綿月豊姫として生きるONE PIECE 作:なんてことだ……
ヒヤリとした感触が影を襲う。しかし、影はその感触の正体を知っているため、さほど驚かずに瞼を数度微かに震わせ、目を開いた。
まず影の視界に入ってきたのは銀髪の美しい青年。彼は楽しそうに口許を緩め、指で影の頬を絶えず撫でている。
影が気を失っていた時に感じた冷たさは彼のものだろう。彼は何故か常に体温が低く、影は夏場は涼しそうだなと、よく羨ましがっていた。
「【■■■■■】」
声に出してよく知ったその名前を呼ぶと、彼はじっと影を見つめる。その瞳の中には隠しきれない喜色が存在していた。
「私は……どうしてここにいるの?」
影は目覚めてからずっと気になっていたことを問う。影は“神”として致命的なミスをした。なのに何故ここに居るのか。そして、影が産み出してしまった紋様はどうなったのか。
すべてを総合すれば影は絶対に赦されない大罪を犯した。それなのに今影が何故ここで彼と一緒にいるのか。
それは至極当然な疑問であった。
「“
「“創世神”が…」
“創世神”とは、“神”の頂点に位置する唯一絶対の存在のことである。“創世神”は“神”を創った始まりの祖。故に、影達“神”は皆等しく“創世神”の子供なのである。
「行くぞ」
彼は影の手を引きながら“創世神”の元へ歩いていく。影は彼の行動に驚いたが、それ以上に緊張していた。影は“神”としての力は彼の1/3程度であり、彼は“創世神”と頻繁に会っていたようだが影は一度も会ったことがなかった。
会ったことのない“創世神”への期待と自分はどうなるのだろうという不安。それらがグチャグチャに混ざりあい、影は極度にあがっていた。
「………大丈夫か?」
「えっ?うん、問題なんてなにもないですわよ?ふふふふ…」
影は普段使わない言葉遣いをして、彼に影がとても緊張していることが伝わる。彼はため息をつくと、ふわりと影の頭を撫で始めた。
「何かあっても俺が側にいてやる。だから緊張するな。大丈夫だ」
そういわれても緊張するものは緊張する。確かに彼が頭を撫ではじめてから影の緊張はだんだん収まってきたもののそれでもまだ十分に緊張していた。
「……ありがと」
「どういたしまして」
影は彼に微笑むと、彼に先を急かすように手を軽く引っ張った。それに気づいた彼は心得たとばかりに歩き出す。影は“創世神”の元へつくまで、始終笑っていた。
「君達が今回問題起こしちゃった子?」
「は、はい」
「ふぅん…。ま、別にいーよー」
「え?」
「正直言ってさぁ、別に君達がミスしても僕が普通にカバーできるんだよねぇ?だから本音を言っちゃうと別に存在をもって償おうとか思わなくても全然問題ないんだよ♪」
影の目の前で楽しそうに爆弾発言を繰り返すのは“創世神”。彼はくるぶしまである異様に長い黒髪を指で弄びながらニヤニヤと笑っている。
「問題ない、けどねぇ……。ミスした子には相応の罰を与えなきゃまわりが煩いんだよねぇ…」
「“創世神”!」
「だから君達は『異界流しの刑』に処す!」
「はぁ!?」
「異世界へ二名様ご案な~い♪」
“創世神”がパチンと指をならすと、二人は姿を消した。
「……………僕が可愛い子供達をお前なんかに渡すとでも思った?」
「………」
「残念だったね♪」
“創世神”の目の前に姿を表したモノ。それは異形だった。黒くヌメヌメとした皮膚に何かの粘液が纏わりついたウネウネと動く気味の悪い触手。口とおぼしき部分にはどす黒い色をした体液がベッタリとついていた。
「消えろ」
“創世神”が表情を消してそう言うと、異形は音もなく消え去った。
「面倒なことになったなぁ……」
ふぅ、と溜め息をつき、“創世神”は行動を始めた。
「アイツが入れないようにしなきゃ―――……」
次回からやっとワンピースの始まりです。