人里の絵描き屋 ‐あなたを描きます‐   作:破片

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第2-3画 見出された光

「ま、魔理沙!?」

 

 いきなり彗星の如く突進してきた魔理沙を、霊夢は慌ててよける。

 そして、魔理沙は勢いを止めず、そのまま慧音に向かって突進していく。

 

「っ…!」

 

 慧音はそれを見きると、擦るように避けた-グレイズだ。

 魔理沙はそれを予想していたようで、慧音がグレイズした瞬間に素早くスペルを終了させ、隙を最小限に抑えた。

 

「あんた、どうしてここに?」

「その話はあとだ、まずは向こうの慧音を片付けるぜ!」

 

 霊夢の問に魔理沙は楽しそうな表情で、スペルカードを構えた。

 

「天儀『オーレリーズユニバース』!」

 

 すると、魔理沙の周りに6つの衛星ビットが配置された。

 さらにそこから、大量の星弾が放たれていった。

 しかし、その星弾は消されてしまうようで、慧音は弾幕を放ち星弾を相殺していく。

 

「まだまだぁ!」

 

 次に魔理沙は、衛星ビットから一本ずつ、計6本のレーザーを各方向に放ち始めた。

 しかし、これも慧音には当たらず、どころかレーザーの間隔が広いので、慧音は一気に差を詰めていく。

 が、魔理沙はそれを狙っていたようで、ゆっくりと、徐々に早くビットンを回転させ始めた。

 慧音はそれをいち早く察知して、素早く上へと移動する。

 

「……霊符『夢想妙珠』

 

 しかし、霊夢はそのさらに上空から、8個の光球を慧音に向かって放った。

 慧音はそれは予想外だったのか、腕でかばってその光球を受けてしまった。

 

「儀符『オーレリーズサン』…行けぇ!」

 

 その隙を見逃さず、魔理沙は4つの衛星ビットを新たに召喚し、それを回転させて慧音に放つ。が、そのビットンは慧音が放った大弾に消されてしまった。

 

「っ、魔理沙、後ろ!」

 

 霊夢が叫び、魔理沙が後ろを振り向くと、すぐそこまで弾幕が迫っていた。-慧音のスペルカード、『無何有浄化(むかうじょうか)』である。

 

「おっとぉ!」

 

 魔理沙はそれを素早く避ける。-まるで、この戦いを楽しんでいるように。

 

「全く、何やってんのよ」

 

 そう言いながら魔理沙に近づいた霊夢も、また笑っていた。 

 魔理沙が見方についたための余裕か、それとも-

 

「へへ、さあ、そろそろ遊びは終わりにしようぜ!」

「そうね…もう十分暴れたでしょ。終わらせてあげる。」

 

 そう言って、魔理沙はミニ八卦炉を、霊夢はお祓い棒を慧音に向かって突きつけた。慧音は再び無何有浄化を発動させる。

 

「スペルカード、無題『空を飛ぶ不思議な巫女』!」

 

 霊夢はスペルカードを発動させ、目を閉じ、周囲に陰陽玉を8つ展開。さらにその周りをお祓い棒がぐるぐる回り始める。

 そして、陰陽玉と霊夢本人から、赤、蒼、赤、紫の御札がそれぞれ発射された。

 それらの弾幕が、無何有浄化の弾幕を次々に相殺していく。

 

 魔理沙は-ミニ八卦炉に魔力をためていた。そして、両手を思いっきり広げる-八卦炉を持っている方だけでなく、空いている手の方も光っている。

 そして-

 

「明香ぁ!よく見ておくんだぜ!」

 

 3人で激しく放たれる弾幕を呆然と眺めていた明香に向かって、魔理沙は大声で叫ぶ。

 

「弾幕は…パワーだぜ! 恋心『ダブルスパーク』!」

 

 そして、二本の光り輝く光線が、慧音を飲み込み、夜の人里の空を彩るのだった-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さて、話を聞こうかしら?」

 

 先程激しい戦闘があったほぼ真下-慧音の小屋で、霊夢は、気を失っている慧音の隣で明香に事情を聞いていた。

 

「ええっと…。」

 

 一体どこから話したらいいのか。明香はそれに悩んだが-持ってきた絵の中の一枚を見せた。

 

「……これは…。」

 

 霊夢はそれを見つめ、そのあと、気を失っている慧音を見た。

 

「…成る程、そういうことね…分かったわ。」

 

 そう言って霊夢は一人で納得すると、立ち上がって、スタスタと玄関に向かって歩き始めた。

 魔理沙はそれを慌てて追いかける。

 

「お、おい、霊夢?」

「後は私じゃどうにもならないわよ。ああ、後-」

 

 そう言って霊夢は立ち止まり、振り向いて、明香を軽く睨むように見つめ、

 

「…あんた、本当に人間?」

「へ…?は、はい。そうですけど…。」

「…そう。そうよね。ほら、あんたもさっさと帰りなさい。」

 

 霊夢はそして、神社に向かって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

「…確かに明香(あの子)は妖怪じゃないわ。妖気は一切感じられない。かと言って、魔力も感じられない。絵にも…。」

 

-いや、明香の絵には何か力がある。しかし、霊夢は絵から放たれる力は何の力何かはわからなかった。

 

 

 

 

「いやー…ああ、明香、どうだった?私達の戦い(弾幕ごっこ)は。」

「え、は、はい…。…魔理沙さん、楽しそうでした。とっても。」

 

 魔理沙が最後に放った2つの閃光。それは、明香の目には、流れる2つの天の川に見えた。それはとても明るく-まるで、魔理沙そのものを表しているように。

 明香の言葉に、魔理沙は照れたように笑い、

 

「ああ、確かに、弾幕ごっこは楽しいからな!まさか慧音がこんなことになってるとは思わなかったけどな。」 

「そ、そうですね……」

 

 明香は今さら恐怖が蘇ってきたようで、手先が震え始めているのに気がついた。

 

「ああ…ところで、その絵、持ってきて、どうするつもりだったんだ?」

「あ、いやー…あはは…」

 

 魔理沙の質問に、明香は笑ってごまかした。

 

「…?ああ、そうだ、私も一つ、聞いておきたいことがあったぜ。」

 

 魔理沙はそれ以上は言及せず、明香に新たに質問をした。

 

「お前、本当に絵描き屋だよな?ただの。」

「ほえ?」

 

 魔理沙の問に明香は思わずきょとんと魔理沙を見つめていた。

 

「やだなあ、魔理沙さん、当たり前じゃないですか。」

 

 明香はそう笑うと、魔理沙もそれに釣られて笑う。

 

「そ、そうだよな、悪かったぜ、変な質問して。」

 

 

 

 

 

 

「…ただの絵描き屋…だといいけどな」

 

-本当にそうなのだろうか。あの絵…そして、私が依頼して描いてもらった夜空…

 

「…まさかな…。」

 

 魔理沙はそう呟くと、魔法の森に向かって、流れ星のように夜空を飛翔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-朝。

 

「…そうか、そんなことが…。」

 

 魔理沙を見送ったあと、自分も帰った明香が慧音の家に行くと、霊夢と慧音が話していた。

 

「そう。全く、迷惑だったわ。…あら、きたわよ、被害者が。」

「え、いや、被害者なんて」

 

 いきなり霊夢に話を振られ、慌てて明香は両手を振って否定する。

 

「…すまなかったな…迷惑をかけた…。」

 

 慧音はそれに構わず、明香に向かって深く謝罪の意を表した。

 

「…じゃ、後は頼むわよ」

 

 そう言って霊夢はあっさり飛んで行く。

 霊夢に何かを頼まれたわけでもないのだが、自分から首を突っ込んだのだ、自分が納得するまでしようではないか、明香はそう思っていた。

 

「…それで、明香、君は何をしに…いや、悪いな、上がってくれ。」

 

 その言葉に明香は頷く。

 

 

 

 

 

 

「…これを見て下さい。」

 

 そう言って、明香は一枚の絵を慧音に見せた。

 慧音はその絵を見た途端、驚いたように目を見開いた。

 

「…これは……。」

 

 明香は黙って頷き、

 

「…これは貴女です。これも…。」

 

 さらに、明香は昨日書き上げた絵を慧音に見せる。

 

「……こっちも…私…。」

 

 もう一枚の絵には、黒い人影が、ハクタクの時の慧音の服装を着ている。周りの鎖は、一枚目の時とは違い、解けている-いや、壊されていた。

 しかし、その黒い人影は、目の当たりから赤い筋が通っている。

 さらに、一枚目で鎖で縛り付けていた人影は消え、赤い背景に、黒い血痕が付いている。

 

 

 慧音はこの二枚の絵を暫く見つめていると、力なく崩れ落ちた。

 

「…そうだ…これは私だ…そうか…私は縛られていたのか……そして…私は…。」

 

-昨夜の暴走。それは、これまで耐えていたストレスなどが爆発したものだろう。

 

「……妖怪からは時に裏切り者などと罵倒され…一部の人間からは怪異的な目で見られ……そして…そうか…子供に当たっていたのかも知れないな…。」

「………。」

 

 明香は何も言わない。慧音は顔を両手で覆い、

 

「…私は…ダメだな…子供に当たるとは……。」

「本当に…貴女はダメでしょうか。」

「…何だと…?」

 

 明香はまっすぐ慧音を見つめると-

 

「…これは私が勝手に入ってきたので、無視したり、批判したりしてもらっても構いません。本当に慧音さんはダメなんでしょうか。今まで何でも一人で抱え込んで、ここまでやってきました。妖怪から罵倒され、人間からは恐れられ…そうやって鎖で縛ったりしていても-」

 

 そして、明香は一枚目の絵を慧音に見せ-

 

「-貴女は、決して泣かなかった。」

「…!」

 

 さらに、二枚目の絵を見せながら、

 

「それどころか、貴女は、縛った鎖を解き放ち、暴れてる時に……泣いていた。どれだけ憎まれていても-傷つけるのは許さなかった。」

「………。」

「…私は、そんな貴女が、悪い人には見えません。貴女は子供を傷つけてしまったと言った。でも、嫌われてるなら、どうして子どもたちは貴女のところにきてるのでしょう?貴女の授業であんなに無防備に寝ていられるのでしょう?何故-貴女にあんな無邪気な笑顔をみせられるのでしょう?それは-」

 

 と、そこで一度明香は言葉を切り、微笑んだ。

 

「…いえ、やめておきましょう。それは、実感して、本当に価値のあるものに変わります。」

「…ありがとう……。」

 

 そう言った慧音の声は、震えていた。

-でも、と慧音は涙をためた顔を上げ、

 

「…努力を認めている人は…いるのだろうか…。」

 

 すると、明香は微笑み、

 

「…貴女は、私が最初、経緯を話した時、花屋の店主、で通じましたよね?」

「……!…ああ…。」

「…その方が…言ってましたよ、悪い妖怪には見えないって……。」

 

 慧音はその言葉を聞いて、静かに微笑んだ。そして、急に真剣な表情に戻った。

 

「…私は……これから…もう少し、外に出ようと思う。考えても仕方ないんだ…行動しなければ…」

「…ええ。」

 

 その言葉に明香は、魔理沙の時のようなほほ笑みを浮かべた。

-と、明香はいきなり画材を取り出しそうとした-が、すぐにやめてしまった。

 

「…?明香、どうした?」

「…あと、これは個人的な我儘ですけど-」

「我儘…?」

 

 

 明香は頷き-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-貴女の、幸せな姿を描かせて下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「-では、私はこれで。」

 

 数日後、慧音は、寺子屋の生徒の家に来ていた。どうやら、家庭訪問のようだ。

 

「はい、これからもよろしくおねがいします、先生。」

「いえ、こちらこそ。ちゃんと宿題をやってくるんだぞ。」

 

 はーい、と子供の返事を聞いた慧音は、親に礼をして、寺子屋の道を歩いて行く。

 

「あら、先生、こんにちは。」

 

 その声がした方を向くと、花屋の店主が一礼をして、微笑んでいた。

 慧音は挨拶を返す。

 

「ええ、こんにちは。」

「今日はいい天気ですね。」

「そうですね…ただ、梅雨も近いのではないでしょうか。」

「ええ…花達にとっては雨はいいものですけどね。」

「私達にはねえ…。」

 

 そして、ふたりとも苦笑しているところに、こんにちは、と声がかかった。

 

「あら、明香ちゃん。こんにちは。」

「おや、明香か。」

 

 それは明香だった。今日は画材を背負っておらず、何かを買っているようだ。

 

「あら、何かの準備?」

「ええ、梅雨が来そうなので、湿気とか、そういうのに気をつけないと。」

「そうね…大変ねぇ、絵描き屋は。」

「筆乾かすのとかが……特に」

 

 そう言って明香は苦笑している。

 

「そうだ、明香、あの絵はどうしたんだ?」

 

 慧音が言っているのは、慧音に見せた、あの人影の絵のことである。

 

「ああ、捨てましたよ。」

「え、捨てたのか…!?」

「いやいや、あれは持っててもしょうがないですし、ちょっと嫌な予感がするので売るわけにもいかなかったんですよ。」

「そうか…。」

 

 すると、明香は微笑み、

 

「慧音さんの絵なら、もう一枚書きますよ、ですから-寺子屋にちょっと、授業の様子を見せてもらっていいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

-その2日後。

 

「…お代いらないっていったのに。しかも沢山…。」

 

 

 

 

 

 

-そして、慧音の家には、ハクタクの姿で、子どもとともに笑顔でいる、慧音の絵が飾られていた。




…正直二話に分けたら中途半端になると思ったので、一話にまとめてしまいました。
もう少し細部まで書けたかなと考えています。
最後に少し詰め込み過ぎたような気がしてます。

というわけで第2画、上白沢慧音編、終了です。

そして私のネタがどんどんなくなっていきます…
私に絵心があれば明香が描いた絵を再現できるんですが…ごめんなさい
次からは4話構成にできたらいいなという願望を

‥えっと、次回です

第3-1画 『導く焔、幻想郷縁起』






-次はあなたを描きましょう。
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