人里の絵描き屋 ‐あなたを描きます‐   作:破片

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私は出来るだけ一日で執筆したい派です。ただ文字数が増えてきて無理が出てきた。
鈴奈庵を漁ったところ、煙々羅は秋の終わりらしいので、この後書きたいと思います、すみません…。


第4-1画 妖怪の輪、その中へ

-時は少したち、話は秋になる。

 明香はいつも通り外が見える場所で絵を描いていた。その絵は、絵本。恐らく鈴奈庵に売りに行くためだろう。

 物語の構想を練る時も、明香は絵を描く。

 主人公、それに出てくる脇役たち-それは、軽く絵を描いて気に入ったのを主人公にしている。

 物語の場所も、明香がなんとなくで数枚描き、そこから感覚で一枚、もしくは二枚、場面の絵を選び出す。

 そうやって始まるので、明香の絵本を売りに行く感覚は、不定期、遅くなることが多い。

-今回も例外ではなく、数枚描いたものの、ぴったりあてはまるような情景が浮かばず、明香は頭を抱えていた。

 

-しかし、今回は、別の理由があった。冷やかしはいつものことだが、最近明香は、嫌悪な視線を店の外から感じるようになっていた。

 何か嫌われることでもやってしまっただろうか。明香はそのことを気にするも、引っかかることは何も浮かばない。

 流石にその視線に耐えかね、明香は店の中から顔を外へと向ける。

 そこには、こちらを嫌悪な目で見ながら話している二人の女性がいた。明香の視線に気がつくと、女性たちは慌てて目をそらし、二人で話しながら人里の方へ歩いて行く。

 

「……?」

 

 明香は全く身に覚えがない、何よりあの女性たちに会ったことはない。何故あのような目を向けられるのか、理由がわからなかった。

 考えても仕方がない、絵本の内容が浮かばないので、明香は鈴奈庵へと足を運ぶために、準備を始めた。

 

 

 

 

 チリンチリンと、入り口のドアを鳴らしながら、明香は鈴奈庵への中へと歩き出す。

 

「いらっしゃいませ…あ、明香!」

 

 読んでいた本から顔を上げた小鈴は、明香の姿を見ると、パタパタと明香の方へかけてくる。

 

「どうしたの?絵本(いつもの)?」

「いや、そうじゃないの。浮かばないから、何かいい本が無いかなってことも含めて、鈴奈庵にきたのよ。」

「そう、それじゃ、絵関係の本だね、いいよ、好きなだけ探して!明香はお得意様だから。」

 

 小鈴の言葉に、明香はありがとう、と返し、早速店の中を歩きはじめる。

 いつも通りの場所につき、ちょうどいい画材がないか、明香は本を開きながら考える。

 明香は絵本が人気なこともあり、鈴奈庵の本は割引させてもらっている。絵本も売れて、割引もされる、一石二鳥である。

-と、ここで客が来ずに暇なのか、小鈴は明香に声をかけた。

 

「ところで、大丈夫?貴女の店、あまりよくない噂が立っているけど。」

「え?」

「ほら、貴女、阿求の本の手伝いをしてるでしょう?それで時々、人里の外に出てるじゃない。」

「え、ええ。そうね、画材とか集めに行ったり…。」

「だから、何か変なことでもしてるんじゃないかって、一部の人から言われてるそうよ。」

 

 成る程、鈴奈庵(ここ)に来る前に感じたあの視線、あと、鈴奈庵へ歩いてる途中にも感じたあの視線。それはそういうことか。

 実質、慧音にも少し言われていた。あまり妖怪(こちら)側へ入らない方がいい、と。

 

「そうねー…だから最近、常連さんだけがやたら来るようになったのね、新規さんが最近来なくて困ってるのよ。でも、それなら鈴奈庵(こっち)もじゃない?」

「いや、私は元から霊夢さんに監視されてるから…。」

「…あー…色々ね…。」

 

 明香は、小鈴の妖魔本のことを知っている。理由は、こうやって明香が本を読んでいる時、手紙が挟まっていた。それを小鈴が拾って、妖怪の字で書かれていたのをあっさりと読み上げたことだ。それに小鈴は慌ててしまい、妖魔本のことを話してしまったから、なんとも間抜けな話である。

 

「…まあ、仕方ないじゃない、阿求から説明あったはずなんだけどね。」

 

 そう言いながら、明香は一冊の本を小鈴に渡す。

 小鈴は「あ、貸出ね」と言って、パタパタとカウンターに戻る。明香はその後ろ姿を見ながら、溜息をつくのだった。

-妖怪が、一体なにをしたのだろう。相変わらず、人間は物事をグループで捉えるようだ。一滴の毒が入った水ではない。沢山のものに、腐敗品があるだけだ。取り除ける、いや、取り除いて考えるのが正しいと、明香は思うのだった。

 

 

 

 

 

「-そうか…すまない。」

「いえ、慧音さんが謝ることはないですよ。」

「いや、阿求に明香を推薦したのは私だ。私にも非はある。」

 

 慧音宅。道端で、妹紅と話していた慧音とばったり出くわし、今に至る。

 とりあえず買ったという団子を3人で食べながら、明香は人里で嫌悪な目線が向けられることを話していた。 

 

「しっかしねえ…明香はただ、話を聞いて、絵を描いてるだけだってのに。全く、人間の想像力には呆れるよ。」

「…ああ、確かに…阿求殿から説明はされていると思うのだが…すまない、もう少し様子を見させてくれ。その説明が、まだ広がり通ってないってことも、あるだろうしな。」

「いや、それはないだろう。だって、阿求が説明したってことに、明香は妖怪とよく接触しているという情報が入るわけだろう?だったら悪い方の噂が目立ってるということじゃないか。」

「うむ…難しいな。」

 

 慧音と妹紅は、明香のことについて真剣に話している。この二人は妖怪だ。つまり、明香はそこまで妖怪たちと親しくなってしまっているという証明にもなっていた。

 

「ふむ…まあ、明香、君は気にしないでいい。そういう人がいたら、私にでも相談してくれるといいさ。」

「は、はい、ありがとうございます。」

 

 と、胡座をかいていた妹紅は、突然パンと膝を叩くと、

 

「よし、明香、こういう時は一度、開き直るんだ。慧音も付き合ってくれ。外食しよう。」

「妹紅…?」今から外食は、少し速い気がするが、と思う慧音だったが、すぐに「ああ」と思い至る。しかし、再び慧音は難しい顔をした。

 

「いや…いいのか?相手は妖怪だぞ…?しかも、どんな妖怪が来るのか分かったものじゃない。」

「大丈夫大丈夫、私達が入れば下衆な妖怪は入ってこないさ。それに言ったろ?こういう時は開き直ったほうがいい。どこかの魔法使いみたいにな。明香、少し歩くが、いいか?」

 

 慧音の有無をいわさず、明香に顔を向ける妹紅。明香は、いきなりのことに戸惑うも、

 

「え…ええ、画材は持ってきてますし、お金もあります。」

「よし、じゃあ行こう、いい屋台があるんだ。」

 

 妹紅が笑顔で外に出る。慧音は「…仕方ない」と困ったような溜息をつくと、明香の方に手を差し出す。

 明香はその手をとって立ち上がる。

 

「…ああ、そうだな。明香、ついでのことだ、その屋台の店主を絵に描いておいてくれ。」

「え…店主を?」

「ああ、今からいくのは、妖怪が店主をしていてな…恐らく、阿求殿は実際に合っていないだろうから、丁度いい。」

「妖怪の、お店ですか…。」

 

 妖怪。今話しているのは妖怪。そして、私は妖怪の屋台に行く。

-…確かに、私は妖怪と多く過ごしているな。

 確かに、明香の行動は本来、危険極まりないことである。人里の外に出るということは、人里の安全の保証は消え、いつ妖怪に喰われても文句は言えないということなのだから。

-まあ、これで仲良くはなれたんだし、いいか。

 明香は内心苦笑しながら、二人と一緒に歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今宵の月はまんるで~、今日の鰻もまんまるで~♪」

 

 そういってごきげんに自分が考えだした歌を歌っているのは、この移動式屋台、『夜雀庵』の経営者、歌で人を狂わせる程度の能力、もう歌しか聞こえない-歌う夜雀、ミスティア・ローレライである。

 

「お、良かった、誰もいないな。」

「あ、いらっしゃい!今日はいい鰻がとれたんだよ、ナイスタイミング!」

 

 妹紅は常連である、いつもの通り、席の端へと腰を下ろす。

 そこに続いて、慧音と、さらに明香が腰掛けた。

 

「そうか、いい時に連れてくることが出来たな。」

「あ、寺子屋の先生も、いらっしゃい!」

 

 と、ここでミスティアは、慧音の隣にいる明香に気がついた。

 

「おや、ご新規さん?人間みたいだね。」

「ああ、人里で絵描き屋を経営している、明香だ。」

「よ、よろしくおねがいします、えっと…。」

「ミスティア、ミスティア・ローレライ。よろしく、ご新規さん!」

 

 つまった明香に、にこやかに営業スマイルを向けるミスティア。

 

「さあ、今日はどれがいい?」

「そうだな、それじゃあ鰻の…蒲焼きがいいや。」

「あ、私もそれがいい。明香も、それでいいか?」

「は、はいっ。」

「はい、蒲焼き3つ、承りました!」

 

 妹紅から順に注文をしていく。ミスティアは3人に酒を渡すと、鼻歌を歌いながら、仕立てていた鰻にタレを付けて、金網にのせる。

 すぐに耳に焼けるいい音が響き、徐々に屋台いっぱいに蒲焼きの香りが立ち始める。

 

「うわあ…。」

「あらあら、いい匂いね~。」

 

 その香りに思わず声を上げた明香の隣に、別の客が座った。

 

「ひっ…!?」

「あら、大丈夫よ、もう食べようとしないわ~。」

 

 その客にミスティアは怯えるが、その女性はにっこりと微笑み、蒲焼き、と注文をした。

 ミスティアもお客に失礼をしてはならないと、は、はいと言って、幽々子にもお酒を渡した。

 明香はその女性を少し見上げる形となる。

 水色の服、ピンクの髪、そしてまた水色の、独特な帽子。そして、彼女の周りには数匹、小さな幽霊が飛び回っている。

 冥界の管理者、死を操る程度の能力、優雅に咲かせ、黒染めの桜-天衣無縫の亡霊、西行寺(さいぎょうじ) 幽々子(ゆゆこ)である。

 

「冥界の管理者が、珍しいね。どうした、散歩かい?」

「ええ、ちょっと夜の散歩にね~、そしたら、こんな可愛いお客に出会えたの、良かったわ~。」

「ふぇ。う…。」

 

 妹紅の言葉に答えつつ幽々子に頭を撫でられた可愛い客-明香は、少し縮こまりながらも、少し恥ずかしそうに頬を染めた。

 

「また庭師から逃げてきたんだろう?全く…庭師はまた心配しているぞ。」

「仕方ないじゃないの~、妖夢の言葉に従ってたら、絶対に一人でゆっくり出来ないもの~。」

「はは、まあそうだな。妖夢(あいつ)はお前を今必死に探しているだろうよ、多分顔真っ赤にして怒ってるさ。」

「そうそう、あの子、硬いのよね~。」

 

 慧音が呆れ、妹紅が同意し、幽々子もコロコロと笑う。

 こうやって、この夜雀庵に複数人が集まると、決まったように愚痴が漏れてしまう。それほど、ここは妖怪たちにとって安心できる場所なのだろう。

 

「あ、そうだ…。」

 

 そのなかで仲間はずれを感じた明香はささっと画材を取り出すと、鼻歌は止まったが、せっせと蒲焼きを準備しているミスティアを見ながら、大まかな目安-アタリをとりはじめた。

 

「あら~、お絵かきかしら?」

「いや、この子は稗田家から正式な依頼を受けている絵描き屋だよ。」

「…あ、はじめまして、絵栄明香といいます。」

「あらあら、頑張るのね~。私は西行寺幽々子よ、よろしくね~。」

「ふぇ?何、私を描くの?いいよ、どんどん描いちゃって!」

 

 こちらを見ながら絵を描いている明香に気がついたのか、ミスティアは額に滲んだ汗を拭いながら、目を輝かせた。

 

「どうせなら、可愛く、いや、女将らしくかっこ良く…かっこ可愛く描いて!」

「おいおい、どんな風だよ。」

「すみません、まずは幻想郷縁起に載せる絵を描かないと…。」

「あら…それじゃ、その後、もう一枚描いてくれない?それで、貴女のお題-いえ、気に入ったら、3人のお代を無しにしてあげる!」

「何、それは本当か。明香、頼むぞ、私達の夕食代はお前にかかっている。」

「慧音さん、そんな現金な…。」

「あらあら、賑やかでいいわね~。夜雀さん、お酒をまた貰えるかしら?」

「は、はい!」

 

 こうして、絵描き屋が入った、夜雀庵の夜は更けていく-




地の文を増やしたい今日この頃
もう少し地の文が増えれば、もう少しわかりやすくなると思います‥。

もう少し追加したかったのですが、文字数が安定しないとどうだろうと思い断念。今回は4-4画までいきたいなあ。


さて、次回、4-2画、『ようこそ冥界へ』




-次はあなたを描きましょう。
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