戦場にいたからだ。

 なんで戦場に? ――新しく着任する提督の航路を安全を確保するためだ。

 ただ繰り返される自問自答に、球磨は―――壊れた。

 

 

 『やっぱり最期は妹の沈んだ|鎮守府近海≪ここ≫クマね』

 

 

 指示に従わない戦力は不穏分子として処理される――そして、俺は球磨を処理した。

 

 

 

 

 

 

 パチパチと(たきぎ)が燃える。

篝火が程よい温もりをくれる。

何もかもが溶けていくような感覚に襲われながら、意識が遠のく――と同時に、閉じた瞼の内側で何かが見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『 ――く!! 』

 

 

 鋼鉄の無機質な冷たさに包まれ、微睡みから半ば覚醒する。

 

 

 『 ――ぃとく! 返事をして下さい! 提督!! 』

 

 

 ぼやけた視界が時間とともに色と安定感を取り戻していく。

何回か声が聞こえた気がしてざっと辺りを見回す――正面に行く手を阻むように両手を大きく広げて立ちはだかる桃色の髪の少女に視線を落とす。

 少女(かのじょ)の伸長は年相応かそれ以上に高いはずなのだがこちらが大きく見下ろす形になる。

 

 

 『良かったです! 気が付きましたか、提督? 』

 

 

 こちらの反応(リアクション)に安堵した様子でほっと胸を撫でおろす彼女の問いを無視して鋼鉄の足を踏み出す。

床を踏む度に金属同士のぶつかる耳障りな音を響かせる。

 

 

 「すみません、明石(あかし)。一身上の都合で大変申し訳なく感じておりますがそこを退いて下さると助かるのですが? 」

 

 

 意識は覚醒したばかりだというのに、すべきことをしっかりと覚えている不思議な感覚に戸惑いつつも体は誰かに乗っ取られたかのように勝手に動いていく。

 

 

 

 『いいえ、絶対に退きませんからね! 』

 

 

 そう言って抗議の声を挙げる明石――腰下まである長い艶やかな桃髪と肩で結ばれたおさげ。

セーラー服に少女とはいえ思わず合った視線を中々に外せない腰回りの露出した行灯袴(あんどんはかま)短く改造した(ミニスカート)稀有な恰好をしている。

長い手足に程よく実った果実(・・)に視線を固定されそうになるが今はそんなことをしている場合ではないことを思い出し、さらに歩を進める。

 

 

 『なんでいつも強引なことばかりするのですか!――心配するわたしの身にもなってくださいよ!! 』

 

 

 「恐縮ですが、その心配は無用です」

 

 

 可憐な少女が自分の身を案じてくれることに心が温かくなる。

この兜の下には口角を上げ、だらしなく笑んだ自分の顔があるに違いない。

 

 

 『は? ち、違いますよっ! わたしが心配してるのはソレのことです! 』

 

 

 彼女の言うソレ――今、自分の身を包む無機質な鋼鉄の鎧。

自分を守る鎧でありながら、人類の新たなる(ちから)

旧世代(かんむす)に代わる新戦力として開発された唯一の試作機。

 

 猛禽を象っ(モチーフにし)た兜からは一房の群青の尾が歩みに合わせて左右に揺れる。

群青の青に合わせた装飾のついた外套(マント)を首から背中にかけて巻いた白銀の鎧。

 2メートル強にもなるその巨躯の搭乗者《なかみ》の伸長が一致するかと言えばそうではなく――脳から体に伝達する信号を脊椎に繋がれた首輪が受け取り、人工筋肉のアシストを受けて動く。

 

 

 艦娘が己の熱量(カロリー)を砲弾に、燃料に変えて海を戦場を駆けるのと同じく。

この鋼の鎧もまた搭乗者の熱量をエネルギー源(エンジン)に戦場を駆ける。

 搭乗者(コア)を囲む鋼鉄の鎧(アーマー)――通称、心装甲冑《アーマードコア》。

 

 

 『まだろくに実験(テスト)もしていないんですよ! 今回はたまたま提督(あなた)の転属に合わせて輸送していただけで!! 』

 

 

 実戦なんて無茶です、と付け足す。

 

 

 『それにここは空ですよ!? 33000フィートですよ! 10000メートルと言った方がわかりやすいですか!! 』

 

 

 深海棲艦の潜む航路を避け、軍用輸送機を使った空輸。

今、航路を往くのは偽物(ダミー)だがそれでも練度の高い艦娘たちが護衛している予定だった。

 

 

 「そんなことは分かっている」

 

 

 『いいえ! 提督は分かってません!! 』

 

 

 輸送機の遥か下で行われている砲雷撃戦――目に見えて分かる優劣。

このまま何もしなければ最悪の過程(ごうちん)を以って、結果を迎える(はいぼくする)だろう――轟沈も敗北も深海棲艦の方ではない。

 軽巡二隻とはいえ、片や練度の低い(あしでまとい)艦娘(きそ)とそれを庇うこと(フォロー)に手が一杯で中々攻勢に転じれない艦娘(くま)の二人。

 相手は駆逐艦三隻と軽巡が一隻。

中でも旗艦であろう軽巡は幾多の戦線を潜ってきたことか、中々の高練度であることが身にまとうオーラと立ち回りから推測できる。

 

 

 「分かった――この鎧だけは例え手足がもがれようとも無事に明石(あなた)へ返すことを約束します」

 

 

 『手足がもがれてる時点で無事(ボロボロ)じゃないですか! 』

 

 

 「明石、離れてください」

 

 

 反射的にざっと距離を取ってしまう明石をしり目に、背中に固定(マウント)された鞘から細身の大剣を引き抜くとそれを床に走らせる。

 

 2メートル強の身体に勝るとも劣らない刀身を持つそれは鋼鉄をバターのように切り裂くと切り抜かれた床が重力に従って落ちていく――その一枚板に習い、鋼鉄の巨躯もまたその穴から空へと――高度33000フィートの空へと身を躍らせた。




 遅れること約1か月に近い期間。
大変申し訳ありません。

 さて、この小説を読まれる方の中には提督業を学生なりお仕事なりと兼業してる方も多いと存じます。
夏イベはどうでしたか?
過去最高難易度とも札の制限、ドロップ率の低い限定艦、ギミック有りの最終エリア。
どれをとってもその苦労が目に浮かびます。

 ここで言い訳のようになってしまいますが、悪夢のE7において初にして唯一のケッコンカッコカリ艦である摩耶改二が自分の拙い、あまりにもひどすぎるミスで轟沈してしまいました。
気分というか、精神的に轟沈してここ一か月くらい艦これは勿論、パソコンに触れることすらしていませんでした。


 「こんなになるまでこき使いやがって、クソが! 」

 なんて言われながら入渠させるのも出来ないわけで。
編成画面のどこを見ても居ない彼女から現実逃避するようにメモ帳を開いて小説の執筆に移りました。
……もう少し落ち着いたら艦これの方も再開したいと思います。




 ところで話が変わりますが、こんな拙い物書きに感想に評価が……。
嬉しさ半分と驚きが半分で自分でもわからないかんじです。
その感想についてなんですけれど、アーマードコア×艦これやアーマードコアに関する記述が多いように感じます。

 勿論、アーマードコア要素もこれから入れていきたいですがメインはダークソウルが多くなると思います。

 本編では早くもアーマードコアという単語は出てきましたがレイブンやリンクスからすれば思っていたのと違うように感じられたと思います。
 逆に不死者の人は群青の房と外套と猛禽の兜で深淵歩きのアルトリウスだと察してくれたことでしょう。
 思い浮かばなかったのならば、自分の描写不足です……精進します。

 ニコ○コ動画やYOUTU○Eにおいて動画として。
 pix○vやその他イラストサイトにおいては画像として。
 様々な形でアーマードコア×艦これは見かけると思います。

 そこでダークソウル(フロムソフトウェア)×艦これならば新鮮なものを読者様に提供できるのではないかと感じ方向転換した次第であります。

 タグを見てアーマードコア×艦これだと思って開いてくださった人には申し訳ありません。
 ただ、レイブンにリンクス、ミグラントを転々としてきた自分でありますから同業者の人にも楽しめるものを書いていきたいと思っています。


 最後になりましたが、この小説を読んでくださった方々。
 期待していると暖かい感想を。
 思わず飛び上がってしまうほどの高評価をくださった方々に感謝です。
 今後とも提督最前線をよろしくお願いします。
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