カンピオーネ! 草薙護堂転生 あれ?   作:岐山

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主人公が神殺しになった一方、主人公以外の転生者たちはどうなったかを閑話として描いていきたいと思います。
基本はシリアスな感じですが。
まずは一人目です。どうぞ。


閑話1

転生者:願落 望

 

僕の名前は願落 望。俗にいう転生者だ。前世の僕は世界の中心的な国家、アメリカで産まれた。僕は昔から体が弱くて学校を休んでばかりだった。そんな少年であったから友達などできなかった。僕が魅力的な人間だったならばいくら学校を休んだって友達ぐらいできただろうが、僕の容貌はおせいじにもイケメンとは言えず、下の中というレベルであった。体は病気がちのせいで背が伸びず、ちびだったし、運動も苦手で一日中部屋にいることが多かったからだろうか僕はデブだった。そんな僕は運動はもちろん勉強もできなかったので学校に行くたびにいじめられるようになったのはある意味必然だったのかもしれない。

 

結局僕は不登校になり、部屋でアニメや漫画を見て、ゲームをする浪費する毎日をずっと過ごし続けた。だからこそ僕はヒーローに憧れた。だって彼らは輝いて見えたから。僕にはないものをたくさん持っていたから。僕がほしくてたまらないものを持っていたから。皆から存在を望まれ、多くの笑顔の人々に囲まれていたから。背中を預けられる友がいたから。

 

ママとお姉ちゃんは心配し、パパと兄貴は怒っていたが、僕はそのすべてを無視してずっと部屋にこもっていた。彼らには僕の気持ちがわかるまいと意固地になって。僕が部屋を出るのはトイレ、風呂、食事のトレーを出し入れするときぐらいだったので家族が何をしていて僕をどう思っていたかは知らなかった。正確にいえば、知らなかったというより知りたくなかったのだ。自分がダメ人間だと知っていたから。もう、僕をさげすむ声を聴きたくなかったのだ。

 

だから、家族が僕のことを本当に大切に思っていてくれたことさえ知らなかったのだ。結局、ぼくは流行りの病気で死んでしまい、死に際になって家族が僕をどれほど愛していてくれたのか初めて知ったのである。

 

僕は生まれた時、前世を覚えていることに驚愕し、狂喜した。だって今度こそ僕が憧れたヒーローになれるかもしれないと思ったから。今世の僕は神様から授けられた力をもって生まれてきた。それにより、僕はもうヒーローになるべくして生まれてきたのだと確信し、神様に感謝した。この力をみんなのために生かそうと、ヒーローになるために勉強も運動も頑張った。勉強も運動も前世よりも楽に上達し、友達もできた。僕の人生は順調だった。この時までは。だが、僕は調子に乗り、みづから平穏な日常を壊してしまった。その傷跡は二度と直せない物であった。だが僕は、まだそのことに気づいていなかった。

 

 

 

神々の闘いから死の恐怖のあまり逃げ出した僕は翌朝、草薙護堂がウルスラグナを殺して神殺しになったことを知った。

 

草薙がカンピオーネになったと知って僕の親友は文句を言って罵倒しているだろうなと、草薙に少し同情しながらも親友がそれで気がすむならいいかなと思いつつ僕は草薙護堂の部屋に向かった。

 

しかし、二人は草薙護堂の部屋にはいなかった。昨日あんなことがあったので、まだ起きていないのかもしれないと思い、二人の部屋に向かうことにした。

 

コンコン

 

僕は一応ノックをしてから二人の部屋に入ったが、部屋の中は薄暗い。二人が起きていないのかとベットを見てみると、二人は体育座りで頭を抱えながら小さくなっていた。

 

僕は二人が昨日のことからまだ恐怖が抜けていないのかと思い励まそうとした。

 

「二人とも何やっているんだよ。昨日僕たちは戦いから恐怖のあまり逃げ出してしまったが、生きているじゃないか。また、もっと自信がついてから他の神に戦いを挑めばいいよ。僕たち調査不足だっだし、今度はもっと弱い神を狙えばいいじゃないか。祭ろわぬ神はまだこれから登場するんだし。なんなら草薙の戦いに割り込んでいいとこどりでも…」

 

「違うんだ」

 

九浪が僕の話の途中に割り込んで言った。しかし、その声はまるでこの世の終わりを見たかのように弱弱しかった。僕は彼らしくないなと思いつつもいつもの自信満々な彼に戻ってほしいと思って励まし続けた。

 

「あの戦いから逃げ出してしまったのは恥ずべきことじゃないよ。みんな怖くなって逃げちゃったんだから。むしろ逃げなかった草薙が異常なだけだよ。でも彼はこの物語の主人公だから特別だよ。大丈夫だって、僕らが力を合わせれば…」

 

「違う、違うんだ、望」

 

覚軽が小さな声で僕の言葉をさえぎって言う。おしゃれなはずの彼の髪は頭を掻き毟ったかのようにぼさぼさになっていた。いやな予感がする。僕らは何か取り返しのつかない物を失ってしまったのではないか。

 

「な、ならカンピオーネになるのは諦めようよ。僕らには転生特典もあるしもっと違うことで頑張ればいいんだよ」

 

僕の不安をはらんだ声が薄暗い部屋の中に響く。だが二人からの返答はない。僕は返事を待ったが、部屋の中は静かなままだった。まるでお通夜のようだ。他の奴らの騒ぐ声が聞こえてくるはずだが、今日は聞こえてこない。ずっと黙っていてもしょうがないので、僕はまた言葉を紡いだ。

 

「二人ともどうしたのさ。なんか変だよ。もっといつもみたいにワイワイやろうよ」

 

「変だって。何が変だと。お前俺をなめているのかぶっ殺すぞ」

 

突然九浪が大声で僕に怒鳴り、僕はびっくりして後ずさりした。

 

「な、なんだよ。僕はただ落ち込んでいる二人を励ましたかっただけなのに。怒ることないじゃないか」

 

僕は困惑した顔で二人を見つめていると今までずっと下を向いていた覚軽が顔を上げた。僕は彼の顔を見てぎょっとした。だって目は充血していて目の下には大きな隈ができ、顔は青白かったからだ。彼の顔は幽鬼もかくやというような顔を僕に向けて地獄の底から響いてきそうな苦しみを含んだ声でぼそぼそと呟いた。

 

「葵が死んだんだ。愚かな俺たちをかばってな」

 

僕はその言葉に大槌でガツンと殴られたかのような衝撃を受けた。僕も葵ちゃんとは親しい仲だ。だって彼女、夢前葵ちゃんは僕の親友の夢前覚軽の妹で、もう一人の僕の親友の散界九浪の恋人であるからだ。僕の聞き間違いだろうと思って確認する。僕の言葉を否定してほしいと念じながら。

 

「う、嘘だよな。だって葵ちゃんはイタリアに来ていないはずじゃないか。日本にいる葵ちゃんがイタリアで死ぬなんてありえないじゃないか」

 

「葵は俺たちに黙ってこっそりついてきていたらしい。どうやら、うちの母ちゃんに自分だけおいていかれるのは寂しいからついて行きたいって頼んだらしい」

 

「そんな、そんな馬鹿な。だって彼女ほど優しくて思いやりがあり、頑張り屋さんな人が見たことないもん。彼女が死ぬんだったら、人類なんか全員とっくに死んでいるよ。彼女はとてもいい子なんだ。神が許すはずがないさ。敬虔なキリスト教徒である僕が言うんだ。間違いないよ」

 

覚軽の言葉を信じたくない。だって僕はヒーローに生まれ変わったはずなのだから。ヒーローとはみんなを悪い奴から守る正義の味方なんだ。僕はもう前世の弱い僕ではない。どんな逆境だって勇気と友情で乗り越えてみんなのピンチを救えるヒーローに生まれ変わったんだ。僕は彼女の太陽も裸足で逃げ出すかのような輝く笑顔を思い出しながら震えた声で言った。

 

「そんなのありえない。だって僕はヒーローに生まれ変わったんだから。そのための能力だって神様から授かったんだ。キリスト様が守る力を与えてくださったんだ。だから、だから……」

 

「葵は死んだんだ。死んだんだよ。誰よりも優しかった葵は屑の俺たちをかばって死んだんだ。この世にヒーローも本当の神様もいねぇんだ。あるのはただの理不尽で道理に合わない何かだけだ」

 

九浪は立ち上がると僕をにらみながら割れんばかりの大声で吠えた。

 

もう僕は何も言えなかった。目の前には理不尽で耐え難い現実が横たわっており、その先は真っ暗な暗闇が広がっているように思えた。

 

現実は認めなくてはいけない。でも、僕にはこの辛い現実を受け入れることなど到底不可能なことだった。だってこの現実を受け入れたらこれまでの僕の人生、僕の信念は馬の糞ほどにも価値のないものに成り下がってしまうから。

 

だから、僕は決めた。彼女を生き返らしてみせると。カンピオーネになれば不可能なことではないはずだ。だって神を殺して甦らす権能を簒奪すればいい。歴史に名を遺した偉人たちは不可能だと思われていたことを現実にして見せることで歴史に新たな一ページを刻んできたのだ。僕も新たな歴史を作るパイオニア、つまり歴史の開拓者、先導者、革命家になればいいだけの話だ。

 

僕は決意する。

 

たとえ何年かかろうとも。

 

皆からどれだけ笑われようとも。

 

それで自分の命を落としたとしても。

 

絶対に彼女を生き返らしてみせると。

 

彼女が微笑んでいる姿をもう一度見たいから。

 

もう一度親友の笑顔を取り戻したいから。

 

この世にヒーローは存在すると証明したいから。

 

みんな笑って騒いでいたかつての日常を取り戻したいから。

 

大切な仲間たちが悲しみ、嘆いている姿を見たくないから。

 

今、一人のヒーローになりたがっていただけの少年が消え、一人のヒーローが誕生した。

 

仲間の笑顔のためにこの世の理さえも捻じ曲げようとするいびつなヒーローが。

 

そのヒーローは物語のように皆を照らす太陽の輝きはなかったが、熟練の刀鍛冶が人生をかけて作り上げた決して折れ曲がらない鋭い刀の輝きがあった。

 

いや、もはや彼はヒーローでありながらその目的ゆえにヒーローでないのだ。いうなれば、彼は非ーローというべき存在である。

 

非ーローは言う。

 

「行ってくるよ。彼女を生き返らしてハッピーエンドを迎えるために。僕はバットエンドを認めない。だって僕はヒーローだからだ」

 

仲間たちは答えない。ただ下を向いてじっと座っているだけだ。仲間たちの心は折れ、もはや彼の言葉は仲間たちには届かない。たとえ物理的に聞こえていようと。だが、非ーローはくじけない。たとえすべてに拒絶されようとも。

 

産まれたばかりの非ーローは毅然とした顔で目的に向かって歩き始めた。その顔は真っ直ぐ前を向き、決して後ろに振り返らなかった。この時仲間たちが彼に声をかけていれば結末はなにか変わっただろうか。より良い方向に。より悪い方向に。それは誰にもわからない。わかるのはただ一つ。願落 望の物語は動き出してしまったということだけだ。もう後ろには戻れない。

 

望の向かう先には一柱の神が居る。その神の名はメルカルト。フェニキアの神王で、地中海最強の神の一柱。非ーローはその神を倒すために準備を始めた。彼の守る力を使って。

 

非ーローの能力は二つある。変身と拝借だ。

 

変身はその名の通り、自分の思い描いたヒーローに変身する力だ。ただし、この力は自分の勝利を、信念を信じ続けない十全な力を発揮できない。鋼の肉体には鋼の精神が必要とされる。力を使えるからヒーローなのではない。ヒーローだから力を使えるのだ。

 

もう一つの力、拝借はその名の通り他人から力を借りる力だ。ただし力を借りられる相手は互いが互いを仲間と思っている相手だけだ。そしてこの力、拝借は自分が仲間を心の底から助けたいと思った時、元の借りた力以上の力を発揮できるようになる。

 

非ーローが持つ二つの力は、今初めてその真の力を発揮しようとしていた。

 

非ーローは仲間から借りた転移の力を使い、各国の軍事施設からあらゆる武器を取ってきた。それをもう一人の仲間から借りたアイテムボックスにしまうとまた次の国へ向かう。その行動はヒーローがやるべき行動ではない。こそ泥の行動である。でも彼は止まらない。だって彼は非ーローであるから。目的のためにはどんなこともいとわない非道のヒーロー。仲間にはヒーローであっても被害者から見れば犯罪者に過ぎない。まるで英雄のようである。英雄もまたその国にとってはヒーローであるが、敵対国からすれば悪魔だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで戦場だったかのようにそこら一体の地面がえぐれ、周りの木々は倒れ、建物は倒壊している。その中心にぼろぼろになった赤い服の少年が赤い水たまりに倒れていた。もともとは白かったパーカーとズボンは血で赤く染まり、遠くから見ると戦隊ヒーローのレッドが倒れているように見えるのは神様の皮肉であろうか。

 

全力を果たしても何も救えず迷惑をかけただけの彼の生き様は無駄であったのだろうか。彼の物言わぬ躯はもう何も答えてくれない。だがその死に様は彼の二人の親友の人生に大きな影響を与え、彼の親友たちは多くの人々を助け、希望を与えることになる。彼は結局ヒーローにはなれなかったが、親友をヒーローにすることができたのである。彼の行動は間接的にだが彼が憧れたヒーローのように多くの人を助けたのである。ヒーローにはなれなかった多くの人々を救う未来を作った少年、願落 望の非ーロー物語はこうして幕を閉じた。

 




転生者たちは皆二つの特典を持っています。
特典といっても強すぎる能力はその分デメリットもあるので、俺つええええにはなりにくいです。
特典は別に神様に会ってもらったのではなく、彼らの願望、特に死に際の願望に影響された力です。

ちなみに、主人公の特典は
文武両道:運動、勉学に関して人よりも優れた才能があるが、短所として努力をしない     となにも意味がない力となっている

ご都合主義:多少のことはご都合主義的な力が働きます。短所として、ご都合主義が働      いても違和感を感じさせない程度の事でないと力が発揮されません。
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