「ま、魔理沙!?」
いきなり彗星の如く突進してきた魔理沙を、霊夢は慌ててよける。
そして、魔理沙は勢いを止めず、そのまま慧音に向かって突進していく。
「っ…!」
慧音はそれを見きると、擦るように避けた-グレイズだ。
魔理沙はそれを予想していたようで、慧音がグレイズした瞬間に素早くスペルを終了させ、隙を最小限に抑えた。
「あんた、どうしてここに?」
「その話はあとだ、まずは向こうの慧音を片付けるぜ!」
霊夢の問に魔理沙は楽しそうな表情で、スペルカードを構えた。
「天儀『オーレリーズユニバース』!」
すると、魔理沙の周りに6つの衛星ビットが配置された。
さらにそこから、大量の星弾が放たれていった。
しかし、その星弾は消されてしまうようで、慧音は弾幕を放ち星弾を相殺していく。
「まだまだぁ!」
次に魔理沙は、衛星ビットから一本ずつ、計6本のレーザーを各方向に放ち始めた。
しかし、これも慧音には当たらず、どころかレーザーの間隔が広いので、慧音は一気に差を詰めていく。
が、魔理沙はそれを狙っていたようで、ゆっくりと、徐々に早くビットンを回転させ始めた。
慧音はそれをいち早く察知して、素早く上へと移動する。
「……霊符『夢想妙珠』
しかし、霊夢はそのさらに上空から、8個の光球を慧音に向かって放った。
慧音はそれは予想外だったのか、腕でかばってその光球を受けてしまった。
「儀符『オーレリーズサン』…行けぇ!」
その隙を見逃さず、魔理沙は4つの衛星ビットを新たに召喚し、それを回転させて慧音に放つ。が、そのビットンは慧音が放った大弾に消されてしまった。
「っ、魔理沙、後ろ!」
霊夢が叫び、魔理沙が後ろを振り向くと、すぐそこまで弾幕が迫っていた。-慧音のスペルカード、『
「おっとぉ!」
魔理沙はそれを素早く避ける。-まるで、この戦いを楽しんでいるように。
「全く、何やってんのよ」
そう言いながら魔理沙に近づいた霊夢も、また笑っていた。
魔理沙が見方についたための余裕か、それとも-
「へへ、さあ、そろそろ遊びは終わりにしようぜ!」
「そうね…もう十分暴れたでしょ。終わらせてあげる。」
そう言って、魔理沙はミニ八卦炉を、霊夢はお祓い棒を慧音に向かって突きつけた。慧音は再び無何有浄化を発動させる。
「スペルカード、無題『空を飛ぶ不思議な巫女』!」
霊夢はスペルカードを発動させ、目を閉じ、周囲に陰陽玉を8つ展開。さらにその周りをお祓い棒がぐるぐる回り始める。
そして、陰陽玉と霊夢本人から、赤、蒼、赤、紫の御札がそれぞれ発射された。
それらの弾幕が、無何有浄化の弾幕を次々に相殺していく。
魔理沙は-ミニ八卦炉に魔力をためていた。そして、両手を思いっきり広げる-八卦炉を持っている方だけでなく、空いている手の方も光っている。
そして-
「明香ぁ!よく見ておくんだぜ!」
3人で激しく放たれる弾幕を呆然と眺めていた明香に向かって、魔理沙は大声で叫ぶ。
「弾幕は…パワーだぜ! 恋心『ダブルスパーク』!」
そして、二本の光り輝く光線が、慧音を飲み込み、夜の人里の空を彩るのだった-
「…さて、話を聞こうかしら?」
先程激しい戦闘があったほぼ真下-慧音の小屋で、霊夢は、気を失っている慧音の隣で明香に事情を聞いていた。
「ええっと…。」
一体どこから話したらいいのか。明香はそれに悩んだが-持ってきた絵の中の一枚を見せた。
「……これは…。」
霊夢はそれを見つめ、そのあと、気を失っている慧音を見た。
「…成る程、そういうことね…分かったわ。」
そう言って霊夢は一人で納得すると、立ち上がって、スタスタと玄関に向かって歩き始めた。
魔理沙はそれを慌てて追いかける。
「お、おい、霊夢?」
「後は私じゃどうにもならないわよ。ああ、後-」
そう言って霊夢は立ち止まり、振り向いて、明香を軽く睨むように見つめ、
「…あんた、本当に人間?」
「へ…?は、はい。そうですけど…。」
「…そう。そうよね。ほら、あんたもさっさと帰りなさい。」
霊夢はそして、神社に向かって飛んでいった。
「…確かに
-いや、明香の絵には何か力がある。しかし、霊夢は絵から放たれる力は何の力何かはわからなかった。
「いやー…ああ、明香、どうだった?私達の
「え、は、はい…。…魔理沙さん、楽しそうでした。とっても。」
魔理沙が最後に放った2つの閃光。それは、明香の目には、流れる2つの天の川に見えた。それはとても明るく-まるで、魔理沙そのものを表しているように。
明香の言葉に、魔理沙は照れたように笑い、
「ああ、確かに、弾幕ごっこは楽しいからな!まさか慧音がこんなことになってるとは思わなかったけどな。」
「そ、そうですね……」
明香は今さら恐怖が蘇ってきたようで、手先が震え始めているのに気がついた。
「ああ…ところで、その絵、持ってきて、どうするつもりだったんだ?」
「あ、いやー…あはは…」
魔理沙の質問に、明香は笑ってごまかした。
「…?ああ、そうだ、私も一つ、聞いておきたいことがあったぜ。」
魔理沙はそれ以上は言及せず、明香に新たに質問をした。
「お前、本当に絵描き屋だよな?ただの。」
「ほえ?」
魔理沙の問に明香は思わずきょとんと魔理沙を見つめていた。
「やだなあ、魔理沙さん、当たり前じゃないですか。」
明香はそう笑うと、魔理沙もそれに釣られて笑う。
「そ、そうだよな、悪かったぜ、変な質問して。」
「…ただの絵描き屋…だといいけどな」
-本当にそうなのだろうか。あの絵…そして、私が依頼して描いてもらった夜空…
「…まさかな…。」
魔理沙はそう呟くと、魔法の森に向かって、流れ星のように夜空を飛翔した。
-朝。
「…そうか、そんなことが…。」
魔理沙を見送ったあと、自分も帰った明香が慧音の家に行くと、霊夢と慧音が話していた。
「そう。全く、迷惑だったわ。…あら、きたわよ、被害者が。」
「え、いや、被害者なんて」
いきなり霊夢に話を振られ、慌てて明香は両手を振って否定する。
「…すまなかったな…迷惑をかけた…。」
慧音はそれに構わず、明香に向かって深く謝罪の意を表した。
「…じゃ、後は頼むわよ」
そう言って霊夢はあっさり飛んで行く。
霊夢に何かを頼まれたわけでもないのだが、自分から首を突っ込んだのだ、自分が納得するまでしようではないか、明香はそう思っていた。
「…それで、明香、君は何をしに…いや、悪いな、上がってくれ。」
その言葉に明香は頷く。
「…これを見て下さい。」
そう言って、明香は一枚の絵を慧音に見せた。
慧音はその絵を見た途端、驚いたように目を見開いた。
「…これは……。」
明香は黙って頷き、
「…これは貴女です。これも…。」
さらに、明香は昨日書き上げた絵を慧音に見せる。
「……こっちも…私…。」
もう一枚の絵には、黒い人影が、ハクタクの時の慧音の服装を着ている。周りの鎖は、一枚目の時とは違い、解けている-いや、壊されていた。
しかし、その黒い人影は、目の当たりから赤い筋が通っている。
さらに、一枚目で鎖で縛り付けていた人影は消え、赤い背景に、黒い血痕が付いている。
慧音はこの二枚の絵を暫く見つめていると、力なく崩れ落ちた。
「…そうだ…これは私だ…そうか…私は縛られていたのか……そして…私は…。」
-昨夜の暴走。それは、これまで耐えていたストレスなどが爆発したものだろう。
「……妖怪からは時に裏切り者などと罵倒され…一部の人間からは怪異的な目で見られ……そして…そうか…子供に当たっていたのかも知れないな…。」
「………。」
明香は何も言わない。慧音は顔を両手で覆い、
「…私は…ダメだな…子供に当たるとは……。」
「本当に…貴女はダメでしょうか。」
「…何だと…?」
明香はまっすぐ慧音を見つめると-
「…これは私が勝手に入ってきたので、無視したり、批判したりしてもらっても構いません。本当に慧音さんはダメなんでしょうか。今まで何でも一人で抱え込んで、ここまでやってきました。妖怪から罵倒され、人間からは恐れられ…そうやって鎖で縛ったりしていても-」
そして、明香は一枚目の絵を慧音に見せ-
「-貴女は、決して泣かなかった。」
「…!」
さらに、二枚目の絵を見せながら、
「それどころか、貴女は、縛った鎖を解き放ち、暴れてる時に……泣いていた。どれだけ憎まれていても-傷つけるのは許さなかった。」
「………。」
「…私は、そんな貴女が、悪い人には見えません。貴女は子供を傷つけてしまったと言った。でも、嫌われてるなら、どうして子どもたちは貴女のところにきてるのでしょう?貴女の授業であんなに無防備に寝ていられるのでしょう?何故-貴女にあんな無邪気な笑顔をみせられるのでしょう?それは-」
と、そこで一度明香は言葉を切り、微笑んだ。
「…いえ、やめておきましょう。それは、実感して、本当に価値のあるものに変わります。」
「…ありがとう……。」
そう言った慧音の声は、震えていた。
-でも、と慧音は涙をためた顔を上げ、
「…努力を認めている人は…いるのだろうか…。」
すると、明香は微笑み、
「…貴女は、私が最初、経緯を話した時、花屋の店主、で通じましたよね?」
「……!…ああ…。」
「…その方が…言ってましたよ、悪い妖怪には見えないって……。」
慧音はその言葉を聞いて、静かに微笑んだ。そして、急に真剣な表情に戻った。
「…私は……これから…もう少し、外に出ようと思う。考えても仕方ないんだ…行動しなければ…」
「…ええ。」
その言葉に明香は、魔理沙の時のようなほほ笑みを浮かべた。
-と、明香はいきなり画材を取り出しそうとした-が、すぐにやめてしまった。
「…?明香、どうした?」
「…あと、これは個人的な我儘ですけど-」
「我儘…?」
明香は頷き-
-貴女の、幸せな姿を描かせて下さい。
「-では、私はこれで。」
数日後、慧音は、寺子屋の生徒の家に来ていた。どうやら、家庭訪問のようだ。
「はい、これからもよろしくおねがいします、先生。」
「いえ、こちらこそ。ちゃんと宿題をやってくるんだぞ。」
はーい、と子供の返事を聞いた慧音は、親に礼をして、寺子屋の道を歩いて行く。
「あら、先生、こんにちは。」
その声がした方を向くと、花屋の店主が一礼をして、微笑んでいた。
慧音は挨拶を返す。
「ええ、こんにちは。」
「今日はいい天気ですね。」
「そうですね…ただ、梅雨も近いのではないでしょうか。」
「ええ…花達にとっては雨はいいものですけどね。」
「私達にはねえ…。」
そして、ふたりとも苦笑しているところに、こんにちは、と声がかかった。
「あら、明香ちゃん。こんにちは。」
「おや、明香か。」
それは明香だった。今日は画材を背負っておらず、何かを買っているようだ。
「あら、何かの準備?」
「ええ、梅雨が来そうなので、湿気とか、そういうのに気をつけないと。」
「そうね…大変ねぇ、絵描き屋は。」
「筆乾かすのとかが……特に」
そう言って明香は苦笑している。
「そうだ、明香、あの絵はどうしたんだ?」
慧音が言っているのは、慧音に見せた、あの人影の絵のことである。
「ああ、捨てましたよ。」
「え、捨てたのか…!?」
「いやいや、あれは持っててもしょうがないですし、ちょっと嫌な予感がするので売るわけにもいかなかったんですよ。」
「そうか…。」
すると、明香は微笑み、
「慧音さんの絵なら、もう一枚書きますよ、ですから-寺子屋にちょっと、授業の様子を見せてもらっていいですか?」
-その2日後。
「…お代いらないっていったのに。しかも沢山…。」
-そして、慧音の家には、ハクタクの姿で、子どもとともに笑顔でいる、慧音の絵が飾られていた。
…正直二話に分けたら中途半端になると思ったので、一話にまとめてしまいました。
もう少し細部まで書けたかなと考えています。
最後に少し詰め込み過ぎたような気がしてます。
というわけで第2画、上白沢慧音編、終了です。
そして私のネタがどんどんなくなっていきます…
私に絵心があれば明香が描いた絵を再現できるんですが…ごめんなさい
次からは4話構成にできたらいいなという願望を
‥えっと、次回です
第3-1画 『導く焔、幻想郷縁起』
-次はあなたを描きましょう。