頑張っていきたいと思います
-鈴奈庵。
幻想郷の人里に佇む古本屋である。
今日も入り口のベルが鳴る。
「いらっしゃいませー。」
鈴奈庵店主、判読眼のビブロフィリア-
すると、それと同時に溜息をついて、本を閉じる。
「…何よ、その反応は。」
小鈴の反応にむかっとしながら、九代目のサヴァン-
「…はい、今月の分。」
「あいよ、少し待っててね。」
そして、小鈴はその本を一冊一冊、軽く捲っていく。
「・・・。」
その間に、阿求は店内を不思議な顔をしながらゆっくり見まわっていく。
「…はい、全部品質は良だね。」
小鈴がそう言って本を置いたのを確認すると、阿求は口を開いた。
「ねえ、最近、あんたのところ、本が増えてない?」
その言葉に小鈴は顔をあげると、
「…何よ、私が本を前まで集めていなかったとでもいいたいの?」
眉をひくつかせながら、小鈴は阿求に言い返した。
「いや、そうじゃないの。…あそこよ。」
そう言って阿求が指さしたのは、入り口に一番近い、右側の棚である。
「…明らかにあそこだけ、絵本が増えているのよ。しかも見たところ、同じ人が描いてるみたいだけど…。」
すると、小鈴は参ったかのように溜息を一つつき、
「ええ、別に隠すことじゃないしね。」
そう言って立ち上がり、阿求が指さした本棚へと歩き始めた。
「つまり、誰かが本を売りにきてるってこと?」
阿求は小鈴の後に足早についていく。
「ええ、三ヶ月前くらいからかしら、家にやってきてくれてね、絵本を買い取ってもらえないかって、聞いてきたのよ。」
そして、小鈴はその本棚から一冊の絵本を取り出し、阿求に見せたのである。
「…ふむ…。」
阿求は小鈴からその絵本を受け取り、読み始めた。
-そして少しした後、本を閉じて、こう言った。
「…面白い…売れるわね、これ。何より絵が上手いわ…。」
阿求はそう言って、本の表紙と背表紙をまじまじと眺める。
その本の表紙は子供にも親しみやすいよう、柔らかいタッチで兎が描かれている。
「…亀と兎が競走する話ねえ…相撲する話なら鳥獣戯画にあるんだけど…。」
そんなことを呟きながら、阿求は本を元の場所にしまった。
すると、再び入り口のベルが鳴り、一人の少女が入ってきた。
「お、噂をすればー」
「おい霊夢、見回りはどうだ?」
箒に乗って博麗神社に降り立ったのは、極めて普通のマジシャン-
「見回り?…ああ、鈴奈庵のことね。」
そう言って縁側に座って茶を飲んでいるのは、楽園の素敵なシャーマン-
「さあ、まだ見回りを始めたばかりだし…まだなんとも言えないわね。」
煎餅を口に運びながらそう答える霊夢。魔理沙は、その隣に座り、菓子を見ると、「なんだ、また煎餅か。」といって、菓子に手を出さなかった。
「ま、今日も見に行くとしますかね…。」
そう言って背伸びをしながら立ち上がった霊夢を見て、
「おいおい、私はさっききたばっかだぜ?」
魔理沙がいうが、霊夢は睨み、
「だったらそこで留守番しておけば?」
と言われた。流石にここで留守番するのは暇すぎる、とでも言うように魔理沙は溜息をつき、
「分かった分かった、じゃあ私もついていくぜ。」
そう言って笑いながら元気よく立ち上がった。
そして、霊夢達は人里に辿り着いた。
「さて…鈴奈庵に…ん?」
魔理沙は歩いてくる人影を見つけると、目を凝らす。
「あら、魔理沙さん。」
歩いてきたのは、先程まで鈴奈庵にいた、阿求だった。
その阿求は、数冊の本を抱えている。恐らく今回借りてきた本だろう。
「おう、どうした?今まで鈴奈庵にでもいたのか?」
「ええ、そうですよ、新しく本を借りに来たんですよ。」
と、隣にいた霊夢が、少し大きめの本を抱えているのを見つけた。
「なに、それ?見たところ…絵本のようだけど。」
「ええ、絵本ですよ。」
阿求はあっさり言い切った。
その言葉に、霊夢と魔理沙は顔を見合わせ-同時に吹き出した。
「…何です…?」
阿求は怒りを必死に抑え、静かに問う。
「あははっ、い、いや、だって、絵本だぜ?」
暫くしてから、魔理沙はようやく喋った。
「…そうですか、では、絵だけでも見たらどうです?」
「絵…?」
既に復活していた霊夢は、阿求に渡された一冊の本を見た。
「…そういえば、絵本ねえ…珍しいわね、外来本じゃないの?」
「ええ、外来本ではありません、実際に合いましたから、その絵本を描いた人に。」
その言葉に、魔理沙は、
「ど、どこで?」
「あら、興味がわきました?鈴奈庵ですよ、もう帰ってると思いますけどね。」
そして、阿求は、「では、私はこれで」と言って、霊夢から絵本を受け取り、帰っていった。
「…鈴奈庵、ねえ…。」
阿求が見えなくなった後、霊夢は静かに呟いた。
「まあ、人里でも本を売っている店なんてなかなかないしな。」
「まあ、とりあえず行ってみましょ。」
その言葉に魔理沙は頷き、二人は歩き出した。
-鈴奈庵。
入り口のベルがなる。
「いらっしゃいませー…あ、魔理沙さん、霊夢さん。」
小鈴は、一番右奥の本棚から顔を覗かせた。
「何か御用ですか?」
そして、監視を始めた時のようにパタパタと走りながら霊夢達に近づいてくる。
「ねえ、今日、阿求が本を借りて行ったと思うけど…」
「ええ」
「その中に絵本ってあったでしょ?」
その言葉に、小鈴は少し驚いたように、
「まさか、霊夢さんもあの本に興味を…?」
「…何よ、その意外そうな顔は。」
「あ、いえ…。」
小鈴は慌ててフォローしようとしたが、
「いや、本当だよなぁ。まさかあの霊夢が、絵本に興味を持つなんてなぁ。」
魔理沙に水をさされてしまった。
「……………。」
霊夢は眉を引くつかせながら、魔理沙を睨む。
「おお、怖い怖い。で、私達が用があるのは、絵本もそうなんだが、その絵を書いた人に会いたくてな。」
「描いた人…ですか?」
「ああ。この人里で物語を書く人はすくないだろ?殆んど外来本だ。それに、そのなかで絵本なんて描く奴は見たことがない。だから私も霊夢も興味をもったということだ。」
「…成る程…。」
魔理沙の言葉に続けるように、霊夢が喋る。
「それに、色なんて…どうやってつけるのよ、外来本ならともかく、ここで書く本なんて、全部手書き、墨で描くのよ?」
「ええ、まあ、それなんですが…。」
そこまで言って小鈴は考えると-
「…そうだ、その人のお店に行ってみたらどうですか?」
「店…?」
「何、店を開いてるの?」
「ええ、頼まれた物を描く店を開いているそうですよ。」
そう言って、小鈴はその店への道筋を教えた。
「…ここ?」
小鈴に言われた通りに行くと、玄関に、少し大きめの一枚の絵が飾られていた。それは、花瓶に花が挿されているだけの、シンプルな絵だった。
「花の絵…間違ってはいない、ここだと思うぜ?実際暖簾もかかってるし…。」
魔理沙はそう言っているが、絵にはおかしなことがあった。
「…明らかに絵本の絵とは書き方が違うんだが……。」
そう、絵本の絵はにじみがちょうどよく出ていて、優しい絵だったが、この花の絵は、くっきりと描かれて、清楚な感じがした。
「…まあいいじゃない、もし間違えてたら小鈴ちゃんに言えばいいことだし。…だけど、言った通り、店の名前はわからないわね…。」
霊夢が言った通り、暖簾には何も描かれていない、ただの紺色の無地であった。
「…とりあえず入ってみようぜ、描いた奴がいるだろうしな。」
そして、二人は暖簾をくぐる。
-そこには、髪が白に近い紫、目が青の少女が絵を描いていた。
青のスカートに白のTシャツの上に黒のエプロンをしており、頭には草色のベレー帽をかぶっている。
と、その少女がこちらに気がついた。
「あら…もしかして、博麗の巫女の…?」
少女は絵を描いている手を止め、霊夢達の方に歩いてきた。
「え、ええ…どこかで会ったかしら…?」
「いえ、博麗の巫女の存在を知らない人は人里にはいませんよ。」
そして、その少女は微笑み-
「…私の名前は
久々の3000字超えです…。
時期的には鈴奈庵で霊夢が監視を始めた頃です。
もしかしたら挿絵を追加していくかもしれません…本当に出来れば…
次回、第1-2画 『あなたを描きます』
-次はあなたを描きましょう。