Google先生流石です。
-迷いの竹林の、とある小屋の前。
「…さ、ここ。」
まだ、昼である。しかし、空は曇ってきたようで、竹林の視界は普段より悪くなっている。
明香はそんなことはお構い無しに、扉の前でこういった。
「-…妹紅さん。あなた…
-その言葉に、返事はない。鈴仙は、明香が一体何を言っているのか、理解ができていなかった。
蓬莱の薬-それは身体を完全に不老不死へと仕上げてしまう。誰もが一度は望むであろうその薬。しかし、一つ視点を変えれば、死にたくても死ねない-孤独と化す呪いの薬である。
それでいて、消えようとしている-
-そして、静かに扉が開いた。
「…どうした、いきなり。ふっ、私は死ねないんだ、そのくらい馬鹿でもわかるさ。どうやって消えようなんてするんだ?地面にでも潜ってしまうとでも?」
出てきて明香を見るなり、鋭い眼光の中で、明らかに馬鹿にしたように目の前の少女を見る。
しかし、その少女から出てきた言葉は-
「-あら、馬鹿はそちらじゃないかしら、私は貴女が死のうとしているなんて言ってませんよ?」
「ちょっ、えっ-!?」
聞いていた鈴仙も驚く、明香から出たのは、明らかに妹紅を挑発するかのような言葉。
「っ…!なんだ、お前は不死じゃないだろう?死にたくないならさっさと失せな。」
「何よ、そうやって突き放して、貴女は孤独に戻るんでしょう?ああ、素直じゃない。可愛いですね。」
「…そうか、お前が最初、竹林に入ってきた次点でおかしいやつだと思ったが、まさか
「本当は貴女が行きたいんでしょう?心配しなくても、そのうち逝きますよ、貴女はまた悔しがるでしょうね。」
明香も、妹紅と同じように皮肉を込めた目で睨み返しながら、二人の言い争いは続いていたが-
「…どうやら、本当に死にたいらしいな。」
ついに妹紅の堪忍袋の尾が切れ、背中から荒々しい炎の翼を生やした。
流石にこれはまずいと思い、鈴仙は間に割って入ろうと走りだす-が、
「…貴女は、私たちに嘘をついた。」
明香が真剣な眼差しで、ゆっくりと語り始めた。目の前の凶暴な不死鳥に、何も動じていないように。
妹紅は何も言わず、ただただ、今すぐに明香を殺さんと、構えた右手に炎を宿している。が、まだ放つ様子はない。
「…最期の言葉か、聞いておこう。」
そう言って、妹紅は構えを解いて、まっすぐ明香を見つめた。
-鈴仙だけは気がついた。明香が一言、嘘をついたといった時、妹紅の波長が、一瞬だけ揺らいだことに。
「…貴女は、私たちに、記録に残るのは死ぬ者たちが、忘れ去られないようにする、そういうことでしたね?」
妹紅の返事はやはりない。表情も一切変えていない。
「…最初、私たちはその言葉に頷いた。だけど、私は疑問が残っていた。何故なら、それが
鈴仙にしか分からない。今の妹紅は動揺している。波長が明らかに乱れてしまっているのだ。
「でも、本は貴女とは違って永遠ではない。記された本はいつか朽ちてしまうかもしれない、燃やされるかもしれない、捨てられるかもしれない。だったら少しなら本に記されてもいいと思う筈。それなら、貴女は本来、堂々と人里に入る。しかし、どうしても本に乗りたくはない、それなら、永遠に竹林で隠れるか。その二択を選んでおけばいい。」
鈴仙は、確かにその通りだな、とは思った。実際、妹紅は時々だが、人里の方に顔を出しているのを、薬を売りに来た時に鈴仙は目撃していた。
「でも、貴女が嫌いな-輝夜さんが言っていたそうです。貴女が死にたがっていると。そこで私は考えた。-いや、合点がいった。貴女はどうしてもあの本-幻想郷縁起
「-っ!?」
ついに、妹紅が明らかに動揺を見せた。それを知ってか知らずか、明香は話を続ける。
「理由は簡単、あれは、稗田家が代々的に受け継ぐ書物。稗田家が滅びでもしないかぎり、消えることはない。しかも、稗田家が書物を残すのは、当たり前のように人里の皆さんが知っている。恐らく稗田家が滅びでも、永遠に残る可能性は圧倒的に高い。」
と、ここで明香は一旦言葉を切って、妹紅を見る。先程、明香の目を見ていた妹紅は、僅かに視線をそらしてしまっている。
「ここで話を戻しましょう。…貴女は、永遠になりたくなかった。だから書物に記されてしまうのを恐れた。だったら、竹林でひっそりと暮らせばいい。しかし、貴女にはそれが出来なかった。理由は-慧音さん、ですね。」
「………。」
妹紅は視線を落とし、だまって目の前の絵描きの少女の話を聞いている。
「慧音さんに勿論このことを言ってしまったら駄目なのは明々白々。そこで貴女は、慧音さんが生きている、その間-その間だけ、己の存在を認めようと。だから人里に赴く。だけれど阿求のお願いにはのらない。自分が信用できる、最後の相手。その人を見届けるまで-己の存在は、そこまでなのだから。」
-いつだろう、あの人間に出会ったのは。
いつだろう、あの人間を信用したのは。
いつだろう。私が元人間だと告白すると、彼女は知っていたといったのは。
いつだろう。-あの妖怪が、人間だと嘘をついていたと話したのは。そして、私が知っていたと返したのは。
…いつだろう。…私が竹林の迷い人の捜索範囲を広げたのは。
…いつだろう。…私が定期的に人里に寄るようになったのは。
……いつだろう。私が彼女がいなくなるのを恐れだしたのは。
……そして、私が、消えることを決めたのは。
-いや、消えることははるか昔から決めていた。…雪の降る夜だったか。このまま迷いの竹林に入れば、道案内する人には人魂という体で私は忘れられ、ついに私は別の形で死ぬことができると思っていた。
最後に人里でも遠目から眺めておくか。私はそう思った。そこで出会ったんだ。
「-誰だ?」
今も姿が変わらない、人間だと名乗っていたあいつに。
最初、私は心の底から後悔したのを覚えている。これで再び忘れ去られることができなくなった。いや、まだ遅くない。こいつには悪いが、気絶してもらおう-そう思ったが。
「くしゅっ…!」
その時、ちょっとくしゃみをしてしまった。
「ほら、風邪をひくじゃないか、私の家に来い。」
するとあいつは、そう言って、私の手を引っ張った。
「え、お、ちょ…」
それが出会いだった。
「-成る程、あの竹林に住んでいたのか。それは大変だったな。」
「別に…。」
「ほら、これを食べるといい。少しは楽になるだろう。」
そういってあいつが差し出したのは-そう、味噌汁だったな。
私はそんなことよりも、早く帰ってしまおうかと考えていたよ。そんな事を考えながら無言で味噌汁を飲んでたら、
「-そうだな、今日はもう止まって行くといい。」
「え、はあっ!?」
そういう風に言われて私は思わず立ち上がった。冗談じゃない、さっさと帰ろうとしたが-
「…まあまあ、遠慮するな。」
そう言って微笑んだあいつの顔は、恐らく忘れられないだろうな。私を恐れることなく、奇怪な目で見るわけでもない。久しぶりに思い出した。-何かを私は思い出した。
「……仕方ない。」
私はそう言ってまたどっかりと座り直した。
「こらこら、仮にも女だろう?もうちょっと行儀を良くして-」
「う、うるさいな、何でもいいだろう!?」
「いや、良くない、ほら、もっとこう!」
「…ぐう」
あいつの言葉に渋々と従った。
「…そういえば、まだ名前を聞いていなかったな。名前は、なんというんだ?」
「…まずは聞いてきた方から名乗るのは礼儀だというもんじゃないのか?」
その言葉にあいつは少なからず驚いた。そしてくすりと笑って-
「そうだな、すまなかった。私の名前は、慧音。上白沢慧音だ。」
「……藤原妹紅」
「妹紅、大丈夫か?暫くこないから心配したぞ。」
「大丈夫だよ、不死なんだし」
「そうは言っても、体調はしっかりとだな-」
あー、はいはい。
「妹紅、私の生徒を知らないか!?竹林に向かう姿を見かけた人がいるのを最後に、見つからないらしい。」
「……。」
「頼む、妹紅、この通りだ!」
…先生は頑張るねぇ。
「…慧音、その子供の特徴は?」
「わー、もこたんだー!」
「あそぼー、もこたん!」
「だからその呼び方やめろって!」
「こらこら、お前たち、困っているだろうが。」
そういうお前がボソりと呟いたのが原因だからな、この
「…そうだよ…」
しばらく黙っていた妹紅から、ぽつりと言葉が漏れる。
「-私は慧音と出会ってから、変わっちまったよ。最近は輝夜と殺し合いもやんねーし、あいつは変わったわねと言ってきたよ。全く、あいつには困ったもんだ。」
ははは、と妹紅は笑いながら頭を掻くと、すっと明香を見据える。
「…でも、これだけは譲れないな。こういうやつらと出会ったから、死にたくなったんだ。慧音がいても、この思いだけは変わらなかったね。」
しかし、明香は肩をすくめると、あっさりこういうのだった。
「-無理でしょうね。」
「…は?」
「これからも貴女は定期的に人里に寄って、子どもたちの相手をしたり-…大変ですよ。」
「なんで、そういうことが分かるんだ?」
「だって貴女……楽しそうですし。」
明香はにっこりと笑う。妹紅はきょとんとする。
「-そうですか、駄目でしたか…。」
-翌日の朝。
ここは阿求の家。二回目の迷いの竹林での結果を、明香と慧音は伝えていた。
「うん、まあ…きっと大丈夫ですよ。」
そういいながら、明香は絵の最後の仕上げをしていた。慧音と阿求は覗き込む、そこには、大きな翼を生やし、天へと飛翔する、妹紅が描かれていた。
-そして。
「…持ってきたか?」
明香は竹林の入り口で待っていた妹紅とともに、妹紅が住んでいる家の前にいた。
「ええ、ほら、これです。」
そういって明香が取り出したのは、先程描き上げたばかりの絵。
妹紅はその絵を見て、感嘆の声を漏らす。
「絵描き…流石だな。」
そう言って、妹紅は代金を払った。本来の二割増しである。
「お釣りはいらないよ。…嫌なら、目をそらしておいたほうがいい。」
明香の視線を気にしながら、妹紅は炎を指先から出す。
その言葉に明香は首をふる。
「絵っていうのは、飾るだけじゃない。そもそもこの元-紙には色々な用途があるんです。捨てちゃってもいいし、燃やしたっていい。本がどうの絵がどうのいってたけど、結局は紙の派生です。」
「そうか…分かった。…いくぞ。」
そう言って、妹紅は地面にその絵を起き-一気に火をつけた。
そう。これが妹紅の依頼である。自分の絵を描いて欲しい。-そして、それを私の手で燃やしたい。
-自分が、この後どう生きるのかは後で決める。変わらないかも知れないし、変わるかも知れない。ただ、過去の自分を一度消したい。記録が過去になるのなら、絵なら過去になるはずだ。
偶然か必然か、永遠亭で描いていたのは妹紅の絵だったのだ。
-そして、ものの数分で絵は灰へと化した。
不思議と明香は燃やされても悲しまなかった。ただ、絵は役目を果たした。それだけだった。
「…ありがとうな。」
「いえ、絵が関係した依頼ですから。」
そして二人はともに笑った。
-その夜。
慧音は明香を誘って、人里の飲み屋にきていた。
「-明香、依頼がある。」
「へ?は、はい、何でしょう。」
「…妹紅の絵を、私にくれ。」
「だ、駄目ですよそれは。」
妹紅は記録に残るのは嫌だと言った。明香も妹紅から一応釘を刺されているのだ、妹紅の依頼が最初で最後の絵である。
「何故だ、頼む、妹紅の絵を、私に!」
「ダメですって-…慧音さん…酔ってます?」
いつもと違う雰囲気で明香に詰め寄る慧音。慧音は質問には答えず、さらに明香に詰め寄る。
「頼むっ、妹紅の絵を私に!妹紅、妹紅を私に-!」
「い、いや、やめて下さい、近づくなきもけーねー!」
「ぐはあっ!?」
その言葉が地雷なのか慧音は胸を抑えて倒れた。
-妹紅が教えたのだ。慧音が自分の絵を欲しがったなら、恐らく酔っているときだろう、本来は違う意味だが、これであいつは倒れる、その言葉は-。
-それは、明香に託されたあだ名の仕返しだということを、本人の妹紅以外、知るよしも無かった。
…長かった。
途中で二話に分けようかなと思いました。
そうなると今回の終わりが曖昧になるので…書き上げました。
文字数が多いのは嬉しいことですね…うん()
次回は恐らく鈴奈庵の異変でも1個盛り込もうかなと考えております。
それか次の依頼者か‥。
というわけで、次回。
落書き1-1、『煙々羅ってなんでしょう』
-次はあなたを描きましょう。