「あっち~」
シャツの前をパタパタさせながら子供用のビニールプールに水を淹れている銀八の前を歩いたら、水をかけられた。
「何すんだよ。濡れたじゃん。」
俺は、少し濡れてしまった袴を拭きながら言った。
「だって、こんなに暑いのにそんな暑苦しい格好で来るお前が悪い。それに、もう部活終わったんだろ?一緒に入る?」
その時、風が吹いていて銀八の前髪が揺れて額の汗がキラリと光りながら堕ちた。
ドキドキと胸が早くなる。俺は、銀八の汗と一緒に恋に堕ちた。
「は、入らねぇよ。」
慌てる俺に銀八は、クスッと笑い服を脱いだ。下まで脱ぎ出して俺は慌てて目線を背けると、“履いてるよ”と言われた。顔が赤くなるのがわかる。
銀八が、プールに入り俺の腕を引っ張った。バランスを崩し銀八に馬乗りになる形で倒れ込んだ。
「お前、俺のこと好きだろ。」
そう言って銀八は、俺にkissした。頬じゃなく口に……。
唇が触れあうだけの優しいkiss。
驚いたが、目を閉じると唇を舐められた。
「顔真っ赤。」
クスッと笑い頬に触れる銀八の手は異様に熱かった。
「さっきのことは忘れろよ。」
プールから上がりアイスを食べながら遠い目で銀八は言った。“暑いから魔が差しただけだ”と……。
そう、たったひと夏の想い出。アイツが…土方が夏が終わると8ヶ月で居なくなると思うと無性に怖くなった。入学してきた時から好きになっていた。友達と話しているときに時折見せる笑顔。頭よくて運動神経もよくて友達も多くて、とにかく何をするにもかっこよかった。
今まで嫌だった、休みの日の仕事も土方に会えるからわざと服部たちに代わって貰った。仕事がない日も……。
一番辛かったのは、アイツが剣道の試合に行くとき。顧問じゃないし、彼女みたいに見に行くのも変だし、剣道なんてルール知らないし今までしたことない顧問に代えて貰うのも変だし……。
そんなこと考えていたら、試合は終わっちゃってて……。
この歳で、こんなにも純粋に恋に堕ちるなんて思ってなかった。
好きなんて言えるわけなかった。だって、生徒だし……男だし……。
そんな中、プールに入ろうとしてたら目の前に土方がいて入るかってからかっただけなのに、顔を真っ赤にしてるから……我慢できなかった。
気が付いたら、身体が動いていて柔らかいものが唇に触れた。
どうしたらいいかわからず、“忘れろ”なんて心にもないこと言った。
そんな悲しげな顔で見るな、好きなんて言えないんだから……。
ひと夏の想い出。
完