人里の絵描き屋 ‐あなたを描きます‐   作:破片

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2000字前後だったので書き足したら、いつの間にか4000字いっていました(汗)


第3-1画 導く焔、幻想郷縁起

-幻想郷の梅雨、終わりごろ。

 

「あー…やっちゃったか…」

 

 そう言いながら明香は乾かしていた筆を見る。

 主に被害は無いように見えたが、端っこの一本、どうやらその筆がカビてしまったようだ。

 

「…うーん…といっても雨が降ってるから買いには行けないわねー…。」

 

 はあ、と明香は溜息を一つつき、椅子の背もたれによりかかり、天井を見た。

 

「小雨だったら買いに行こうかしら…。」

 

 そう言って明香は玄関から外を見た。と-一人の少女が歩いているのが見えた。

 

「…?誰かしら…人里の人には見えないけど…。妖怪…?」

 

 その見た目はゴシックロリィタ調の服に、緑色の長い髪を胸の前で赤いリボンを使って結んでいる。

-さらに、明香には、一瞬、どす黒い靄が彼女の周りをまとっているように見えた。

 

「あれは…?」

 

 幸い、人里は小雨である。

 明香は乾かしている途中の傘と、ちょっとした画材のセットを取り出すと、その少女の後をついていくことに決めた。

 

「……。」

 

 明香は気付かれないようにそっと後をついていくが、さっきのような黒い靄は見えない。

 

「…見間違いだったかしら…?」 

 

 そう呟きつつも、隠れて覗く場所を変えようとしたとき-

-小雨が急に土砂降りへと変わった。

 

「わっ‥!?」

 

 明香は慌てて傘を差す。しかし、その少女は土砂降りになったことを気にすることはなく、先程と同じペースで歩き続ける。

 

「…妖怪って…傘、差さないのかしら…?」

 

 まあ、その事を気にしてはいけない。明香は再び少女を尾行することに集中する、しようとした時、明香は気がついた。

 

「あ、あれ、画材がない!」

 

 慌てて鞄の中を見るが、なんと鞄の底に穴が開いていた。その穴から、泥にまみれた画材が見えた。

 

「なんで!?」

 

 この鞄は梅雨前に買ったものであり、布が薄くなっている部分は何一つ見当たらなかったのである。

 

「ああ…画材が…。」

 

 -落としてしまった物は仕方がない。服が汚れないように、鞄の役割を果たさなくなった入れ物に画材をもう一度入れ、その入れ物を脇に抱えた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ、出口。」

 

 しばらくした後、少女はそう呟いて、竹林が見える方へと歩いて行く。

 バレているのか否か、少女の歩くスピードが早くなっている気がする。

 

「竹林…?」

 

 明香は人里からはあまり出ていない。いや、そもそも人里から出る人間が珍しいのだが。

 意を決すると、明香は竹林の中へ入っていき-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-迷った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えー…ここどこ…?筆はカビができるし、土砂降りだし、画材は泥まみれだし…。」

 

 あの少女は確かにまっすぐ進んでいたはずである。しかし、少女はいつの間にか姿を消しており、自分は一人で彷徨っていた。

 と、いきなり明香に悪寒が襲った。これは、寒気か、それとも不安、恐怖か-

 

「…いや、まだ行けるはず、とりあえずまっすぐすすんで…?」

 

-すると、明香の目には、一つの明かりが移った。

 その明かり-いや、炎か-は、まるで明香を導くように、ゆらりと移動を始めた。

 

「……?」

 

 明香は、何故か何かに操られたように何も考えられなくなり、その炎にふらふらとついていった-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「-か、明香!」

 

 誰かの声が聞こえ、明香はゆくっり目を開けると-

 

「あ、慧音さ-」

「ふんっ!」

「ぎゃあっ!?」

 

 仰向けに寝ている状態から、上から慧音の頭突きが明香に直撃した。

 明香はその痛みに頭を抑えて悶絶する。

 

「っー…」

「人里の外は危険だと言われているのは知ってるだろう、しかもよりによって迷いの竹林へと‥。」

「迷いの竹林…?」

「……明香、少しは人里の周りの事を知るといい。」

 

 慧音は溜息をついて、明香を呆れた目で見た。

 

「え、私、どうなってたんですか…?」

「迷いの竹林の前で倒れていた。」

 

 明香は外を見た。既に夜が深くなってしまっている。

 …確か、炎を見て、追いかけ始めてからの記憶が無い。

 

「…そ、そうなんですか…。」

「恐らく、お前は助けられたんだろうな。竹林の案内人に…。」

「竹林の案内人…?」

「ああ、私の知り合いだ。」

 

 そう言って慧音は窓から覗く空を見ながら、慧音は困ったように微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ま、これでいいだろ。」

 

 そう言って炎で導いた張本人-蓬莱の人の形-藤原 妹紅は、竹の隙間から人里を見ている。

 

「全く、何だ、普通後ろに行こうと思うはずだけどな。お前もお前だぞ、雛。」

「仕方ないじゃない、私はただ厄を集めに来ただけよ。梅雨の頃の厄はすごいからね。」

「私もあの後あの因幡の兎の悪戯にかかったじゃないか‥。」

 

 それも仕方ないわ、と首をすくめているのは、秘神流し雛-鍵山 雛である。

 

「あー、あと、お前もありがとな。あいつ、さらに前に進もうとしたからな…波長操れるって便利なんだな。」

 

 そういって妹紅が向き直ったのは、狂気の月の兎-鈴仙・優曇華院・イナバだ。

 

「あら、お礼を言うのね。」

「別に私が恨んでるのは輝夜だけだからな、周りを恨むような性格はしてないよ。ただ、因幡の兎にはちょっといらつくけどな。」

「…てゐには私からしっかり言っておくわ。」

「助かる。」

「…てゐの方が年上なのに?」

「それ言わないでよ、雛…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-一方、慧音の家に止まることになった明香は、慧音に経緯を話していた。

 

「-ふむ、奇抜な格好、緑色の髪を胸の前で束ねてる…。」

「あまりにも奇抜だったので…。」

 

 明香は苦笑いをしている。

 

「…そうだな…厄神に出会ったんだな。」

「厄神?」

「そう。厄を集める神だな。厄を集めているから、近寄ると不幸になるのだが…。」

 

 すると、明香は慌てて周りを見回す。-画材がない。

 

「え、あ、はい、画材もなくしたみたいですし、雨も強くなって、鞄も壊れて、画材が汚れて…。」

「…これは結構強い厄を受けたみたいだな…。」

 

 慧音は苦笑して、夜空を見上げる。雨は止んでおり、分厚い雲から、うっすらと月の光が見える。

 

「まあ、今日はゆっくり休みなさい。…明日、紹介してあげよう。」

「へっ?」

 

 いきなり紹介すると言われても、明香は何のことか分からない。

 

「丁度いい、君は絵を描けば、交換条件になるはずだ。」

「え?え?」

「紹介してあげるよ、幻想郷の記録者を-」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-後日。

 

「ほら、ここだよ。」

 

 慧音が連れてきたのは、明らかに広々した屋敷である。

 

「…屋敷…」

 

 明香は今までこのような屋敷に入った覚えはない。とても偉大な人なのだろうと、明香の背筋は無意識に伸びた。 

 

「どうぞこちらへ…。」

 

 使用人に導かれるままに、慧音と明香は屋敷の中へと歩を進めていく。

 二人が通されたのは、大広間であろう、何十畳の広さの部屋である。そこに座っていたのは-

 

「……お待ちしておりました。」

 

-稗田阿求だった。

 

「そちらが、慧音さんが仰っていた、絵描きの方でしょうか。」

「え、あ、は、はい、絵栄明香といいます」

 

 屋敷の雰囲気に緊張して、思わず噛んでしまった。

 

「…そうですか、慧音さん、すみませんが、席を外していただけないでしょうか?」

「ああ、そうだな…分かった。明香、というわけで、私は外にいるぞ。」

「え、あ、はい、分かりました。」

 

 

 

 

 

 

-気まずい。

 

 明香が最初に思ったのはこれである。

 使用人がお茶を出して、すぐに下がる。その後は沈黙しか無かった。

 

-と、沈黙を破ったのは、阿求だった。

 

「-聞きますが…絵描きとしては、どんな活動を?」

「へっ!?えっと…似顔絵を描いたり…看板の依頼だったり…あと、自分で絵本を描いたりしてます。」

 

 絵本という言葉に、阿求は驚いたような表情をした。

 

「あ、もしかしてこの本は…?」

 

 そう言って阿求は一冊の絵本を取り出す。それは、明香が鈴奈庵に売りに行った絵本そのものだった。

 

「え、はい、それ、私が描きました!」

「そうだったんですか…良かったです。」

「へっ…?」

 

 阿求は微笑むと、探してたんですよ、と独り言のように呟いた後、

 

「貴女なら…頼んでいいかもしれません。」

「え、な、何を…?」

「慧音さんからは、何も伺ってないんですか?」

「す、すみません、紹介すると言われただけなもので…。」

 

 その言葉に、阿求は溜息を一つつくと、一冊の書を取り出した。

 

「…?『幻想郷縁起』?」

「ええ、これは、私の一生の仕事です。幻想郷の妖怪達を記録して、時には異変を記録する…。」

「異変…?」

「あ、異変というものは…時々幻想郷にて起きる不可解な事件と言えばいいのでしょうか。」

「は、はあ…。」

 

 そして、阿求は幻想郷縁起を開くと、明香に見せるように置いた。

 

「…これは…絵?」

「はい、文章だけではわかりにくいので…私が直接見たものや、使用人や異変解決者たちから話を聞いたものを参考に書いています。」

 

 しかし、と阿求は困ったような表情を浮かべた後、

 

「私は体が弱く…話を聞いて描いたものには、虚偽がある可能性がとても高いと思われます。ですから、私は人々の絵を描いてくださる人を探していたのです。」

「…え、でも絵を描く人なら、他にも…。」

「それに、貴女は好奇心旺盛でしょう?」

「うっ…。」

 

 言われてみれば確かにそうである。絵描きというのは、根暗で引きこもりがちというイメージがあるのは明香も知っていた。

 

「だから、貴女に、実際の妖怪達を見て、描いて、私にそれを渡して欲しいのです。」

「…成る程…。」

 

 そうすれば自分は妖怪の姿を見ることができる。しかし、問題と言えば-

 

「あの、私、弾幕とか全く張れなくて、能力?っていうのもわからないんです…。」

「大丈夫です、普段は慧音さんが、時々変異解決者-霊夢さん、魔理沙さんなどに護衛してもらうように頼みますから。」

 

 それなら問題はなくなった。

 

「…分かりました、よろしくお願いします。」

「はい、よろしくお願いします。」

 

 そう言って二人は礼をする。すると、阿求が、あ、ちょっと、と手招きをする。

 

「はい?」

「…使用人がいない時は、阿求と呼び捨てにしてもらっていいですよ。こんな堅苦しいの、嫌でしょう?」

「え、まあ、そうですけど…。」

 

 すると、阿求はムッとして

 

「私がいいって言うからいいのよ、小鈴も同じようにしてるし。」

 

-そういった姿は、まさに歳相応の少女だった。

 

「…な、なら。よろしくね、阿求。」

「ええ、よろしく、明香。」

 

 

 こうして、明香に新たな依頼が舞い込んできたのだった。




本当は妹紅達の会話で終わらせるつもりでしたが…短かったので(汗)
こうして、明香は幻想郷を歩き始めます。
ようやくです(何
冬季休暇が終わったらまた遅くなるでしょうね…すみません

それでは皆さん、よいお年を。

次回、第3-2画、『風に背く焔』





-次はあなたを描きましょう。
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